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「連合艦隊司令長官 山本五十六」(1968)監督 丸山誠治製作 田中友幸脚本 須崎勝弥、丸山誠治撮影 山田一夫美術 北猛夫音楽 佐藤勝特技監督 円谷英二出演 三船敏郎、稲葉義男、土屋嘉男、平田昭彦 松本幸四郎、加山雄三、黒沢年男、小鹿敦、藤田進 酒井和歌子、司葉子、辰巳柳太郎、中谷一郎、太田博之 本編130分 総天然色 シネマスコープサイズ 東宝の戦記映画で、「8.15シリーズ」とされる1968年8月に公開された第2作目にあたります。 実のところ、見るのは今回が初めてで、レンタルDVDでの鑑賞です。 昭和14年(1939)。陸軍は三国同盟締結を推進し、国民世論がそれを支持するなか、日独伊三国同盟に反対する山本五十六(三船敏郎)たち良識派の主張が退けられてしまう。 そして日米開戦へ突き進む流れに押し流されるように、その中で連合艦隊司令長官山本五十六は、開戦が決定されたとなるや、早期講和の機会をつかむために、真珠湾奇襲を成功させる。アメリカに大打撃を与えて講和に持ち込むのだと。しかしハワイの戦艦群を撃滅したが空母がいなかったことで目的を得られなかった。ならば、その打ち漏らした空母を誘い出して撃破しようと次のミッドウェイ攻略作戦を決行する。しかし、ミッドウェイ攻略と敵空母撃滅の、二兎を追う作戦が南雲機動部隊の状況誤判断のために敗北を喫し。敵空母艦載機の奇襲をうけて虎の子である空母4隻を沈められてしまう。山本五十六が描いていた早期講和の構想は潰え、その後のガダルカナル消耗戦、ソロモン海戦など、海軍の作戦はことごとく失敗し、戦争を指導する軍部は迷走を始める。 そのような戦況不利のなか、山本五十六が最前線基地を激励・視察するために搭乗した飛行機がアメリカ軍機に待ち伏せされて撃墜されてしまう。1943年4月 山本五十六戦死。 日本が戦争への道を進むのを断固反対した山本五十六だったが、連合艦隊司令長官の立場として、いざ開戦となると「やれと言われれば、半年や一年はずいぶんと暴れてみせる。しかし2年3年となると確信はもてない」と語った、そのとおりになった。 日本は米英を相手に国力戦力の差を顧みず、無謀な戦争を始めたのだが、開戦すればおのずと何とかなるという、計画も見込みもないまま戦争をつづけ、敗けてスッテンテンになるまで戦争をやめようとしなかった、やめることができなかったのはなぜなのか。 先日の日露戦争を描いた「日本海大海戦」につづけて、太平洋戦争の「連合艦隊司令長官 山本五十六」を見たのですが、戦記映画としても、円谷英二さんの特撮映画としても、優れているのは「日本海大海戦」の方だと思います。勝った戦争と敗けた戦争だからということではないと思いますが、俳優たちの演技にしても戦闘シーンの特撮にしても、やはり本作は一段おちるようです。「日本海大海戦」に感じた俳優たちが役になりきって演じた力強さがなく、冒頭の川沿いの桜が満開の中、三船さんの山本五十六が渡し舟で逆立ちをするシーンと、ラスト場面の一式陸攻の中で、背中を撃たれて機上で戦死し、機体が密林の中へ墜ちていって爆発炎上するのが印象に残るくらいです。
2022年06月13日
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「日本海大海戦」 (1969)監督 丸山誠治製作 田中友幸脚本 須崎勝弥、丸山誠治撮影 山田一夫美術 北猛夫音楽 佐藤勝特技監督 円谷英二出演 三船敏郎、加山雄三、仲代達矢、藤田進、加藤武、土屋嘉男 平田昭彦、佐原健二、アンドリュウ・ヒューズ、ピーター・ウィリアムス 黒沢年男、松山省二、小鹿敦、東山敬司、久保明、佐藤允、船戸順 田島義文、小泉博、田崎潤、辰巳柳太郎、草笛光子、笠智衆、松本幸四郎 本編128分 総天然色 シネマスコープサイズ 19世紀末、欧米列強国から見くびられた中国は各国の侵略を受け、排外思想を奉じて蜂起した義和団を日本を含む八ヵ国の陸戦隊が鎮圧した。その後、列強国は軍を引いたがロシアだけは満州に軍隊をとどめて居座り占拠。虎視たんたん朝鮮半島と日本の支配を狙っていた。 明治天皇(松本幸四郎)を仰いで御前会議が開かれ、ロシアに抗議文を送ったが返事はなく、国交が断絶される。連合艦隊司令長官東郷平八郎(三船敏郎)は、旅順とウラジオストックにいるロシア太平洋艦隊の動向を注視していた。 広瀬少佐(加山雄三)の旅順港口に老朽船を沈めて艦隊を封じ込めるという案が採用され、一方では乃木大将(笠智衆)率いる陸軍第三軍が旅順要塞に陸上から猛攻撃を開始した。 バルチック艦隊がリバウ港を出たとの諜報を得、戦力に劣る日本軍としては、バルチック艦隊が日本近海に来航するまでに旅順艦隊を叩かないとならない。膨大な犠牲を払って旅順要塞の二〇三高地を乃木軍がついに陥落させた。バルチック艦隊がどこに現れるのか? 見張船の信濃丸が五島列島沖にバルチック艦隊を発見。旗艦三笠にZ旗を掲げた東郷長官は連合艦隊に出撃を発令、対馬沖で敵艦隊を迎撃する。連合艦隊は敵艦隊の直前を大回頭して敵の先頭をおさえる大胆不敵な戦法をとり、大海戦の末にバルチック艦隊を撃滅、大勝利をもたらした。 東宝映画お得意の戦争映画です。「日本のいちばん長い日」(1967年8月)「連合艦隊司令長官 山本五十六」(1968年8月)につづいての「8.15シリーズ」第3弾として1969年8月に公開されました。 1969年邦画の興行成績です。(金額は配給収入)1位「栄光への5000キロ」 6.5億円2位「日本海大海戦」 3.6億円 「超高層のあけぼの」 3.6億円4位「人斬り」 2.9億円5位「千夜一夜物語」 2.5億円 「御用金」 2.5億円7位「新網走番外地 流人岬の血斗」 1.8億円 「日本侠客伝 花と竜」 1.8億円9位「日本暗殺秘録」 1.6億円 「コント55号 人類の大弱点」 1.6億円 日露戦争の日本海海戦をクライマックスに、御前会議、旅順港閉塞作戦、二百三高地の激戦、明石大佐の諜報などエピソードを羅列して、129分の映画として理解しやすく描かれています。 二百三高地の激戦など、もう少しあってもいいかと思うし、旅順要塞の難攻不落ぶりが感じられないのは、海軍の日本海海戦がメインなので仕方がないか。 東郷平八郎連合艦隊司令長官を演じるのはこの人しかいない、と思われるぴったりハマり役の三船敏郎さん。以下、広瀬少佐を加山雄三、参謀長 加藤友三郎を加藤武、上村中将を藤田進、秋山真之中佐を土屋嘉男、明石元二郎陸軍大佐を仲代達矢、乃木希典陸軍大将を笠智衆、山本権兵衛海軍大臣を辰巳柳太郎、明治天皇が松本幸四郎。他にも佐藤允、田崎潤、平田明彦、黒沢年男、松山省二、草笛光子さんなど、東宝映画のオールスター豪華出演。全員が役になりきっていて、主演俳優、わき役俳優が充実していた時代の作品で、この頃の映画は良かったなと。さらに三船敏郎さんは貫禄と存在感があって良い俳優だったと実感します。 最近見た映画の中では久しぶりと云えるくらいに、128分間がダレることなく面白かったです。歴史や戦記に興味がある人なら、きっと面白く見られるだろうと思います。司馬遼太郎さんの小説「坂の上の雲」が好きな人にお薦めできるかと。 特撮監督の円谷英二さんにとって最後の作品だそうで、日本海軍連合艦隊と黄色い煙突のロシア海軍バルチック艦隊が砲撃戦を交す日本海大海戦は迫力満点。現在の薄っぺらなCG特撮では感じられない魅力です。本編も特撮も力強さがあって良い映画でした。
2022年06月12日
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「青島要塞爆撃命令」(1963)監督 古沢憲吾製作 田中友幸脚本 須崎勝弥撮影 小泉福造特技監督 円谷英二出演 加山雄三、佐藤允、夏木陽介、池辺良 藤田進、浜美枝、平田明彦、田崎潤 本編99分 総天然色 シネマスコープサイズ 東宝の戦争映画「青島要塞爆撃命令」をレンタルDVDで鑑賞しました。 公開されたのは昭和38年(1963)5月。この映画のことは知っていましたが、当時は小学生だったので、見るのは今回が初めてです。 第一次世界大戦が始まって間もない大正3年(1914)8月23日、日英同盟の関係で英仏連合国側に与した日本はドイツに対して宣戦を布告。ヨーロッパの戦火から遠く離れた日本が参戦するならば、やることは決まっているようなもので、攻撃目標は中国大陸山東省にあるドイツの根拠地 青島しかない。 山東省の膠州湾口にある青島は、ドイツ東洋艦隊の拠点であるとともに、ドイツの極東進出のための拠点でもある。青島には難攻不落のビスマルク要塞が築かれ、膠州湾に攻め入ろうとする日本海軍の連合艦隊の接近を阻んでいた。日本艦隊は射程外から要塞の巨砲が撃ってくるので近づくことができない。 そこで白羽の矢を立てられたのが、「追浜海軍航空術研究所」で訓練に明け暮れていた、いまだ黎明期にある海軍の航空隊で、彼らに空から攻撃させようと。だが航空隊といっても2機のファルマン水上機と、隊長の大杉少佐(池辺良)以下、国井中尉(加山雄三)、真木中尉(佐藤允)、二宮中尉(夏木陽介)と、飛行機に乗せてもらえない候補生の庄司(伊吹徹)を含めてパイロットが5名いるのみ。 飛行機の有効性を認めてもらう絶好の機会でもあり、彼らは勇んで出撃する。甲板に2機の複葉水上機を積載した輸送艦 若宮丸は世界初の水上機母艦として、一路青島を目指すことに。 だいたいの設定は史実に沿っていますが、物語はかなりのフィクションです。 ビスマルク要塞の巨砲が日本艦隊の射程外から撃ってくるために近づくことができない。陸上からの陸軍の攻撃も要塞に阻まれて攻めあぐねていて、無理に攻撃をしかければ、味方は大損害を被り、全滅するかもしれない。そこで日本陸海軍の命運は海軍航空隊のわずか2機の複葉水上機にかけられることになる。 空からの攻撃といっても、最初は爆弾が間に合わず、煉瓦と五寸釘を落とすしかない。やっと大砲の砲弾を改良した爆弾を落とすことになるが、そんなものを落としても要塞にはさほどの効果がない。そこで、たまたま目撃した弾薬輸送列車に爆弾を落として要塞の弾薬庫を誘爆させようと。 限られた時間内に要塞の爆破を成功させないと味方が全滅する、という設定は「ナバロンの要塞」(1961年アメリカ映画)と似ているというより、かなり「ナバロンの要塞」を意識しているようです。 わずか2機の飛行機に命運が賭けられ、敵の弾薬輸送列車に爆弾を命中させないと、味方の日本軍が全滅するという設定はかなり無理があるんじゃないか?と思いますが。そもそも空から小さな爆弾を落としたくらいでは要塞攻略はできないだろうし、弾薬輸送列車の件は偶然の産物。 史実では、青島のドイツ軍の要塞を攻める日本陸軍は敵を圧倒する兵力と充分な火砲と砲弾を準備して、悪天候に悩まされたり、小さな混乱と作戦伝達の齟齬はあったようだが、準備と時間をかけた教科書通りの攻撃をしかけ、上陸から2か月で青島要塞を陥落させた。 水上機母艦 若宮には2機ではなく4機が搭載され、飛行機は陸軍も5機を用いており、偵察と爆撃(手づかみで爆弾を落とす)をおこなっていた。日本の航空隊にとっては初めての実戦だったという、この点では映画のとおりですが。若宮が触雷して沈没するのは映画だけのフィクションです。 太平洋戦争や日露戦争を題材にした日本の映画は多々あれど、第一次世界大戦のものはひじょうに珍しい。加山雄三さんは当時はすでに「若大将シリーズ」が「ハワイの若大将」までの3作があり、「どぶ鼠作戦」「太平洋の翼」や「戦国野郎」などで青春スターとして大いに売り出していた頃です。 余談として、この青島攻略で捕虜になったドイツ人たちが日本の収容所に送られ、徳島県鳴門市の坂東俘虜収容所で地元民との親しい交流があり、ドイツの技能や文化が日本に取り入れられました。
2022年06月06日
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「野球狂の詩」(1977)監督 加藤彰製作 樋口弘美企画 佐々木志郎原作 水島新司脚本 大工原正泰、熊谷禄郎撮影 前田米造出演 木之内みどり、小池朝雄、高岡健二 桑山正一、藤岡重慶特別出演 野村克也、水島新司 本編93分 カラー シネマスコープサイズ 水島新司さんの漫画「野球狂の詩」の映画化作品ですが、1977年3月に公開された日活映画です。 この当時はすでに日活映画は日活ロマンポルノになっていて、金沢市の香林坊にあった劇場は閉館したあとで、洋画専門館の「金沢プラザ劇場」に改装されていました。なので、確かに見た記憶があるのですが、どこで見たのだろうか? この1977年。水島新司さんの漫画は「男どアホウ甲子園」「ドカベン」、「野球狂の詩」「一球さん」、ビッグオリジナル連載の「あぶさん」は発売されたコミックスは全巻を持っていました。 昨日も書きましたが、中でも「野球狂の詩」が大のお気に入りで、里中満智子さんとの合作の話など良かったなぁ、と思うのですが、現在はすべて手元にはなく、もう一度読みたいと思ってもかないません。 当時は映画雑誌の「スクリーン」「ロードショー」と「キネマ旬報」を購読していたのですが、その「キネマ旬報」の1977年4月上旬号?の表紙が水島新司さんが描いた水原勇気のイラストで、書店でひときわ目に着くものでした。撮影ルポとシナリオが載っていて、いま持っていたら役に立つ資料だったのになと処分したのを惜しく思います。 で、映画の「野球狂の詩」ですが、見たのが40年以上も前なのでまるで覚えていない。南海ホークスの野村克也さんと水原勇気が勝負するシーンのなんとなくな記憶と、水島新司さんが本人役で出ていたくらいしか覚えていません。 この映画は野球映画として見るべきではないのかもしれませんね。東京メッツのメンバーなどは、どうひいき目に見ても草野球のおっさん達にしか見えない。今だったらBCリーグの選手たちの協力を得て東京メッツの選手役を依頼するという方法があって、野球のシーンもリアルに撮影できるかもしれませんが。 ただ水原勇気を演じる木之内みどりさんは、やはりこの人しかいないといった感じで好演しているのではないかと。あと岩田鉄五郎役の小池朝雄さんもナイスなキャスティングではないかと。「あぶさん」もそうですが、「野球狂の詩」の面白さは実在の球団や選手が登場することです。東京メッツの水原勇気が、阪神タイガースや広島カープ、ジャイアンツの打者と対決するような、本格的なプロ野球映画を撮れば、すごい作品ができるのだろうけれど、日本の映画界では無理だろう。 本作では、そのような夢のような対決はなく、メッツの相手は大阪アパッチだけだし、南海ホークスの野村さんが出ただけだしな。野球映画としたら、大いに物足りないものです。 もう一度見てみたい興味がある映画「野球狂の詩」ですが、レンタルにあるだろうか?
