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Blue Sky at Night, Gambia
Photos by Tom Ward
images.jpeg


※画像はイメージであり本文とは関係ありません。
本稿には物語中における重要部分の記述があります。




大藪作品『傭兵たちの挽歌』
U.S. GERBER Folding Sportsman II 用スキャバード製作企画
第三章「地獄の軍団」Vol.3


(※ 前回 からのつづき)
   激痛でアルは意識を取戻した。狂ったように悲鳴をあげてもがく。片山はタバコに火をつ
  け、アルの意識がはっきりするのを待った。
  「き、貴様は誰なんだ! 貴様の恨みを買った覚えはない!」

  「貴様に恨みはない。情報が欲しいだけだ。素直にしゃべったら命を助けてやる」
   片山は答えた。
  「C・I・Aか! インターポールにしては荒っぽすぎる」



Youtube -
101 Facts About The CIA by 101Facts
https://www.youtube.com/watch?v=Rw90MWARES8











100 Years of INTERPOL connecting police for a safer world
by INTERPOL
https://www.youtube.com/watch?v=EnWXljVe0KQ












「どっちでもいい。あんたの本名はアルバート・リー。シンガポールでラ・パロマ号に乗船し

   片山は呟〔つぶや〕いた。タバコを捨てる。
  「ど、どうして知ってやがる? そうか、グエンがしゃべったな? 畜生、口が軽い野郎だ」
  「グエンは、自分の命を捨ててでも、あんたの命を助けようとしたんだ。俺がもうちょっとノ
  ロマだったら、あんたは逃げきることが出来たろう」
  「だから奴は偉いとでも言うのか? とんでもねえ。もし奴が命を捨ててでも俺を助けること

  険金の十万ドルのほかにもな・・・・・・俺が奴を助けても同じだし、俺とグエンの関係だけでなし
  に、組織のほかの連中の場合もみんな同じだ。金額はちがってもな。だから俺たちは、上陸す
  る時は一人にならずにペアやコンビを組むんだ。
   二十万ドルあれば、俺たちの国では、カカアやガキどもが一生食っていける・・・・・・。だけ
  ど、奴が俺を窮地に追いこんで自分だけは助かろうとしたら、見舞い金を払ってもらうどころ
  か、遺族に払われた保険金を組織に没収される。
   だから奴は、“赤い軍団(コールダルメ・ルージュ)”の秘密をしゃべった以上、たとえ船に
  逃げ戻っても、組織の処刑執行人に抹殺(まっさつ)されるに決まっているから、自分の命を
  切札にしてバクチを打ったんだ」
   アルは呻き声を混えながらしゃべった。
  「コールダルメ・ルージュか。英語だと、レッド・アーミー・コーアだな。それが、あんたら
  の組織の名というわけか」
   片山の瞳(ひとみ)がギラッと光った。
  「グエンは赤い軍団の名をしゃべらなかったのか!」
   アルは苦痛の表情に、しまった、といいたげな表情を混えた。
  「しゃべったさ。コルポ・ロッソとかイタリー語でぬかしやがったので、ピンとこなかっただ
  けだ」
   片山はもっともらしく答えた。
  「さあ、殺せ! 俺はもう何もしゃべらんぞ。俺はグエンのような五人もの子持ちとちがって
  独身だ。俺がくたばっても泣いてくれる者はいねえ」
   アルはわめいた。
  「ヤケクソになるのは、まだ早い。こいつが見えるか?」
   片山は内ポケットから、クリップでとめた五十枚の千ドル札を出し、アルに近づけた。振っ
  てみせる。それを左手に持ちかえ、グエンとアルから奪った五千ドルほどの現ナマを右手でポ
  ケットから掴みだしてアルに示す。
  「ど、どういう意味だ?」
   アルは生唾(なまつば)を呑(の)みこんだ。
  「あんたがしゃべってくれたら、ここにある五万五千ドルをくれてやる。あんたは、この金を
  持ってホンコンにでも逃げたらいい。こんなところでカッコウをつけてくたばるより、ずっと
  ましだと思わないか?」
  「あ、あんたの正体は何なんだ?」
  「俺はワイオミング州に牧場を持っている。俺のオヤジは、牧場生活を引退してから日本車の
  ディーラーになって成功した。日本のメーカーから招待されて日本に行ったとき、誰かに射殺
  された。俺はその犯人を追ってるんだ。長い追跡だった。そしてどうやら、あんたと同じ船に
  乗っているパク兄弟に殺されたらしいと分った。奴等はコリーアンでなくジャップだ。日本で
  は傭われ殺し屋をやっていた。奴等は、俺のオヤジをマフィアの連絡係りと間違えて殺しやが
  ったんだ」
   片山は熱っぽく言った。




Youtube -
Wyoming Cowboy Hall of Fame - Celebrating Hall of Fame Cowboys
by Wood Mountain Productions LLC
https://www.youtube.com/watch?v=CsZi4vt2Fj8







  「そ、そうか。あの二人は、船でも、組織の処刑人なんだ。もう一人のキム・チョンヒと名乗
  ってはいるが日本人らしい男と同じように・・・・・・」
  「俺は仇を討ちたい。銀行にまだ百万ドル以上預けてある。しゃべってくれたら、あと二十万
  ドル出そう」
  「ほ、本当か?」
  「とりあえず、これを取っといてくれ」
   片山はクリップでとめた五万ドルとグエンとアルの五千ドルほどを、アルのポケットに突っ
  こんだ。
  「ざ、残金は?」
  「あんたがしゃべり終ったら、ルサンゴの米軍基地の病院に運んでやる。俺は勲章を胸一杯に
  ぶらさげて名誉除隊した軍人だし予備役の准将だから、基地に顔がきくんだ。基地の病院まで
  は赤い軍団は追いかけてこられない。あそこのベッドに、銀行からおろした二十万ドルを運ん
  でやる」
  「夢みたいな話だ」
  「それとも、本当にここでくたばりたいか?」
  「分った、分ったよ。何をしゃべればいいんだ?」
  「はっきり言ってやろう。パク兄弟の本名は谷崎兄弟だ。奴等はラ・パロマ号に乗る前から赤
  い軍団に傭われていた。日本でオヤジを誤殺したのも、赤い軍団の命令通りに動いた結果だ。
  だから、まずは赤い軍団についてくわしく知りたい」
  「しゃべりたいが、俺のような下っ端にはくわしくは分らないんだ」
  「まず、シンガポールであんたを傭った連中について尋(き)こう」
  「今から思えば赤い軍団のシンガポール支部の連中だと思うが、名前は名乗らず、ナンバーで
  呼びあっていた」
   アルの答えはグエンと同じようなものであった。

(つづく)





Making belt clip leather sheath for Buck 110 by Nikolov Leather





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Last updated  2020年01月19日 00時53分26秒


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