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あなたは心霊手術を信じるだろうか。そんなものはインチキだ、トリックだ、と思うのがまず自然であろう。だが、正真正銘の男もいたのだ。彼はそう、イエスのように奇蹟をおこなった。ホセ・アリゴー。本名はホセ・ペドロ。アリゴーは農場の少年とか、愚か者とかいう意味らしい。確かにブラジルの小学校を中退した無学な男だが、二〇年間で二百万人の患者を無償で治療したという。一年で十万人。一日平均二七〇人余りという計算になる。中にはブラセボ効果で治った者もあったかもしれないが、二百万という数字は異常である。インチキとは思えない。基督教がこうした御業、イエスの真似事のような所業をなす者を「偽預言者」とみなし、迫害するのもわからないではない。とくにホセ本人が、「自分にはドイツ人医師フリッツという禿げ頭の男に憑依される」と言っているからなおさらだ。だが、医者に見放された者はホセを頼る。2000年余の昔、貧しい病人や迫害された者がイエスを慕ったように。ホセは「共同体」を不安に陥れた罪で懲役16年の判決を受ける。だが誰も彼に手錠を掛けようとしない。ホセは自ら刑務所へ赴き、そこでも治療を行った。もちろん、16年もムショに入ったりはしなかった。彼が釈放されたとき、どれだけたくさんの人々が歓喜の涙にむせび泣いたか。ホセに懐疑的だった神父も、次第に彼を受け入れる。「私は君の治療法を受け入れることはできないが、しかし君が善人だったということは信じているよ」そう言い残して神父は逝った。二人の和解だった。エンドロールには、ホセ本人の記録映画の断片が、本映画のシーンと比べられている。してみると、と不具は思う。2000年前のガリラヤの男も、このようにして病人を癒したのではあるまいか、と。【取寄商品】 / DVD / 洋画 / 奇蹟の人 ホセ・アリゴー
2022.11.22
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天才というと奇矯な人、という印象がある。極端に言えば、天才=発達障碍者ではないか、と思っている。キュリー夫人は果たして天才だろうか、と思っていたが、この伝記映画を観る限り、自己主張が強く、自分を曲げず、わが道を行く人で、性格的にも天才の範疇に入れていいのでないか、と思う。彼女は不遇だった。女性だったから。ポーランド人だったから。信仰を捨てたカトリック教徒だったから。夫亡き後、妻子持ちの男性と恋愛関係になったから。こうした生き方は、今なら多少、風向きが違うかもしれない。だが百年前の世界は、今よりずっと保守的だった。加えてあの頑固な性格も災いした。彼女を救ったのはピエールとの出会いだった。彼はマリーの良き理解者であり、共同研究社だった。ぶつかり合うこともあったけれども、ピエールが馬車に轢かれて亡くなってしまったとき、もっとも気落ちしたのは彼女だった。もっとも、皮肉なことに、夫が死んでしまったから、彼女は自分の名前でノーベル賞を二度も獲ることができた、と言えなくもない。何しろ最初のメダルは、共同研究にもかかわらず、ピエール一人に与えられたものだったから。女性にノーベル賞が与えられた前例はなかった。マリーが前例を作ったのだ。最後に、この映画の特徴は、単なる伝記映画にとどまらず、二人が発見した放射能の可能性と未来について、すでに私たちが知っている歴史的事実と併せて垣間見せてくれることだ。病院嫌いのマリーは、X線とレントゲンの医学的利用の効用を説き、ピエールは癌の放射線治療の可能性を示唆した。一方で、ヒロシマ、核実験、そしてチェルノブイリと、おぞましい現実も突きつけてくる。これから先、科学は人間を幸せにできるだろうか?キュリー夫人 (おもしろくてやくにたつ子どもの伝記) [ 伊東信(1928-) ]小学館版 学習まんが人物館 キュリー夫人 [ 竹内 均 ]【中古】 キュリー夫人 輝く二つのノーベル賞 / ドーリー, 武部 本一郎, 桶谷 繁雄 / 講談社 [新書]【メール便送料無料】【あす楽対応】【中古】 キュリー夫人 ラジウムを発見、人々の幸せに役立てたポーランドの科 / ビバリー バーチ, 乾 侑美子 / 偕成社 [単行本]【ネコポス発送】【中古】 キュリー夫人 岩波少年文庫2076/エリナー・ドーリー(著者),光吉夏弥(訳者) 【中古】afb【中古】キュリー夫人 [DVD]
2022.10.14
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あとでかきます。
2022.10.13
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ナオミ・ワッツがダイアナそっくりで驚いた。ダイアナがドディと恋愛していたのは知っていたが、その前にインド系の医師ハスナット・カーンが密かなる恋人だったとは知らなかった。勿論公的には彼女は「名誉ある人妻」だったから、あまり表沙汰にはできなかったのだろうけれども。彼女はメディアを通して世界中の人に愛された。けれどもその中の誰が、本当に親身になって、彼女のそばにいてくれただろう?ダイアナ【洋画 中古 DVD】メール便可 ケース無:: レンタル落ち
2022.04.12
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あとで書きます。
2022.01.25
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トーベ・ヤンソンと言えばムーミン物語で有名な児童文学者、とずっと思ってきた。その認識は間違ってはいなかったが、正確でもなかった。彼女は彫刻家の娘であり、画家であり、漫画家であり、児童文学者だったのだ。ムーミン物語にはその時々の彼女の私生活や人生観が投影されている。ことにトフスランとビフスランは、トーベとその女恋人の似姿でもあった。二人だけにわかる言語。だが、このビフスランはトスフランよりもさらに自由奔放だった。相手をとっかえひっかえ…正確に言えば、トーベは同性愛者ではない。両性愛者である。だがビフスランのように自由気ままではなく、男は一人、女も一人。世間的にはどうか知らないが、それなりに貞淑なのだ。映画を観てそれまで持っていたイメージが崩れたのは、職業や性癖のことばかりではない。あんなに愛煙家だったとは知らなかった。思うに、この映画がもし30年前に公開されていたら、センセーショナルだったろう。21世紀の今だから、濃淡や温度差はあれ先進国では男女平等の機運が高い現在だからこそ、それほどの違和感もなく受け入れられるのではなかろうか。ムーミン童話集限定スペシャルBOX(全9巻セット) (講談社文庫) [ トーベ・ヤンソン ]
2021.10.01
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物語は1883年、マルクスが亡くなった年に始まる。葬儀での演説は見事で、彼女の聡明さがよく表れていた。醜女ではないが、とりたてて美人というわけでもない。唯物論者の娘らしく、無宗教だった彼女が、遺された甥に向かって言う台詞。「もしもあの世があるとしたら、カールおじいさんは間違いなく地獄に行ってるわ。それより、あの世なんてない、と考えた方がましでしょ?」宗教はアヘンである。この世の幸せから労働者の目を背けるためのアヘンである。彼女は父の後を引き継ぎ、労働者のため、児童の福祉のため、女性の権利のために戦った。彼女の「人形の家」の解釈は見事だった。けれどああ、彼女はついにノラにはなれなかった。なるほど彼女は結婚しなかった。だがそれは、彼氏が既婚者だったからだ。妻が亡くなっても、彼女は結婚しなかった。なるほど彼氏も他の誰とも「再婚」はしなかった。だが金銭感覚ゼロで女たらしで肺病もちの彼は、ちょっと具合がよくなるとすぐに家を出る。病気になると帰ってくる。若い時は父に、「結婚」してからは「夫」に振り回されたミス・マルクスは、ついにある日、耐えきれずに服毒自殺したのだった…ミス・マルクス 【DVD】
2021.09.09
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少林寺拳法というと中国の武術少林拳の一種と誤解されそうだが、これを見ると日本の武道である事がわかる。その直線的な動きは、カンフーというより空手に近い。創始者宗道臣の半生は、映画化に当たって脚色もあるだろうが、おおむねこのようなものであったのだろう。『空手バカ一代』の大山倍達の生きざまを思い起こさせる映画であった。少林寺拳法 [ 千葉真一 ]
2021.03.29
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ブルース・リーの映画は好きだ。本人のものもいいが、もうどあっても新作は観られないので、伝記映画を観る。『ドラゴン/ブルース・リー物語』で彼の妻が白人だとは知っていたが、祖父も白人だったと初めて知った。彼がアメリカでカンフーの伝道に努めたのはそういう背景もあったのだろう。さて本作は、ブルース・リーとウォン・ジャックマンの中国拳法対決が見ものであるが、アクション映画というより、タイトルがそのまま示すように、リーがウォンと対決することで新しい自分に目覚める、という話になっている。加えて、触媒になった二人の弟子、マッキーの「彼女」を救うために共闘して敵のアジトに乗り込む。このあたりおそらくフィクションだと思うが、マッキー自体が図らずも重要な狂言回しとして存在感を示している。構成としては型どおりの映画ではあるが、観て損はしないと思う。【バーゲンセール】【中古】DVD▼バース・オブ・ザ・ドラゴン▽レンタル落ちバース・オブ・ザ・ドラゴン【動画配信】
2021.03.28
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どこかで見た顔だと思ったら、イーサン・ホークだった。もともとのキャラがキャラなので、実際の写真より強面になっているけれども、エジソンとの対決場面を演出するのには適役だったと思う。語り手は、テスラを最も愛した女性…とだけここでは明かしておこう。発明王として有名なエジソンだが、電流に関しては直流にこだわった。その点、交流の可能性に気付いたテスラは、その点ではエジソンに先んじていたのだが、知名度ではエジソンに生涯かなわかなった。おまけに無線通信ではマルコーニに先んじられ、モルガンから莫大な投資金を受けて夢のような発明に取り組んだけれども、一向に実用化できず、最後には見捨てられ…良くも悪くも、イーサン・ホークのキャラでもっている作品である。新品北米版Blu-ray!【テスラ エジソンが恐れた天才】 Tesla [Blu-ray]!