2022年01月19日
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「宇宙大怪獣ギララ」(1967)監督 二本松嘉瑞製作 島田昭彦脚本 元持榮美、石田守良、二本松嘉瑞撮影 平瀬静雄特撮 川上景司美術 重田重盛音楽 いずみたく特技監督 池田博出演 和崎俊也、ペギー・ニール、原田糸子、柳沢真一、岡田英次 フランツ・グルーベル、園井啓介、藤岡弘 本編88分 総天然色 シネマスコープサイズ 松竹初の怪獣映画「宇宙大怪獣ギララ」を見ました。4年前に日本映画専門チャンネルで放送された時に録画したもので、画質はとても良いです。 日本宇宙開発局富士宇宙センター (FAFC) の宇宙船(AABガンマ号)が加藤博士(岡田英次)とバーマン博士(フランツ・グルーベル)に見送られて火星に向かって発射されます。火星へ向かう宇宙船が未確認飛行体(UFO)に妨害される事態がつづいていて、AABガンマ号も同じく妨害を受ける。UFOから謎の物質を機体に吹き付けられ、船長の佐野(和崎俊也)と生物学者のリーザ(ペギー・ニール)が船外に出て噴射ノズルに付着した泡状の物質を採取する。 泡の中には卵くらいの発光物体が入っていて彼らはそれを地球へ持ち帰る。未知の発光物は容器に入れられて研究室に保管されたが、何者か(最後まで不明)が研究室を荒し、発行体は金属の床を溶かして地中へと消えていた。床には発光物体の白い滓とニワトリのような足跡が残されていた。 翌日、富士宇宙センター基地の近くに怪獣が出現する。加藤博士たちがギララと名づけた怪獣は、東京へと移動して都心を蹂躙する。自衛隊の空陸からの攻撃も効果がなく、エネルギーを求めるギララは原子力発電所や水力発電所を破壊しつつ巨大化。巨大な火の玉となって空を飛び回り、エネルギーを吸収できる場所を求めて破壊を続けます。 この映画が公開されたのは1967年3月です。当時はテレビの「ウルトラQ」に続けて「ウルトラマン」が放送されたのをきっかけとして起こった「怪獣ブーム」の真っ最中。 斜陽と云われ始めていた日本映画界が金脈として、東宝の怪獣映画にならって製作を始めた、先には大映の「大怪獣ガメラ」と「大魔神」のシリーズがあり、それに倣っての松竹映画が参加したものだろうか。このすぐ後の同年4月には日活の「大巨獣ガッパ」が公開される。 しかし、当時の私たち子供は東宝のゴジラやモスラやキングギドラの、けっしてお子様向けではない大人の観客を相手にした(子供は親に連れられて見る)怪獣特撮映画を見ることで目が肥えていました。そのような子供たちは当然のことに大映や松竹や日活の、後発組が撮った怪獣映画をバカにしていました。 大映のガメラは子供の味方、良い子の味方というのが売りらしく、私たちは馬鹿馬鹿しくて見向きもしなかったのです。 現在、松竹が初めて製作した怪獣映画「宇宙大怪獣ギララ」をあらためて見ると、やはり怪獣映画は松竹では無理だったらしくこれ一作で終わったのが納得できる出来です。 開巻早々に流れる主題歌。「地球~僕たちの星~♪ 宇宙~僕たちの世界~♪ 未来~僕たちのあした~♪」と明るいポップ調の歌が流れると、ダメだこりゃ、と脱力してしまう。 怪獣映画は、襲い来る未知の脅威と恐怖との戦いに社会風刺を加えて描くものであり、宇宙や未来の明るい夢を描くものではないだろう。怪獣映画を何か勘違いしているんじゃないか?と。いずみたくさんが畑違いの怪獣映画だなんて。 怪獣の造形はともかく、特撮部分の、ロケットや宇宙船、月面基地などはとても良くできているし、怪獣ギララを空から攻撃する空自のF104J戦闘機の大編隊!が上手にできています。それなのに怪獣が出たとたんに、背景音というか効果音楽が不快感を与えるもので、このイライラさせられる不快な音は何なのか? さらに俳優たちが演じるドラマ部分がまるで御粗末です。松竹には怪獣映画に適した俳優がいなかったのだろうか?、そもそも誰が主人公なの? 男女の三角関係なんか怪獣映画で誰が見たいと思うのか。 新人の藤岡弘さんを抜擢して主役に据えて、原田糸子さんと若い二人を中心にするだけで良かったのではないか。それを岡田英次さんが博士役で支えれば充分。そんな単純な配役だけでよいのではないかと思います。
2021年10月18日
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「暗黒街の弾痕」(1961)製作 田中友幸監督 岡本喜八脚本 関沢新一撮影 小泉福造音楽 佐藤勝出演 加山雄三、佐藤允、水野久美 三橋達也、ミッキー・カーチス、中丸忠雄 中谷一郎、浜美枝、河津清三郎 東宝 本編73分 総天然色 シネマスコープサイズ 加山雄三さん主演の「暗黒街の弾痕」をレンタルDVDで鑑賞しました。同名の作品に1937年のアメリカ映画があってまぎらわしいが、本作は1961年1月3日公開の東宝映画です。 新型高性能エンジンのテストカーが三角峠のヘアピンカーブで崖から転落して、ドライバーの草加一郎が死ぬ事件が起きるが、警察は過失事故として扱う。 捕鯨船員訓練所で捕鯨砲の指導をしていた草鹿次郎(加山雄三)は知らせを受けて上京し、新型エンジンを開発した小松モータースの社長 小松(中谷一郎)から、兄の死は事故ではなく殺されたのだと、背景にはエンジンを狙った産業スパイの暗躍があるのだと知らされる。 なぜ警察に訴えないのか?との次郎の問いに「産業スパイは事件性が薄く、しかも裁判となると開発資料をすべて公にしないとならなくなる。そこが奴らの付け目なのさ」と答えます。 次郎は大学時代の友人で、売れないゴシップ雑誌を出しているトップ屋の須藤(佐藤允)といっしょに、小松モータースの新型エンジン設計図を狙う産業スパイ団の秘密を調べようする。また、いったんは事故として片づけた警察だったが、次郎の面会を受けて考えを改めた東(あずま)刑事(三橋達也)が動き始めた。「暗黒街の弾痕」というタイトルから殺し屋の暗黒街映画かと思って見たのですが、東宝特有の明朗な、スパイの暗躍を暴露させるアクション映画でした。 加山雄三さんが猪突猛進型の青年役で、兄の死の背後にある産業スパイをあばこうとし、その行動を佐藤允さんのトップ屋が援助する。佐藤さんの恋人役で水野久美さんが、小松モータースの中谷一郎さんの妹役で浜美枝さん(なんと18歳)が出演しています。 加山さんの役が捕鯨砲の教官というのはとても珍しいと思うのですが、これはアクション場面で建設用の鋲打ち機を使いたかったからだろうか? この鋲打ち機は実際には「飛ばない」と注意書きが表示されます。武器として使えない機械を武器として描いた変テコリンな趣向です。 悪の巣窟であるナイトクラブ「パロゾン」で歌手(島崎雪子)が3人組のコーラスをバックに歌う「だれもしらない」が、なんか変な感じで耳に残ります。 しかし、皆さんのお若いこと。加山雄三さんは24歳。佐藤允さんは27歳、水野久美さんが加山さんと同じ24歳。先にも書いた浜美枝さんが18歳。売れないゴシップ雑誌の留守を守る横山道代さん(お懐かしい)が23歳。
2020年07月10日
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「狙撃」(1968)製作 貝山知弘監督 堀川弘通脚本 永原秀一撮影 長谷川清音楽 真鍋理一郎出演 加山雄三、浅丘ルリ子、森雅之 岸田森、藤木孝、サリー・メイ 東宝 本編86分 総天然色 シネマスコープサイズ「若大将シリーズ」で絶大な人気があった東宝の映画スター 加山雄三さんが一匹狼の殺し屋を演じた作品です。1968年11月23日公開。 当時、加山雄三さんの大ファンだった友人に、この映画を見に行こうと誘ったら、ベッドシーンがあるのでイヤだと断られた。へえ、そんなものか? と思ったのですが、友人は若大将のイメージと異なるのでいやがったのかもしれない。 主人公の殺し屋 松下(加山雄三)が、東京駅を発車したすぐの新幹線をビルの屋上からライフルで狙撃する場面から始まります。動き出したひかり号の窓越しに乗客を一発で仕留める。狙撃前にタバコに火をつけて、その煙で風向きを確認し、火をもみ消した後にポケットへ入れるのは証拠を残さないためのプロの心得であり、このような細かい演出が見られます。このシーンで使ったライフルはモデルガンではなく実銃だそうです。 この殺し屋 松下が花田商事の社長(藤木孝)から仕事を引き受ける。それは金塊密売買の現場を襲って横取りする計画に協力することで、標的は5、6人か、それ以上かもしれないと聞かされた松下は米軍基地の近くで銃砲店をひらいている大学時代の友人(岸田森)を訪れます。この友人は米軍の関係者から闇で銃器類を買い取っていて、標的が複数だという松下にベトナム帰休兵から入手したロシア製の自動小銃AK-47を提供する。 金塊売買の現場を襲った松下たちは、その横取りに成功するが、花田社長の目論見がはずれて奪った金塊を現金に換えることができなくなってしまう。相手の密輸団組織が予想以上に強大すぎて、花田が持つ金塊が敬遠されてしまったのだ。 相手が悪かったということか、組織が派遣した殺し屋 片倉(森雅之)に花田たちが殺され、松下も狙われることになってしまう。 松下は射撃場でファッションモデルの章子(浅丘ルリ子)と知り合い、愛し合います。蝶を蒐集するのが趣味の章子は稀少な蝶が生息するニューギニアへ行くのが夢だと語り、松下はこの仕事が片付いたら一緒に行って向こうで暮らそうと約束するのだが。 組織の殺し屋 片倉は章子を誘拐し、人質として、松下を呼び出す。2人の殺し屋の決闘が朝日が昇る砂浜でおこなわれる。 この種の日本映画はどうしても欧米のものに比べると見劣りしてしまうものだが、本作はなかなかどうして、ヨーロッパの殺し屋アクション映画を見ているような趣があります。 銃が体の一部になってしまっていて、標的を撃つことが生きがいになっていて、敵との命のやり取りに最高の喜びと生きている実感をおぼえるという人物設定。女と一緒にニューギニアへ行って平穏に暮らす、そんな生活に耐えられるはずがなく、望んでもいないのに、そんな約束をしてしまう。 主人公が乗るトヨタ2000GTが見ものです。この車は「007は二度死ぬ」(1967)でおなじみだけれど、本作の方が多く見られる。現在では「幻の名車」とされる車です。 ラストの砂浜での決闘は、巌流島の武蔵と小次郎のようで、お互いに横ざまにバーっと走って拳銃を抜く。60歳近い年齢の森雅之さんが走るのは大変だったかも? 共演の浅丘ルリ子さんは日活からお借りしたのですが、東宝映画にはない雰囲気ですね。
2020年07月07日
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「お嫁においで」(1966)監督 本多猪四郎製作 藤本真澄 脚本 松山善三撮影 宇野晋作出演 加山雄三、内藤洋子、沢井桂子、黒沢年男 笠智衆、有島一郎、千石規子、原恵子、田村亮 本編84分 総天然色 シネマスコープサイズ 1966年の邦画ランキングです。1位 「網走番外地 大雪原の対決」 2.4億円2位 「絶唱」 2.4億円3位 「網走番外地 南国の対決」 2.3億円4位 「レッツゴー!若大将」 2.3億円5位 「アルプスの若大将」 2.3億円6位 「クレージーだよ 天下無敵」 2.0億円7位 「愛と死の記録」 2.0億円8位 「クレージーだよ 奇想天外」 1.9億円9位 「網走番外地 荒野の対決」 1.9億円10位「クレージー大作戦」 1.9億円 ネットで調べたデータですが、どうもあまり信用できないようです。金額が配給収入なのか興行収入なのかさえはっきりしない。それにこのような年間ランキングは前年12月から本年11月までの集計のはずなのに、翌1967年1月公開の「レッツゴー!若大将」が堂々と記されているし(「エレキの若大将」のまちがいではないのか?)。 まあ、そんなわけですが、この1966年(昭和41年)は東宝映画スター 加山雄三さんの最絶頂期であるのは確かでしょう。 映画「エレキの若大将」(1965年12月公開)の主題歌「君といつまでも」が大ヒットし、(レコード盤のB面が「夜空の星」)、そして若大将シリーズの新作「アルプスの若大将」が5月に公開されている。 加山雄三さんが弾厚作の名で作曲し(作詞は岩谷時子さん)、自ら歌ったその曲々が次々とヒットしたのがこの年です。加山さんの代表的なヒット曲が「君といつまでも」と「お嫁においで」なのはどなたも異存のないところかと思いますが、その「お嫁においで」をテーマにした映画が1966年10月に公開されたのが青春映画「お嫁においで」です。「お嫁においで」をレンタルDVDで鑑賞しました。 ある朝、通勤途中で露木昌子(沢井桂子)は、エンストした男女二人のスポーツカーを押して手を貸したのがきっかけで、その若い男女、須山保(加山雄三)と妹 葉子(内藤洋子)と知り合う。 須山保は造船会社で働くエリート設計技師で、祖父(笠智衆)がその造船会社の会長で、父が社長をしている。保はエンストした車を「エンヤコラ」と人目を気にせずに大声で押してくれた露木昌子に一目ぼれ。彼はオマセな妹の恋愛アドバイスをうけて昌子の恋人候補に立候補する。 昌子は、ホテルのレストランで働くウェイトレスであり、その裕福とはいえない家柄は保とはつりあわない。彼の両親は交際に反対するが、温厚な祖父は理解を示し、兄思いの妹は応援する。 昌子にはタクシーの運転手である野呂(黒沢年男)とその病弱な弟(田村亮)という親しい青年がいて、野呂も昌子に想いを寄せていて、保の恋敵だった。 保は昌子を高級レストランでの食事にさそい、ヨットに乗せたり、高額な贈物をしてアタックし、昌子は自分の属する庶民生活では経験できない裕福な幸福感を知る。 そして保からプロポーズされた昌子は、保とは対照的な野呂への感情の間で心が揺らいでしまう。 本作は東宝特撮映画を本領とする本多猪四郎が監督を務めています。東宝の特撮映画のドラマ部分は健康的で明るい青春映画的な味わいもあって、なので本作でもその演出は手慣れていて、けっして畑違いな違和感はない。 自分とは住む世界のちがう、お金持ちの誠実な好青年から求婚された女性の心の迷いを描いた作品です。幸福はお金で買えるのか? そして人間の幸福とは何か?を考えさせられる作品であり、先日見た「兄貴の恋人」でも今作と同じく加山雄三と内藤洋子の兄妹役を描いていても、そのカラーは、監督がちがうのであたりまえだけれど、こちらは有島一郎と飯田蝶子が出ていることもあって、「若大将」と同じようなユーモアを交えたほがらかで明るい印象がある。 愛はお金で買えるか? 幸福はお金で買えるか? しかしお金があっても、その人が幸福だとは云えないだろうし。 でも、幸福とは他人から与えられるものではなく、自分でつかみ取るものでありましょう。 親の反対を押し切きって自分が惚れた女性にアタックする兄を応援する妹を演じる内藤洋子さんは、「兄貴の恋人」と同じような役だが、こちらは兄の恋愛を応援する。でもラストでは兄に、「また良い女性がいるわよ」と兄をなぐさめて、あまり気にしていない様子を見せるのは、やはり兄貴を大好きで、兄の失恋を内心ではよろこんでいるのかも? 加山雄三さんは「兄貴の恋人」と同じく、ここでも内藤洋子さんを「デコすけ」と呼んでいます。黒沢年男から「デコすけ」と云われて「なんで私のあだ名を知ってるのよ!」と憤慨する場面が可笑しかったです。東宝青春映画の佳作。
