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夫知らぬ 涙一すじ 冬しとね暖冬や ずしりと雪の 軒深し薄氷や 門戸は固く 閉ざされて投げ捨てた 手袋さみし 過去に似てめらめらと 燃ゆ過去帖や 除夜の鐘
2024.07.31
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梨の木の 無骨に枯れて 男ごゑ男ごゑ 霙(みぞれ)に混じり 灯油入る冬月の 生まれては白く 葬られ冬至南瓜の 腐食抉(えぐ)るも 転移せり冬の蠅(はえ) 力抜けたる まゝすがる
2024.07.30
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女人高野へ 白足袋替えて 従へり白菊や 青年僧の 凛々しき眉雨空に 柿の明るさ 伊勢路越え秋冷の 海女の足裏 嘆き笛短日の 耳八方に メモ増ゆる
2024.07.29
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風邪七日 約束ごとの 通り過ぐ 水洟と ばかりは言えず 悲しき瞳 亡き兄も 並びし夢の カルタ会 一月の 眉を正して 男達 薄氷や 火の見櫓の 男の目
2024.07.28
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心千々に 乱れ春闇 ひた走る 新しき 家の水音 初夏の音 抜歯の声 抜け初蝶の 前後より 水仙に 新たな光 血の通う 埋火や 女の膝の ペルシャ猫
2024.07.27
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ラッパ水仙 口先に出て 名を忘る子を産みし 地を通過せり 春霞五十年 過ぎし母の忌 春の雪春愁や 白髪めっきり 増えゆけり勘鈍く 不意のツララに 胸つかる
2024.07.25
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薬袋の さらに膨らみ 秋の風 店先を はみ出す鮭や 年の暮 母の忌や 口中に蕪(かぶ) 甘く溶け 眠剤に 初夢逃す 窓明かり 火のごとき 一月の斧 山こだま
2024.07.24
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文あまた 心に通い 冬ぬくし 遺されし 胡桃ふたつや 艶も失せ 少年の 口笛冬の 雲を切る 木枯に 身を細うして 樹ぎの影 水木の実 ひとつ残さず 鵯去れり
2024.07.23
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父の忌の 枯菊に日の 渡りけり 工煙の 空に熔けゆく 冬至かな 寝汗拭く ベットのきしみ 一葉忌 犬猫に 運不運あり 枯野星 枯野より 集めし牛の 尻を押す
2024.07.22
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シソの香に 亡き姑が居り 七年忌玩具めく 狆との冬の 暖かし狆愛し 師走追いつつ 追われおり検眼の 闇よりいでて 冬の虹柿サラダ 舌にとろけて 世過ぎ下手
2024.07.21
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逢えぬ日々 眼に光りなき 秋鏡遠方に 友が去りたる 雪の街乳配る 音を混へて 冬の雷姑の忌に 集うひとなし 秋桜亡き姑の 髪梳きしごと 萩なだれ
2024.07.20
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合格の 名がなく葱の 香の沁みぬ 売れ残る 本ひしめきて 春寒し 春の灯に 疲れ来し夫 つつまねば 春葱の 眼鏡重たく 犬連れ出す 白菊の 心誰にも 犯されず
2024.07.19
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木爪(ボケ)真赤 追わるるごとく 荷を作るつかまりし ものおぼつかな 春の地震買いまどう 春着いくたび 肩にかけ自我つよく 二月の空の 枝硬し厳冬の 知恵を集めて 官舎住み
2024.07.18
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石の亀 空を仰ぎて 雪解急 暖かや 医院の前を 通り過ぐ 喪の庭の 夕べ連翹(れんぎょう)明るすぎ ススキノの 昼さむざむと 紙桜 転住す 芽吹きしものを みな残し
2024.07.17
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輪を重ね 水凍てる夜の 渇きかな芽柳に ふれてなほ思慕 募るなる壁厚き 部屋より出でず 春吹雪く春の葱 しむ泪とて いつわれり冬花火 消え掌底の 冷えきびし
2024.07.16
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ふりしぼる 風邪声夕べ 疲れ濃し病痕を 忘れし夫に 冬木の影落椿 夫より一歩 遠ざかる鍬に触る 土の歓喜の 匂い立ち障子あけ 心にも春の 風を入れ
2024.07.15
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親離れ せし子の窓の 桜草 北国の 淡きひかりや 緑の日 回診の まなざしやさし ヒヤシンス 桜散り 昨日が遠く なりにけり 剪定の 空のがらあき 鳶一羽
2024.07.14
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黙深き 氷河夜警の 尿長し 熟睡の 月の凍港 廃墟めく 転勤の 噂寒鴉の 巣にさわぐ 心にひと 入れず氷紋 壁なせり 春分の 遺影何やら 呟ける
2024.07.13
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小さき街に セールス溢れ 春寒し蠅いづる 手さぐるごとく 光求むものの芽の 赤さ青さに 湧く矜恃土を戀う 子の空腹を 忘れきり
2024.07.12
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梅雨の雲 カルテに齢を 聞かれおり打水の ところせましや 街住い花菖蒲に 半身うずめ 欲なき日虫干しや 子の絵日記の 色あせし荷ほどきの 窓ひらひらと 蝶親し
2024.07.11
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雲一つ なき大寒の 裏表真冬日の 口火切りたる 黄のインコ真冬日の 軒を連ねて 音もなし寒椿 耳底に声 滞りバスを待つ 影重なりて 凍てつのる
2024.07.10
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年金の 重み父の日 輝かす 浄錬忌 十薬生きて 寺の裏 唇に 雨の薔薇触れ ひと憶う 雨の薔薇 濡れ髪に触れ ひとを恋う 梨桜 咲いて帰心に うずく夫 紅梅や 婚の話の はづみけり
2024.07.09
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公園の 雪解ベンチの 汚れきる はらはらと 軒下通る 雪崩どき 卒業の 肩幅広く 父と歩す 付添の エビ寝に夜の 雪解風 母の日の 赤飯の湯気 眉濡らす
2024.07.08
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大学に 行く子行かぬ子 卒業す 卒業の 子の大股に 父と歩す 無口なる 子も和しにけり 卒業歌 父の忌の 故郷を踏む 残り雪 雪を割る 近隣の皆 老い始め
2024.07.06
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屋上の 鳩見下ろせり 雲を割り 寄書の くせ字に泪 卒業す 卒業の 子よりも母の 涙ぐむ 天井に とどく子の丈 卒業す 卒業証 持ちてかしこみ 写される
2024.07.05
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春を待つ 夫の臀肉に 目を逸らす 男湯に 臀肉落ちて 夕焼雲 春の日や 臥して見上げる 鳩の恋 春愁や やつれもあらず 鳩の恋 消灯の 闇にこらす目 続けざま
2024.07.04
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口ずさむ 句に湯のたぎり 桜餅 うたたねの 夢に匂えり 桃の花 解体に 巣箱離れむ 夫婦鳩 屋上の 鳩の口づけ 春うらら 鼻ひくき 犬を愛しみ 春の泥
2024.07.03
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松の枝に 鵯の二羽来て 下熱せり 頬杖の 夢の中まで 桃匂う 退院の 庭に明るし 桃の花 質問の なき夫となり 梅雨ごもり 読み疲る 目にほのぼのと 桃の花
2024.07.02
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夫独り 置けば毛布の からまれり 妻の手の 弛む水仙 葉のしなう 流氷の 一夜に目覚め 波の舌 手を抜けば たちまち萎おる 水仙花 マニキュアを 捨てて幾とせ 春を待つ
2024.07.01
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