2021.03.26
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ミュージカルの名作『メリー・ポピンズ』誕生秘話。物語は、ウォルトとの交渉に臨むトラヴァース夫人の現在と少女時代の思い出が交錯し、映画の終幕で「和解」に至る。原題の意味はトラヴァースへの約束であると同時に、「絶対に映画化してみせる」という、」ウォルトの娘への20年越しの約束でもあったことを指し示している。原作者のトラヴァースは作品の映画化に乗り気ではなかったそうだが、ともあれ映画化はされた。この伝記映画のどこまでが本当のことなのかは当事者ならぬ身としてはよくわからないが、あのバンクス氏が、ヘレン・ゴフことトラヴァースの実の父親、トラヴァース氏の投影であり、ポピンズは「彼」を救うために来たのだというのは慧眼だと思う。懐かしい音楽も流れてきて、もう一度、DVDで観たくなってしまった。【バーゲンセール】【中古】DVD▼ウォルト・ディズニーの約束▽レンタル落ち【タイムセール】メリー・ポピンズ オリジナル・サウンドトラック デジタル・リマスター盤【CD、音楽 中古 CD】メール便可 ケース無:: レンタル落ち【中古】パンフレット ≪パンフレット(洋画)≫ パンフ)メリー・ポピンズ【タイムセール】メリー・ポピンズ 50周年記念版
2020.11.24
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大統領選挙の結果を巡って陰謀論が(少なくともトランプ氏側から)盛んに出ている。主要メディアはこれを根拠がないものとして退けているが、本当にそうだろうか、と思ってしまうのは『誰がハマーショルドを殺したか』を観たせいかもしれない。ドキュメンタリー映画だが、歴史をひっくり返す力を持っている作品なので、ここに分類した。ハマーショルドが何者かについてはウィキペディアを参照のこと。確かなのは当時彼がアメリカからもソ連からも厄介者扱いされていたこと、そして状況的に暗殺されたであろうことだ。残念ながら、ジャーナリストと調査員の長年の努力にもかかわらず、上の命令で調査を中止させられたりして、「サイマー」という秘密組織がアフリカにあったことだけしか証明できていない(修了証が存在を証明している)。ではその「サイマー」なる組織はどういうものであったのか。またハマショールドの死とどういう関係があるのか。ようやく見つけた証言者が、ほとんど全てを語ってくれた。映画を観た人は限られると思うので、はっきり言うと、・サイマーは傭兵育成機関だった。・ハマショールドはサイマーに殺された。・背後にはCIAがいた(筆者註:暗殺された1961年当時、アメリカ大統領はケネディであった)。・サイマーは無料のワクチンと称して、アフリカの黒人にエイズウイルスを注射していた。・目的は、黒人抹殺にあった。というのが証言の内容である。これが真実なら、容易ならざる話だ。そしておそらく真実だろう、と映画を観た感想として思う。だが証人は抹殺を怖れて秘密の場所にいるという。当局がこの事実を認めることはまず、あるまい。…道しるべ新装 [ ダグ・ハマーショルド ]世界平和への冒険旅行 ダグ・ハマーショルドと国連の未来 / 原タイトル:The Adventure of Peace. (単行本・ムック) / ステン・アスク/編 アンナ・マルク=ユングクヴィスト/編 ブライアン・アークハート/他著 セルゲイ・フルシチョフ/他著 光橋翠/訳
2020.11.22
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この手の話としては、アトランティス、レムリア、エデンの園、ムーが有名だ。それにまだ見ぬ南方大陸の話も。しかしそうした「大物」たちはむしろ脇役で、主役は「幻の島」たちだ。原因はいろいろ考えられる。蜃気楼や氷山との見間違い、地殻変動による沈没などはまだいい方で、中には名誉を守るための嘘とか、ペテン師による詐欺事件まである。中でも、お互いに我こそは北極に一番乗りしたという男たちが(断っておくがアムンゼンではない)、どちらも北極圏の「新しい島」の発見を主張し、しかもお互いに相手を嘘つきと罵っていたという逸話は、まるで三文芝居を見ているようだ。著者の筆致は常に冷静で、書誌学的な面白さもある。ぜひ手にとってご堪能いただきたい。図版を見るだけでも楽しめる本である。【中古】 世界をまどわせた地図 伝説と誤解が生んだ冒険の物語 /エドワード・ブルック・ヒッチング(著者),関谷冬華(訳者),井田仁康(その他) 【中古】afb
2020.06.24
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使徒行伝の著者はルカだと思われるが、この手紙を書いたのは使徒行伝に出てくるパウロである。一言で言えば使徒行伝を補完するもので、「形式よりも信仰が大事」というのが趣旨だ。もっと具体的に言えば、割礼。使徒行伝にも出てくるが、この手紙は要するに「ローマ人に割礼を強制するな」と言っているのだ。味方を増やすためだったのかもしれない。迫害の緩和を狙ってのことだったかもしれない。だがこれは重大な一歩であった。これによって、イエスが説いたユダヤ教の一派は、世界宗教キリスト教としてその地歩を固めたのだ。ローマ人への手紙 信仰による世界の相続人として [ 聖書を読む会 ]
2020.04.14
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イエスの没後、原始キリスト教がどのように広まっていったかを推測する貴重な資料。最初の方はペテロが起こした「奇跡」などが語られるが、サウロが出てくるあたりから、劇的かつ感動的になる。サウロは迫害者だった。それが誰よりも熱心な信徒、パウロになった。そのいきさつについては、ここに述べるより実際に使徒行伝を読んだ方がいいだろう。サウロに起きた「奇跡」については、書物の中で累計三度、語られる。三度と言えばペテロが主を否認した数だ。偶然だろうか。↓小説にもなっています。【中古】 小説「聖書」 使徒行伝 / ウォルター・ワンゲリン, 仲村 明子, Walter Wangerin / 徳間書店 [単行本]【宅配便出荷】
2020.04.12
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葉隠と言えば三島由紀夫の『葉隠入門』である。実際は読んだことがないのだが、山本常朝の名前くらいは知っている。佐賀藩と言えば幕末の活躍で有名だ。有名だが、地味で、美味しいところはみんな薩摩や長州や土佐に取られてしまった。という印象が強い。鍋島直正の名前も「肥前の妖怪」とは聞くものの、薩長にも幕府にもつかぬ日和見主義者というイメージである。これも、地味だ。さてその地味な佐賀藩の礎がどのようにできたか、というのが本書『葉隠物語』の骨子である。意外に面白かったのでここに書きつけておく。戦国時代、主君だった龍造寺家に仕えていた鍋島家が、いかにして平和裏に権力を握ったか。鍋島家が、いかに豊臣秀吉に見込まれたか。鍋島家が、いかに関ヶ原を乗り切ったか。鍋島家が、いかに「島原の乱」で活躍したか。鍋島家、鍋島家と書いたが、直茂、勝茂、光茂、綱茂と固有名詞で語るべきだったかもしれない。ただどうしても「藩を守る」「家を守る」ために主君ともども働いた、という感じなのである。本家と分家との確執と和解。後継者問題。ひとつひとつのエピソードとその顛末が、まさに『武士道』なのだ。これには驚いた。中でも印象的なのは、鍋島光茂と山本常朝の交友のくだりだろう。封建時代の主従関係なので正確には交友とは言えないのだが、和歌の道にいそしんだ光茂のために燃え盛る焔の中に押し入り、歌論書を救い出してきた、という逸話は忘れがたい。また光茂のために古今和歌集の歌をすべて覚え、居並ぶ公家たちの前で堂々と披露したという。作者はそれとなく衆道をほのめかしているが、あるいはそういう感情もあったのやもしれぬ、とは後代の下種の勘繰りであろうか(ただそう考えると、つまり男が男に惚れたのだと考えると、葉隠のあのストイックな表現もむべなるかな、と思うし、三島由紀夫があれほど入れ込んだのもわかるような気がする)。セネカなら、どう答えるだろうか。【中古】 葉隠物語 / 安部 龍太郎 / 日本経済新聞出版 [文庫]【宅配便出荷】【中古】葉隠物語 (日経文芸文庫)/安部 龍太郎【中古】葉隠物語 1 (SPコミックス)/藤原 芳秀、安部 龍太郎【中古】 葉隠物語(2) SPC/藤原芳秀(著者),安部龍太郎(その他) 【中古】afb
2020.03.21
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「消えた大陸のなぞ」の内容の怪しさに比べて、こちらは至極真っ当である。ツタンカーメンの呪いはつとに有名だが、張本人のカーターが無事なのはどうしたわけか。いやそんなことより、面白いのは王家の墓の財宝を巡る、盗賊と考古学者の知恵比べである。勿論盗賊どもの方が何千年も先輩だからして、ほとんどの墓はとうの昔に空っぽであった。あるいは盗賊の目から逃れようと、古の神官たちが王の財宝を隠した隠れ家も、すでに盗賊たちの倉庫になっていた。それでも考古学者はあきらめなかった。何となれば、記録に残る王の墓より、発見された王の墓の方がはるかに少なかったから。幸いなことにスポンサーがついた。だがそのスポンサーは、見つかったものに満足して、途中で降りてしまった。カーターはあきらめなかった。そして再び別のスポンサーの助力を得て、ツタンカーメン王の墓を発見したのだった。残念なことに、墓は全くの無傷ではなかった。荒された跡が少しあった。それでも、他の墓に比べればましだった。長い間砂に埋もれていたのと、いつのころからかその真上に、人足たちの小屋が建てられた7からだった。ひょっとして、こういうことは考えられないだろうか? ツタンカーメンの墓の財宝は、そのほとんどが博物館のものになった。それを一番悔しがったのは、盗賊たちではなかったろうか。だから腹いせに、たまたま発掘グループの中で病死者が出たのを幸い、次から次に関係者を、一見不可解に思える方法で殺害していったと。陰謀論だと笑われるかもしれないが、少なくとも「死者の呪い」説よりはましだろう。面白いほどよくわかる古代エジプト ピラミッドからツタンカーメンまで、知られざる古代文明のすべて
2020.03.04
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スウェーデンの文学はあまり知らないが、アストリッド・リンドグレーンには昔『長ぐつ下のピッピ』『名探偵カッレ君』などでお世話になった。ブログで紹介した『ミオよ わたしのミオ』などは大人になって初めて読んだものだ。彼女の物語に出てくる女の子は元気がよくて活発で魅力的だ。その根源はどこにあるのか。本作品はそれを探る糸口を提供した一編、かもしれない。彼女の文才を見出した男は、妻子持ちの男性だった。身ごもってしまったアストリッドに、男は妻と離婚するまで待ってくれと持ち掛ける。ついては、婚外子が生まれたことが分かると姦通罪で牢屋に入れられるかもしれないから、こっそり生んでくれと。アストリッドは涙ながらに承諾し、デンマークで我が子を産んだ。引き取ると不倫がばれてしまうから、デンマークの施設に生まれたばかりの息子を置いて、彼女はスウェーデンに帰って来た。長引く裁判、そして判決。有罪だった。一瞬目の前が真っ暗になった(これで父親が前科者だ)アストリッドだったが、男はこともなげに「罰金で済んだ」と言う。今までの苦労は何だったの!と切れるアストリッド。息子は施設の保母を「ママ」と呼び、自分のことなど眼中にないというのに。一体だれのために! 何のために!男の求婚をふりきってアストリッドは自分になかなかなつかない子どもを抱えてタイピストとして自活する。優秀かつ有能だったが、息子が高熱を出し、看病のためによく眠れなくなってからは、仕事の質が急激に低下。上司の命令で「息子が治るまで出社禁止!」と命じられる。その上司は、彼女の家に医者を差し向けてくれもした。勿論費用は自分もちで。その名を「リンドグレーン」と書けば、映画に描かれないその後の展開も、おおよその見当がつくというものだ。映画/ Becoming Astrid (DVD) 台湾盤 當幸福提早來 Unga Astrid Lindgren アストリッド・リンドグレーン長くつ下のピッピ 世界一つよい女の子 リンドグレーン作品集 改版 / アストリッド・リンドグレーン 【全集・双書】名探偵カッレくん リンドグレーン作品集 改版 / アストリッド・リンドグレーン 【全集・双書】
