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昨日の木曜日は仕事を少し早めに上がり、都心の隠れ家でW氏と逢った。私は朝から何も食べていなかったので、途中でイタリアンレストランのテイクアウトをいくつも買い込んで、W氏の待つ隠れ家に向かった。バスローブを着たW氏はすっかりくつろいでいた。あまりにおなかがすいていた私は、まずちょっと食べさせてねと言ってラザニアやラグーソースのパスタや牛タンの赤ワイン煮込みなど、このコロナ禍のおかげ?で充実したテイクアウトの品々をテーブルいっぱいにひろげて、もしゃもしゃ食べながら、ひとしきり最近あったことなどを喋り倒した。この一週間、腹が立つことが多く、ついついW氏に愚痴ってしまった。そのあと、ようやくベッドに行ったのだが、なんだか気分がのらない。食べすぎたのか、胃ももたれていたし、からだの反応が鈍かった。W氏には申し訳ないと思いつつ、中断してそのあとはひたすら抱き合いながらおしゃべりばかりしていた。いつもはこんなに喋ることだけに集中しない。途中で必ずセックスし始めたり、ご飯を食べたりするから、しゃべるだけで数時間過ごすというのは、そうそうないことだった。しかもベッドで。おそらく、裸で抱き合いながらしゃべると、普段は意識していなかったことや忘れようとしていたことなどを思い出すのかもしれない。彼は突然私の目を覗き込んで、「どうしようかなあ、言っちゃおうかなあ…」と思わせぶりに言うので、「言ってみて」と促すと、「誰にも話したことがないことなんだ」と言って、おもむろに話し出した。W氏が結婚してまだ1か月ぐらいしか経っていなかった頃のことだった。奥さんがW氏の前に付き合っていた男性とデートして帰ってきたとき、W氏はその奥さんの様子から、セックスしてきたのを悟った、らしい。「確認したの?」と訊いてみると、「いや、何も言わなかった。でも、間違いない。俺はそういうのは気付くんだ」ととても自信がある様子だった。まさかこんな新婚ほやほやの時期に、別の男と浮気するなんて、と若き日のW氏は相当ショックを受け、それなら俺だって好きにやらせてもらおう、と開き直ってしまったらしいのだ。彼はそれ以来、奥さんに心を開くことなく、信頼することもなく、生活の共同者として、あるいは子供たちの母親としての価値だけを認めて45年間を過ごしてきた、と言った。まだ子供も生まれていなかったんでしょ、だったら離婚してもおかしくなかったのに、と私が言うと、離婚するということは考えなかったようだった。彼にとって、奥さんとの結婚は「なりゆき」であり、一番好きな相手ではなかったけれども、まあいいか、と思って決断した結婚だったから、ないがしろにされたことに対して怒りは感じても、嫉妬を感じることはなく、相手が何をしようと関係ないという態度をとりながら、世間体のために結婚生活をつづけたほうがいい、と思ったらしい。W氏が、ずっと自分だけで抱えてきた大きな秘密を打ち明けてくれたから、私も、私がずっと抱えてきた秘密をW氏に伝えることにした。なぜ私が夫とセックスレスになったのか、そのきっかけになった出来事のことだ。これまでずっと、W氏に「結婚して一度もセックスしたことがないなんて信じられない」と言われ続けてきたが、そのたびに、2番目の理由を言ってきた。でも、昨日は1番目の理由を初めてW氏に言った。その出来事は結婚直前に起こった。簡単に言えば、夫の裏切り行為だった。私はそれを理由に夫と別れることもできた。だけど私は夫を赦した。一度だけ思い切り殴らせろと言って、本気で殴った。殴られた夫は、わんわん泣いていたが、泣き終わるとなんだかすっきりした顔をしていた。彼は自分の犯した罪を赦されたと感じ、そして私は彼の罪を心の中に背負うことになった。それを聞いたW氏は「重いな。カオルちゃんはご主人にとって母みたいな存在だな」と言った。そのあとは「なんだか私たちは似ているね」と言い合ってうとうとしてしまった。W氏はやはり遊び人ではなかった。むしろものすごく一途で誠実であることを相手に求めるタイプだった。W氏が付き合い初めの頃から、「俺にとってカオルちゃんは最後の女だ」とか「永遠に一緒にいよう」とか言っていたけれど、それは彼がずっと求めていたのに得られなかった関係性だったのだ。私たちの関係性は、昨日を境にひとつ上のステージに上がったように感じる。結婚という形は取らないけれども、私はW氏のことを、夫と同じように人生のパートナーだと感じている。きっとどちらかが死ぬまで、この関係は続くだろう。今回はそれを確信している。夫との関係と同じように。夫といえば、職場の労働組合の副委員長になってしまった。なぜか全国組織の中央執行部の役員選挙に出ることになって、この数か月、選挙のために随分あれこれ活動していたが、このたび見事当選。私は、夫のことを見くびっていて、選挙だとか運動だとかそういう「男らしい」政治っぽいことは嫌いなのだと思っていた。しかし、この数か月の夫といえば、なんだか生き生きしていて、アドレナリンが出まくっているような感じだったのだ。なんだかねえ。やっぱり夫も男だったんだねえ。と、まるで息子が活躍するのを見ている母親のような心境だ。
2020.08.28
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コロナが猛威をふるっている。都心で仕事をする私は、コロナ対応の仕事が急に増えただけでなく、通常の業務も、まるで何事もなかったかのように、進めなければいけないという悪夢のような日々。3分の1ぐらいの部下は、コロナ対応の特殊部隊に取られてしまっているのに。毎日、朝から晩まで会議会議会議会議。そして合間を縫って企画書を作り、あちこちに電話をかけ、部下たちの相談に乗り、データの分析をやり、山のようなメールに目を通し、ということをやっていると、疲れが澱のように体の奥に溜まっていくのを感じる。私の姉の夫は大企業のサラリーマンだが、ちょっと前まで在宅ワークなどと言って毎日毎日家にいて、時々ZOOMで会議したりするぐらいだったらしい。今年から働き始めた姪も、週に3日の勤務だと。羨ましい…。それでも、忙中閑ありで、先週の金曜日は定時に仕事を無理やり終わらせて、わずか3時間ぐらいの短い時間ではあったが、W氏とデートした。彼の顔を見たらほっとしたのか、あるいは急に私の中の「女」の部分が前面に出てきてホルモンバランスが変わったのかは分からないが、もう閉経したと思っていた生理が急に始まった。しかも、それなりの出血量があり、セックスしたら血だらけになってしまった。W氏はそれを見て、なんだか嬉しそうだったけれど、私は微妙な気持ちだった。せっかく久しぶりに会ったのに、思いっきりアレコレすることができなかったから。W氏との関係も5年を超えて、セックスした回数はおそらく120回を超えていると思うけれども、まだ飽きることなく、毎回楽しい。もしかしたら、これまで一番多くセックスしたのは、いまやW氏かも!夫なんて、結婚前にわずか数回しかしたことないのに。
2020.08.02
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