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「探偵狂想曲」 #16 闇、口をあける 盗まれたものが解かった為だろう。 さっきまでの、まるでピクニックにでも行くようなみんなの表情が緊張した固いものになったのがわかった・・・。 空気もどこかピンと張り詰めた感じがして、少し息苦しい。 ――とは言え、行動をしなければならない。 しばらくオレたちは保管室の中を調査した――が、既に専門家である自警団が捜索した後で新たにわかったことは何もなかった。 多少失望した思いで保管室を後にしたオレたちは、次に親父のパイプが発見されたという場所を見ることになった。そこは地下二階のフロアの奥の通路だった。「・・・問題のパイプは、ここで発見された」 そうレイがいって床を指差す、そこに親父の愛用のパイプが落ちていたらしい。「ここで?」「そうだ」「・・・それは妙だな」 と静かに呟いたのは、ロヴィンだった。「何が妙なんですか?」 ファラは首をかしげ、ロヴィンが見つめる通路の奥を釣られて見た。 その通路の奥には何もなく、行き止まりだった。「この先は行き止まりだろ?」「それがぁ?」 プリシラが、「よくわかんなぁ~い」という顔をする。 一方で、その一言で理解できる人間もいる。「あ、そっか・・・」「うん、なるほどね」 オレとウィルは納得したように頷きあった。「・・・ん? 何がなるほどなんだ?」 レイは怪訝そうな顔をする。「ジオ。念のためにちょっとパピーに協力して欲しいんだけど」「何、お兄ちゃん?」「匂いの追跡だよ」「うん、わかった」「レイ、親父の匂いをパピーに辿らせるから。パイプの匂いを覚えさせてくれ」「む? こうか?」 言われるままパピーの鼻先に親父のパイプを近づけるレイ。「・・・パピー、覚えた?」「ガゥ!」 ジオに聞かれて、尻尾を振るパピー。「犬にそんなことが出来るの?」 プリシラは不思議そうな顔をした。「うん、優れた猟犬なら可能だよ」 と、ウィルが言った。 パイプの匂いを覚えたパピーは、床に鼻先をこするようにしながらパイプが落ちていた場所から、順に通路の奥の方へとゆっくり歩を進めた。 そして突き当たりのところで、壁と床の境のところを前脚で掻きはじめた。「パピー? そこに何かあるの?」「ガゥ!」 背中のジオを見上げてパピーは吠えた。「あるって言ってるよ?」「何かあるたって・・・、行き止まりじゃないか」 ヒューは不審そうな顔をした。「確かにそう見えるが・・・」 しばらく黙っていたロヴィンが再び口を開いた。「ジオ、パピー。ちょっと避けてくれ。私が調べよう・・・」 と、行き止まりの壁の前に出たロヴィンは、丹念に壁を調べ始めた。「その壁に何かあるわけ~?」 後ろで様子を見ていたアイリーンが言うと、ウィルが例の口調で推理を始めた。「多分、あると思うよ。そもそもこの通路は何のためにあると思う? どこかの部屋に通じているわけでもなく、先は見ての通り行き止まり。普通ならこのスペースは隣りの部屋にでも吸収されるか。いや、むしろ最初から無いほうが良い」「増設する途中だったんじゃないかな?」 といったのは、やはりアイリーン同様後ろにいたダイアナだった。「その可能性は否定できないが、この博物館は王都の頃から存在する古いものだから途中で放置されたにしては疑問が残るな。それにこの壁や床の造りは他の場所と同様、しっかり造られている。そして、そんな通路にジェイドさんのパイプは落ちていた。これは何を意味するのか・・・」 そこまで言われてマリノがようやく理解できた顔をした。「ってことは、ロヴィンが調べているあの壁には――」 そうマリノが言い掛けるのと同時に、ロヴィンが声を出した。「――あった。これだ」 と、ロヴィンは壁の一部を指差した。「ここがスイッチになっている。それに、やはりこの壁は動きそうだな」「何!? それは本当か?」 驚いた顔をするレイ。「ああ、罠は・・・なさそうだ。スイッチを押してみる。