2019年11月07日
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「兄貴の恋人」(1968)監督 森谷司郎 製作 藤本真澄、大森幹彦脚本 井手俊郎撮影 斎藤孝雄美術 村木忍音楽 佐藤勝出演 加山雄三、酒井和歌子、内藤洋子、岡田可愛 宮口精二、沢村貞子、白川由美 本編84分 総天然色 シネマスコープサイズ 加山雄三さん主演の映画「兄貴の恋人」をレンタルDVDで鑑賞しました。 公開されたのは1968年9月。当時の東宝アイドル女優 酒井和歌子さんと内藤洋子さんが恋人と妹役で出ています。 この1968年に公開された「リオの若大将」の加山雄三さん(田沼雄一)はシリーズでは最後の大学生役であり、次作「フレッシュマン若大将」(69)からは社会人となって登場するのですが、1966年の「お嫁においで」と共に本作のサラリーマン役は明朗健康的大学生役からの脱却点にあたるのだろうか? 大学生ではなく社会人として企業に勤めても、やはり加山さんのキャラクターは人に頼まれたらことわれない正直で明朗快活で健全で誠実な男性であり、若大将と同じく女性に好かれるだけでなく、男性の理想像にもなっているようです。 私の中学での同級生が加山さんの大ファンであり、彼の影響をうけて、私も映画の「若大将シリーズ」、や当時大ヒットした「君といつまでも」や「夜空の星」をテレビの音楽番組やラジオ、レコードなどで熱中して聴いたものです。私たち中学生にとって加山さんイコール若大将(田沼雄一)であり、格好いい大人のお手本でした。「兄貴の恋人」は、加山さんが兄貴で、妹が内藤洋子さん。恋人は豊浦美子、中山麻理さんなど何人も出てくるが本命は酒井和歌子さんという設定。 兄貴とはケンカばかりしている妹だけれど、実は兄貴のことが大好きで、兄貴も妹を大切に守っている感じ。兄貴のことが大好きな妹は兄の縁談話にケチをつけて不成立を願っている。 物語としては兄と妹テーマとして王道を行くもので、加山さんのプロポーズを受けようとしない酒井和歌子さんを内藤洋子が説得して兄貴とくっつける話です。 ただ、青春映画としては、「若大将」や「お嫁においで」のような明るさとユーモアが不足で、これは監督のカラーのちがいというものかもしれない。内藤洋子とロミ山田さんのエピソードなど必要ないのではないか? 昨日の日活アクション映画は昭和30年代のノスタルジーを感じ、今日の「兄貴の恋人」の40年代の風景は自分の青春少年時代でもあって、このような昔の映画はとてもいい。
2019年10月30日
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連日の猛暑です。 暑い夏ということでの古い思い出のひとつに、かつて存在した「日活ロマンポルノ」があります。 日活ロマンポルノを定義づけると「日活が昭和46年(1971)から昭和63年(1988)にかけて製作した1133本の成人映画」のこと。 日本映画が斜陽におちいり、日活がそれまでの映画製作を中断し、成人映画専門に転向したことで発足した「日活ロマンポルノ」。日本映画の歴史に記される重要な事項です。 短期間に低予算で製作できて、集客もそこそこある、ということで日活が会社の生き残りを図った。 けっして侮られる対象ではなく、若手映画人の育成や自由な表現など、日本映画界への貢献は大きなものがある。 本編70分ほど。10分間に1回のセックスシーン、ぼかしやモザイクを入れない撮影を工夫する、などの定型を守ること。女性の裸さえ出せば、あとはどんなストーリーでも、どんな表現でも自由に制作できたということで、意欲のある人たちに自己表現の場を提供することになったんですね。 監督では 神代辰巳、相米慎二、西村昭五郎、金子修介、森田芳光さん 男優では 風間杜夫、内藤剛志、古尾谷雅人、石橋蓮司さん 女優では 白川和子、宮下順子、東てる美、田中真理、伊佐山ひろ子、美保純、風祭ゆき、竹田かほりさん。 現在でも活躍なさっている方々が大勢います。 日活ロマンポルノが始まった昭和46年11月。当時は映画専門誌「キネマ旬報」でも毎号大きく特集記事が載っていて、その作品も映画ファンに高く評価されていました。 私がよく見に行った映画館は小立野にあったスタア劇場です。3本立て上映で、「団地妻 昼下がりの情事」(西村昭五郎 監督、白川和子 主演)は日活ロマンポルノの第1作だとか。「赫い髪の女」や永島暎子さんの「女教師」など細部は忘れたけど傑作だった覚えがあります。 夏の暑い夜に日活ロマンポルノを見て、冷房のきいた映画館の外に出るとムッとする熱気と、帰路の暗い夜道で時折吹いてくる風の心地よさの記憶。日活ロマンポルノはやはり暑い夏がふさわしい。 昭和47年(1972)9月に「愛のぬくもり」「恋の狩人ラブハンター」「OL日記牝猫の匂い」などが警視庁に摘発された「日活ロマンポルノ事件」が有名ですが、これはその後の裁判で、昭和55年(1980)に無罪確定判決が出されました。 近年、スカパーの「チャンネルNECO」や「日本映画専門チャンネル」で深夜に、日活ロマンポルノではないけれど、それらを思い出すような、若い映画人たちのエネルギーを感じさせる、ちょっとエッチな良作が放送されて、映画好きにはうれしい。 今月、先月の「舐める女」(七海なな主演)「僕だけの先生」(湊莉久)「透明変態人間」(めぐり)など、なかなかの秀作です。昨年だったかに放送された「エクスタシー刑事」(希島あいり)も、大げさに言えば劇場公開してもいいんじゃないか?と思うくらいに面白かった。これからも、これら深夜時間帯放送の作品を見逃さないようにしよっと。
2018年07月21日
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「影狩り ほえろ大砲」(1972)監督 舛田利雄製作 石原裕次郎、奥田喜久丸、小林正彦原作 さいとう・たかを(リイド社刊)脚本 池上金男撮影 金宇満司美術 小林正義編集 渡辺士郎音楽 石原裕次郎、玉木宏樹出演 石原裕次郎、内田良平、成田三樹夫 夏純子、青木義朗、加藤嘉 佐原健二、白木万理、カルーセル麻紀、丹波哲郎 本編89分 総天然色 シネマスコープサイズ 石原プロが東宝と提携して製作した時代劇映画「影狩り」の第2作です。 公開は1972年(昭和47年)10月。 この1972年は、同じく石原プロと東宝による「太陽にほえろ!」のテレビ放送が7月21日(金曜夜8時)から始まった年。「太陽にほえろ!」が始まって約2ヶ月後に公開された「大砲にほえろ」ではなく「ほえろ大砲」です。 大名取りつぶしのために公儀隠密「影」が暗躍する。幕府に目を付けられた大名家に雇われて、潜入して来る「影」を始末する3人の浪人者「影狩り」の活躍を描いた娯楽時代劇。 豊後 佐伯藩。「大砲の伊勢守」との異名を持つ佐伯藩は、大坂の陣のおりに功績を立てたとのことで特別に大砲「四海波(しかいなみ」の所蔵を許されていた。ところが、製造から150年が経ち、時代遅れ、使いものにならなくなった四海波を、砲術方の別所某(佐原健二)が鋳潰して、それを地金として大砲職人 芝辻道斎(加藤嘉)を招いて新式大砲を作り出した。 しかし公儀に許された四海波をかってに潰すことはもちろん、ご禁制の大砲製造が幕府に知られればたちどころに藩は取り潰されてしまうだろう。 折しも、公儀より大砲改めの査察が入るという知らせがあり、時を同じくして「影」が暗躍し始める。 城代家老 星野修理(青木義朗)は、こうなれば新型大砲を「四界波」であるとして、そのように言い張るしか手はないとし、影に対抗すべく「影狩り三人衆」の室戸十兵衛、日光、月光を雇う。 完成した新型大砲だが、それを山中の製造所から城まで運ばなければならない。二百貫もの重さの大きな大砲を牛に引かせた荷車で、野を越え山越え川を越えて、遠路を運送する藩士と影狩りたち。その行く手に待ちかまえる「影」。 影狩り三人衆の室戸十兵衛、日光、月光を石原裕次郎、内田良平、成田三樹夫の3人が演じます。 影の元締めである影目付に丹波哲郎。 大砲職人 芝辻道斎の娘役に夏純子。 影のくノ一にカルーセル麻紀。 テレビで「太陽にほえろ!」が始まった1972年の6月に第1作が、10月に第2作が公開された「影狩り」ですが、人気がそれほどでもなかったのか?、「太陽にほえろ!」で裕次郎さんが忙しかったのか?はわからないけれど、この2作のみで終わった劇場映画「影狩り」です。 大砲職人の娘役で夏純子さんがメインヒロインとして出ていて、裕次郎さんの十兵衛に芝辻家の血筋を絶やさないために「子種をください」と云って着物を脱ぐシーンがあるのですが、脱ぎっぷりがわるくて中途半端。どうせなら思いっきりよく脱がんかい。 くノ一役のカルーセル麻紀さんが胸を見せているけれど、こんなのを見てもなーと。 同じように宮下順子さんや伊佐山ひろ子さんも影狩り三人衆の命を狙う女忍者役で、ちょい役として出演しているけど、せっかくの出演なのに物足りない扱いでした。 宮下順子さんと伊佐山ひろ子さんは、この1972年当時、日活ロマンポルノで話題性のある女優さんですね。 この映画、よく考えてみるとちょっと変な展開になっています。 公儀の影目付(丹波哲郎)が藩の城代家老に「大砲を公儀に渡せば、藩をそのままにしてやる」と取引を申し出て、城代家老がその提案を受け入れ、影狩り三人衆に事件から手を引かせようとする。 放っておいても影狩り三人衆は大砲を城まで運んでくるのに、途中でそれを襲って大砲を奪う必要などないはずではないか? 大砲が城まで運ばれて、それを公儀に渡せば、事を荒立てることなく万事解決するのでは。
2016年07月19日
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「影狩り」(1972)監督 舛田利雄 製作 石原裕次郎、奥田喜久丸、小林正彦 原作 さいとう・たかを (リイド社刊)脚本 池上金男 撮影 金宇満司 美術 小林正義 編集 渡辺士郎 音楽 石原裕次郎、広瀬健次郎出演 石原裕次郎、浅丘ルリ子 内田良平、成田三樹夫、江原真二郎 本田みちこ、丹波哲郎、辰巳柳太郎 本編90分 総天然色 シネマスコープサイズ 7月17日に「チャンネルNECO」で放送された映画「影狩り」を録画して鑑賞しました。 さいとう・たかをさんの劇画「影狩り」(小学館 週刊ポスト連載)の劇場用映画化で、公開は1972年6月。石原プロ・東宝の作品です。 徳川封建時代。財政難におちいった幕府は、その解決策として大名を改易させてその領地を取り上げる方針をとった。幕府は「影」と呼ばれる公儀お庭番を大名領に派遣して、落度を捜させ、それがない場合は作り上げては、そのわずかな落度を理由に大名を取り潰していった。 幕府に目を付けられた大名は対抗策として、潜入して来る影を抹殺して口を封ずるために「影狩り」を生業とする3人組の浪人者を雇った。 3人の名は室戸十兵衛、日光こと乾武之進、月光こと日下弦之助。彼らは主家を影の暗躍によって取り潰され、流浪の身となった怨念を「影」抹殺へと命を賭ける男たちである。 石原裕次郎さんが室戸十兵衛、内田良平さんが日光、成田三樹夫さんが月光を演じています。 胆馬国出石藩は5万8千石の小藩。幼少の藩主を補佐する家老 牧野図書(辰巳柳太郎)は、藩の財政を建て直すために金山の開発をおこない品質の良い金を掘りあてていた。 影に探索させた情報により田沼意次(丹波哲郎)は出石藩を改易させて金山を取り上げようと画策する。しかし、それには二つの障害があった。ひとつは牧野図書の先祖が東照神君家康公から「永代本領安堵」のお墨付を拝領していること、それと「影狩り」を雇ったことである。 出石藩に潜入して暗躍する影たち。それを防ぐ影狩りの3人だが、藩随一の切れ者である大目付 高坂蔵人(江原真二郎)はなぜか三人に冷たい態度をとった。 影狩り三人衆の妨害にあって苛立った田沼意次は、出石藩のお国替えの内示を下す。そのことで出石藩は「永代本領安堵」のお墨付を江戸藩邸に運ぶだろう、胆馬から江戸までの道中150里、その道中で影にお墨付を奪わせるという計画を立てる。 家老の牧野図書はお墨付を江戸まで運ぶ大役を高坂蔵人に命じ、その護衛を影狩り三人衆に依頼する。 馬で江戸へと向う高坂蔵人と藩士。その一行を狙う影の組頭 陣馬仙十郎と、くノ一を含む配下の忍者たち。そして藩士たちを影から守る十兵衛、日光、月光。 その道中にもう一人、十兵衛を仇と狙う鳥追い姿の女 千登世(浅丘ルリ子)がいた。 言いがかりをつけて大名家を取り潰す政策というのは、あまり現実的とは思えないが、娯楽時代劇としては、忍者と対決する浪人三人衆というのはアクション的で面白い設定です。 石原裕次郎さんの「影狩り」の中心的人物 室戸十兵衛役はミスキャストとはいわないけれど、やはり時代劇の主役としては斬合いシーンでの腰が据わっていない感じがする。それをバックアップし、カバーする位置付けとしての内田良平さんと成田三樹夫さんの存在なのか。 内田良平さんの日光は大の女好きの陽気な男で、剣を取っても腕利き。月光は暗い過去を背負った陰のあるキャラクターで、成田三樹夫さんは、演ずるのはこの人しかいない。 この映画が成功しているとすれば、さいとう・たかをさん原作の劇画によるものでしょう。 影狩り三人衆のキャラクターが、それぞれの個性、知・動・静の三タイプの男たちがうまく作られていることによるのではないだろうか。 娯楽時代劇として、影のくノ一が月光を誘惑するお色気シーンもあって、なかなか楽しめます。 いつも冷静な月光に誘いをかけても乗ってこない。ここはやはり女好きの日光をターゲットにするべきではでは?