2019.12.09
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フィンセント・ヴァン・ゴッホの伝記映画。伝道師時代を覗いて、画家としてのゴッホの歩みを、劇的に再構成した作品である。音楽、映像、演技ともに、一度見たら忘れられない印象を観客に残す。ゴーギャンとの短い交友、画家としての情熱と葛藤と苦悩、弟テオとの兄弟愛、狂気と入院。ゴッホは「自閉症」だったのではという意見もあるが、本作品では幻覚を訴えており、今日でいう統合失調症と思われる。忘れがたいのは、Existence can't be without reason.という台詞である。勿論、フィクションだ。英語である。オリジナルなら、オランダ語のはずである。それでも、刺さる言葉だった。スマートな日本語に訳せば「無用の用」となるのだろうが、これはそんな抹香臭いお説教ではなく、高らかな生命の讃歌であり、宣言である。何と勇気づけられる言葉ではないか。ゴッホは、37年の短い生涯を、炎のように駆けぬけた。最後は少年の銃に撃たれて亡くなったのだが、最後まで彼らをかばって死んでいった。そうして、素晴らしい遺産を後世に残した。…言ってしまうのは易しい。優しいかもしれない。だが、ゴッホの生涯を思う時、思い出すのは宮沢賢治の生涯である。二人とも、生前は変人扱いされた。ごく少数の人にしか認められなかった。もしも不具が彼らと同時代に生きていたら、正当に評価できただろうか? 味方することができただろうか? 【中古】映画音楽(洋画) 「永遠の門 ゴッホの見た未来」オリジナル・サウンドトラック【映画ポスター】 永遠の門 ゴッホの見た未来 ウィレム・デフォー /インテリア アート おしゃれ フレームなし /片面 オリジナルポスター絵画風 壁紙ポスター (はがせるシール式) フィンセント ファン ゴッホ 悲しむ老人(永遠の門) 1890年 クレラー・ミュラー美術館 キャラクロ K-GOH-099S2 (451mm×594mm) 建築用壁紙+耐候性塗料 インテリア【送料無料】絵画 油彩画複製油絵複製画/ゴッホ 悲しむ老人(永遠の門) F12サイズ 762x656mm 【すぐに飾れる豪華額縁付 キャンバス】
2019.11.08
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『米軍が最も恐れた男 その名はカメジロー』の続編というか姉妹編。佐藤「あなたも百も承知のことだと思いますが…」瀬永「私は全然、百も承知ではないのであります」(笑いが起こる)のくだりは前回と同じだが、それ以外はほぼ新しいフィルムで構成されている。それにしてもアメリカは汚い。あの手この手で亀次郎を市長の座から追い落そうとし、水道を止めて、市民に圧力をかける。だが市民は見抜いていた。アメリカに屈しない亀次郎に心の中でエールを送り、彼とともに耐えた。「アメリカのために土地を売ってはならない。我々の土地は我々だけのものではなく、子孫のものでもある。目先のために土地を売れば、我々はアメリカの奴隷となるであろう」だが、米軍の工作は執拗で、瀬永はついに公職を追われる。すかさず米軍は被選挙権を剥奪した。裏を返せば、それだけ目障りだったということだが、さすがに腐っても民主主義国家、どこぞの全体主義国家のように暗殺まではやらなかった。もっとも、亀次郎が手術となると、意図的に停電させた疑いは残る。それでも彼は屈しない。闘い続けた。右も左も、オール沖縄が亀次郎を応援した。なぜか。彼こそ、郷土愛の権化だったからだ。刑務所に入っても、『レ・ミゼラブル』を愛読し、鼓舞され、自分の道を歩み続ける。そしてついに今度は国会議員として公職に復帰。先に紹介した佐藤栄作首相との論戦は忘れがたい。異論がないわけではない。予告編にはないが、本編を観ると、「基地もない、アメリカ軍もいない」のあとに「自衛隊もいない」と出てくる。それはさすがにまずいだろう、と思う。政府に遠慮しているのではない。誰かが沖縄を守らなければ、沖縄は中国に取られてしまうだろう、ということである。だが、瀬永も言うとおり、「小異を捨てず、大同に」つこう。彼は決して間違っていない。それどころか、日本がどんどんアメリカの属国になっているのに、何の手も打たない、抵抗だにしない中央政府の政治家たちにこそ、亀次郎の言葉を突き付けようではないか。「我々の前には三つの道がある。諦めるか、自ら死を選ぶか、闘うかだ」米軍が最も恐れた男〜その名は、カメジロー〜 [DVD]
2019.09.12
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独裁者や独裁国家が芸術作品を「好ましいもの」と「好ましくないもの」に分けて統制しようとするのは歴史上よくあることだ。以前紹介した『残像』もそういうテーマの作品である。ただここで抑圧、疎外、迫害、弾圧されているのは画家ではない。絵画である。ヒトラーは古典主義的な(古代ギリシャ・ローマのマッチョ的な)芸術作品を奨励し、それ以外のものを退廃的だとして迫害した。対象になったのはピカソだけではない。ゴッホ、ムンク、ダリ、その他え?と思うような画家の絵がずらり。中には日本の浮世絵もあった。まあそれが三国同盟の現実というわけだ。戦争が終わってもいまだ行方不明の作品も少なくない。迷宮入りのミステリーを紐解くように、専門家たちがぱらぱらと見つけてくるものの、雀の涙のようなもの。もっと言えば焼け石に水。実際、焼かれた名画も少なくないのではないか。一筋の光明は、ナチス内部でも絵の評価が分かれていたこと。例えばヒトラーとゲッペルスは絵画の好みがまるっきり違っていた。そういうアプローチから、失われた名画が見つかればいいのだけれど。ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ 【DVD】
2019.08.26
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夏至という日本でいちばん日の長い日に、『日本のいちばん長い日』を観た。もう何度目になるだろう。いつ観ても感慨深いが、今回は喜劇的な面を楽しんだ。具体的にどの辺が喜劇的かというのは観る人の感性に任せたい。とかくままならぬのが人生であり、喜劇と悲劇は紙一重である。それにしてももっと早く、ポツダム宣言を受諾できなかったものだろうか。よりによって「黙殺」とは。三船敏郎の演技は、黒澤作品以外では、本作が最も際立っていると思う。【中古】DVD▼日本のいちばん長い日▽レンタル落ち新品北米版DVD!岡本喜八「日本のいちばん長い日(1967)!佐藤勝/日本のいちばん長い日 オリジナル・サウンドトラック 【CD】
2019.06.22
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途中までは観ていて違和感がなかった。日本が戦争に進んでいった経緯を、当時の帝国主義的状況、白人至上主義的状況を踏まえて、冷静に、客観的に述べているように見えたからだ。だが、歴史を本当に客観的に見つめるのは、関係者がみんな亡くなって、記憶が風化しないと無理なのかもしれない。そのことを、最近『主戦場』を観て強く感じるようになったが、それはまたあとの話だ。客観的に双方の意見を聞いているように見えながら、実は保守派を「バカ」な「タカ」に見せる手法は『主戦場』の方が上だが、エンターテイメント性も日系アメリカ人の方が上手だ。その分、ツッコミどころも満載だが、それはまた別なところで述べよう。ただ、日本人が戦前お上に(もっと昔は幕府に)「隷属」していたように、今日本人はアメリカに「隷属」しているという指摘は重要だと思った。プーチン氏がいみじくも懸念しているように、「日本とアメリカの特殊な関係は将来どこへ向かうのか?」↓はギャグのつもりで紹介する。【中古】 自称“元首”の本心に迫る 安倍首相の守護霊霊言 OR BOOKS/大川隆法(著者) 【中古】afb
2019.05.25
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副題を「男女差別とたたかう最高裁判事」。ドキュメンタリー映画を観て、その足で図書館から借りた。子供向けの絵本だが、内容は小学校中学年から高学年以上向けだ。ちなみに挿絵画家も翻訳者も女性、日本語版出版社は『はだしのゲン』のあの汐文社である。映画では両親ともに高校を出ていないとしか言及してなかったが、本はもっと具体的に突っ込んで書いてある。父は高校に行っていない、母は大学に行けるくらい頭がよかったが、時代のせいで高校までしか行けなかった。そんな二人がなぜ結婚したのかはわからないが、それなりのロマンスがあったのだろう。とにかく娘の教育についいて、後押ししたのは母親の方だった。ドキュメンタリーによると、母の教えはふたつ。「淑女たれ」「自立せよ」であったという。高校卒業の日、ルースは家にいた。癌を患っていた母が亡くなったのである。これも、映画にあった。コーネル大学入学当時、女性は男性より優秀だと思われてはデートができなかった。だからルースはトイレで勉強しなければならなかった。幸い、彼女はコーネルで生涯の伴侶に出会うことができたのだhが。ハーバード・ロー・スクールの図書館へ行くと、警備員に雑誌閲覧室への入室を拒否された。これも、そういえば映画に会った証言と同じだ。大学は、女子学生の寮すら用意していなかったという。ほんの70年前の話である。生涯の伴侶に出会った幸運はマーティンも同じだった。伝記映画によれば、彼はハーバード在籍当時前立腺癌にかかり、闘病生活を余儀なくされた。育児も家事も講義の筆録もこなすスーパーレディがいなければ、彼はロー・スクールを卒業できなかっただろう。これも伝記映画で観たが、卒業したルースは就職で苦労した。ユダヤ人で、女性で、子持ちという三重苦を抱えていたから。ヘレン・ケラーが就職する方が、まだ易しかったかもしれない(というのはもちろん、皮肉である)。紆余曲折あって大学の職に就いたのちも、女性だという理由で、いわれなき差別を受けた。給与、発言の受け入れ…「ルース自身は革命家ではありませんでしたが、ルースのしたことは革命的でした」。ああ、本当に、彼女なかりせば、今日のアメリカの地位向上(それもまだ道半ばではあるが)もなかっただろう。それは、日本国憲法なかりせば、今日の日本の(不十分な、形ばかりの)女性の地位向上すらなかったであろうのと同じくらい、ほぼ確実なことだ。1980年、カーター大統領はルースを控訴裁判所(日本でいえば高等裁判所)の裁判官に任命した。13年後、クリントン大統領は彼女を最高裁判所の判事に任命した。「私が母に代わって、母の夢を実現していることになるなら、こんなにうれしいことはありません」。ドキュメンタリーでは何のことかよくわからなかったが、絵本では、「反対意見」について定義されている。日本の最高裁にもこういう制度があれば、どんなにいいだろうと思うのは不具だけだろうか。ルースは生けるスーパーヒーロー、いやヒロインである。すい臓がんと言えば現在でも死の病だが、彼女は2009年に手術を受け、3週間足らずで現職復帰した。当時70代の女性にしては、インクレディブルな体力だ。これは、大人にこそ読んでほしい絵本である。とくに「作者あとがき」を。大統領を動かした女性ルース・ギンズバーグ 男女差別とたたかう最高裁判事