みんなは念のため離れていた方がいい」 みんなが警戒して後ろに下がるのを確認して、ロヴィンは壁のスイッチを押した。 ガコ・・・ 押されたスイッチは、いとも容易く、壁の奥へと沈み込んだ。 そして――、 ガガガガ・・・ッ、ガココココ・・・ゥンン! と、重い音を立てながら、壁が上へ上がっていき。 闇がオレたちの目の前でその口を開いた。「すっご~い」 プリシラが感嘆の声を上げる。「どんな仕掛けが・・・?」 といったのは、ダイアナだった。「やっぱりな」 と、オレは確信していた口調で頷いた。「行き止まりの通路に親父のパイプが落ちていたと聞いてもしかしてって思ったけどな」「うん、ジェイドさんは間違いなくこの奥に向かったようだね」「と、とにかく。奥へ進みましょう! ジェイドさんがいるかもしれません!」 気が焦るファラは、一人で駆け出そうとする。 が、それを入り口のところにいたロヴィンが制した。「ちょっと待った。これから先は暗いし、何があるか分からないから危険だよ」 レイが頷く。「そうだな・・・。こんなものがあるなんて私も知らなかったのだからな。おそらく館長も知らないのではないだろうか」「かもな。いずれにせよ、奥を調査するならオレは今の内にしておきたいな。自警団の連中が、大勢で押し寄せ踏み荒らした後じゃ証拠も痕跡もあったものじゃないからな」「その意見にはボクも賛成だよ、シャトル君」「確かに・・・。それは言えているな」 レイは少し考え込んだ顔をする。「だが、探索がしやすいように人数を限定しよう。私とファラ、ぼうやたち、それからマリノ来てもらえるか? 他のものは一度上に戻っているように」「えぇ~! プリシラも行きた~い!」 やっぱり文句をいうプリシラに、レイはもう一度「戻っているように」と念押しした。「ま~、ジェイドさんのことは心配だけど。足手まといになったら悪いからね~」「そうですね。足手まといになっては悪いですから・・・。あの、気をつけてくださいね?」 と、プリシラよりは大人な考えが出来るアイリーンとソーニャが言う。「ソーニャ、オレのこと心配してくれるのか?」「な! 別にシャトルさんだけのことではありません! 皆さんに言ったんです!」 ちょっとからかってやろうと思ったら、予想通りの反応をされた・・・。やっぱり馬が合わないようだ。「ファラさん大丈夫か? オレでよければ代わるけど?」「いや、ナンパ男はいらん」 ヒューの言葉をレイはバッサリ切り捨てた。「レイ~~、お前、直球過ぎるぞぉ・・・」「本当のことだ。それにファラは魔法が使えるからな。いざという時は、男のお前より役に立つ」「ひどい言われようだな・・・」「ロヴィンはいざという時のために、ここに待機していて欲しい」 ヒューを完全に無視して、レイはロヴィンの方を見る。「ああ、そうだな。了解した」 うなずくロヴィン。「さぁ、文句がないようなら。奥へと進むことにしよう」「おぅ!」 勇ましく先頭を行くレイにオレたちは続いた。
2007年06月30日
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「ミステリはお好き?」なんて、良いテーマを見つけました。答えは、YES!wそんなに数多くは読んでいませんけど。好きになった作家さんの、好きなシリーズものは盲目的に買い続けてしまう傾向があります。とりあえず、今、ぱっと思いつくものは森博嗣先生の「黒猫の三角」。Vシリーズと呼ばれるものの、第一作です。主人公を初めとする登場キャラの魅力さ。仕掛けられたトリックなど、どれも一級品ではないかと思います。なにより森先生の文章は、美しいと思います。詩のようであり、哲学書のようでもあり、上品なジョーク集でもあるような・・・ま、そんなところが先生の作品を読み続けることの出来る要因ではないかと思います。そして、短編では、有栖川有栖先生の「スイス時計の謎」です。これも臨床犯罪学者・火村英生のシリーズものです。「黒猫の三角」奇抜なトリックなどが使われていないものの、完璧なロジックによって導かれた結論が、動かしようのないものであり。