2016年07月18日
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日活の青春映画「二人の銀座」(67)は、山内賢さんと和泉雅子さんの好演もあって、たいへん面白かったです。 それだけでなく、ジャッキー吉川とブルー・コメッツの懐かしい演奏を見ることができたのは大きな収穫。「ブルー・シャトウ」「甘いお話」「青い瞳」の3曲が映画の中で歌われます。 映画「二人の銀座」は1967年2月公開ですが、大ヒット曲「ブルー・シャトウ」のシングルレコード盤が発売されたのは1967年3月だそうで、だとすれば発売前に映画の中で歌っていることになる。 シングル盤の発売は「青い瞳」(日本語版)、B面「マリナによせて」(1966年7月) 定価370円「青い渚」、B面「星に祈りを」(1966年9月)「何処へ」、B面「センチメンタル・シティ」(1966年12月)「ブルー・シャトウ」、B面「甘いお話」(1967年3月)「マリアの泉」、B面「白い恋人」(1967年6月)「北国の二人」、B面「銀色の波」(1967年9月)「こころの虹」、B面「すみれ色の涙」(1968年1月)「白鳥の歌」、B面「雨の慕情」(1968年4月)「草原の輝き」、B面「マイ・サマー・ガール」(1968年6月) 定価400円「さよならのあとで」、B面「小さな秘密」(1968年10月) の順になります。 1967年がブルー・コメッツだけでなく、グループサウンズ人気の最盛期だったようです。「ブルー・シャトウ」は同年のレコード大賞で大賞を受賞。NHK紅白歌合戦にも出場。 当時、若者に大人気だったグループサウンズ。大人たちには騒音としか聞こえなかったようで、その長髪スタイルも嫌われた。ブルー・コメッツと双璧をなすザ・スパイダースが紅白に出られなかったのも長髪だったからです。 1967年は私の中学3年の時で、友人が加山雄三とブルー・コメッツの大ファンだった。レコードを貸してくれたりして、その影響で私もファンになったというより、ファンにさせられた? 長髪スタイルがほとんどだったGSのなかで、ブルー・コメッツは短髪でスーツ姿。井上忠夫さんのボーカルが格好良かったですねぇ。 ブルー・コメッツのヒット曲の数々は現在聴いても、少しも古さを感じません。 当時の、若々しく格好良かった井上忠夫さんや高橋さん、三原さん、小田さん、そしてドラムスの吉川さんを見ることが出来る、映画「二人の銀座」(尾藤イサオさんとヴィレッジ・シンガーズも出ている)です。 現在、映画チャンネルNECOで放送されているTVドラマ「ある日わたしは」の主題歌がブルー・コメッツです。この歌はレコード化されなかったようで、聴くことができない幻の名曲です。放送はその意味でも貴重なものです。 同じブルー・コメッツでも「何処へ」はレコード化されて、CDにも収録されているのに。
2016年03月06日
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DVD-Rに録画ダビングしたままタイトルが未記入だったために、どこへか紛れ込んでしまっていた「続 隠密剣士」(1964)が見つかりました。 DVDを作ったらすぐにタイトルを印刷しないと、あとでどれがどれやらわからなくなってしまいます。「続 隠密剣士」監督 船床定男製作 小林利雄、西村俊一 原作 小林利雄、西村俊一 脚本 伊上勝撮影 松井鴻美術 吉村晟音楽 小川寛興 出演 大瀬康一、大森俊介、牧冬吉 天津敏、佐賀直子、加賀邦男、宇佐美淳也 花沢徳衛、原健策、岡田千代、御影京子 本編83分 モノクロ シネマスコープサイズ テレビ時代劇「隠密剣士」が大人気となり、その劇場版「隠密剣士」第2作目がこの「続 隠密剣士」です。 昭和39年(1964)3月に「隠密剣士」が、8月に「続 隠密剣士」が公開されました。 私が夢中になって見ていたテレビ時代劇「隠密剣士」は昭和37年(1962)10月に始まって、全10部として昭和40年(1965)3月まで放送。毎週日曜の夜7時から30分間です。 徳川第11代将軍家斉の頃、家斉の異腹の兄である松平信千代(大瀬康一)が秋草新太郎と名乗って、平和を乱す忍者団と柳生新陰流の剣をとって戦う話です。 第1部は蝦夷地へ隠密として赴いた秋草新太郎の話ですが、この時はまだ忍者ものではない。 忍者ものになるのは第2部「忍法甲賀衆」からで、相手が忍者との対戦になってから大人気となり、子供たちが熱中して忍者ブームが起こるきっかけになりました。 その劇場版の第2作「続 隠密剣士」は、テレビでは第8部「忍法まぼろし衆」(全13話)が放送されていた時なので、第5部「忍法風摩一族」、第6部「続 風摩一族」の放送が終わっています。 主演の大瀬康一さん、牧冬吉さん。風摩小太郎の天津敏さん、その妹 朧(おぼろ)役の佐賀直子さんなどほぼ同じ顔ぶれなので、テレビの「風摩一族」と同時期に撮影されたのかもしれないですね。 テレビ版よりも俳優陣が豪華で西念寺の住職 呑海に宇佐見淳さん(テレビ版では第2部、3部に登場)、秋草新太郎に密命を下す松平定信の役に加賀邦男さん、それに風摩忍者の一人で東映悪役スターの原健策さんが出ている。 テレビの第5部が全13話、第6部が同じく全13話、合わせて26話の「風摩一族」の巻を83分間の映画にするのは、そもそもが無茶なのかもしれないけれども、テレビ版に夢中になっていた当時の子供たちにはこれで充分だったのかもしれない。 嵐の夜、江戸城に風摩の一団が潜入し、宝物庫から「風神の鏡」を盗み出す。「風神」「水神」「火神」の鏡を集めることで滅亡した北条家が隠した伊豆七金山のありかがわかるという。 服部半蔵がかつて調査した覚書き「風神帳」を狙って風摩の墨衣源内(原健策)と娘 風葉(岡田千代)が松平定信屋敷に侵入。警固の伊賀同心 霧の遁兵衛(牧冬吉)に発見されて源内が手傷を負う。追っ手を食い止めるために源内が盾となって娘の風葉を逃がします。「父上ーっ!」「行けっ、父にかまうな!」涙を振り切って走る風葉に「我は影なり忍び者」の歌(佐賀直子さんの名曲)が入って効果満点。 この冒頭部分がたいへんによく出来ていて、斬り死にする源内と、父を犠牲に江戸の夜の街を走る風葉。その前に現れたのが秋草新太郎。「この夜更けにそのような出で立ちで走るとは盗賊のたぐいか?」と。風摩忍者たちとの立ち回りとなって、風葉はせっかく奪った風神帳を落としてしまいます。 秋草新太郎の大瀬康一さんのチャンバラが最高にスマート。黒装束の風摩忍者もカッコ良い。 このシーンは東映時代劇の真骨頂でしょうか。ワクワクさせられます。 今では、時代劇を見ても、このようなワクワクして嬉しくなる場面がありませんね。時代劇は過去のものになってしまったのでしょうか。 上の写真はテレビ版の風摩忍者です。白いのは霧の遁兵衛(牧冬吉さん)。 テレビの風摩の黒装束は袖が短い。映画のは普通の黒装束でした。
2015年04月20日
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「月光仮面 絶海の死斗」(1958)監督 小林恒夫原作 川内康範脚本 川内康範撮影 星島一郎美術 進藤誠吾音楽 小川寛興 出演 大村文武、柳谷寛、若水ヤエ子 宇佐美淳也、峰博子、佐々木孝丸 小宮光江、須藤健、長谷部健、山本麟一 本編52分 モノクロ シネマスコープサイズ 劇場版「月光仮面」第2作で、「どくろ仮面」の解決篇。 昭和33年(1958)8月初旬の公開で、前作の公開から1、2週間しか間がない上映です。 先に「幽霊党の逆襲」のところで、「リアルタイムで見たのは母に連れて行ってもらった第1作のみ(ドクロ仮面の手下が高い建物から落ちる場面をおぼえている)」と書きましたが、思い違いで、私が50年以上も昔に見たのはこの第2作目だったようです。 妹ユリ(小宮光江)を消す命令に背いたため裏切り者としてナイフで刺されたタイガー(長谷部健)はどくろ仮面に命を狙われたことで、祝探偵(大村文武)にどくろ仮面の正体を暴露しようと決心する。 その時、病室の窓から撃たれるタイガー。祝探偵は撃った男を追跡する。男は病院のらせん状になった廊下を屋上へ向かって逃げる。祝探偵は男を屋上に追い詰めるのですが、男は飛び降りてみずから命を絶ってしまいます。 私が憶えていたのはこの場面でした。 全6本ある劇場版映画では、この第1作、2作の「どくろ仮面」が最もよくできています。最初なので力が入っているのか、監督の手腕なのか、出演者がいいのか? 第1作では祝探偵の助手 五郎八(柳谷寛)が意外な活躍を見せ、機密書類が入ったカバンをどくろ仮面一味に渡すまいとスクーターで逃げる。月光仮面に助けられるのですが、柳谷寛さんは三枚目として親しみ感のある脇役俳優だけに、この助手役はさすがに上手です。(カボ子の若水ヤエ子は要らないけれど) 月光仮面が大型オートバイで疾走する場面や、爆破された橋をオートバイが飛び越える場面とか、ヘリコプターで蒸気機関車を追跡する場面、躍動感があって胸躍るものがあるし、クライマックスの警官隊とどくろ仮面一味の銃撃戦もいい。次回につづく、となるつなぎ方もうまいですね。 月光仮面は腰のベルトの左右に2挺拳銃のホルスターを着けていて、オートバイで走りながら両手を離して2挺拳銃を撃つ。時代劇を思わせるような月光を浴びての登場シーンもナイスです。 この第2作の解決篇では、機密書類が隠された洞窟がある島へどくろ仮面たちが船で向かう。その一味に紛れ込んだ祝探偵。 洞窟には月光仮面が先回りしていて、駆けつけた警官隊も加わって銃撃戦になる。 一人になったどくろ仮面を、月光仮面が断崖上に追い詰める。 どくろ仮面が「お前は誰だ!」というのに、月光仮面がサングラスをとって正体を見せる場面があります。 その顔を見たどくろ仮面が「あっ!おまえは!」と驚いてあとずさると、崖から転落して死んでしまう。 中山博士の娘 あや子を演じるのは峰博子という女優さんです。「おとうさま」というのが良い感じで。 月光仮面から「危険せまらば、この箱あけよ」と書かれたオルゴールを渡される。 どくろ仮面に拉致されて車で逃走し、後部座席から後ろを振り返ると月光仮面のオートバイが追ってくる。「あっ、月光仮面!」と驚く一味。その時、「幽霊党」の山東昭子さんは「あっ、月光仮面のおじさん!」と年少者でもあるまいに妙な台詞を言ったけれど、峰博子さんのあや子さんは黙ってほほえむだけです。このほうが自然ですね。
2015年03月30日
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「月光仮面」(1958)監督 小林恒夫原作 川内康範脚本 川内康範撮影 星島一郎美術 進藤誠吾音楽 小川寛興 出演 大村文武、柳谷寛、若水ヤエ子 宇佐美淳也、峰博子、佐々木孝丸 須藤健、小宮光江、長谷部健 本編51分 モノクロ シネマスコープサイズ 劇場版「月光仮面」の第1作で昭和33年(1958)7月公開。2部構成になっていて、解決篇は「月光仮面 絶海の死斗」として同年8月に公開。 テレビで「月光仮面」(大瀬康一 主演、船床定男 監督)が放送されたのは昭和33年(1958)2月から翌34年7月まで。全130回で、第1部「ドクロ仮面」は第1回のみ30分、2回目以降は10分間で月~土に放送。全5部あり、第2部から毎週日曜日に30分間となる) 私が小学校に入学する前後の頃で、まだ一般家庭にテレビが普及していない時代。我が家もそうですが、テレビを見ることができる家庭は限られていました。(余談として、月光仮面が原付に乗っていたと言って、笑って馬鹿にする人がいるけれど、ホンダの250CCなので原付ではない。劇場版では「陸王」に乗り、350CC、750CC、1200CCのどれかは不明) 宇宙科学研究所の実験場で中山博士(宇佐見淳也)が開発した「HOジョー発爆弾」の爆発実験がおこなわれ、成功を収めます。 大気中を一瞬で真空状態にし、動物も植物もみな窒息死させてしまうという世紀の発明「HOジョー発爆弾」を博士は平和利用の目的で開発したのだが、その機密書類をめぐって国際スパイ団のどくろ仮面一味が暗躍する。 中山博士宅に秘密をさぐるために女中として潜入していたどくろ仮面配下のユリ(小宮光江)が祝探偵(大村文武)に見破られて警察に捕らえられる。 松田警部(須藤健)に尋問されるが、固く口を閉ざすユリ。 どくろ仮面は「捕らえられた以上はユリを許さない、それがスパイ団の掟だ」と言って、ユリの兄であるタイガー(長谷部健)の手でユリを殺すよう命令する。妹を殺すことに躊躇するタイガーを裏切り者として一味は消してしまおうとする。 祝探偵事務所に養われている戦災孤児の木の実ちゃんがどくろ仮面に拉致され、中山博士の前で天井から吊して炎の中に下ろしてゆく。この子を助けたければHOジョー発爆弾の機密書類を隠した場所を白状しろと博士に迫ります。 さすがに小さな女の子が痛めつけられるのを見せられては耐えきれず、中山博士は娘 あや子(峰博子)が首に下げているロケットの中だと白状する。 月光仮面が現れ、博士と木の実ちゃんを確保するとともに、そのどくろ仮面一味のアジトに警官隊が殺到して銃撃戦になる。逃げ出すどくろ仮面たち、背景に「ど~この誰かは知らないけれど、誰もがみ~んな知っている♪」と主題歌が入って追跡する月光仮面。 いいところで次回につづく、と。昔の連続活劇映画ならではの味わいがあります。 月光仮面とは何者なのか?、映画の中ではまったく説明がなく、いきなり登場しても誰も不審に思わない。月光仮面という正義のために働くヒーローを誰もがみんな知っているのが前提になっているんですね。 この当時のヒーロー物に登場する悪役たち。国際陰謀団とか国際スパイ団とか、何々団、何々党など、白いトンガリ頭巾や黒頭巾や黒マントとかを着ていて、一目見て怪しい感じで悪役丸出しの扮装です。 今作のどくろ仮面一味は、首領と同じどくろの面と黒マント、あるいはトレンチコートにソフト帽と黒覆面。今見ると、目立ってはならないスパイ団としては、これではまずいのではないかと思ってしまうけれども、当時はまったくそんなこと考えもしなかった。このような悪人たちのコスチュームをカッコ良いと思ったし、あこがれたりしたものです。
