シオ・クローカーの渋いトランペットが、トリオにフィットして、なかなかいい味を出している。 1曲目の「Blue」はボルチモアの朝を描いたオリジナル。 ヒップ・ホップ色の強いドラミングが、なかなか斬新だ。 ピアノ・ソロが結構いろいろなことをやっているのだが、不思議とうるさくなく、爽やかなサウンド。 「Why Don't We(Move To Baltimore)」はボルチモアつながりの曲。 優しいメロディーが流れる。 短いリフを繰り返しながら盛り上がるエンディングは、なかなかの聴きもの。 ピアノとフェンダーローズを使った「Hear Me Now」はリズミックで速めのテンポの曲。 左手のリズムが、聴き手をせかすように聞こえ、居心地が悪い。 フェンダーローズは効果音として使われているようだが、あまり効果的とは思えない。 個人的には、ないほうが落ち着く。
ダークなムードを醸し出す印象的なリズム・フィギュアに乗って、トランペットとフェンダーローズのソロが展開される。 フェンダーローズがいい感じだ。 ボニー・レイットの1991年のヒット曲「 I Can’t Make You Love Me」(邦題「夕映えの恋人たち」)は原曲の持ち味を生かしたストレートなアレンジで、悪くない。 6曲目の讃美歌「父の神の真実(主の真実はくしきかな)」が、清らかというよりゴスペル風の黒っぽい演奏で実に感動的だ。 ドラムスがバシバシと叩いているのだが、聴き手の心にじわじわと染みこんでくるのだ。
Joey Alexander: 1. Blue 2. Why Don't We 3. Hear Me Now 4. Mike Reid and Allen Shamblin:I Can't Make You Love Me 5. Zealousy 6. Thomas Chisholm:Great Is Thy Faithfulness 7. Aliceanna
Joey Alexander (p) Kris Funn (b) John Davis (ds) Theo Croker (tp track 1-3,5)
Recorded The Bunker, Brooklyn, New York 30-31 March 2023