将棋が好きな自分としても「詰んだ」感がとっても良いなぁ・・・と思いました。海外の作品では、「女には向かない職業」が大好きです。これは話もいいのですが。それ以上に主人公のコーデリア・グレイという若い女探偵が、健気に懸命に事件の真相を追う姿勢に感動。(とにかく良い娘さんなんです)と、完璧に自分の趣味・思い入れが入った作品ですwいわゆるミステリー的な要素は、前の二つの作品に比べるとずっと低いかもしれませんが。でもある意味でコーデリアは、もっとも人間臭い、リアリティのある探偵といえるかも知れません。
2007年06月13日
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この前の絵に色をつけました。構図が悪いので、ヒューは反転。ペイントって便利ですねぇ。画材はあいかわらず色鉛筆です。ソーニャは、われながら描きやすいです。だんだんと、おでこが強調されていくようなぁ・・・。ヒューは、まぁ、これはこれでいいのかなぁと決定稿になりつつあります・・・。
2007年06月10日
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「探偵狂想曲」 #15 盗まれたもの 魔法アイテムが保管されていたという博物館地下二階の一室。 分厚い鋼鉄製の扉に守られている(ただ今は壊されひしゃげている)部屋は、一辺が5メートルくらいの正方形の部屋で、中央に石を積んで作られた台座が置かれていた。 そんな部屋に12人もの人間が集まると、かなり狭い。 ちなみにパピーが入るとさらに窮屈になるので、彼には外で待ってもらっている。「例のものは、ここに置かれていたのか?」 台座を見てオレは、レイに尋ねた。 台座には今は何も乗っていないが、つい最近までそこに何かが乗っていた痕跡は、「何か」を固定するために用いられた鎖が引き千切られている点など、はっきりと残っていた。「そうだ。そういえば、まだどんな魔法アイテムか説明していなかったな」 レイがいうと、オレと一緒にヒューも頷く。「あー、そういえば勢いだけでここに着たからなぁ」 「そーそー」「・・・あいかわらずな、いい加減ぶりねぇ」 ぼそっと後ろでアイリーンが、ため息混じりに何か言ったが、今は無視する。「それで、魔法アイテムって何ですか?」 とファラ。「うむ、ファラや坊やも、この町が昔は大きな魔法王国の一部であったことは知っているだろう?」 レイがそういうと、プリシラが元気よく手を上げた。「プリシラ知ってるわ! 特にこの町があった場所は、王都と呼ばれていたところだったんだよぉ~!」「ふふ、さすがは魔法少女、よく知っているな」 「えへへ~」 レイに褒められて(?)機嫌をよくするプリシラ。「そのくらいこの町に住む人間の常識だって・・・」 オレは面白くなさそうに(いや、本当に面白くなかったんだけど)言ったのだが――、「あら、そうでしたっけ?」 と若干一名わかっていない人間(エルフ)がいたりする。「後で説明するから・・・」 脱力気味にオレはファラに言った。「はい、お願いしますシャトルさん」「レイ続けてくれ」「うむ、では・・・マシンという言葉に聞き覚えは?」「マシン?」「およ、マシン・・・、機械装置のことかなぁ?」 と自称科学者のダイアナが首を傾げると、レイは首を横に振る。 「ちょっと違う。それもマシンには違いはないが。私が言っているのは、魔法装置のことだ」「魔法装置・・・マシン、それって『魔神(マシン)』のことでしょうか?」 ソーニャが少し興奮した口調でそういうと、レイは彼女を見て頷いた。「そうだ。そのマシンだ。丁度いい、詳しく知らないものもいるだろうから。ソーニャ、この場で簡単に説明してくれるか?」 図書館通いが日課の物知りな文学娘にレイに促されて、ソーニャは一度頷いてから口を開く。「わかりました。そもそもは、この町が巨大な魔法王国の一部であった時代の話です。