2019.05.23
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『ロッキー』で紹介した『チャンプ』ではない。あれは1979年の映画だ。こちらは2016年の作で、ロッキーのモデルになった、モハメド・アリと15ラウンド闘った男の話である。なるほどこの男(あえて本名は出さないでおく。不思議なことにレンタルDVDでは『チャンプ』であるにもかかわらず、ウィキペディアでは本名がタイトルになっている)、基本設定はロッキーに似ている。だがロッキーはエイドリアン一筋だった。それがこの映画の人気の所以でもあった。それに引きかえこの男はどうだ。女たらしのヤク中毒、アリをダウンさせたのだって、故意か偶然か、靴を踏んだからじゃないか。奥さんにも愛想をつかされ、別居。娘の面談へはコークでハイになって出席。話は聞かずに自分のことばかりベラベラベラベラ…おまけにヤクの売人として逮捕。刑務所で見つけたのは、かつて『ロッキー2』に(主役として)出させてあげると甘い声で囁いたシルベスター・スタローン、のそっくりさんだった。彼もまた服役していたのだ。もうね。哀しくて、笑うしかないね、チャンプ。でもそんなあなたを見捨てないでいてくれる人がいて、よかったね。チャンプ [ リーヴ・シュレイバー ]
2019.05.08
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冒頭。ネクタイにスーツ姿の男・男・男…ハーバード・ロー・スクールの入学生たちである。そのなかに、たった一人、深緑のスーツを着た女子学生が颯爽と歩いていく。この物語の主人公、ルース・ギンズバーグである(アレン・ギンズバーグはユダヤ系の詩人である。彼女もユダヤ系だった。と言っても、夫の名前がマーティン・ギンズバーグだから、二人してユダヤ系だったことになる)。実は同期の女性は他にも8名いた。この時代にしては素晴らしいことだ。もっと昔なら考えられなかったことである。正しいことが、社会的に、法律的に、受け入れられるとは限らない。それでも、世の中は少しずつ、変わっていくのだ。それがこの映画のテーマでもある。あらすじはこことここに詳しい。付け加えることはほとんどないが、「白眉」とされるスピーチについて、若干、コメントしておこう。当初、このスピーチは、4分の予定だった。ギンズバーグら原告の主張を「過激で急進的な変革」と切り捨てた弁護側への反論として与えられたものだ。「過激で急進的な変革?」「この100年、女性は、法律上のさまざまな差別を撤廃する裁判で、負け続けてきました」「100年です(それでも「急進的」と言えるでしょうか)」「100年前なら、私はここに立つこともできませんでした(変革は、すでになされたのです)」言葉というのは恐ろしいものだ。うっかりすると、当人が常識と思っている偏見をあぶりだす。理性の声に耳を傾けるなら、偏見の方を断罪せざるを得ないだろう。ということで、当初与えられた4分という時間を超えてスピーチをすることを、判事たちは求めたのだった。ラスト、本人のカメオ出演も見逃せない。ビリーブ 未来への大逆転 [ フェリシティ・ジョーンズ ]【映画ポスター】 ビリーブ 未来への大逆転 On the Basis of Sex フェリシティ・ジョーンズ /インテリア アート おしゃれ フレームなし /両面 オリジナルポスター
2019.05.07
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キリストの受難に焦点を当てた伝記映画。洋画の項目に入れようかとも思ったが、台詞が全編アラム語とラテン語で語られていること、イエスを物理的救世主だと思った群衆の失望が描かれ、またピラトの逡巡と苦悩が描かれている点等々からここに入れることにした。『新約聖書 ヨハネの福音書』に次ぐ選択である。受難以前の物語はすべて回想という形で描かれる。子供に見せるには残虐だが、イエスの受難はユダやペトロなど弟子たちの受難であり、またマリアの受難でもあったのだなということがよくわかる映画であった。ただ人間の形をした悪魔が群集心理に付け込んでユダヤ人をそそのかしたという設定は、福音書にはないものである。【中古】洋画DVD パッション[初回版]新品北米版DVD!【パッション】 Passion of the Christ!<メル・ギブソン監督作品>
2019.03.03
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第二次世界大戦。欧州の戦争は、英国の離島にも影響を及ぼしていた。島民の大好きなウィスキーが配給されなくなったのだ。みんながっかり。民兵の士気も上がらない。そんなある日、アメリカ行きの貨物船が座礁した。積荷は山ほどのウィスキー!当局に見つかる前に(沈没しかけの船から積荷を持ち出すのは違法行為だ)ウイスキーを救えとばかりに島民は張り切る。だがその途端に時計の針は午前零時を指す。安息日だ! 牧師の一言に、敬虔なクリスチャンである彼らは、何もできなかった。それでもあきらめられない彼らは、月曜の深夜、意を決して山ほどのウィスキーを入江に隠す。軍曹も事の次第を知っていたが、村の娘と恋愛をしていて、婚約パーティにウィスキーは欠かせないと聞いては、おとなしく縛られるより仕方がなかった。上司はそれでもあきらめない。あの手この手を使ってしっぽをつかもうとする。だがクロだと認定することはできなかった。このあたりのドタバタ喜劇は、『ジーサンズ』に通じるところがあって大笑いした。こんな実話もあったんだねえ。ウイスキーと2人の花嫁 【DVD】
2019.02.26
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曽野綾子さんと言えばカトリックである。ヘロデと言えばナザレのイエスである。そういう連想が働いて図書館で本書を手にしたのだが、案の定であった。ただ、ヘロデとイエスはほとんど交わることがない。王の最晩年とキリストの黎明期に、ほんのちょっと関わるだけなのは福音書の通りだ。あとはもう、ほとんどお家騒動というか、王位継承権をめぐる骨肉の陰謀術数、老いと病と疲労のために内側から腐敗してゆくヘロデ、そういった描写に大半の頁が費やされる。秀逸なのは、物語の語り部として口のきけぬ竪琴引きを設定し、一人称で語らせることによって、回想録めいた「史実」の空気を醸し出していることだ。現代日本文学に分類しようかとも思ったが、参考文献の量と質から言って、竪琴引き以外はほぼ史実通りと思われるので、ここに入れることにした。哀れなるかなローマの属国、ユダヤのヘロデ王。そなたはよくやった。本当によくやったよ。【中古】 狂王ヘロデ 集英社文庫/曽野綾子(著者) 【中古】afb【中古】 狂王ヘロデ /曽野綾子(著者) 【中古】afb
2019.02.19
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予告編にある、「彼は何故『ライ麦畑』を最後に筆を折ってしまったのか」という趣旨のキャッチコピーは嘘だ。サリンジャーはその後もフラニーの物語を発表している。映画もその点を無視していない。だが、言いたいことはわかる。『ライ麦畑』狂騒曲によって、彼が世間に嫌気がさしたということだ。漱石、芥川、太宰くらいは知っているが、小説家の生い立ちにはあまり興味や関心がない。外国の作家となればなおさらだ。それでも『ライ麦畑』はたまたま読んだことがあったので、映画を観てみた。サリンジャーはユダヤ人だった。富裕商の息子だった。父親はピアニストになりたかったが、チーズ王の道を選んだ。大学中退を繰り返す息子を心配し、作家になるのをあきらめろと言った。背中を押したのは母親だった。彼女は息子が書いたものを読み、励ました。見出したのは大学の講師でストーリイ誌の編集長のバーネットだった。彼は最初サリンジャーが書いたものをくさす。だがそれは彼の本気度を確かめるテストだった。見事に合格した教え子に、編集長は稿料を渡す。25ドルだった。下積みを脱し、作家として順調に歩み続けようとしたサリンジャー。しかし運命は残酷だった。第二次世界大戦の勃発とアメリカの参戦により、若き作家は軍隊に。無事帰国したもののPTSDとなり、その後も長く苦しめられた。そのトラウマが生んだのが『ライ麦畑』でありホールデンだった、というのをこの映画を観て初めて知った。なるほど。再読の前に作家の伝記を知っておくのも、時に有益なのかもしれない。ナイン・ストーリーズ (新潮文庫) [ J・D・サリンジャー ]キャッチャー・イン・ザ・ライ / J・D・サリンジャー 【本】フラニーとズーイ (新潮文庫) [ J・D・サリンジャー ]【中古】単行本(小説・エッセイ) 倒錯の森 短編集 2 サリンジャー選集 3 / J・D・サリンジャー【中古】afbこのサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年 新潮モダン・クラシックス / J・D・サリンジャー 【全集・双書】
2019.02.07
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聖書のどん尻にある、22章からなる書。「よげんの書」として読むとき、もっとも有名なのは第8章のニガヨモギ云々のくだりだろう。というのは、例の原発事故によって、ニガヨモギのことをチェルノブイリという俗説が巷に広まったためである。だいたいなぜ西アジアや中東の言葉ではなくロシア語なのか、またこれは第3のラッパが鳴った後におこったことで、それ以前にも2度、ラッパが鳴っているわけだ。その2回のラッパによる歴史的事件は、当然、チェルノブイリの原発以前のものでなければならぬ。どう特定できるのか、とくと御説をお伺いしたいものだ。一「非キリスト教徒」としての意見を言わせていただければ、この書は神の名を借りた脅しにしか聞こえなかった、というのが正直な感想である。【中古】 黙示録の真世紀 ヨハネ黙示録とノストラダムス大予言の意味がついに解 / 神郷 皓一 / たま出版 [単行本]【ネコポス発送】
2019.02.01
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これも学校図書館の本で、1969年刊。マヤ研究の本として読むと本書は時代遅れである。しかし、「マヤ研究の父」ジョン・ロイド・スティーヴンスの伝記物語として読むと、本書は入門書として興味深い。このまま映画にしてもいいくらい、波乱万丈な人生を送った人だと言って差し支えあるまい。惜しむらくは、長年の無理がたたって47歳の若さで病死してしまったことだ。彼はまた、「パナマ運河の父」でもあった。除籍にするかどうかは、まだ保留にしておこう。