2015年03月29日
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「月光仮面 悪魔の最後」(1959)監督 島津昇一原作 川内康範脚本 織田清司撮影 西川庄衛音楽 小川寛興 出演 大村文武、柳谷寛、若水ヤエ子 清水一郎、成瀬昌彦、岡譲司 ハロルド・S・コンウェイ、増田順司 山東昭子、梅宮辰夫 本編60分 モノクロ シネマスコープサイズ 劇場版「月光仮面」の第6作であり、最終作になります。 公開は昭和34年(1959)8月。 実業家の岡本が乗った車が家の前で電柱に激突し、おどろいて五郎八(柳谷寛)が駆けつけると、息絶えた岡本の背中に「白髪鬼」と記された紙が貼ってあった。 翌日、祝探偵事務所に東条という男が保護を求めに来て、その場で何者かに殺される。その死体には岡本と同様の「白髪鬼」の紙が。 ある夜、怪しげなクズ屋の後をつけた祝探偵(大村文武)は、とある屋敷裏の防空壕跡で戦時中に南海で死んだとされる毒物学者の白上博士(清水一郎)と出会います。白髪鬼とは白上博士だと看破した祝探偵に博士は毒蜘蛛を投げつける。 白上博士は戦時中に軍属として息子の鉄也(梅宮辰夫)と助手 北川(成瀬昌彦)と、南海の無人島に軍人の西川中尉(岡譲司)、岡本、東条らとともに漂着した。 その島で白上博士は川で砂金を発見したのだが、欲に眼がくらんだ西川中尉は岡本や東条と組み、博士の息子を殺し、博士と助手 北川をも手榴弾で殺害をはかる。そして悪辣な3人は再び砂金をとりにくるつもりで島を離れた。 九死に一生をえた博士は砂金を隠し、復讐の鬼と化して日本に舞いもどった。 白上博士は復讐の鬼「白髪鬼」と名乗って、まず岡本、東条を毒蜘蛛で殺し、次に西川を狙うのですが、西川は博士が持っている砂金のある無人島をしめした地図を手に入れんと、国際ギャング団と結託して博士を狙います。 前作「幽霊党の逆襲」が昭和34年7月末に公開、直後の8月初旬にこの「悪魔の最後」が公開されていて、この2本は同時期に撮影されたと思われます。 監督・脚本・撮影・音楽などスタッフが共通しているだけでなく、たとえば、白上博士の助手 北川を演じている成瀬昌彦さんは、「幽霊党の逆襲」では鈴木博士の助手 藤田を演じて、関東第一病院に入院するのですが、その同じ病院が出てきて、同じように入院する。病室もまったく同じだし、病室前の廊下も同じ。ベッドに横たわる彼に質問する祝探偵と松田警部も、まったく同じような場面です。 殺された東条の娘役は山東昭子さんだし、同時に2本を撮ったのではないでしょうか。 松田警部(増田順司)以下の刑事たち、出動する武装警官を満載した警察のトラック。 刑事たちの行動や、警官隊がワッと出動する場面など、私の小学生時代、こんな場面が大好きでした。
2015年03月28日
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「月光仮面 幽霊党の逆襲」(1959)監督 島津昇一原作 川内康範脚本 織田清司撮影 西川庄衛 音楽 小川寛興 出演 大村文武、柳谷寛、若水ヤエ子 佐々木孝丸、岡譲司、増田順司、成瀬昌彦 山東昭子、藤里まゆみ、香山光子 本編61分 モノクロ シネマスコープサイズ 昔テレビで「月光仮面」を放送していたのは知っているけれども、家にテレビがなかったし、まだ小学校に入学する前後の年齢だったのでほとんど記憶がありません。 ただ月刊誌「少年クラブ」の連載をなんとなく覚えていて、姉に買ってもらった単行本(100円だった)を何度も繰り返して読んでいました。桑田次郎さんの画で、何巻にあたるのか知りませんが「幽霊党」の話。 昭和34年(1959)7月に公開された「月光仮面 幽霊党の逆襲」はシリーズ第5作です。 私がリアルタイムで見たのは母に連れて行ってもらった第1作のみ(ドクロ仮面の手下が高い建物から落ちる場面をおぼえている)で、この「幽霊党」や「サタンの爪」は街角に貼ってあった宣伝ポスターでしか知らないものです。 雨が降る深夜、とある大学の地質学研究所で鈴木博士(斎藤紫香)と助手 藤田(成瀬昌彦)は時間が遅いからと仕事を終えようとしていた。そこへドクロの仮面を着けた怪しい男と、一つ目を描いた黒いトンガリ頭巾の数名の部下たちが侵入してくる。 鈴木博士は殺害され、助手の藤田は行方不明に。翌朝、警察の藤田警部(増田順司)と祝探偵(大村文武)が駆けつけ、事件の捜査を開始します。「藤田が怪しい」とか言っているところに、現場に残された電話番号をメモした紙が発見され、さっそくその電話番号の主を調べることに。 それは大岡鉄蔵(佐々木孝丸)という男で、訪問したところ、彼は山師で、かつては鈴木博士に掘り当てた石の鑑定を依頼していたが、今回のことには関係がないといい、博士が殺されたと聞いて驚く。 祝探偵が、大岡鉄蔵の娘はる子(山東昭子)に「ゆうべお父さんは電話はしなかったか」と聞くと「11時頃に博士と嬉しそうに話していた。自分が最初に電話に出たので間違いありません」と答える。「知らぬ存ぜぬ」の大岡を残し、松田警部は祝探偵は大岡屋敷を後にするのですが、はる子から聞いた情報では、大岡が鈴木博士に何かを依頼し、その鑑定が成功だったらしいと推測。事件の鍵は大岡と博士の助手 藤田が握っているらしいと。 やがて行方を断っていた藤田が自宅に帰って来たと知らせが入り、彼は異常な状態のため病院に運ばれたとのことで、松田警部と祝探偵は入院先の関東第一病院へ向かう。 殺害された鈴木博士が鑑定依頼されたのは「ウラン鉱石」であり、そのウラン鉱をめぐって「幽霊党」が暗躍する話です。 山師の大岡鉄蔵の娘 はる子の役で、のちに国会議員になった山東昭子さんが出演している。 幽霊党が彼女を拉致して車で逃走するのは、毎回お約束のシーンであるようで、リアウインドウを振り返ると月光仮面のオートバイが追ってくるのを見た悪党どもが驚き、捕らえられていた女の子が「あっ、月光仮面のおじさん!」と言う。 今作の山東昭子さんでは、年齢的に「月光仮面のおじさん!」と言うのは変な感じがします。前作の「魔人の爪」では松島トモ子さんだった。 幽霊党の首領がドクロの仮面を着けているのですが、もっと工夫が必要だったのでは?これでは「ドクロ仮面」と変わらない。子分どもの一つ目を描いたトンガリ頭の黒装束はいい感じです。 幽霊党の紅一点 おりん(藤里まゆみ)。看護婦に化けていて、入院している藤田助手を毒薬の注射で口封じしようとするが祝探偵に正体を見破られる。そのあとは最後まで一味として行動し、月光仮面との銃撃戦まで演じる。なかなか美しい女優さんです。
2015年03月27日
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「月光仮面 怪獣コング」(1959)監督 相野田悟原作 川内康範脚本 織田清司撮影 飯村雅彦音楽 小川寛興出演 大村文武、山本麟一、柳谷寛 若水ヤエ子、松本克平 、白河通子 増田順司、加藤嘉、須藤健 本編50分 モノクロ シネマスコープサイズ 劇場版「月光仮面」の第4作です。公開は昭和34年(1959)4月。実のところ、第1、2作のドクロ仮面や第3作サタンの爪、第5作の幽霊党などは何度か見て知っているのですが、この「怪獣コング」は初めて見ました。「怪獣」というから大きなのが出るのかと思ったら、「ジキルとハイド」みたいに薬の作用で怪力の獣人みたいに変身するだけで、身長は人間の大きさです。 暴風雨の夜、8人の死刑囚が脱獄。非常線が張られた頃、祝探偵事務所に警視庁の松田警部(須藤健)から電話があり、原子抗素体学者 山脇博士が誘拐されたと云う。 駆けつけた祝探偵(大村文武)に「祝十郎に告ぐ、この事件に手を出すな、怪獣コング」と書かれた警告状が残されていて、ガラス窓に奇怪な男の影が写る。 死刑囚を脱獄させたのは国際暗殺団で、死刑囚を仲間に入れて山脇博士を始めとする日本の10人の重要人物を暗殺せんと謀っていた。 暗殺団は怪獣コングを使って政府の高官を襲い、さらに警視総監を狙う。箱根に向っていた総監は暗殺団一味と怪獣コングに襲撃されるが、月光仮面が現れて総監を救う。 失敗した一味は、病院に入院した総監を時限爆弾で狙う。一味に化けて潜入していた祝探偵はそれを知らせようとするが発覚し、捕らえられていた山脇博士と同じ牢獄に入れられてしまう。 国際暗殺団は不死身の怪獣コングを使って、日本の重要人物10人を暗殺せんと企て、警視総監がコングや一味に狙われて時限爆弾を仕掛けられたりするのを月光仮面が現われて助ける話です。 国際暗殺団の首領(加藤嘉)が、山脇博士の発明した薬でコング(山本麟一)に変身する。タイトルが「怪獣コング」だから勘違いしてしまいます。 ストーリーは相変わらず他愛のないものだけれども、音楽入りで颯爽と現れる月光仮面がカッコいい。 この当時のテレビや映画など、マンガ本でもそうですが、時限爆弾がよく使われましたね。出動した警官隊が敵のアジトにワッと飛び込んでいくと時限爆弾があって、「爆弾だ、急いで避難しろ!」というような場面がよくあったものです。時代劇なんかでも火薬の樽があって導火線に火が着けられて、という場面が。「月光仮面」などでは時限爆弾は定番のアイテムだったように覚えているのですが。
2015年03月24日
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「月光仮面 魔人(サタン)の爪」(1958)監督 若林栄二郎原作 川内康範脚本 川内康範、織田清司撮影 星島一郎美術 藤田博音楽 小川寛興 出演 大村文武、柳谷寛、若水ヤエ子、須藤健 月丘千秋、松島トモ子、松本克平、植村謙二郎 本編62分 モノクロ シネマスコープサイズ まだテレビがアナログだった頃に東映チャンネルでの放送を録画してあったものです。 劇場版の「月光仮面」は全6作品あって、「魔人の爪」はその第3作。昭和33年(1958)12月公開。 深夜、アフナリア・シャバナン殿下という人が、屋敷に現れたサタンの爪(植村謙二郎)と名乗る怪人に殺害されて、パラダイ王国5千億円の秘宝の在りかを示す地図が奪われます。 秘宝の隠し場所を知るには、地図だけではなく「アラーの眼」という宝石が必要であり、宝石を持っているのはシャバナン殿下の横浜に住む愛人で浅川という母娘。その浅川母娘(娘のほうが松島トモ子さん)を守って、月光仮面がサタンの爪と戦う。 前半は日本国内、後半はパラダイ王国(もちろん国内で撮影)に舞台が移って、スケールが大きいと言いたいのですが、そうはならず、いかにも低予算映画です。 当時の子供たちは喜んで見たのだろうと思うのですが、現在の目で見るとストーリーに伏線も貼られていないし、出たとこ勝負のやっつけ仕事みたいなもの。祝十郎ってほんとに名探偵なの?と思ってしまいます。松田警部(須藤健)に対しても態度がでかいし。 助手の袋五郎八、カボ子の脇役レギュラー2人ですが、五郎八の柳谷寛さんは東映時代劇でよくお顔を拝見し、さすがと思わせるのですが、カボ子の若水ヤエ子さんはズーズー弁にわざとらしさがあってイヤミな感じで、頂けない。 時代劇の同心や岡っ引きが主人公の場合、必ずといっていいほどに脇に三枚目の子分役がいる。この「月光仮面」だけでなく、当時のヒーローものでも同様で「まぼろし探偵」も「七色仮面」も助手は三枚目が務めています。 財宝が隠された洞窟が崩壊して、欲にくらんだサタンの爪が仮面だけを残して身体は埋もれ、仮面の上に土砂が降り注ぐラスト、ここだけはちょっと良い感じ。 パラダイ王国に舞台が移って、ここでも月光仮面が現れるのですが、ジープも通れない密林と山岳の土地でオートバイに乗るのはいかがなものか?、どうやって日本から運んできたの?とケチをつけたくなるのは野暮か。
2015年03月23日
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「笠智衆」りゅう・ちしゅう 1904年5月13日生まれ、1993年3月16日没 熊本県出身 日本映画で私が最も好きな俳優は渥美清さんと笠智衆さんです。 小津安二郎監督作品では「晩春」(49)「麦秋」(51)「東京物語」(53)「秋刀魚の味」(62)しか見ていないのですが、笠智衆さんの演技がとてもいいですね。 ほとんど棒読みのような感じもする台詞は、それが持ち味なのでしょうが、見ていて気持ちがいいくらいのユッタリ感です。 日本のお父さん、日本のおじいさん、といった感じの、これほどゆったりと落ち着いた安心感を与えてくれる俳優が他にいるでしょうか?「東京物語」は1953年作品だから、この時の笠さんはまだ49歳でしかない。それなのにすごく年老いた感じをじょうずに表現しています。これにはちょっとビックリ。 渥美清さんの寅さんの「男はつらいよ」シリーズでは1969年の第1作からずっと常連で、1992年の第45作まで御前様の役を演じていてお馴染みになっています。
