山行・水行・書筺 (小野寺秀也)

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2019.02.08
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カテゴリ: 街歩き

​  勾当台公園に入る手前の交差点で信号待ちをしているとき、金デモの常連さんと出会った。かつて「脱原発デモは私の終活です」と話された人だ。「寒いですね」という挨拶を交わしたが、出がけに見た天気予報ではマイナス2度くらいには下がっているらしい。
 「仙台ではこの時期が一番寒いですが、まあこの程度なら助かりますね。」
 「今年は雪も少ないですしね。」
 そんな話をしながら勾当台公園に入ると、集会はまだ始まっていなかった。今日は遠回りをして用事を一つ片づけるために早めに家を出たのだが、集会に遅刻をしなかったのはほんとうに久しぶりのことである。







勾当台公園から一番町へ。(2019/2/8 18:37~18:39)


 集会では、女川原発の再稼働の是非を問う県民投票条例制定を求める111,743人の有効署名簿を宮城県知事に提出したという報告があった。署名運動に取り組んだ70人余りの受任者も会場に駆けつけ、多くの報道陣が見守る中で署名簿が副知事に提出されたという。
 舞台は県議会に移ったが、村井県知事は13日から開かれる2月定例会に条例案を提出するという。「県議会の傍聴を!」という呼びかけのスピーチだった。











一番町(1)。(2019/2/8 18:46~18:50)


 寒さのせいかデモ参加者は25人にとどまったが、元気な女性コーラーの声に励まされるようにデモはいつものように繁華街を進む。
 人数が少ない分、ひとりひとりを丁寧に写せるだろうと思っていたが、あまりいい写真が撮れなかった。いい構図だと思ってもシャッターが切れないことが多かった。シャッターが切れても、シャッター速度が遅くてぶれるか、光量不足で荒れている写真が多かった。
 写した枚数は100枚ほどだったが、その3分の2を捨てるしかなかった。残った写真の出来もそんなにいいわけではないのだが、デモの記録と報告という意味で残すしかなかったのである。
 何よりも問題なのは、カメラの設定がいつもと同じなのにそうなった理由がわからないことである。











一番町(2)。(2019/2/8 18:51~18:55)


 長崎大学の山下俊一教授は、福島事故直後の2011年3月21日に福島市で行った講演で放射線の影響は「心配いらないと断定する」とか「放射線の影響はニコニコ笑っている人には来ません」などとじつに非科学的な発言をした医学者だが、その講演と同じ日に別の場所では子どもの甲状腺被ばくについて「深刻な可能性がある」との見解を示したということが文書として残されていたという。
 ​ 1月28日付けの東京新聞の記事

​ 
 もっと悪質な 科学者の犯罪がある。でたらめな科学論文で放射能汚染地で暮らす人たちの被曝線量は低いと結論して国や福島県の政策に影響を与えたというのが「宮崎早野論文」問題である。
 福島県立医大の宮崎真講師と早野龍五東大名誉教授は、伊達市民のガラスバッジによる個人線量測定データと内部被曝線量データを用いて、伊達市民の放射線被曝はきわめて低いという結論の論文を2編発表している。
 この論文は個人に関するデータを本人の了承なしに用いて発表したことをめぐる倫理的な側面での違法性ばかりではなく、データの扱いとその数理的処理という科学的な内容そのものにも問題があると指摘されている。
 科学者の倫理的側面の違法性については『科学』2月号に掲載された黒川眞一高エネルギー加速器研究機構名誉教授と福島市に島明美さんの共著の記事がある [1]。 ​お二人は、宮崎早野論文の倫理指針違反を次のようまとめている。​​

​​
(1)医大の研究に自分のデータを提供することに同意していない伊達市民のデータを使用していること、
(2)研究を実際に始める前に、研究対象者である伊達市民に研究内容を公知せず、同意撤回の機会を与えなかったこと、
(3)伊達市長室から論文作成を依頼されたことを隠していたこと、
(4)研究が倫理審査委員会による審査を通り学長による承認を得る前に,伊達市民のデータが宮崎氏と早野氏に提供され、このデータを使った研究発表が早野氏によって行われていること、
(5)研究計画書に書かれている内部被曝線量と外部被曝線量の相関を調べる研究を発表せず、研究を終了したこと、
(6)研究終了報告書に研究計画書には書かれていない研究を成果として報告していること、
(7)倫理指針がデ一タをできるだけ長期間保管するようにと定めているのにもかかわらず、全データを研究終了時に廃棄していること。


 これらは研究者(科学者)が研究をするうえで遵守しなければならない倫理規範に違反しているということで、これだけでも論文はアウトで、著者らによって取り下げられるべきであり、そうでなければ科学雑誌の編集者の判断で却下、取り下げが行われなければならない。じっさい、宮崎早野論文が掲載された専門誌の編集者が論文の結論が変わってしまうという懸念を示しているという報道もあった。
 倫理違反ばかりではなく、データ処理や計算の間違いも指摘されており、科学論文の科学そのものにも問題が多いと指摘されている。物理学が専門の東大名誉教授が論文に使用されている統計処理や積分の計算を間違うとはとても信じがたい。早野東大名誉教授の専門である原子物理学で使われる数学に比べれば宮崎早野論文の数学は比較にならないほど簡単なはずである。それを検証するには元のデータが必要だが、上の(7)で指摘されているようにデータは早々に廃棄されている。第三者に検証されることを恐れて廃棄したのではないかと疑いを持たれる不正である。私は、宮崎早野論文の被曝線量が低く見積もられることになる「計算間違い」は意図的ではなかったかと強い疑念を抱いている。

 山下発言にせよ、宮崎早野論文にせよ、科学を装った言説で市民の健康・生命を危うくすることは、科学の歴史が忌み嫌ってきたものである。科学的名声のために論文を捏造するという例ももちろんあるが、社会的・政治的な「科学者の犯罪」は歴史的には多くみられる。政治権力に利用されることも多いが、科学者自らが不当に高い社会的・政治的地位を求めようとすることが最大の理由だろう。







青葉通り。(2019/2/8 18:58~19:07)


 じっとしていればさすがに寒いが、マイナス2度というのはデモを歩いている分にはまったく問題がない。これより気温が高ければ、たぶん汗をかいてしまって風邪のもとになるだろうし、これよりも下がれば、カメラを持つ手は凍えてしまうだろう。  骨折の左手には手袋が嵌められないし、左手はカメラの細かい操作のためにしばしば脱がなければならないが、手が凍えてしまう感じはまったくない。この程度の寒さのままで春が迎えられたらいいな、などと考えながら帰路を急いだ。寒くないなどといいながら、のんびり歩くほど暖かくはないのだった。

[1] 黒川眞一、島明美「住民に背を向けたガラスバッジ論文」『科学 第89巻 第2号』(岩波書店、2019年)p. 152。

小野寺秀也のホームページ






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Last updated  2019.02.11 22:19:53
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