わたしのこだわりブログ(仮)

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2014年02月16日
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カテゴリ: 偉人・画家・聖人

Break Time(一休み)

ピーテル・ブリューゲルとヒエロニムス・ボス

ピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel)
ヒエロニムス・ボス(Hieronymus Bosch)
ヒエロニムス・コック(Hieronymus cock)

16世紀のブラバント(現ベルギー)を代表する画家にピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel)がいる。
ピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel de Oude)(1525年or1530年~1569年)

現在もフランドル派の画家として代表される彼の作品は、日本では当時のフランドルの街や素朴な農民を描いた風景画家として浸透している。
しかし、それらは彼の後期作品の一部で、実は諺(ことわざ)で皮肉った風刺画家としてのブリューゲルの作品の方が彼らしくて面白い。

ところで彼はもっと 不思議な絵を描いていた時代がある
日本ではほとんど知られていないかも知れないが、それは 限りなくヒエロニムス・ボス(Hieronymus Bosch)に近い幻想絵画である。

諺の風刺画の延長線にも見えるが、明らかにそれら作品は ヒエロニムス・ボスを意識したもの・・いや、完全に真似した作品であった。


ルネサンス期のネーデルラント(現ベルギー、オランダ国境)の画家で、彼もまたフランドル派の画家として知られている。
もっとも フランドル派と言っても特殊すぎる彼の絵画はどこにも分類できない絵画 であるが・・。

ブリューゲルはヒエロニムス・ボスが亡くなったずっと後の画家である 。二人にもちろん接点は無かったのだが 1550年代末になってヒエロニムス・ボスのブームが到 するのである。
ボスの怪異な絵画は生前からかなりのマニア人気があったようだが、それは死後も続き、実はかなりの模倣作品が市場に現れたそうだ。
(現在でもオリジナルか識別できない作品もあるらしい・・。)

実際ブリューゲルは雇い主である版画印刷会社のヒエロニムス・コック(Hieronymus cock)に請われてボスの偽物絵画を描かされていたようだ。


ヒエロニムス・コック(Hieronymus cock  or Wellens de Cock )(1518年~1570年)
1548年にアントワープに戻った 彼は出版社を立ち上げローマで見てきた巨匠の作品を版画(エッチング)にして頒布。
北部ヨーロッパにイタリアのルネサンス絵画を紹介し普及させた立役者だそうだ


二人はヒエロニムス・ボス風のこの世の物ではない奇っ怪な生き物が登場する幻想版画を発行している。
コックからすればヒエロニムス・ボスの未発表作・・として売りたかったのが本音だったろう。
それだけヒエロニムス・ボスの絵は売れたのだそうだ。

よくブリューゲルは「第二のボス」とも称されたそうだが売るために敢えて乗っかった・・と言う所が本当だろう。
実際ブリューゲルが幻想画を描いていたのはヒエロニムス・コックと組んでいた数年に限られているらしい。

ベルギー王立美術館にはブリューゲルの「叛逆天使の墜落(The Fall of the Rebel Angels)」(1562年)が収蔵されている。
pict-ブリューゲル 1.jpg

大天使ミカエルが率いる天使軍
pict-ブリューゲル 3.jpg

VS 堕天使サタン(ルシファー)をはじめとした魔界軍との戦い
pict-ブリューゲル 2.jpg

もともとサタンも天の住人(天使)だった。それ故にサタンは堕天使と呼ばれている。
天の支配者に戦いを挑んだ元天使は異様な姿に身を変えて魔界に落とされ彼らは悪魔になった。
この絵画は「善である天使」と「悪である堕天使」の戦いの図である。
しかし通常天の方が勝さり美しく描かれるはずの絵画は、この絵ではむしろ異形の怪物の方が目立っている。
ちょっとコミカルでさえある不思議な構成だが明らかに足を止めて見入る作品になっている。

pict-ブリューゲル 4.jpg
それにしても ブリューゲルの怪物は怪物であるけれど美しい
ムール貝の羽や虫からインスピレーションを得たと思える甲冑など案外当時の身の回りにあるなじみの物から構成されているように思う。

王立美術館にはヒエロニムス・ボスと思われる祭壇画も展示されていた。
「聖アントニウスの誘惑(The Temptation of St. Anthony)」
pict-ボス 1.jpg
実はこの絵は本来リスボン国立美術館所蔵になっている。
だから王立美術館のこの作品は本物なのか解らない。

pict-ボス 2.jpg
奇っ怪な生物はブリューゲルのそれと比べて不気味で怖い。
それにしても写真上の魚のボートは流線型で実に未来的だ。
当時このような着想が浮かんだヒエロニムス・ボスは何を見ていたのだろう。


ブリューゲルについては、2012年03月お知らせの中で「バベルの塔 」の写真を紹介していますが、今年またウィーンに行くので写真撮り直してきます。
そしてヒエロニムス・ボスを探してまた紹介できれば・・と思います。
(コーティングされた絵画を撮影するのはちょっと難しいのですが・・。)


​そう言えば二人に共通点がありました。
彼らは共に特殊な教義の宗教のfraternity(フラタニティ)に所属していた・・と言う事です。
特殊な宗教観が常人が考え着かない異形の世界を発想させたのでしょうか?

fraternity(フラタニティ)については2013年09月「2013.9 クイズこのロゴは何? 解答編 秘密結社? フリーメイソン」の中で「(fraternity)とギルド(craft guild)」について書いていますから良かったら見てね。

リンク ​ 2013.9 クイズこのロゴは何? 解答編 秘密結社? フリーメイソン

ヒエロニムス・ボス(Hieronymus Bosch)については、2016年02月ウイーンの造形美術アカデミーで書いています。
「造形美術アカデミーのボス(Bosch)最後の審判 1 (楽園)」
「造形美術アカデミーのボス(Bosch)最後の審判 2  (反キリスト者の裁き)」
そこの目玉がヒエロニムス・ボスの最後の審判(The Last Judgment)なのです。
リンク ​ 造形美術アカデミーのボス(Bosch)最後の審判 1 (楽園)
リンク ​ 造形美術アカデミーのボス(Bosch)最後の審判 2  (反キリスト者の裁き)

おわり






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Last updated  2020年06月09日 20時27分09秒
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