2015年03月04日
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1953年日本映画の興行成績です。 金額は配給収入。1位「君の名は 第二部」 3億2万円2位「君の名は 第一部」 2億5047万円3位「太平洋の鷲」 1億6318万円4位「地獄門」 1億5179万円5位「金色夜叉」 1億4669万円6位「花の生涯」 1億3990万円7位「戦艦大和」 1億3601万円8位「東京物語」 1億3165万円9位「叛乱」 1億2642万円10位「家族会議」 1億2554万円「晩春」(49)と2枚買って500円のDVDでの鑑賞です。 これもずいぶん前にNHK教育テレビで見たのが初だったのですが、136分もあるせいか「晩春」ほどには回数を見ていないです。「東京物語」(1953)監督 小津安二郎 製作 山本武 脚本 野田高梧、小津安二郎撮影 厚田雄春美術 浜田辰雄衣裳 斎藤耐二編集 浜村義康音楽 斎藤高順出演 笠智衆、東山千栄子、原節子 杉村春子、山村聡、三宅邦子、香川京子 東野英治郎、中村伸郎、大坂志郎、十朱久雄 本編136分 モノクロ スタンダードサイズ 周吉(笠智衆)、とみ(東山千栄子)の老夫婦が尾道から二十年振りに東京に出てきます。 途中大阪では三男(大坂志郎)に会えたし、東京では長男(山村聡)の一家も長女(杉村春子)の夫婦も歓待してくれて、熱海へまでやってもらいながらも、何か親身な温かさが欠けているようで居心地が悪い。それと云うのも、医学博士の肩書まである長男も長女の美容院も、それぞれの生活を守ることで精一杯で、両親にかまっている余裕がなかったからです。 いつでも遊びに来てくださいよ、と言いながらもいざ来られると困る。じゃまだから熱海へやるとすぐに帰って来てしまって「もう帰って来たの、もっとゆっくりしてくればいいのに、ほんとにもう」となるのです。 周吉は同郷の老友との再会に慰められ、とみは戦死した次男の嫁だった紀子(原節子)の変らざる心遣いが嬉しかった。紀子は会社を休んで親切に2人を東京見物に案内してくれたのです。 結果として騒がしい都会には2人が落ち着ける場所はなく、老夫婦は寂しい気持ちを抱いたまま尾道に帰って行きます。老夫婦を心からのおもてなしをもって迎え入れてくれたのは、戦死した次男の嫁だけだった。「ハハキトク」。老夫婦が帰国してまもなく、尾道で同居している次女 京子(香川京子)が送った電報が東京のみんなを驚かす。 とみは脳溢血で静かにその一生を終える。駆けつけたみんなが悲嘆にくれたのも一時、葬儀がすむとあわただしく東京に帰ってゆく。京子は兄姉達の不人情を憤るのですが、紀子は若い京子に大人の生活の厳しさを言い聞かせます。 紀子も自分自身いつまで独り身で生きていけるか不安を感じている。東京へ帰る日、紀子は心境の一切を周吉に打ちあけます。周吉は上京した際に紀子が優しくしてくれたことに感謝し、妻の形見だといって時計を渡すと紀子は「私おっしゃるほどのいい人間じゃありません。わたしはずるいんです」と言って号泣する。 京子は紀子が乗った上り列車を小学校の教室の窓から見送り、周吉は誰もいなくなった家で一人身の孤独を感じるのでした。「老いの孤独」を描いていて、これは「晩春」も同じかと思うのですが、こういう映画は若い人には実感もないだろうし感情移入もできないかもしれない。 そういう実感や感情移入ができなければ、ただの退屈な映画になってしまうのでしょう。 熱海の海沿いの堤防の上を歩く老夫婦の姿。笠智衆さんのあとを東山千栄子さんが歩く2人の「寂しい気持ち」が表れた何とも言えない場面です。立ちくらみがしてうずくまる東山千栄子さん。年老いた両親の心の寂しさを思いやることができる人ならば、この場面は涙なくして見られないのでは。 自分が親に対してどんな態度をとってきたか、親になって初めて親の気持ちがわかる。この「東京物語」の評価もそういうことで分かれるのかもしれないですね。
2015年03月03日
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「晩春」(1949)松竹監督 小津安二郎脚色 野田高梧、小津安二郎原作 広津和郎製作 山本武、渡辺大撮影 厚田雄春美術 浜田辰雄編集 浜村義康音楽 伊藤宣二出演 笠智衆、原節子、月丘夢路、杉村春子 青木放屁、三宅邦子、三島雅夫、宇佐美淳、桂木洋子、坪内美子 本編108分 モノクロ スタンダードサイズ 小津安二郎監督の名作映画「晩春」。 ずいぶん前にNHKの教育テレビだったか?で見て以来、私の大好きな作品で、もしかすると日本映画でいちばん好きかもしれません。 近所の書店で買った格安DVDです。「東京物語」(53)と2枚買って500円。画質も悪くないし、これはいい買い物をしました。 鎌倉を舞台に、妻を早くに亡くした大学教授の父 周吉(笠智衆)と27歳になってもそんな父を一人残して嫁に行く気になれない娘 紀子(原節子)。 周吉は娘の紀子と質素な二人暮しをしているのですが、いつまでも自分の世話をさせていては婚期を逸してしまうと心配する。 二人のことが気が気でなく何かと世話を焼く叔母(杉村春子)。 父と娘の親子愛を中心に二人の周囲の人たちの人間模様を描いた作品です。 縁談を持ってきた叔母はなんとかして紀子に承知させようとするが、首を縦にふらない紀子です。「私が結婚したらお父さん困るじゃないの」という紀子を結婚させようと、周吉は自分も再婚すると言い出す。 この場面で紀子はすごく怖い顔をしますね。 叔母に縁談を承諾した紀子は、父周吉と京都旅行に出かけ、宿で父と二人になった時、心を迷わせる。「結婚なんかしたくない、今のままじゃいけないの?このままお父さんといっしょにいたい」という娘に周吉は、「お父さんの人生はもう終わりに近いが、お前はこれから自分の人生を作っていくんだ。結婚したから幸せになるってものじゃない。幸せは自分たちで築くものなんだよ、それが夫婦なんだよ。お前は良い夫婦をつくっていけると思うよ」と諭します。 紀子が嫁いだ晩、家に一人になった父周吉の孤独。「ああでも言わなければ紀子は結婚せんからね」・・・・お父さんはつらいな。 この映画は1949年作品で、太平洋戦争の敗戦からまだ4年しか経っていません。 ヒロインの紀子が北鎌倉から東京へ電車で出るシーンなど、その沿線の風景や銀座の風景など、その復興の早さに驚かされます。 昭和24年の日本のリアルタイムでの風景が映画に記録されていて、その当時を知らない私のような者には貴重なもので、まだ生まれる前なのに、何か懐かしい感じがするのは不思議なものです。 結婚式の当日に花嫁姿の紀子が父の笠智衆さんに「お父さん、今までお世話になりました」と挨拶する場面。 いつかこの場面をテレビで見ていて、娘に「お父さん、泣いてるん」と笑われたのですが、「ばかもんっ」娘を持つ父親がこの映画を見たらきっと泣くだろう(若い人には理解できないかもしれないけども、ある年齢に達していて泣かない人がいたら、その男は鈍感者だ)。 原節子さんいいね。笠智衆さんも最高。小津安二郎監督の作品ではこの「晩春」がいちばんです。
2015年03月02日
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東映チャンネルを一ヶ月間無料で見せていただけることになったので、番組表を確認しました。 今月は「七色仮面」の劇場版が2本ありますね。来月も2本が放送予定されている。「七色仮面(劇場版)」(1959)「七色仮面 恐るべき復讐」(1959)「七色仮面 死の追跡」(1959)「七色仮面 南海の凱歌」(1959) この4本はテレビ版の第1部「コブラ仮面」全12回を編集して4本の映画として公開されたものらしいです。「七色仮面」は川内康範さんの原作で、「月光仮面」とともに日本の仮面ヒーローものでは最初期にあたる作品です。「月光仮面」もそうですが、見ているとどこか時代劇風な感じがします。 物語をそのまま時代劇に置き換えることもできそうで、鞍馬天狗や快傑黒頭巾、白頭巾など、そんな時代劇ヒーローと似たような雰囲気があるのは、時代劇の東映だからか。 一本目の「七色仮面(劇場版)」を見たのですが、本編75分、最後まで七色仮面が登場しない。TV版の第1~3回を編集して1本の劇場映画として上映されたものだそうです。 主人公の蘭光太郎(波島進)は私立探偵で、助手が大八というおデブな少年。蘭光太郎は様々な人物に自在に化けることのできる変装の名人であり、それが二挺拳銃の神出鬼没のヒーロー七色仮面となって悪と戦います。 敵となる悪役は「コブラ仮面」で、映画4本で完結というのですが、当時はどれくらいの間隔で公開されていたのか?、このような連続ものだと、間が開きすぎるとまずいだろうし、2週間か1ヶ月くらいだったのでしょうか。おそらく時代劇かなにかとの同時上映だったのではないだろうか。 この東映チャンネルで放送されるのはHDで、DVD未発売だそうで、貴重な作品だと思います。 私が小学2年か3年生のころ、テレビで「七色仮面」があったのは知っていましたが、家にテレビがなかったし、実のところ、まともに見たことがない。 それでも波島進さんが蘭光太郎役だというのは何となく知っていて、子供ながらも情報源があったのでしょう。「新・七色仮面」になると千葉真一さんに交代したのも知っていました。「月光仮面」と「ナショナルキッド」はよその家にお邪魔して何度か見ているのに、「七色仮面」だけはそのような記憶がないのはなぜだろう? 月刊マンガ誌「ぼくら」に原作のマンガが連載されていたのは、これはリアルタイムで読んでいたので覚えています。一峰大二さんの作品で、「ナショナルキッド」もそうですが、当時はお気に入りのマンガだった、です。
2014年07月24日
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1961年(昭和36年)の日本映画興行成績です。 金額は配給収入1位 「椿三十郎」 4億5010万円 2位 「赤穂浪士」 4億3500万円 3位 「あいつと私」 4億8万円 4位 「用心棒」 3億5100万円 5位 「宮本武蔵」 3億500万円 6位 「幽霊島の掟」 3億200万円 7位 「銀座の恋の物語」 3億円 8位 「堂堂たる人生」 2億8977万円 9位 「アラブの嵐」 2億8800万円 10位 「世界大戦争」 2億8499万円 このデータはちょっとおかしいですね。「椿三十郎」は翌1962年1月公開なのに、なんでか1961年の第1位になっていて、なにかの間違いではないかと思います。 黒澤明監督の代表作である「用心棒」は1961年4月公開で、第4位です。「椿三十郎」の1位が間違いで消えるとすれば第3位ということになる。 上州の馬目という宿場町。ヤクザの跡目相続がもめたのが原因で、二人の親分が争っている。そのようなゴーストタウンのように寂れた宿場町に現れた主人公の浪人者(三船敏郎)。 桑畑三十郎といういいかげんな名を名乗る浪人者を演じる三船敏郎さんの持ち味を最大限に引き出した娯楽時代劇映画の傑作です。 この頃の時代劇では、東映の作品がそうかと思うのですが、正義感あふれる、正面から堂々と悪に立ち向かう主人公というのが定番でした。 舞踊のような殺陣や折り目のついたきれいな衣裳などの、それまでの様式化された時代劇ではなく、いかにもぶった切るといった三船さんならではの迫力ある殺陣と、登場人物の衣裳は着古した、汚れた着物など、リアル感を出したものです。 まず開巻早々に居酒屋の権爺(東野英治郎)が三船さんの浪人者に当地の現状を説明する、この展開はわかりやすくてうまいですね。 主人公の三船さんが用心棒に雇われるふりをして二大勢力のいがみ合いをあおり立ててゆき、悪党どもを共倒れにさせようと画策する。 黒澤監督は「西部劇のような時代劇を作りたい」という考えだったそうで、それが逆にイタリア映画で西部劇となって逆に影響を与えることになった、時代劇映画として画期的な作品。 この映画を見ずして黒澤映画は語れないし、時代劇も語れない、それくらい大きな位置にある作品です。 仲代達矢さんが悪役として登場し、黒いマフラーに着流し姿で拳銃を持っている。幕末を背景にしているので時代考証的にもこの回転式弾倉の拳銃はおかしくないようです。 黒いマフラーの粋なスタイルというのは、娯楽映画的でおもしろいキャラです。 三船さんと対決のあと、「地獄の入り口で待ってるぜ・・・」と言って死んでいくのが、なかなかよろしくて。 東野英治郎さんの権爺も良い味を出しています。
2014年01月15日