2019.01.21
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藤田まことが陸軍中将岡田資を演ずる法廷映画。冒頭の非戦闘員虐殺(無差別攻撃)の歴史に関する短い白黒のドキュメンタリーの後、フィルムの半分以上で横浜法廷のシーンが描かれる。最初に出てくるのは「検察側の証人」であって、「武藤調書」なるものを盾に、司令官に罪を被せようとする官吏たちである。フェザーストン弁護人が米軍の無差別攻撃の非人道性について日本人側の証人を呼んでひとしきり語らせた後、いよいよわれらが主人公の登場である。岡田中将は堂々としていた。無差別攻撃の非人道性について語り、捕虜の処刑はアメリカの法律で認められている「報復」ではなく処罰だったと述べ、責任の所在はすべて司令官たる自分にあるとして部下たちをかばい、米軍の無差別攻撃に対する非難を堂々と陳述することを寛大にも許してくれた法廷に感謝の意を伝えた。「敵」であるはずのバーネット検察官の心をも動かし、犯罪者として絞首刑にされるのではなく、軍人として銃殺刑、または減刑して終身刑という提案もなされたのだが、マッカーサーが許可しなかった。死刑が決まった後も、敬虔な仏教徒である岡田は、部下を導き、粛々として死んだ。遺された妻に、「生まれ変わっても一緒になりたい」と言わしめたほどの人物であった。心洗われる映画だった。【バーゲン】【中古】DVD▼明日への遺言▽レンタル落ちDVD/明日への遺言 特別版/邦画/ACBD-10575明日への遺言 オリジナル・サウンドトラック [ 加古隆 ]【中古】 ながい旅 / 大岡 昇平 / 角川書店 [文庫]【メール便送料無料】
2019.01.06
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同名エッセイの映画版。水木しげるのところに少年マガジンからの連載依頼が来るまでの話で、ストーリーはほぼ原作に忠実である。ストーリーと書いたのは、風景はどうも現代日本の田舎の景色のようだからで、昭和30年代にあんなものあったっけ、と思うようなものも散見せられるからだ。けれど、レトロな銀幕がそれをカバーしていて、不思議と違和感がない。雰囲気としては北野武の映画に似ていて、「能」的というか、とても「日本的」だと思う。失礼な言い方をすれば、観客が水木さん夫妻をイメージできれば役者は誰でもよかったのじゃないかと思えるくらい、監督の演出は特徴的である。映画ならではの演出として、水木漫画のアニメーションや、画面に実際に妖怪が映って時に悪戯をしている(が、登場人物はそれに気がつかない)シーンも、見どころの一つだろう。ゲゲゲの女房【邦画 中古 DVD】メール便可 ケース無:: レンタル落ち
2018.12.08
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本ではなく映画の方である。時間は1時間にも満たないが、一度観たら忘れがたい印象を残す。序盤はまだ穏やかである。映されるのは廃墟であり、語られるのは回想だから。それでも、観ているうちに語り手の穏やかな口調に引き込まれ、徐々にショッキングな映像へといざなわれる。ことに恐ろしいのは人間の記録だ。アウシュビッツ村で行われたこと。髪は毛布に、脂肪は石鹸に、骨は肥料に。そんな写真はまだいい方だ。生きている人間の姿、死にかけた人間の記録が最も恐ろしく、惨たらしく、残酷である。骨と皮ばかりの躰、虐待ここに極まれりという姿・姿・姿。ヒトラーは死んだ。スターリンも死んだ。だが今なお、人類が人類に与え続ける惨たらしい責め苦は終わっていない。しかもこの映画は入門である。これを観た者は是非『夜と霧』を読むべきだと、この場を借りて申し上げたいと思う。夜と霧 HDマスター 【DVD】【中古】単行本(実用) ≪歴史・地理≫ 夜と霧 改版 / V・E・フランクル【タイムセール】【中古】afb
2018.12.01
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『くまのプーさん』の誕生秘話を描いた作品。ストーリーはウィキペディアに詳しいが、続きがある。ミルンにできることは、筆を折る、それしかなかった。しかしそのかいもなく一人息子は、絵本のクリストファー・ロビンではない自分自身を求めて、第二次世界大戦に出征する。本当は「欠格」だったのだが、「僕で儲けたものをぼくに返して」と迫られて、コネを使ったのだ。戦争がはじまり、ミルン家に郵便が来た。「行方不明」。夫婦は絶望したが、息子はある日ひょっこり帰ってきた。そうして、親子はやっと和解する。簡単に言えば、そういう話である。映画の核は子役のウィル・ティルストン。彼の喜怒哀楽の素晴らしさによって本作品が支えられていると言っても過言ではない。ナニー役のケリー・マクドナルド、母親役で少しヒールなマーゴット・ロビー(『スーサイド・スクアット』ほか)、やさしいが優柔不断の作家ミルン役のドーナル・グリーンソン(『わたしを離さないで』ほか)ら脇役の助演も見逃せない。劇場未公開作品。レンタルで借りるか、購入するか。グッバイ・クリストファー・ロビン ブルーレイ&DVDグッバイ・クリストファー・ロビン 『クマのプーさん』の知られざる真実 [ アン・スウェイト ]
2018.10.06
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『ペンタゴン・ペーパーズ』の続き。といっても製作されたのはこちらが大先輩である。『クレイマー、クレイマー』『レインマン』『トッツイー』『真夜中のカーボーイ』『卒業』のダスティン・ホフマンと、『スティング』『追憶』『明日に向かって撃て!』『愛と哀しみの果て』のロバート・レッドフォードのコンビが、『十二人の怒れる男』『地上より永遠に』『天国から来たチャンピオン』のジャック・ウォーデンや、『ジュリア』『ウエスタン』のジェイソン・ロバーズらに支えられて、ウォーター事件をすっぱ抜くまでの物語。途中、ホワイトハウスからのあからさまな嫌がらせや介入や圧力があったけれども、最後まで押し通せたのはきちんとした裏どりがあったから。スーパーガールの上司が言うように、裏どりは大切なのだ。ラストのタイプライターの音が、今でも耳にこだまする。【中古】大統領の陰謀 【DVD】/ダスティン・ホフマン#1 35136【中古】【VHS ビデオ】大統領の陰謀【中古】文庫 ≪海外文学≫ 大統領の陰謀 新装版 / B・ウッドワード【タイムセール】【中古】afb
2018.09.25
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実話。宿町を救うのは用心棒とばかりは限らない。無私の町人たちの心意気が人の心を動かし、歴史を変えることがあるのだ、というささやかな実例がここにある。藩にお金を貸す(上納する)のは儲けるためではない。町の負担になっている、伝馬役(宿場間の荷物運搬役)の負担を軽くするためだ。本来ならば藩より助成金があるはずのお役目だ。ところが吉岡宿は直轄領でないために金が出せぬという。身銭を切って馬を買い、義務としての役割を果たさなければならぬ。商売あがったりで、生活に困窮し夜逃げするものが後を絶たず。それゆえの「奇策」であった…守銭奴と言われた「浅野屋」の正体。兄が養子に出された理由。伊達の藩主。サプライズのうれしい映画である。【バーゲンセール】【中古】DVD▼殿、利息でござる!▽レンタル落ち 時代劇殿、利息でござる!(初回限定コンボ版)(Blu−ray Disc)/阿部サダヲ【1000円以上送料無料】殿、利息でござる!【動画配信】【中古】パンフレット(邦画) パンフ)殿、利息でござる!「殿、利息でござる! 」オリジナル・サウンドトラック/安川午朗【中古】[☆4]
2018.09.23
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この映画は素晴らしい。まるで本当にチャーチルが演じているようだ。とはいえ、素晴らしさは特殊メイクの効果ばかりではない。チャーチルがいかに貧乏くじを引いたか。にもかかわらず、日本でいえば近衛文麿のような貴族のお坊っちゃんたちを向こうに回して、ヒトラーと妥協せず、いかに果敢に闘ったか。いかにしてハリファックス殿下がチャーチルに歩み寄ったか。いかにしてチャーチルが民の声を聴き、言論を武器にして、議会を味方につけたか。劇場で観た。(のちにDVDでも見た)。忘れえぬ一本である。ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 /ゲイリー・オールドマン 【字幕・吹替え】【中古】【洋画】中古DVD【ラッキーシール対応】ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 本編【動画配信】ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男 (角川文庫) [ アンソニー・マクカーテン ]ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男【電子書籍】[ アンソニー・マクカーテン ]新品北米版DVD!【ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男】 Darkest Hour!<ジョー・ライト監督作品><辻一弘>ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 / Darkest Hour 輸入盤 【CD】【映画ポスター】 ウィンストンチャーチル ヒトラーから世界を救った男 Darkest Hour /インテリア アート おしゃれ フレームなし /ADV-両面
2018.09.21
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ベトナム戦争は泥沼だった。関係者はみなそれを知っていた。でもそれを公にすればアメリカの威信が傷つく、という理由で戦争は継続されていた。ニクソンも。それをすっぱ抜く!だが情報は確かか?他社も一部すっぱ抜いたが、情報源は間違いないか?もし間違いだったら、ガセだったら、国に訴えられ、訴訟に負けて、一巻の終わりだ。そんなぎりぎりの状況の中で、ぎりぎりの決断を下す社主を『マーガレット・サッチャー』のメリル・ストリープ、敏腕記者を『ハドソン川の奇跡』のトム・ハンクスが熱演。マスコミ関係者必見の映画だろうけど、この時期にこういうのが出るなんてすごいね、大統領。みんなあなたのおかげだよ。ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書 /メリル・ストリープ、トム・ハンクス 【字幕・吹替え】【中古】【洋画】中古DVD【ラッキーシール対応】「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」オリジナル・サウンドトラック [ ジョン・ウィリアムズ(指揮者) ]ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書【動画配信】【中古】 ペンタゴン・ペーパーズ 「キャサリン・グラハム わが人生」より /キャサリン・グラハム(著者),小野善邦(訳者) 【中古】afb【中古】崩壊するアメリカ ~トランプ大統領で世界は発狂する! ? [単行本(ソフトカバー)] 横江 公美
2018.09.19