当時、この世の中で随一といわれた魔法技術を誇っていた王国は、国民が安定した生活を送れるよう、数十年という長い年月をかけ、国民に供給する魔力を永久に生み出す装置を作り出しました。当時、魔力は人の営みに欠かすことの出来ないもので、魔力供給装置を作り出したことで、魔法王国はその後、千年以上も栄えることになったのです。その魔力供給装置が、俗に魔神(マシン)と呼ばれているのです」「そうだったんですか」 ファラが感心したように呟くと、隣りでプリシラが面白くなさそうな顔をした。「そのくらいプリシラだって知ってるもん」「・・・しかし、その魔神って壊れたんだろう?」 と腕組をして壁に寄りかかっていたロヴィンがいうと、ウィルが口を開く。「ええ、所詮は人の作ったもの。永久に維持する装置を作るなんてこと自体が無理な話。千年以上もの長い時間、故障一つしなかった魔神は、突如暴走し。そしてそれが原因で王国は間もなく滅亡したそうです」「なかなかうまくは行かないものだなぁ・・・」 マリノは、話を聞き飽きたのか、あくびをしながらいった。 「えっと、それじゃあ。この台座にはその壊れた魔神の残骸が置いてあったっていうの?」 アイリーンがいうと、レイは頷く。「正確には、全てではなくパーツの一つがな。館長は『魔神のカケラ』と呼んでいたが・・・」「魔神のカケラ・・・そんなものが、オレたちの町にあったなんて・・・」「いや、案外この町だからなんじゃないか? なにせ、ここは王都だったんだろう?」 オレの呟きに、ヒューがいった。「ボク、暴走した魔神は、七人の英雄たちによって打ち砕かれ、世界に四散したって、お母さんに話してもらったことがあるよ」 とジオ。 魔神と英雄たちの話は、この町だけじゃない他の地でも語られているわりと有名な物語である。ジオだけじゃなく、オレもまた母親にその話は聞かされた記憶があった。「んでも、なんでそのカケラを奪っていったんだ? そんな壊れたものじゃなく、もっと金目ものが、いくらでもここにあるんじゃないか?」 マリノがいうと、レイは神妙な顔をして首を振る。「いや・・・、魔神のカケラの中には、ここにある美術品に匹敵するほどの価値があるものもある。それは魔神にとっても要となる部分で、特にその部分を指して『コア』とも呼ばれている。これは他のカケラとは異なり、現在もなお昔ほどではないが微量な魔力を発生させているのだそうだ。微量といっても、この建物を維持するくらい容易なほどの魔力をな」「それじゃあ・・・」 オレが言い終える前に、レイや(既に話を聞いていたのだろう)ウィルがやはり神妙な顔をして頷いた。 ――ここに、あったものが『コア』の一つだったんだな。 とオレは、事態の深刻さを受け止めるようにしてその言葉を呑んだ・・・。
2007年06月09日
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果敢にも詩にチャレンジです。「言葉」言葉には、伝える方法いろいろあるよね?文と声と…文は残る声は響く書くのが上手い人声の魅力的な人表現は様々受け取り手も様々伝わる気持ち伝わらない気持ち想いがこめられたもの、それが言葉言葉には、力が込められたものがあるよね?励ます力、憎しみを生む力勇気付ける励ましいさかいを起こす憎しみ頑張る人怒る人そのままの気持ち裏返しの気持ち何も書かなければ、何も言わなければ、生まれないもの、それが言葉言葉、言葉、言葉…本当の自分の想いは、目には見えなくて、わからないものかもしれないけれど、それに近いものを伝えよう言葉で…何もなければ、本当にそれは無でしかないのだから。なんて、中身を知っている人に絶対なにか言われそうな詩ですね。ま、(探偵狂想曲の)ヒュー君の作詞という逃げ道を作っておきますかwにしても、男の絵は不得手だなぁ自分・・・。どーみても、女顔だ;
2007年06月06日