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加山雄三さん主演の「若大将シリーズ」の第4作目「ハワイの若大将」をDVDで鑑賞。 昭和38年(1963)8月公開の東宝映画です。 先週から若大将のDVDを4作品見て、「エレキの若大将」、「海の若大将」、「アルプスの若大将」と、この「ハワイの若大将」。 4本のうちでは「エレキの」がダントツで、次にこの「ハワイの若大将」がよく出来ていると思います。やはり若大将の映画はおもしろいな、と再認識したしだい。 若大将こと田沼雄一(加山雄三さん)は、今回は京南大学ヨット部に所属。 海で練習中の若大将と江口(二瓶正也)のヨットに、澄ちゃん(星由里子)の運転するモーターボートが衝突する。 澄ちゃんは、ヨット部のコーチ平山(中丸忠雄)が勤める美粧堂という化粧品会社の社員。 大学での試験中、青大将(田中邦衛)のカンニングのとばっちりを受けて、若大将は青大将とともに停学処分になり、父の久太郎からも勘当されてしまいます。 青大将は、それならハワイの大学に行くさ、と。 青大将がハワイの大学入学試験でもカンニングした事を知らされたその父親は、バイトに励んでいた若大将を呼んで誤解をわびると共に、ハワイに行って青大将を連れ帰るように依頼されます。 懐かしきパンナムの旅客機でハワイに着いた若大将 田沼雄一。 タクシーにパスポートや現金の入ったバッグを置き忘れた若大将は、青大将が世話になっている古屋(左卜全)からも誤解され、途方にくれていたところを、ハワイの支店に来ていた澄ちゃんと再会する。 当時の日本人にとっての憧れのハワイにロケをした作品。 シリーズ初の海外ロケで、B級作品からA級娯楽作品に昇格したということか、人気シリーズになって予算がそれだけ増やされたということだろうか? 昭和38年は東京オリンピックの前年です。雄一のおばあちゃん(飯田蝶子)が今回も最高にすばらしく、オリンピックで外人が来るからと英語を習っている。 雄一の父の久太郎(有島一郎)、妹の照子(中 真千子)。若大将の「暖かな家庭」は良いですね。近頃の映画やテレビでは見られなくなった光景です。 客に馬の肉を出して、次に鹿の肉を出したために客を怒らせたというギャグはこの映画でした。 今作の澄ちゃんは若大将がハワイで結婚すると思い込んでスネる程度で、いつもの自己中な澄ちゃんは見られない。青大将もカンニングで若大将に迷惑をかけたりするけれど、いつもの不埒者ぶりは抑えられているようです。 お約束の「澄ちゃんの危機」は、今回は青大将(と若大将も)が救出する。正義の味方の青大将です。 若大将が初めてオリジナル曲を披露した作品。「恋は紅いバラ」の英語版というか、原曲で、のちに岩谷時子さんによる日本語歌詞が付けられた「DEDICATED」をハワイで出会った澄ちゃんとワイキキビーチを散歩して歌う。 若大将 田沼雄一は、男子はこうあるべきという模範ですね。 スポーツ万能の格好いい日本男児だけれど、けっしてスーパーマンではなくて、抜けているところもあるし、頼まれたら断れないという性格(おばあちゃん似)からいつも大学を停学処分になり、父親に勘当される。 でも「まいったな-」くらいの感じで、そんなに困ったふうでもない。それに周囲の人たちがいつも若大将の力になってくれるのは、彼の人徳でしょうか。 なによりも「育ちの良さ」を感じる明るいキャラクターは、中学の時に友人が大ファンで夢中になっていたのが、今になって納得しました。
2013年08月30日
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東宝映画「若大将シリーズ」の第7作、「アルプスの若大将」。 1966年5月公開。第4作「ハワイの若大将」に次いで本格的海外ロケがおこなわれた作品。 スイスアルプスからウィーン、ローマへと。シリーズ当初はB級(低予算の意味)作品だったのが、このころになると大人気を得て、押しも押されもせぬドル箱映画になっていたんですね。 大学生の時にスキーの「大回転」で国体に出場したこともある加山雄三さんにとって本領発揮の作品でもあるようです。 今はもうなくなりましたが、この映画はパン・アメリカン航空(パンナム)の全面的タイアップを得て、ヒロインの澄子さん(星由里子さん)はパンナムのローマ支店に勤務しているOLという設定。パンナムのユニフォームがよく似合います。 物語が国際的になって、オリンピックで史上初の三冠王に輝いたアルペンスキーのトニー・ザイラー(黒い稲妻)も特別出演している。 この出演は当初から依頼しようとしていたがどうしても連絡がつかず、あきらめたところに偶然にホテルのフロントで出会って、出演してもらったそうです。通りすがりといった小さな役で、ノーギャラだったと加山さんがインタビューで語っています。 それとパン・アメリカン航空の、大相撲千秋楽での「ヒョーショージョー」でよく知られたミスター・ジョーンズさんも澄子さんの上司の役で出演。この映画ではジェット旅客機もパンナムだし、タイアップしたというだけあって、パンナムが目立ちます。 浅草の「田能久」に、フランスからやって来たリシェンヌ(イーデス・ハンソンさん)が居候になり、この異国女性に接して、新し物好きなおばあちゃん(飯田蝶子)と、頑固一徹な久太郎(有島一郎)が正反対の対応を見せるのが面白いコメディ場面になっている。 田沼雄一と青大将のマドンナ、澄子さんは、相変わらずの焼き餅焼きの自己中。 今回も上野駅まで青大将にアッシー君をさせて暴走し、白バイに追われる。免許証を取り上げられ、澄ちゃんにもフラれた青大将は踏んだり蹴ったり。今作品の青大将こと石山新次郎(田中邦衛)はいつものような不埒者ではなく、意外におとなしい。 加山雄三さんが歌う、「君といつまでも」、「夕陽は赤く」、「蒼い星くず」、「走れドンキー」、「ブライト・ホーン」、「モンテ・ローザ」、などなどの曲も、いいね。
2013年08月22日
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映画「海の若大将」。1965年(昭和40年)8月公開。 邦画のDVD価格はなんでこんなに高いのか?と思うくらいに高額ですね。もっと安ければ買うのに、高いので買わないという状態です。 東宝映画のDVDは旧作でも4500円くらいですが、それが「期間限定プライス版」として全144作品が定価2500円で発売されます。 3回に分けての発売で、第1弾として8月2日に黒澤明作品を含めて戦争映画、若大将など42作品が出ました。ヤマダ電機さんでは1990円で販売(現在はポイント5%が付く)。 若大将シリーズの第1弾は「大学の若大将」、「ハワイの若大将」、「エレキの若大将」、「海の若大将」、「アルプスの若大将」の5本。 こういうラインナップを見ると、東宝映画で少年期を育ったような私は欲しくなってしまい、とりあえず「若大将シリーズ」の「海」、「エレキ」、「アルプス」の3枚を購入。 1枚1990円はDVDとして決して安くないけれど、数年前に出た書店販売「東宝特撮映画DVDコレクション」(デアゴスティーニ)の1990円と同じで、こちらは正規盤だし、ずっと価値があるかと。 昨日は「エレキの若大将」と「海の若大将」をつづけて鑑賞。映画を2本続けて見ることなど近年はあまりないけれど、2本合わせても3時間です。「海の若大将」を見るのは40年ぶりくらい。 音楽映画といってもいいくらいにエレキサウンドにしびれた「エレキの若大将」の面白さには劣る?かと思うが、こちらも青大将の不埒な馬鹿さ加減や、ヒロイン澄子(星由里子さん)の性格悪さも絶好調。 若大将が女性にもてるのを嫉妬し、自分の早とちりから大いにスネる澄子さん。 若大将への当てつけから青大将を誘って・・・。青大将をアッシー君代わりにし、パトカーに追われて停止させられ、取調中に免許証を返してもらわないうちに暴走させて若大将が出場している水泳競技場へ向かわせる。警察に連行される青大将が情けなさそうに言う「行ってきます、澄ちゃん・・・」に、そっけなく返す言葉が笑わせられます。 青大将の不埒者ぶりと、澄子の自己中ぶり、これは「若大将シリーズ」のお約束で、ここまでくると確信的なキャラクターになっているんですね。 若大将こと田沼雄一はすき焼き屋の老舗「田能久」の一人息子。 母親に早く死なれ、家族は父の久太郎(きゅうたろう。有島一郎)と、おばあちゃん(飯田蝶子)、妹の照子(中真千子)の3人。 頑固でわからず屋の父親と、新し物好きで孫の雄一が可愛くてしようがない、雄一の最大の理解者でもあるおばあちゃん。兄思いでしっかり者の妹。 この3人の好演が若大将を常にバックアップしていて、ばかりでなく、この映画の土台をささえているのがこの3人の家族のようです。
2013年08月21日
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「大学の若大将」 1961年7月公開「銀座の若大将」 1962年2月公開「日本一の若大将」 1962年7月公開「ハワイの若大将」 1963年8月公開「海の若大将」 1965年8月公開「エレキの若大将」 1965年12月公開「アルプスの若大将」 1966年5月公開(このあと、「レッツゴー!若大将」1967年1月公開。以降シリーズ続く) 若大将こと田沼雄一(加山雄三)が京南大学のスポーツ部に属して大活躍する青春コメディ映画です。 私がリアルタイムで見たのは「海の若大将」からで、といっても公開時から半年、1年遅れの小中学校の春・夏休みの恒例行事「映画教室」です。「海の若大将」、「エレキの若大将」、「アルプスの若大将」の3本は加山雄三さん人気の絶頂期にあたるもので、シリーズの代表的作品。 1965年(昭和40年)ベンチャーズが来日し、また英国の人気グループ「ザ・ビートルズ」の影響からか、日本でもエレキブームが巻き起こりました。 このエレキブームのすぐあとに「グループサウンズ」ブームが続くのですが、私の頭の中ではエレキブームとグループサウンズは一緒くたになっているようです。 この「若大将シリーズ」の3作品は、この時期のもので、私の多感だった中学生の時で、良い時に良い映画にめぐりあったものだと思っています。 中学同級の友人が加山雄三さんの大ファンで、「若大将」の映画を見たのも、加山さんが歌う「恋は紅いバラ」や「夜空の星」、「君といつまでも」などのヒット曲になじんだのも、この友人に付き合わされたのがきっかけになっています。「エレキの若大将」(1965)をDVDで鑑賞。 見ものは、田沼雄一と青大将が交通事故の弁償金を工面するためにテレビのエレキ合戦に出場するくだり。10組勝ち抜いて優勝すると賞金10万円もらえるというので、雄一が仲間とエレキバンドを結成して出場する。 このメンバーに黒沢年男さんと、「ザ・ワイルドワンズ」の加瀬邦彦さんがいます。それと女性4人のバンド「アイビーシスターズ」のメンバーに松本めぐみさんがいる。 青大将の自己中的コメディリリーフなキャラと、若大将のマドンナである澄子(星由里子さん)の焼き餅焼きと早とちり。ストーリー展開はワンパターンだけれど、おもしろく、見て飽きない不思議なシリーズです。
2013年08月20日
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1972年日本映画の興業成績です。 金額は配給収入。 1位 「男はつらいよ 寅次郎夢枕」 9億3408万円 2位 「昭和残侠伝 破れ傘」 5億7324万 3位 「新網走番外地 嵐呼ぶダンプ仁義」 4億7704万 4位 「関東緋桜一家」 4億5235万 5位 「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」 3億9511万 6位 「女囚さそり 第41雑居房」 3億7150万 7位 「御用牙」 2億8346万 8位 「新兵隊やくざ 火線」 2億6147万 9位 「子連れ狼 三途の川の乳母車」 2億5403万 10位 「座頭市御用旅」 2億4462万円 この年の日本映画では、相変わらず「男はつらいよ」が人気あって強いですね。 第2位から第4位までは東映の任侠ヤクザ映画です。 それと劇画の映画化が目立ち、6位の「女囚さそり」は「ビッグコミック」連載の篠原とおるさんの劇画、第7位「御用牙」は「ヤングコミック」で神田たけ志さん、9位の「子連れ狼」は「漫画アクション」で小島剛夕さんの劇画の映画化です。 この1972年当時は日本映画が斜陽といわれながらも、現在に比べると活気があったのではないでしょうか? 第4位「関東緋桜一家」(72)は藤純子さんの引退記念作品です。 これはまだ見たことがないので、機会があればぜひ見てみたい。 マキノ雅弘監督で、出演が、藤純子、鶴田浩二、高倉健、若山富三郎、菅原文太、待田京介、伊吹吾郎、山城新伍、とスターがそろっている。 この連休は、家でせっせと映画を録画したDVDのレーベル印刷をしています。 まだ印刷してないDVDに文字と写真を貼り付けて、少しでも見栄えのするものにと。 そんな中にあった、「緋牡丹博徒」シリーズの8枚。 この藤純子さんの任侠映画は大好きなシリーズで、普段はあまり見ることがないですが、思い立って見始めるとやはり面白くて夢中になってしまう。「緋牡丹博徒」(1968)「緋牡丹博徒 一宿一飯」 (1968)「緋牡丹博徒 花札勝負」 (1969)「緋牡丹博徒 二代目襲名」 (1969)「緋牡丹博徒 鉄火場列伝」 (1969)「緋牡丹博徒 お竜参上」 (1970)「緋牡丹博徒 お命戴きます」 (1971)「緋牡丹博徒 仁義通します」 (1972) 全部で8作品あって、出来不出来はあってもつまらない作品はありません。 ストーリー展開はほぼ同じもので、良い親分さんと悪い親分が対立していて、ヒロインの緋牡丹お竜こと矢野竜子が良い親分さんにやっかいになっていて、悪い親分に良い親分さんが闇討ちにあったりする。 我慢を重ねて辛抱していたお竜さんが、ついに堪忍袋の緒を切る。毎回お竜さんを助ける高倉健や鶴田浩二や菅原文太、待田京介さんなどが、いっしょに殴り込み。 お竜さんの小太刀の殺陣が超が付くくらいにカッコ良く、帯の背中に袋に収めた小太刀(ドスではないと思う)を差しているのが粋でスマートで素敵です。 自分的には第5作の「鉄火場列伝」が最も気に入っていて、丹波哲郎さんの親分さんがカッコいい。 全8作、どれがどれだったか内容を忘れてしまっていて、もう一度見返さないとならない。義理と人情の任侠映画ですが、今ではこのような映画は作れない時代だし、作ろうともしないだろうし、期待もされていないジャンルです。 この「関東緋桜一家」あたりが明治大正を背景にした任侠映画の最終作らしく、翌1973年からは「仁義なき戦い」などの現代ものの流行へと移りますね。