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『さかさま世界史怪物伝』の姉妹本である。あちらにヒットラー、ラスプーチン、空海、ネロなど、錚々たる怪物どもがひしめいているのに対し、こちらはやや小粒な感じがしないでもない。コロンブスに始まってリルケに終わるリストは、さながら「子どもの偉人伝」だ。日本人の名前もふたつある。二宮尊徳と紫式部だ。事実に基づき、記録に乏しい場合は大胆に推理し、寺山修司という等身大のフィルター(眼鏡)を通してみる「英雄」たちの群像は、おかしくもまたかなしい。あはれにてをかし。やたら母子関係にこだわり、孟子などをマザコン呼ばわりするところなど、いかにも寺山らしいと言えば言えようか。つんぼとかめくらとか、今では使えない言葉がけっこうあるので、復刊は難しかろうなあ。と思ったら、売ってあるのか。さかさま世界史 英雄伝【電子書籍】[ 寺山 修司 ]【店内全品5倍】さかさま世界史英雄伝/寺山修司【3000円以上送料無料】
2018.09.16
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世紀のスターリンが死んだ。そのあと醜い権力闘争が起きた。それは事実だ。あとはどこまで本当なのか。わからない。わからないから楽しめばいい。細部を。そういう映画だ。スターリンからコンサート会場に電話があった。17分後に連絡するという。17分後の指示は「録音が聴きたい」コンサートはもう終わっていた。慌てて呼びとめる主催者たち。「もう一度!もう一度!」かき集められる聴衆。町のおばさん、おじさん、農夫たち。ピアニストが抗議する。「いやよ。家族を殺されのに」金を積んで拝み倒す。指揮者が倒れる。夜中についてくるよう命令されて「粛清」の二文字が浮かぶ代理の指揮者。寝間着姿のまま指揮棒を振る。何とか録音。レコードとともにピアニストからスターリンへのメッセージが届けられた。非難と呪詛だった。それを読んで倒れるスターリン。バタンと音がする。だが粛清が怖いので警護も中に入らない。翌朝、朝食を届けに来たメイドが発見。三々五々と側近たちもやってくる。「医者を呼べ!」だが有能な医者は収容所だ。藪医者が(いやいやながら)かき集められ、家族のまえで説明する。診断は「脳出血」。このまま逝くかと思われたが、奇蹟的に意識を回復。その一瞬のドタバタがまた傑作だ。ドタバタは死後も続くが、生前ほど面白くない。生臭くなるからだ。しかし、スターリンの脳をスライスするとか、葬儀の場面とか、そういうところは面白い。戯画化されているのだろうが、後継者たちの小物ぶりが浮き彫りにされるからだ。歴史映画で、こういうコメディがあるとは知らなかった。ぜひ観るべし。【送料無料】 スターリンの葬送狂騒曲 / ティエリ・ロバン 【本】
2018.08.09
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この映画を観て知ったこと。潜伏していたユダヤ人はアンネたちだけではなかった。否もちろん知ってはいたのだが、ヒトラーのおひざ元ベルリンに7000人も隠れていたとは知らなかった。もちろん彼らのすべてが生き延びたわけではない。無事に1945年5月を迎えられたのは1500人。生存率約20%である。わかったことはまだある。大本営発表は日本だけではなかったこと。空襲を受けたのも日本だけではなかったこと。アメリカはドイツとも戦っていたこと。大本営云々はこれを観た時からうすうすそうではないかと思っていたのだけれど、空襲やアメリカとの戦いは実感が伴っていなかった。歴史の時間に習ったはずなのに、「太平洋戦争」の印象が強すぎて、忘れて(洗脳されて)しまっていたのである。それにしてもアメリカは強い。世界がアメリカ1強になるのを危惧した科学者が、原爆の情報をソ連に売った、というのもむべなるかな、と思えてくる。ソ連といえばドイツと戦っていたはずなのに、原爆が落とされた途端に、協定を破って火事場泥棒的に日本に侵攻してきたのだから食えない国だ。日露戦争のうっぷん晴らしもあったのだろうが、それで国土まで盗られては踏んだり蹴ったりだ。プーチンも食えない男である。話がそれた。本作では、生き残った1500人のうち、4人の生存者の実体験がタテヨコに再構成されて銀幕に映る。共通しているのは、ドイツ人の協力者(反ナチ、共産主義者、キリスト教徒)がいたこと、同じところに潜伏しなかったこと、臨機応変に行動したことである。運もよかった。しかし運だけでは、4人とも強制収容所送りになっていたかもしれない。アンネ一家のように。最も感動的なのは、ベルリンが陥落してソ連兵が攻めてきた時だ。隠れている民間人は、みなドイツ人だと思っている。ユダヤ人は皆殺しにされたと思っている。おびえるドイツ人にユダヤの黄色い星を渡すユダヤ人女性。ソ連兵に「ユダヤ人です」と懇願する男たち。ソ連兵はユダヤ人ならだれでも知っている「箴言・詩編」の一節を暗唱するように言う。答えられた時、兵隊は涙を流しながら生存者を抱きしめた。彼もまた、ユダヤ人だったのだ。蛇足だが、ユダヤ人の定義。1、ユダヤ人女性から生まれた人。2、ユダヤ教を信じるすべての人。また、↓の女性は、本作にも登場している。【新品】【本】密告者ステラ ヒトラーにユダヤ人同胞を売った女 ピーター・ワイデン/著 小松はるの/訳 米沢美雪/訳
2018.08.01
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②のつづき。天安門事件。毛沢東は文化大革命によってスターリンに次ぐ共産主義国家の汚点を残した。毛の権力闘争に乗せられた学生運動の闘士たちは、毛の復権後、冷や飯を食わせられた(何が造反有理だ)。毛沢東のしりぬぐいをした鄧小平は、毛の死後頭角を現す。鄧小平の弟子胡耀邦は民主化運動に同情的だったが、親しかった中曽根首相が靖国神社を公式参拝したと報道されたために、親日家のレッテルを張られて失脚。失意のうちに1989年、死去。学生たちは胡耀邦追悼のために集まったが、人々が集うにつれて、民主化運動を求める声に変っていく。胡耀邦が汚職と無縁の人物だっただけに、彼を追放した共産党への批判につながったのである。当時共産党のトップだった趙紫陽は学生運動を容認。ゴルバチョフ訪中とともに運動の高まりに危機感を抱いた黒幕の鄧小平は、人民解放軍を動かし、学生たちを制圧。後任の江沢民は二度と中国人民が民主化を求めないよう、徹底した愛国教育=反日教育を行った。敵を外に求めるのは独裁国家の常套手段である…中国。胡錦涛、そして今日まで続く習近平の時代。中国は一党独裁下の資本主義を推し進め、世界の工場に。工業部門で完全雇用が達成されると、人件費が高騰しはじめ、安い人件費を求めて進出してきた外国企業が撤退。中国は世界の工場から世界の市場になった。戸籍は日本独特の制度だといわれる。しかし実は中国にもあり、農村の戸籍を持つものは生涯農民であり、都市には出稼ぎに来ることしか認められない。都市で働いても子どもを都市の学校に通わせることはできない。これぞまさしく士農工商。不満たらたら、でも表立って抗議すれば共産党にやられる。それが天安門の教訓だった。抜け道は一つ。反日デモだ。反日にかこつけて暴動を起こし、共産党や警察の建物も襲撃する。あるいは毛沢東の肖像画を掲げる。それが現政権への批判であっても、建国の父の肖像画を掲げる運動を取り締まることはできない、というわけ。通貨。1ドル=360円に固定されたのは円が360度だから、という説もあるが、円安によって輸出産業を中心に日本の復興が進んだ。今でも円安、円高でトヨタやソニーの株価が上下するのはそのためだ。ドルは世界の基軸通貨だが、昔はもっと強かった。ドルを持つ国は、金と交換できた。それがドルへの信頼を作っていた。しかしドルをアメリカに返して金を受け取る国が増えたため、アメリカ国内では金が不足するようになった。危機を感じたニクソンは、「もう兌換しないもんね」とぶちまけた。ニクソン・ショックである。以後為替相場は変動相場制となり、各国通貨がドルで買える商品となった。人々は外国の通貨を安く買って高く売り抜けようと血道をあげるようになり…デリバティブ取引が発達し、為替相場はギャンブラーの巣窟になった(今はコンピュータが参戦して、少し様相が違ってきているけれど、コンピュータは推論する機械だから、未来の事象には対応できない)。エネルギー。中東戦争でアラブ諸国はイスラエルに負け続けていた。業を煮やしたアラブ人たちは、産油国の強みを生かし、原油価格を引き上げた。決定したのは石油輸出国機構(OPEC)とアラブ石油輸出国機構(OAPEC)。それまで欧米のメジャーに握られていた原油価格の決定権を取り戻したいという思惑もあっての決定だった。これがオイルショックになって日本にも波及。「石油の輸入がなくなると、トイレットペーパーが作れなくなる」という都市伝説が広まったためにパニックが起きた。それはすぐ収まったが、石油が騰がればガソリンも騰がる、輸送費も騰がる、石油を原料とした品物の値段も騰がる、物価が騰がる、給料は上がらない、スダクフレーションという名の不況が来る。日本は省エネでオイルショックを乗り越えた。燃費のいい車が生産され、これがやがてアメリカで自動車摩擦を生むことになる。また石油に頼らない原子力発電を推進(その結果がフクシマであった)。日本もそうだったが、石油が騰がると、何とかほかのもので代替できないかと輸入国は考える。またメキシコなどOPEC以外の産油国からの供給もあったため、石油はだぶつき、値段は下がった。あおりを食らったのが石油産出国ソ連で、石油が売れなくなり、経済危機に陥った。その結果は、すでに見てきたとおりである。その後、OPECは巻き返しを図ったが、シェールオイルの開発によって原油価格は再び低迷。アメリカが世界最大の産油国になる可能性も出てきた。だがそうなると、シーレーンはだれが守るのだろう? (ということでトランプ氏が強気なのも頷ける。もはやアメリカにシーレーンを守る必要性はない。守ってやっている状態に近くなるのだから)EU。欧州から国境をなくせば、欧州の戦争もなくなる。こういうことを言うと小林よしのり氏に笑われそうだが、EUの理想はそこにあった。現状はどうか。本部はベルギー。ベルギーはオランダ語、フランス語、ドイツ語を話すマルチ言語国家。ベルギー人穿いてもベルギー語はない。EUの縮図のような国だ。いずれは欧州はアメリカのように合衆国となるのだろうか? そうかもしれないし、そうではないかもしれない(あるいはソ連のように崩壊するだろうか。だが、経済的結びつきを強める限りにおいて、それはあるまい)。トルコはどうか。欧州人のような顔立ちをしているが、イスラム国家である。昔はオスマントルコでもあった。ヨーロッパ人の警戒心は強かろう。9.11。アフガニスタンの政府がソ連寄りでなくなったとき、力づくで傀儡政権を樹立させるためにソ連が侵攻した(1980年、モスクワオリンピックを日本がボイコットしたのも、国際社会のソ連に対する反発から生じたものだった)。これに対し、イスラム教徒を守るために立ち上がった義勇軍があった。オサマ・ビンラディンもその中にいた。さらに当時は冷戦のさなかだったので、アメリカもイスラム教徒の味方をした。ソ連の敵だからだ。つまり、皮肉なことに、オサマ・ビンラディンはアメリカが育てたことになる。飼い犬に手を噛まれるとはまさにこのことだが、アメリカはそれだけ無礼なことを中東に対してしてきたのだ。だがその前にまずタリバンだ。タリバン政権を作ったのはパキスタン。インドの西側に親パキスタン国家が欲しかったパキスタンは、アフガニスタンから逃げてきた難民に極端なイスラム原理主義を伝授、アフガニスタンに送り込む。