つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

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2021.02.25
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カテゴリ: SF
こんな本が出版されるのは、やはりコロナのせいだろう、と思う。
何年か前にも出されたけれど、その時よりも売れているんじゃなかろうか。

時代は2073年。
老人と少年たちが野山を歩いている。
熊が出る。
弓で追い払う。

もうこの時点で、世界が滅びたな、ということがわかる。
更に読み進めるうちに、老人がもと大学教授で、少年が孫とその仲間たちであることがわかる。
もっとも少年たちはこの老人をあまり尊敬していないらしい。


彼は少年たちに請われるままに語る。
2013年、世界がいかにパニックに襲われたか。
黒死病ならぬ赤死病が、いかに人々の命を奪っていったか。
その猛威たるや、エボラ出血熱以上 ​だった。

科学者は、ワクチンができるまでに全滅してしまった。
数百万人に一人しか助からなかった。
80億の人類(何たる予言!)のほとんどが死に絶えた。
全世界で助かったのは、多く見積もっても1000人くらい。

文明崩壊である。
『宇宙戦争』

孫たちにはだから、60年前の世界がどんなものか、わからない。
それでも、彼らのグループで今では数百人くらいには人口が増えている。
人口の増加とともに、彼らはまた、長い長い時間をかけて、世界を席巻するだろう。


「人類の漂流」 はエッセイである。
「赤死病」執筆の理論的根拠がここに示されている。

(もっと正確に言えば、クロマニヨン人は、だが)
食料を求めて。
剣を持って。
増え続ける人口の圧力こそ、人類播種の源泉だった。
感染症は人口増加のブレーキにこそなれ、特効薬にはならない。

ロンドンは、ここで社会主義を持ち出す。
社会主義体制下においてこそ食糧増産は加速されると。
戦争よりも資本主義が人類を殺すと。
また将来、地球が氷河期に入れば、文明世界は滅びると。

21世紀時点で、彼の間違いを指摘することはやさしい。
だがロンドンは百年前の作家であることを忘れてはなるまい。
ヴェルヌは19世紀時点で『二十世紀のパリ』という驚異的な予言的小説を書いたが、あれはあくまで科学時術の進歩の書だった。
むしろ、マルサスの『人口論』の影響を受けているとはいえ、今日の人口爆発を予言した先見性に感心すべきではなかろうか。

予言と言えば。
「比類なき侵略」 も予言に満ちている。
そのいくつかはすでに当たった。
例えば、眠れる中国が、日本が漢語に訳した西洋の概念を借用して、日本を追い越した、というくだりである。
例えば、増え続ける人口を国境を広げることで、つまり、まず移住させ既成事実を作り権利を主張していく、ということで解決しようとしていると。

予言が当たったのも当たり前で、実はこれは戦前の日本がとった政策であり、ひとたび中国がそのやり方を真似すれば、日本などひとたまりもない、という世界観に基づくものだからだ。
そして中国は、まるで前世紀に生きているように、現在それを行っている。

ロンドンは1916年に亡くなったから、第一次世界大戦の行く末も、第二次世界大戦の勃発も知らない。
だから20世紀初頭の世界観に従って予言しているわけだが、これが時代錯誤の中国流に合っていた、というわけだ。

違うのは、いや、これも​ 実はベクトルの方向性が正反対なfだけで実は当たっているかもしれない のだが、中国を抑え込むために空から生物兵器を撒き散らしたというくだりである。

黄禍論と言ってしまえばそれまでだが、翻って現在、欧米諸国は現実の黄禍に直面している。
日本はどこまで傍観者でいられるだろうか。


[書籍のゆうメール同梱は2冊まで]/赤死病 / 原タイトル:The Scarlet Plague 原タイトル:The Unparalleled Inva‐sionほか[本/雑誌] (白水uブックス 230 海外小説永遠の本棚) / ジャック・ロンドン/著 辻井栄滋/訳





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Last updated  2021.02.28 19:27:41
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