2013年01月14日
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007映画の第1作「007は殺しの番号」(1972年12月のリバイバル時に「ドクター・ノオ」と改題)が日本で公開されたのが1963年6月です。 その年の8月に東宝映画「国際秘密警察指令第8号」というシークレット・エージェント物の作品が上映されていて、これが「007」の影響を最も早く受けた映画だといわれているそうです。 日本映画専門チャンネルで放送された「国際秘密警察指令第8号」を見ました。 監督 杉江俊男 出演 三橋達也、夏木陽介、佐藤允、水野久美 ジェリー伊藤、若林映子、中村哲 1963年 総天然色 97分 南ベトナムでの石油プラント事業の権利獲得をめざす日本の商社富光物産。その現地駐在社員(夏木陽介)が帰国した羽田空港で何者かに拉致され、行方を断つ。 彼のことを調べつつ、船で南ベトナムに旅発つべく名古屋に新幹線「こだま」で向かった同僚の江崎(佐藤允)が、石油プラントの権利を横取りしようと暗躍する国際スパイ団に狙われる。 その国際スパイ団に潜入している国際秘密警察のエージェント北見次郎(三橋達也)。 彼は3年前に死んだとされるステファン・ヤゴスキーなる人物を追う特命をうけて、この国際スパイ団に潜り込んでいる。 彼ら一味に捕らえられた商社マン江崎(佐藤允)を中心に話が進み、彼を陰から助けようとする北見次郎、江崎に思いを寄せるようになる一味の冴子という女(水野久美)、一味の首領ケント(実は北見次郎が追うステファン・ヤゴスキーだった)。 この1963年という時代は日本が高度成長期に入ろうとしていた頃。翌年には東京オリンピック開催をひかえ、新幹線開通など、日本の新しい時代の始まりだった頃です。 シークレット・エージェント物の映画ということで主役は三橋達也さんの北見次郎ですが、物語の中心は国際スパイ団に捕らえられて痛めつけられる江崎という商社マンです。 南ベトナムでの石油開発の利権をめぐっての争い。日本企業が海外に進出しようとしはじめた時代ならではの物語ですね。 三橋達也さんといえば、私にはテレビの十津川警部を連想しますが、この昭和30年代前半の東宝映画でこのようなシークレット・エージェントを演じていたのは知りませんでした。 007号のジェイムズ・ボンドの影響を最も早く受けた作品とされながら、日本映画ではその後、このようなスパイ活劇は育っていかなかったようです。 この「国際秘密警察」は、「虎の牙」(64)「火薬の樽」(64)「鍵の鍵」(65)「絶体絶命」(67)と続き、シリーズ化されて全5作が作られました。 この他の日本映画ではこのようなスパイアクション映画は見られません。 三橋達也さんは日本のケイリー・グラントと称される二枚目俳優でスマートなタイプです。 三橋達也さん以外にカッコいい秘密諜報員を演じられる日本俳優がいなかったわけでなく、夏木陽介さんや川津祐介さん、加山雄三さんでも黒沢年雄さんでも、演じられるかもしれない。 それなのに、イギリスやアメリカ、イタリアでは「007」の影響を受けた幾多の作品が生まれていったのに、日本ではこれっきりになってしまった。 小説では大藪春彦さんが「エージェント物」を書いているし、漫画ではさいとう・たかをさんが「007シリーズ」と「0011ナポレオン・ソロ」を描き、望月三起也さんが「秘密探偵JA」を描き、川崎のぼるさんが「タイガー66」を描いた。 でも、日本映画ではそのようなスパイ活劇は育たたず、当時の流行には乗らなかったですね。
2012年12月03日
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ずっと前に見た「黒い絨毯」(54)という映画で、主役のチャールン・ヘストンのセリフに「人間には三通りの自分がある。他人から見た自分、自分で思っている自分、そして本当の自分だ」というのがありました。 けっきょく、真の「自分」などは誰にも、当の本人にもわからない。本人も自分はこうだと思い込んでいるだけです。 物事の真相などというものは、誰にもわからない。それを見る人によって異なるのだから。 芥川龍之介の「薮の中」の映画化である「羅生門」(1950年大映)がそれをテーマにしたものですね。 京の都に近い山中で、旅の武士の死体が発見される。検非違使に事件の関係者が尋問されるが、その証言がそれぞれ食い違う。 旅の武士とその妻が山賊に襲われた。そして侍は死亡し、妻は山賊に狼藉される。逮捕された山賊(三船敏郎さん)、や武士の妻(京マチ子さん)、発見者の証言、霊媒師の口を借りて語られる死んだ武士の霊の証言。それぞれが語ることが異なっていて、真相は人間の心の奥深い薮の中。 黒澤明監督の出世作であり、ヴェネチア国際映画祭でグランプリを受賞した作品として知られます。 この「羅生門」は私も好きで、初めて見たのはNHKのBSだったか教育だったかで、これはすごい映画だと思いました。 黒澤監督の作品では「隠し砦の三悪人」(58)と「用心棒」(61)とともにベスト3だと思っています。 有名な「七人の侍」(54)はそれほど面白いとも、世間でいわれるほど良いとも思わない。 アメリカで作った「荒野の七人」(60)の方が映画としてもよくできているのではないか。 西部劇「荒野の七人」は設定がオリジナルの「七人の侍」よりも納得のできるものです。 山賊団に悩まされている村の農民が国境を越えてアメリカの町に自衛のための銃器を買いにやって来る。出会ったユル・ブリンナーの拳銃使いに「銃を売っている所を教えてくれないか」と頼むと、彼は銃は高いし、それよりも拳銃使いを雇うほうがいいぞ、と。 そういうわけで、村人は七人の拳銃使いを雇って村へ帰る。 黒澤監督の「七人の侍」の農民は江戸時代の農民だといわれます。 戦国時代の農民は浪人を雇わなくても自分の村は自分で守ることができるはずだと。 兵農分離以前の村人は専業農民ではなく、兵士でもあって、合戦に参加して戦った経験者がいくらもいるはず。現にこの映画でも村内から槍や刀や甲冑が発見され、こいつら「落武者狩り」をやってたんだと(刀狩り前の農村に武器があってもおかしくないはずだが)。「七人の侍」の基本設定が成立しなくなれば、その映画世界も「嘘」になってしまいます。 西部劇「荒野の七人」の良い点は、農民は「自分たちの手でやろう」という自立心が最初からあることです。ただそのための武器を買う伝手がないから、出会ったアメリカのガンマンに代わりに買ってくれませんか、となったわけで。 話が「羅生門」から脱線して「荒野の七人」になってしまった。
2012年03月03日
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昨日に続いて「隠し砦の三悪人」。 真壁六郎太(三船敏郎)と雪姫(上原美佐)たちが敵に見つかって、三船さんが何人か倒すのですが、あとの騎馬2名が逃げて報告に走ります。 それを追う三船さんが、ワーッと馬で追いかけて、馬上で斬り落とす。このシーンの三船さんはノースタントで、ご本人が演じているそうです。 そのまま敵の番所まで飛び込むと、かつて友人でいまは敵味方の田所兵衛(たどころ・ひょうえ)、藤田進さんですね、がいて「おうっ!六郎太ではないか、勝負をしよう」といって、槍をとって一対一の戦いを始めます。 勝負は三船さんが勝って、「まいった、首を取れ」という藤田さんをそのまま、「また会おう」といって立ち去る。 その後に、三船さんと雪姫が捕らえられて、小屋に縛られている。そこへ首実検に現れた藤田進さんの額から鼻にかけて大きな傷がある。「その傷は?、おぬし、人が変わったな」と驚く三船さん。 藤田進さんいわく、あの時の勝負に負けたことを殿に叱られて、満座の中で打たれた。それで生き恥をかかせた三船さんを恨んでいると。 それを聞いた雪姫が「勝負に負けたことを生かすも殺すも、その人物の器量しだいであろう。それを恨むとは何事じゃ!。家来が家来なら、主も主じゃ、満座の中で辱めるとは!」 とても16才とは思えないセリフ(雪姫は16才という設定。上原美佐さんは20才くらいですが)。この姫さまを教育したのは老臣だと思う、志村喬さんかな?、が良い先生だったのでしょう。 その翌朝、引き立てられてゆく雪姫と三船さんを、考え込んで見ている藤田進さん。 考えた末に、「よし、決めた!」と立ち上がって、雪姫たちの縄を斬って助け、馬の尻を叩いて逃がしてやる。「犬死には無用!、志あらば続け!」という雪姫の声を背に受けて、藤田進さんが「裏切り、ごめん!」と言い捨てて、馬に飛び乗って姫様たちの後を追って走ります。 カメラは山道を疾走する3騎を遠景で映し、豪快なテーマ曲が入る。 この映画で最高の見所シーンです。武士が仕えるに値する主人とは? 勝負に負けたことで、満座の中で打ちすえて辱める主人がいいのか、それを指摘した美しい姫さまがいいのか。 藤田進さんの侍大将 田所兵衛は姫さまに決めた。「裏切りごめん!」は名セリフだ。 秋月のお家再興をめざす雪姫さまは、真壁六郎太という頼もしい忠臣に加えて、田所兵衛という力強い侍大将を得ました。 雪姫(上原美佐さん)は、嫡男がいないために、男のように育てられた姫です。 その魅力。ショートパンツにスラリと伸びた脚。脚絆と草鞋履き。健康的なお色気ですが、そんな外見だけでなく、自分の命と臣下の命に変わりはないのだと思っているのが良いですねぇ。 侍大将の真壁六郎太(三船さん)の妹が自分の身代わりになって処刑されたことを知って、「姫さまの身代わりになった妹は果報者です」と言う六郎太を「たわけっ!」と激しく叱りつける。 黒澤明監督作品では、この映画は西部劇調というか、娯楽映画的というか、文句なしに楽しめるものです。 この映画、リメイクされて2008年に公開されましたが、名作をへたくそなリメイクでだいなしにしないでほしいと思います。
2011年08月05日
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黒澤明監督の作品では「用心棒」(61)もいいけれど、「隠し砦の三悪人」(1958)がいちばん好きです。 有名な「七人の侍」(54)はそれほど良いとは思わなくて、アメリカでリメイクされたジョン・スタージェス監督の「荒野の七人」のほうが気に入っています。 理由は単純で、戦国時代の百姓は自分たちだけで野盗から村を守ることぐらいできると思うから。当時の百姓はイコール兵隊ですから。 そんなわけで、黒澤監督作品では「隠し砦の三悪人」がいちばんで、次が「用心棒」、この2作が私のお気に入りです。「隠し砦の三悪人」は、隣国の山名家との戦いに敗れた秋月家、その世継ぎの雪姫(上原美佐さん)を護って侍大将の真壁六郎太(三船敏郎さん)たちが同盟国の早川領めざして敵中を横断する。 雪姫さまが三船さんに「その忠義顔が嫌いじゃ!」と言いますね。 ずいぶん前に見たっきりなので、記憶間違いがあるかもしれないけれど、三船さんの真壁六郎太は、妹を姫に仕立てて敵に捕らえさせる。その処刑されたという噂を伝え聞いた雪姫が怒るのです。「私が、そなたの妹ならば、この雪を恨むぞっ」と。いくら自分を逃がすためとはいえ、同じ年頃の娘を犠牲にしたのが許せないのです。「六郎太殿の気持ちを考えておやりなされ」と老女がたしなめるのですが。 姫の前に平伏する六郎太。姫に頭ごなしに叱責されながらも、妹を犠牲にしたことを怒ってくれる姫に対して「この姫さまのためなら死んでも悔いはない」と思ったのではないでしょうか。 この映画の上原美佐さんが演じる雪姫さま、素敵です。敵の侍大将の藤田進さんが、「裏切りごめん!」と言って、雪姫たちを助けて味方になるのも大いに納得できる。 守りがいのあるお姫さま、生命をささげて悔いのないお姫さま。男の働きがいとは、あんがい単純な、そんなものではないかと思う。 千秋実さんと藤原釜足さんのデコボココンビ。この2人の欲深な百姓がなりゆきから雪姫たちといっしょに行動することになるのですが、この二人の設定はジョージ・ルーカスさんが「スター・ウォーズ」で、C-3POとR2-D2の参考にしたそうですね。
2011年08月04日
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