これがタリバン(神学生)であった。さしものソ連もアメリカが背後にいるタリバン軍に手を焼き、ついにアフガニスタンから撤退。かの地はイスラム原理主義の天国となった。そして湾岸戦争。イラクがクウェートを侵攻し、それにおびえたサウジアラビアがアメリカに防衛を依頼。アメリカは多国籍軍を要請し、湾岸戦争が勃発、イラク軍をクウェートから追い出した。しかしその後もサウジに駐留し続ける米軍にビンラディンは激怒(沖縄を考えよ)。客人として招かれたアフガニスタンでアルカイダを結成し、9.11。ハイジャックされた飛行機が世界貿易センタービルに突っ込んだ映像はなまなましかった。チンパンジーのようなご面相のジョージ・ブッシュ大統領は早速ビンラディンを受け入れていたアフガニスタンのタリバン政権に引き渡しを要求。タリバン政権はこれを拒否、アメリカはイギリスとともにアフガニスタンを攻撃。ブッシュの次の目標は、イラクだった。イランは世界有数の反米国家。イラン・イラク戦争では例によって敵の敵は味方とばかりにイラク側についたおかげでイラクは中東有数の軍事国家になった。湾岸戦争の後、国連の査察団がイラクに入り、核兵器の開発を進めていたことを示唆。これを受けたアメリカがやられる前にやれとばかりにイラクを攻撃。イラク戦争が起こった(結局大量破壊兵器はなかったが、この問題は尾を引き、イランや北朝鮮はアメリカにやられる前に核をもとうと必死になって、現在に至る)。タリバンの生みの親パキスタンも、現在その報いを受けている。タリバンの思想がパキスタンで幅を利かし、パキスタンは反米国家としてアメリカににらまれつつある。教訓。自国の都合で他国の問題に首を突っ込むと、それがもとでやがては自分の首を絞めることになる。学校では教えない「社会人のための現代史」/池上彰【3000円以上送料無料】
2018.07.20
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①のつづき。中東。ヒトラーによりユダヤ人は大量虐殺された。パレスチナに国家を樹立しようというシオニズム運動が高まり、1948年、イスラエル(ヘブライ語で「神の戦士」の意味)が建国。しかし周辺のアラブ諸国はこれを認めず、4回にわたる中東戦争が勃発。戦争のたびにイスラエルは領土を拡大し、今日に至る。そもそもの元凶は誰か。イギリスである。第一次世界大戦当時、ドイツと手を組んだオスマン帝国の弱体化のために、アラブ人に向かって自分たちの味方をすればパレスチナに独立国をやると約束し、ユダヤ人にはパレスチナにナショナルホームを作ってやると約束し、フランスとの密約では両国でこの土地を山分けしようと持ち掛ける(結果的に日本がくさびを打つ前の列強の支配がいかに手前勝手なものだったかうかがい知れよう)。パレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長は頑張った。ついに1993年、イスラエルのラビン首相とオスロ合意にまでこぎつけた。だがラビン首相は暗殺され、和平の夢は泡と消えた。パレスチナも、過激派と穏健派に分裂し、今日に至る。過激派の自爆テロによってイスラエルは分離壁を設置、まるでベルリンの壁状態になった。イスラエルの懸念は、反イスラエル国家イランの核開発問題。イランが核兵器をもてばイスラエルを攻撃するのではないかと怖れている(トランプ大統領がイスラエルを公然と支持したことで、イランに対する締め付けは今後ますます厳しくなるだろう)。キューバ危機。第三次世界大戦寸前までいった事件。反米国家キューバのお膝元に、ソ連の核ミサイル基地が建設されていることが発覚。ケネディ大統領はキューバの海上封鎖を発表、ソ連軍は臨戦態勢に入る。水面下の交渉が続く中、アメリカがトルコに配備していたミサイルを撤去するという条件でソ連が折れ、第三次世界大戦は回避された。そもそもなぜこうなったか。さかのぼれば、キューバはもともとスペインの植民地だった。米西戦争で勝ったアメリカがキューバの独立を承認するも、キューバのグアンタナモに米軍基地を設置。半植民地状態だったキューバに反旗を翻したのがフィデル・カストロとエルネスト・チェ・ゲバラだった。ゲバラは斃れた。しかしカストロは生き残った。国民の支持を得ていたカストロ政権にアメリカは期待していたが、次々と打ち出される反米政策に激怒。経済統制を始めた。そこに近づいたのがソ連。ソ連はキューバを公然と援助、それがキューバ危機につながったというわけ。ベトナム戦争。話は第二次世界大戦にさかのぼる。欧州戦線でフランスがドイツに負けたのを見て、1940年、日本軍はベトナムに進駐。アメリカがベトナム経由で中国に支援していたルートを遮断しようとした。このとき日本軍からの独立を求めて戦った指導者がホー・チ・ミンである。日本軍が撤退したあと、フランスがまたベトナムを支配しようとした。だが、白人が有色人種に負けるのを目の当たりにしたベトナム人は屈しなかった。こうしてインドシナ戦争が勃発した。ホー・チ・ミンはすでに共産主義者だったから、ソ連と中国が支援した。そうなると当然、アメリカはフランスを支援。朝鮮戦争と同じ代理戦争となり、ベトナムは分断国家になった。ディエンビエンフーの戦いで1万人の兵士を捕虜にされたフランスは、ベトナムから撤退。あとを引き継いだアメリカは、アメリカ寄りの南ベトナム政権を支援。しかし南ベトナムはアメリカの後ろ盾をいいことにどんどん腐敗。ついに国民が立ち上がり、南ベトナム民族解放戦線が結成。解放戦線は愛国・憂国的なものであったにもかかわらず、アメリカは共産主義の手先としか考えず、やがて結成当時のメンバーが次々に戦死するにつれ、本当にそうなってしまった。あとは泥沼。日中戦争でも日本軍がゲリラに悩まされたように、アメリカ軍もゲリラに苦しんだ。ゲリラと民間人の区別がつかなくなり、無実の人も多数殺傷した。米軍兵も多数戦死した。そこでアメリカは空爆に切り替え、爆弾のみならず、枯葉剤も散布した。当時の徴兵は義務制でしかも報道が規制されていなかったから、米軍の苦戦とともに戦争反対運動も盛り上がった(これに教訓を得て、今は志願兵にし、報道も規制した)。やがてアメリカは撤退せざるを得なくなり、ベトナムは社会主義国になった。なお、戦後日本でヒロポンがで広まったように、ベトナム戦争後のアメリカではマリファナが広まった。またこの戦争に負けた後は単独で軍事介入することをせず、「多国籍軍」を組織して「国際社会」のお墨付きを得て乗り出すようになった…カンボジア。第二次大戦後独立したカンボジアは、ベトナム戦争に巻き込まれた。北ベトナムの力に屈し、国内の輸送ルートを黙認したのに、アメリカが激怒。クーデターをそそのかし、シアヌーク殿下は中国に亡命。敵の敵は味方のことわざ通り、宿敵共産党と手を組んでカンボジア民族統一戦線を組織。だが現場の指導者はポル・ポトという男だった…ポル・ポトは農村を拠点として戦い、都市住民を敵視していた。通貨を廃止し、宗教を禁止し、学校を廃止し、知識人を抹殺した。海外の留学生も殺害。国民の不満が高まると、ベトナムを敵にして攻撃。しかし本気を出したベトナム軍にはかなわず…当たり前だよね。当時国民の二人に一人は殺されていたんだから。まともな軍隊があるわけがない。ちなみにベトナム軍によるカンボジアへの侵攻は、人道的介入の先駆けとなった。でもポル・ポトもしぶとい。ベトナムが強くなるのを恐れたタイがひそかにポル・ポトを支援。ベトナムにはソ連がついていたが、フルシチョフのスターリン批判によってソ連を敵視していた中国も味方に引き込んだ。中国はベトナムに侵攻、中越戦争が勃発。ベトナムはアメリカとの戦争で鍛えられ、米軍が残した最新の平気で武装していた。戦いは11年にも及んだが、ソ連が経済危機によりベトナムを支援できなくなると、カンボジアから撤退せざるを得なくなった。中国は軍の近代化を本気で考えるようになった。カンボジアの内戦はその後も続いたが、ポル・ポト派も長い戦いで弱体化し、パリ協定が結ばれた。その後、国連カンボジア暫定統治機構によって選挙が実施され、シアヌーク殿下が国王に復帰。選挙に合わせて、日本で初めてPKOとして自衛隊が派遣された。つづきはまたあとで。【中古】 学校では教えない「社会人のための現代史」 池上彰教授の東工大講義 国際篇 /池上彰【著】 【中古】afb
2018.07.18
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東西冷戦。鉄のカーテンはなぜできたか。スターリンがドイツの占領から解放した地域で自由選挙を実施するというヤルタ協定の約束を反古にしたからである。スターリンはソ連の勢力拡大をもくろんでいた。ソ連の敵国となりうる国と国境を接していると、いつ侵略されるかわからない。そf連の言うことを聞く衛星国家で周囲を固めておこうというわけである。強いドイツの復活を恐れたスターリンはドイツを分割した。東ドイツはソ連の傀儡国家である。かつて日本が満州国を立ち上げたように、同じことをソ連もやったのだ。転機はゴルバチョフ。東欧諸国の民主化を認められて、ハンガリーがオーストリアとの国境の鉄条網を撤去。東ドイツの国民がオーストリア経由で西ドイツに亡命できるようになった。流出はやまず、ついに東ドイツは消滅。背景には衛星放送の発達があった。他国の放送を聞くことで情報統制が崩壊。これがソ連をはじめとするユーラシアの社会主義国の民主化運動につながった。ソ連崩壊。ソビエト=評議会。だが実際は言論の自由のない牢獄国家だった。スターリン=鉄の男の意味。レーニンの後釜として粛清を含め辣腕を振るったが、農業集団化によってサラリーマン農家ばかりになり、生産性が著しく落ちた。しかしそれを隠して、周辺国家にはいかにも大成功したかのように喧伝した。これを真に受けた中国も人民公社を導入、失敗を隠すために粛清、成功を喧伝。北朝鮮もまたこれを真に受けて…バカの連鎖。スターリンが亡くなるとフルシチョフによるスターリン批判が起こったが、毛沢東批判に飛び火するのを恐れた中国はこれを認めなかった。これにより中ソ対立が生まれた。社会主義国家が独裁制になりやすいのは、国民が選んだ指導者がトップに就いて、国民の目線で語る<太陽>政策が成り立たないからである。となればあとは<北風>しかないではないか。国民や衛星国に対しての締め付けはともかく、ソ連の内情は火の車だった。計画経済なので、消費者のニーズにこたえて商品を開発することがない。民間企業がなく、社員は国家公務員。競争がないから技術進歩もなく、不良品が横行。テレビが火を噴くことも少なくなかった。重い腰を上げたのがゴルバチョフ。秘密主義を改め情報公開(グラスノチ)でソ連の立て直し(ペレストロイカ)を図ろうとしたが、かえってソ連の国の人々の自信を失わせる結果になり、社会は不安定になっていく。ゴルバチョフに責任を取らせようと共産党幹部がクーデターを起こすが、ソ連の共和国のひとつであったロシアのエリツィン大統領が阻止。救出されたゴルバチョフは共産党の活動停止を命令、ソ連崩壊と相成り候。ソ連崩壊に伴い、構成国の15の共和国も独立。ロシア国内からも分離独立の機運が高まるが、エリツィンはこれを弾圧。その時の右腕が現大統領プーチン。強い指導者ではあるが強権的で、彼に異議を唱えるジャーナリストが次々に亡くなるなど、まるでスターリン政権のよう。台湾と中国。誰も言わない分断国家。尖閣諸島をめぐっての対立は、・日本…尖閣は沖縄だ。沖縄は日本だ。だから尖閣は日本だ。・台湾…尖閣は台湾だ。・中国…台湾は中国だ。その台湾が尖閣は台湾のものだと言っている。だから尖閣は中国だ。