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「探偵狂想曲」 #2 小鳥、さえずる 美味しい朝食を済ませたオレは、ファラに急かされるようにして父の行方を追ため、街のあちらこちらを歩き回ることにした。 あの書置きが親父のたちの悪い悪戯という可能性も、無きにしも非ずだ。 行きつけの酒場にでも行けば、ちゃっかりカウンターの席にでも座っているかもしれない。 そう思ったオレは、事務所を出ると真っ直ぐに、親父の行きつけの店に向かった。 この街には酒場がいくつもあるが、その中でも最も品のいい店が「カフェ・ハミングバード」という店である。 ロヴィン・ポゥという若い男が経営する店には、実に様々な種類の人間がやってくる。 お酒意外にも、未成年向けのドリンクや食事なども出しているので。オレも仲間同士のたまり場として利用させてもらうことがよくある。 そして、そんな中には大小悩みを抱えた人間もいるようで。そこに目をつけたロヴィンは、いつの頃からか、そんな連中のトラブルを依頼として引き受け、オレたちのような探偵などのトラブルシューターに仲介する仕事もしている。 我が「シルバームーン探偵事務所」の所長様が「ハミングバード」を気に入ったのも、酒や料理が上手いことはもちろんだが。仕事の仲介業をしているというその点が大きく。仕事が無ければ、ほとんどそこに入り浸っているのである。 特に「ハミングバード」には裕福な客も大勢やってくるので、そういう客の依頼ならば大口のものであることがほとんどなので。目ざとい親父が見逃すわけない。 実際、「ハミングバード」で受けた依頼は、「シルバームーン探偵事務所」の財政の三割ほどを支えているといっても過言ではない。 また、最近では、親父に仕事を依頼することを目的に「ハミングバード」へ訪れる客もいるらしい・・・。 リンリ~ン! ドアに付いたベルが上品な涼しい音を響かせる。 ベルの音を聞いて、カウンターでグラスを磨いていた店主が、女みたいに整ったその顔を上げる。「いらっしゃ――、おや、シャトルか・・・。まだ開店前だよ」「ロヴィン、親父来てない?」「ジェイドさん? いいや」「・・・そっか」「ジェイドさん、どうしたんだ?」「ま、これを見てよ」 カウンターの席に腰を下ろしてから、オレは親父の書置きをロヴィンに渡した。 書置きの内容を確認しながらロヴィンは、オレの前にミルクの入ったグラスを置いた。「・・・ミルクかよ。安くても良いから、どうせなら酒をくれよ」「不良坊主。君はまだ未成年だろう。もらえるだけ良かったと思えよ」 ロヴィンは子供を叱るようにいった。「・・・はいはい」「しかし、ジェイドさん家出したのか」「ああ。でも、一応冗談の可能性もあるかなと思ってね・・・」「それでうちの店に着たんだ」「そゆこと」「ふむ、それは困ったな・・・」「なんで?」「そりゃ、うちにはこの街一番の『名探偵』目当てのお客さんも来るからね。今後の客足がちょっと心配かな」「オレがいるじゃん」「君が?」 ロヴィンは少し可笑しそうに目を細めた。「なんだよ。オレじゃ役不足だっていうのかい?」「・・・君、『役不足』って、意味分かっていってる?」「え?」 首をかしげるオレを、見てロヴィンは苦笑した。「フッ・・・、まぁ、いいや。ともかく君が任せてくれっていうなら、仕事を頼むことにするけどね・・・」「お、おう! どんな依頼でもドンと来いって!」「うん。ま、それはおいて置いて・・・」 ロヴィンは親父の書置きを返しながら話題を変えるようにいった。「ん?」「実は、ジェイドさんのツケが結構あるんだけどなぁ・・・」「はい?」「当然、息子の君が払うことになるんだよねぇ~?」「嘘ぉ、マジで・・・?」「ちなみにいくらかというと・・・」 と、ロヴィンは帳簿を見ながら、親父のツケというその金額を紙に書いて渡した。 目玉が飛び出す、とまでは行かないがそれはかなりの金額だった。「・・・こ、こんなに貯めてたのか?」「うん」「帰ってファラに相談しても良い?」「・・・う、うん。まぁ、君と私の仲だからいっぺんに返せとはいわないからね?」「お、おぅ・・・。じゃ、ミルクご馳走さん」 オレはそそくさと「ハミングバード」を後にした。 シャトルを見送りながら、ロヴィンは呟く。「・・・う~ん、なんか随分と落ち込んだみたいだけど。大丈夫かな・・・?」
2007年03月11日
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「まえがき」 まぁ、いろいろ放ったらかしにしてしまったこと等、いろいろ(かなりたくさん)ありますが、いろいろ一新して、今度は無理せずに連載を続けようかと思います。 順調に進めば、いくつか棚上げしてあることにも手を付けられるかなぁ~と思います。 ま、参考までに。 * 「探偵狂想曲」 #1 父、失踪する ――その朝、オレは若い女の声にたたき起こされた。「大変です! シャトルさん、起きてください!」 ガバァ!と、有無を言わさず物凄い力でベッドから引き摺り下ろされたオレ。 勢いあまって、ドン!と、板張りの床にしこたま頭を打ち付けてしまった。「っんだよ! ファラ! 坊ちゃんを起こすならもっと優しく――」 抗議しようと大きく開けたオレの口に、ファラは紙切れ一枚をねじ込んだ。「!? ぺぺっ! 何だ、このまずい朝食は・・・!」「シャトルさん! ヤギさんじゃあるまいし、それに大切なことがかかれた紙なんですから食べないでください!」「ファラが口の中に突っ込んだんだろーが!」「私が・・・?」 きょとんとした顔をするファラ。「はぁ、まぁいいや。大切なことがかかれた紙だって・・・?」 オレは、しわくちゃになったその紙切れを伸ばして目の前に広げた。 紙切れには、ファラのいう大切なことがしたためられていた。 とても簡素で、ひじょーに分かりやすい文体で・・・。 『シャトルへ オレは、しばらく旅に出てくる。 一年くらいで帰るから、その間、事務所のことはお前に任せた。 万が一、潰したりでもしてみろ・・・そのときは、お仕置きだ。 では、一年後に元気で再会しよう。 偉大な父 ジェイドより』 オレは目を見開き、開いた口がふさがらなかった。 しばらくそうしていて、ようやくファラに聞いた。「・・・どういうことだ?」「ジェイドさん、家出しちゃったみたいなんですよぉ~!」 ほとほと困り果てた顔をして、ファラは言う。「マジで?」「マジです! だってこの書置きがあるし、ベッドはものけの空、それにジェットさんの帽子やコート、パイプといった愛用の品々がないんですよぉ~!」「・・・げ」 帽子とパイプが無いと聞いて、オレは自分の父親、すなわちジェイド・ロックフォードが失踪をしたという事態を、真実として受け入れた。 ――できれば、ウソか冗談か。あるいは夢であって欲しかったけど・・・。「シャトルさん、どうしましょう・・・?」 不安そうな顔をして聞いてきたファラに、オレは毅然とした態度で言った。「ファラ、とりあえず朝ごはんにしよう」 タイミングよくオレの腹の虫が、ググゥ~と鳴った。
2007年03月02日
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