inti-solのブログ

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2024.05.15
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カテゴリ: 政治
「0歳児選挙権」公約に 維新共同代表
日本維新の会の吉村洋文共同代表(大阪府知事)は人口減少が進む中で若い世代の意見を政治に反映させるべきだとして「0歳児選挙権」の導入を提唱した。府庁で記者団に「マニフェストに組み込み、次の総選挙で訴えたい」と強調した。0歳児から投票権を持たせ、成人になるまでは親が「代理行使」することを想定している。
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NHKをぶっ潰すことを公約にした政党が議席を取ったくらいなので、どんな党が何を言い出しても驚かないですが、衆議院に45議席も持つ大政党がこんないかれたことを言い出すのは、さすがに呆れます。まあ、維新なら言い出しかねないなとも思いますが。
まず、0歳児に投票権を与えるには、もちろん公選法の改正が必要ですが、それはただ単に第9条(選挙権を18歳以上と規定)を改正すれば済むものではありません。なぜなら、0歳児が投票用紙に候補者名を自書することは不可能であり、代理投票するにしても投票先の意思表示を行うことすら不可能だからです。
「成人になるまでは親が代理行使」という記事からも明らかですが、これは実際には「0歳児に選挙権を与える」のではなく、0歳児をダシにして、「未成年の子の親に2票を与える」というのと同じです。
つまり、公選法第36条(一人一票)にあからさまに反し、もしくは建前どおり「それはあくまでも0歳児に選挙権を与えているのだ」と言い張るならば、第46条( 自書 式の投票を規定)に反します。
他人に公布された投票用紙に別の人が候補者名を書くことは、たとえ親子、兄弟、夫婦であっても、互いの同意があっても、公選法違反になります。発覚すれば投票所の職員が制止します。

もちろん、現行の公選法の規定の元でも代理投票という制度はあります。字が書けなくても、誰に投票するという意思表示さえできれば、投票できるようにするためです。
でも、この代理投票という制度を勘違いしている人が、どうやら少なからずいるようですが、代理投票とは親子兄弟や後見人が本人の代わりに投票用紙を書く制度ではありません。投票所の従事職員(つまり公務員)2名以上が付き添って、本人の意思表示を確認して代理で記載するものです。その間は、親子兄弟であっても投票者には近付けさせません。投票の秘密の侵害になるからです。

現行の公選法上の「代理投票」とはそういうものです。どんな低投票率でも、一つの投票所で代理投票は最低でも複数はあるはずです。多いところでは10票以上あるかもしれません。

寝たきりの要介護者、重度身体障害者であっても、わざわざ投票所に来る人は、基本的に「誰に投票する」という意思を明確に持っています。もちろん、それが親族や親しい人の意を受けている、ということは往々にしてあるでしょうが、そうだとしても意を受けて投票する、という意思は持っているわけです。代理投票とは、その意思を投票用紙に記す行為を代理するだけのものです。

したがって、「親」という別の有権者が自身の意思によって、子どもの選挙権を「代理公使」することは、そもそも現行の「代理投票」とはまったく異なった概念です。
0歳児1歳児2歳児が候補者名について意思表示できるはずもなく、現行の代理投票など成り立たないのは明らかです。
それを親に「代理公使」させるなら、9条だけでなく36条か46条、あるいは両方の改正が必要です。
でも、それだけで済む問題でもありません。
未成年の子どもを持つ親にだけ2票を与えるというのは、例えば高額納税者にだけ2票与えます、社会的地位の高い人にだけ2票与えますというのと、選定基準は違ってもやっていることは同じです。とうてい、マトモな民主国家のやることではありませんし、そもそも憲法第14条(法の下の平等)に反します。
更に、それはあくまでも親に2票を与えるのではなく子どもの選挙権の代理公使だと言い張るなら、それは
憲法第15条4項(すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。)
に反します。子どもの選挙の投票の秘密を親が犯す前提なわけですから。

つまり、どっちにしても憲法違反、ということです。

維新はさりげなく、「 成人になるまで は親が代理行使する」というトンデモなことを言っています。0歳児と違って16歳17歳の子どもは、自己の意思を示すことも、投票用紙に記入することも問題なくできるはずです。それなのに、16歳17歳の選挙権も全部、親に代理行使させるつもりですか?
それはそれで、0歳児とは別のベクトルで大問題です。
根本的に、「人口減少が進む中で若い世代の意見を政治に反映させる」手段が0歳児から選挙権とは、問題意識が完全にずれていると言わざるを得ません。
もし、若い世代の意見が政治に反映されていないとするなら、なぜそうなのでしょうか?

そんなわけがないでしょう。
あまり適切な例えではありませんが、料理を作っていて、どうも塩を入れすぎてしまったようだ、と言うときに、「じゃあ代わりに砂糖をいっぱいぶち込もう」と言っているのと類似しているように思います。失敗を別の方向の失敗で帳消しにしようったって、何の解決にもならないのです。





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最終更新日  2024.05.18 19:03:37
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