という論理に帰結する(それだけではないと思うが、ここでは池上さんの見解を紹介するにとどめる)台湾(中華民国)の親日については、日本の領土だった時代よりも、国民党政権になってからの方が弾圧が激しかったため、また、台湾が近代国家として今日あるは日本の設備投資によるものだという認識が教科書によって教えられているためでもある。毛沢東は台湾を併合したかった。しかし朝鮮戦争が勃発し、中国にそんな余裕はなくなった。おかげで台湾は助かったが、中国は広い国土を理由に国連にわれこそは「中国」であると国連に認めさせた。これにより一気に台湾は国際社会から孤立した。残った友好国との関係も、中国の札束外交により揺らぎつつある。アメリカは台湾が中国に併合されることを好まない。さりとて独立を積極的に後押しするわけでもない。現状維持である。しかし中国はアメリカの介入に屈さず台湾の独立をあくまで阻止するために、海軍力の増強に力を入れ始めた。尖閣問題も、その余波である。北朝鮮。第二次世界大戦末期、ソ連は日ソ中立条約を破って日本に侵攻した。朝鮮半島にも侵攻した。日本の領土だったからでもあるが、衛星国家にしたかったためでもあった。これに危機感を抱いたアメリカが半島に上陸、とりあえず38度線で米ソの折り合いがついた。スターリンはあくまで衛星国家にこだわったので、統一総選挙を勧告した国連の意向を無視して、北朝鮮と韓国という分断国家が生まれた。金日成はソ連と中国の極秘の許可を得て、日曜日に韓国を侵攻。朝鮮戦争が勃発。韓国軍は釜山まで追い込まれるが、アメリカ軍の介入により、逆に北朝鮮を中国国境付近まで追い詰める。これに危機感を抱いた中国が義勇軍を派遣、毛沢東の息子も戦死。中国もまた緩衝地帯としての北朝鮮を確保したかったのである。北朝鮮もそれを知っているから強気な一方、アメリカの本気を恐れてもいる。だから大陸間弾道ミサイルと核の開発にこだわるのだ…ちなみに、この時の特需景気で、日本経済は復活ののろしを上げた。また、日本の非武装化を進めていたアメリカも、独立後の日本が軍事的真空地帯となりソ連や中国の傀儡国家となることを恐れて、警察予備隊が結成されることになった。その後、保安隊、自衛隊と名称を変えて今日に至る。北朝鮮は朝鮮戦争終結後も韓国の大統領の暗殺を謀るなどテロ活動を行っていた。たまたま大韓航空機事件で爆弾を仕掛けた金賢姫容疑者が逮捕されたことで、彼女に日本語を教えた日本人の存在が明らかになり、日本人拉致事件が発覚した。つづきはあとで。【中古】単行本(実用) ≪エッセイ・随筆≫ 池上彰教授の東工大講義 学校では教えない「社会人のための現代史」 / 池上彰【中古】afb
2018.07.16
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著者は美術史の専門家である。その観点から見た日本史ということだ。・農業革命は地球環境破壊の出発点でもあった。・都市の歴史は戦争の歴史である。戦争が野蛮で、その反対が文明だとすれば、縄文時代こそ縄文文明と呼ぶにふさわしいのではないか。・日本にはピラミッドの代わりに霊峰富士があった。・自然の恵み豊かな地域には母なる多神教(言葉より現実)が、砂漠など自然が厳しく移動を強いられる地域には、父権的な 一神教が生まれる(現実よりも理想=言葉)。・神々が殺し合うギリシャ神話、対立しても殺し合わない(死なない)日本神話。・戦争がギリシャ世界を崩壊させた。・日本では、ローマや漢と同時代に、エジプトのピラミッドよりも大きい建造物が造られた。これは一種の文明であり、ただ文字の記録がないだけである。・聖徳太子とムハンマドは同時代人。・ローマ帝国の衰亡→ゲルマン民族の大移動→イスラム勢力の隆興→ゲルマンVSイスラム→現在のヨーロッパの原型が誕生(テリトリー)。・イスラムと違い、ヨーロッパと日本は偶像崇拝を禁止しなかったので、宗教的人物像が多く残った。・イスラム勢力に制圧された土地を奪回するために、十字軍ができた。数学・医学・天文学などが発達していたイスラム世界に接することで、ギリシャ・ローマ以降停滞していた西洋世界の科学が息を吹き返し始め、ルネッサンスにつながった。・中国では宋の時代に、火薬や羅針盤が発明された。考えようによればこれは中国における中世の始まりであり、次の元による世界制覇へとつながっていく。・モンゴルの世界制覇によって、東西文明の交流が促進された・元寇に勝ったのは神風(台風)のおかげだけでなく、日本人の防衛力と組織力の結果でもあった。・われわれはつい近代資本主義を中心に考え、それからはずれたものを遅れているとみなしがちである。・日本には神はいるが悪魔はいない。鬼も性悪ではない。悪魔のように戦闘的でない。・日本は自前で銃を作ったからヨーロッパも手を出せず、鎖国ができた。・新大陸やアジア・アフリカを搾取することでヨーロッパは豊かになった。一方、鎖国政策をとった日本は、自前の資本主義で豊かになった。・日本は第一次世界大戦の戦勝国として大陸に進出した。満州は南下政策をとる共産主義国家ロシアへの対抗措置だった。・西洋の植民地になったアフリカは、現地民を奴隷のように扱ったため、独立後も貧しかった。一方、良くも悪くも日本イムズを叩き込まれた地域、日本が教育やインフラを投資したアジアの国は、戦後大いに発展している。やや主観を交えて要約したが、著者が言いたいのはこういうことだと思う。ただし、美術史家としての慧眼については、本書を読んでみないと十分には伝わらないだろう。なお、著者の言うことがすべてではないことはもちろんである。【中古】 世界史の中の日本 本当は何がすごいのか /田中英道【著】 【中古】afb・
2018.07.12
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白人に対して立ち上がった黒人奴隷ナット・ターナーの伝記映画。ターナーというのはご主人様の姓である。ナットは、幼いころに女主人に聖書を読むことを教えられ、敬虔なクリスチャンとなり、黒人相手の説教師になった。彼の主人は比較的寛大な方ではあったが、説教のために行く先々で見る奴隷たちの姿は、悲惨そのものであった。それだけではない。主人は自身が所有している女奴隷(既婚者)を、客人のために提供した。ナットの妻が白人たちに因縁をつけられるような形で暴行された。説教師であるナットが白人に洗礼を施したら、鞭で百叩きにされたうえさらし者になった。このようなことが重なって、ナットは切れた。そうして立ち上がったのである。元よりそれは、絶望的な戦いであった。勝ち目のない戦いであった。復讐だったかもしれない。しかしそれは一粒の麦だった。死して種もみとなり、南北戦争を生み、公民権運動を生み、オバマ大統領を生んだ。ささやかであったかもしれないが、実を結び、花を咲かせたのである。合掌。【送料無料】バース・オブ・ネイション 2枚組ブルーレイ&DVD/ネイト・パーカー[Blu-ray]【返品種別A】
2018.06.21
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共著『共産党宣言』で有名な二人だが、伝記的なことはよく知らなかった。映画を観ると、二人とも、必ずしも周囲の人たちとうまくいっていたわけではなかったらしい。思想的に比較的近い人たちとの間でもだ。かれらを支えたのはむしろ妻たちだった。カール・マルクスはユダヤ人の新聞記者。妻のイェニーは貴族。身分的に不釣り合いなカップルだった。けれど彼女は退廃的で退屈な世界に背を向け、才気あるマルクスとの共同生活を選んだ。フリードリヒ・エンゲルスはいいとこのお坊っちゃん。社長の息子である。妻のメアリーはアイルランド出身の労働者。夫を愛しながらも共闘のために子どもは作らず、「血を分けた子供は妹に産ませる。妹もそれを望んでいるし」とイェニーに打ち明ける。これには、さすがのイェニーも唖然としていた。彼女たちの名前は歴史の表舞台にはあまり、出てこない。だがマルクス&エンゲルスが、世界史的偉業を成し遂げられたのは、ふたりの傑物たる女性の、内助&外助の功あってのことではなかっただろうか?◆◆マルクス・エンゲルスの思想形成 近代社会批判の展開 / 中川弘/著 / 創風社【中古】文庫コミック まんがで読破 共産党宣言 / マルクス・エンゲルス
2018.05.30
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偉人と呼ばれる人には、三つの顔がある。1、天才。(織田信長、坂本龍馬、モーツアルト、チャイコフスキー、ニュートン、レオナルド・ダ・ヴィンンチ、ゴッホ、ガリレオ、アインシュタイン、イエス・キリスト、ゴータマ・シッダルタ、サン=テグジュペリ、マーク・トウェイン、一休、岡本太郎、宮沢賢治、南方熊楠、夏目漱石、手塚治虫など)2、能才。(徳川吉宗、原敬、コロンブス、リンカーン、ナポレオン、武田信玄、上杉謙信、石田三成、津田梅子、ケネディ、松下幸之助、本田宗一郎、フォード、アムンゼン、福沢諭吉、伊藤博文、アンドリュー・カーネギー、リビングストン、アガサ・クリスティ、モンゴメリ、豊田佐吉、二宮尊徳、徳川家康など)3、英雄または偶像。(ベーブ・ルース、アンネ・フランク、ジャンヌ・ダルク、ヘレン・ケラー、マザー・テレサ、シュバイツアー、天草四郎、鑑真、チャップリンなど)このほかに裏の顔もあるのだが、子どもの伝記にはまず、出てこない。ましてや偉人が子どもの頃の逸話である。本書には上記以外の人たちも出てくるが、1、2、3と明確に分けられるようなものでもなく、またこれは恣意的なものであることをお断りしておく。1に分類したのは「世界の認識を変えた人」で、文学者や芸術家、科学者を入れた。2は「世界の改良・変革に貢献した人」。政治家や技術者、探検家、大衆作家、教育者などを入れた。マリー・キュリーや湯川秀樹は1か2か。樋口一葉は、野口英世は、シートンは…考え出すときりがないので、独断と偏見くらいの認識で受け止めてもらってちょうどいいだろうと思う。本書の特長は、エジソン、牧野富太郎、ナイチンゲール、ベートーベン、ノーベル、ライト兄弟といった昔ながらの「定番」に加えて、昔はなかった「本田宗一郎」「手塚治虫」「松下幸之助」などの名前がみられること、女性の偉人を多く取り上げていることだろう。とくに、一昔前なら「キュリー夫人」となるところを、「マリー・キュリー」としたのは卓見である(ひとりだけ聞きなれない名前があった。ビアトリクス・ポターである。本文を読んで、ピーター・ラビットの生みの親であると知った)。いっぽうで、本書に登場しない名前もある。フロイト、カール・マルクス、シェイクスピア、細川ガラシア、芥川龍之介、太宰治、ワシントン、雪舟、黒沢明、北条時宗、近松門左衛門、清少納言、セルバンテス、ソクラテス、デカルト、ニーチェ、カント、チンギス=ハン、ビクトル・ユゴー、ラフカディオ・ハーン、ダンテ、アリストテレス、ガウス、オイラー、ヒュパティア、ルノアール、モネ、葛飾北斎、関孝和、アダム=スミス、タゴール、中江兆民、オードリー・ヘップバーン、モハメッド、ジュール・ヴェルヌ、ウェルズ、ハンナ・アーレント、スウィフト、新井白石、大隈重信、北里柴三郎、高峰譲吉、ショーペンハウエル、モーパッサン、ブロンテ姉妹、吉田茂、チャーチル、アレクサンドル・デュマ、石川啄木、イチローなど。何故だか考えてみるのも一興かもしれない。【中古】 読み聞かせ 世界を変えた人が、子どもだったころのお話 /PHP研究所【編】 【中古】afb読み聞かせ 世界を変えた人が、子どもだったころのお話【電子書籍】
2018.05.27
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