つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

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2016.12.01
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カテゴリ: 近代日本文学
漱石の小説の構造は一作一作違う。『彼岸過迄』はゆるやかな中短篇の連作によるオムニバス小説である。語り部が名無しの猫から敬太郎という名の人間に変わっただけの小説と言えないこともないが、それはあまりに辛辣であろう。第一『猫』は諧謔(ユーモア)小説であった。なるほど両者ともに「頓挫した恋愛」について語られているが、深みが全然違う。須永はのちの「先生」に連なる原型的な存在である(ついでに言えば漱石の小説の主人公に教師やら「高等遊民」やらが多いのは、明治という時代の反映であろう)。

「須永の話」はこの連作集で一番長い逸話である。構造的にはここからが後半になっている。すなわち「風呂のあと」「停留所」「報告」までが探偵小説的な前半、「雨の降る日」がそこで生じた新たな謎の決着を見る後日譚であり、「須永の話」「松永の話」が後半である。しかしここで終わると少々尻切れトンボになるので取って付けたような「結末」がつく。誰かが言っていたが、小説の終わり方というのはまことに難しいものである。

漱石の小説としてはお尻から数えた方がいいくらいの出来栄えだと思うが、読者は必ずしも質を求めているわけではない。漱石、芥川、太宰くらいになると愛読者はその独特の文体に魅せられるので、たとえ二流の作品でも大目に見てしまう。あなたもその口ならぜひどうぞ。

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Last updated  2016.12.31 17:58:22
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