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2008.10.20
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<きのうから続く>

ニーチェの実在の妹エリザベート・ニーチェは、兄の死後、自分に都合のよい兄の虚像を広めることに哀れなくらい心血を注いだ女性。でっちあげの伝記を書いたり、遺稿を勝手に改竄したりして後の研究者から怒りを買った。その動機は、主としてエリザベートが時の権力ナチスに擦り寄ろうとしたためだとされているが、『ルー・サロメ 善悪の彼岸』では、エリザベートが「偉大な思想家」にふさわしい――と彼女が信じる――モラリスティックな理想像を兄に押し付けていた様子が描かれている。

特に道徳観において、現実の兄は妹からすれば、あってはならない行動を取る男だった。妹はそれが許せなかったし、受け入れられなかった。兄を堕落させたのはルーだとエリザベートは思い込んだ。実際のエリザベートも兄が連れてきたルーと面識があった。そして、彼女がルーを敵視していたことは、ルーへの中傷行為や密告からも間違いない。

映画ではルーを伴って実家を訪れたフリッツ(=ニーチェ)への、妹エリザベートの恋情にも似た屈折した感情が描かれている。

ルーを追いまわし、結婚してくれと叫ぶ兄に、妹は苛立ち、モノに当たったり、奇声をあげたり、病気だと言って兄の同情と関心を引こうとしたりする。そんなエリザベートを見て、ルーはフリッツに、「あなたは……」
妹はあなたを愛してる

兄のほうは、そんな妹をうとましく思っている。代々牧師のお堅い家庭に育ったフリッツとエリザベート。だが、フリッツは男に縁のない純潔な女性というものが、いかに偏狭で、身勝手な妄想にふける生き物かを熟知していた。フリッツはルーに「処女だった叔母」の話をする。彼女はお堅い仮面の下に、常に満たされない性的な欲望を秘めており、自室で1人いやらしい行為にふけっていた。幼いフリッツはそれを盗み見して笑っていたのだ。

そんなルーとエリザベートは、ある日とうとう直接対決する。
偉大な思想家
それはルーも認めている。

だが、フリッツは一方で、半ばだまされて入ってしまった娼館で、シチリア出身の若い少女と関係をもち、それ以来梅毒と娼婦性をもったオンナのカラダにとりつかれてしまった中年男。今は阿片にも溺れ、肉体的には自分に関心を持たないルーに対して、「ねぇ、ソコ、触らせてよぉ」などと必死に、情けなく迫るただのエロ親父なのだ。

兄は高潔


エリザベートはルーの身辺を調査し、「男だけのいかがわしいパーティに行った」ことも知っていた。だが、非難するエリザベートにルーは平然と、「言いたければ、フリッツに言えば?」。

エリザベートはいわば、従来の保守的な価値観を守る女性。ルーは因習や習慣を離れて自由な自己を形成しようとする女性。もともと2人は水と油なのだ。

だが、オンナ対オンナの闘いで、価値観や生き方とは関係なく、決定的ともいえる1つの残酷な勝敗の原則がある。それは、「愛されていない女」は「愛されている女」には心理的には決して勝てないということだ。

どんなに時代が移り変わろうと、女性が精神的自由を獲得しようと、経済的に自立しようと、女性にとっては「愛されているかどうか」が自分の存在意義にかかわる大問題であることに変わりはない。現代女性がダイエットしたり、エステに行ったり、高価な服や装身具で身を飾ったりするのも、その目的は突き詰めれば、愛される存在になりたいからに他ならない。

ルーはぐっさりそこを突いてくる。

求めてくるのは彼

伝統的な価値観に忠実に、「純潔」を守っているエリザベートが一番認めたくないこと。それは、貞淑さとは程遠いルーにフリッツが一方的に惚れこみ、みっともないぐらい追いかけているという事実だ。そもそもモテナイ女はモテル女を許せない。エリザベートはあくまで「ルーのほうがフリッツを誘惑し、堕落させた」のだと信じていたいのだ。

エスカレートするエリザベートの干渉に、フリッツの堪忍袋の緒が切れる。エリザベートに、
「兄であると同時に恋人であってほしいんだろ? 認めろよ!」と詰め寄る。

地獄の機械
「おまえたち」とは妹と母のこと。

エリザベートはここで自分が後生大事に守ってきた「純潔」が、兄にとっては価値のないものだと知るのだ。

最愛の兄との関係が破綻したあと、彼女は結婚に走る。



妹の手紙

ところが実像は、半ば狂った状態でも、道を行く若い女性に熱い視線を向け、帽子をとって挨拶し、ナンパの真似事をするようなオヤジなのだ。

このあと兄が完全に狂気の世界の住人となり、精神病院に入ると、妹は兄の虚像を作るべく夫をそそのかして工作を始める。

妹の画策
「ニーチェは医師との対話をとおして、道徳観を変えた」ことにするよう、医師に圧力をかけるエリザベート。彼女はそのために政治的な力も利用する。

『ルー・サロメ 善悪の彼岸』で伝統的な因習と価値観に縛られた、凡庸な存在として描かれたエリザベート。平凡さゆえに非凡な兄に心酔し、現実とまったく違った、高い道徳意識をもった清廉な男性という虚像を彼の中に追い求めた。兄はそんな妹をどこかで嫌悪していたが、正気を失った晩年は、結局はその妹と実の母に生活の面倒を見てもらうことになる。「むしずが走る」とまで言った平凡な女の介護なしには、生きていくことさえできなくなるのだ。

逆説めくが、生をまっとうする力という意味において、天才は常にもろく、平凡は常にたくましい。













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最終更新日  2008.10.20 02:53:09
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