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自動車や自転車を使わずに外出するときは、かならず一冊小説を持ち歩いています。読んでいるものは、主に推理小説です。漫画と違って、推理小説って一気にはなかなか読めないので。ある程度――真ん中くらいまで――を外出中に読みます。で、真ん中くらいまで行ったら、ベッドに寝転がりながら夜通し一気読み、このパターンが多いですね。外出中に読書するときは、主に地下鉄の車内や、ホーム、人がいなければ構内で歩きながらってパターンが多いです。車内やホームはともかくとして。構内を歩きながらはさすがに危ないかなぁと、自分でも思うんですけどねぇ・・・。冬、雪のため地下鉄通勤がほとんどになるので。今年も春まで自分的には結構な冊数読みました。で、ようやく本題。今年になって読んだもので、特に印象的な作品は、篠田真由美先生の建築探偵シリーズでした。文庫派なので、現時点まで読んだものは五冊くらいかな・・・。ノベルズ版では倍以上の作品が出ているんですけど。文庫化するまでは手は出さないつもりです。ま、それは置いておいて。建築探偵シリーズのポイント(自分的に)は、単に犯人を捕まえて殺人事件を解決するのではなく、もっと深く事件と関係者の心の闇に入り込み、その絡んだ紐のようなものを解きほぐすことで、本当に意味での事件の解決を導くところにあるのではないかと思いました。そして、それは主人公である桜井京介自身も、深い闇を抱えている人間であるが故のことなのかなぁと思います。(すみません自信なさげで。まだ自分が読んだ部分まででは、そこまで詳しく描写はされていないのです)奇抜なトリックはないものの、建築探偵シリーズは他の作品とは一味違った味わいのある推理小説だと思います。粗末な絵ですみませんw本文と何も関係ないけど、描きたいので描きました。読書中のソーニャの図です。最近、顔の部分は、まぁ人前にも出せるかなぁとは思えるようになってきたのですが、身体のバランス、手の仕草が難しいですねぇ。もっと精進しないとぉ~。
2007年06月05日
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前回のジオとパピーのイラストに、色鉛筆で色付けをして見ました。それだけだと、物足りないので新たに二人を描き足してみました。女の子(プリシラ)の、可愛らしい服を描くのは大変です。色もまったく可愛らしくないし・・・。あと、ファイティングポーズではありません。ぶりっ子のポーズ(死語でしょうか?)のつもりなんですが、どー見てもファイティングポーズですねwシャトルの服は、やっぱりピンクになってしまいました。ま、これはこれで。青いボーダーのアンダーは、なんか囚人服みたいです。
2007年06月04日
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「探偵狂想曲」 #14 頼もしき、仲間たち そして、オレたちは博物館の前にやってきた。 朝見たと時よりは数が減ってはいたが。相変わらず自警団の連中の出入りが多い。「さぁ、早く中に入りましょう、シャトルさん!」 と、妙に気合の入っている様子で言うファラ。「ファラ、ちょっと待て――」 オレは前に飛び出そうとするファラの肩を捕まえた。「はい?」「その前に確認しておきたいことがある・・・」 オレはレイの方をちらりと見た。 横目で確認できた彼女の顔は、困ったような渋い顔をしていた。「レイ、ホントにこの大所帯で現場に行っても良いのか?」「・・・やむを得ないだろう。私も本意ではないのだがな」 ため息混じりにレイはそう言った。 * 最初、シルバームーン探偵事務所を出発したときの面子は、オレ、ファラ、ヒュー、マリノ、レイ、そしてウィルの6人だけのはずだったのだが。 今、博物館前に立っているのは、最初の面子にさらにロヴィン、ソーニャ、ジオ、プリシラ、ダイアナ、アイリーンの6人を加わえた総勢12人の大所帯になっていた。 そんなに大きな町ではないため、多分、親父が盗みを働いたという噂を各々耳にしたのだろう。どいつもこいつも野次馬根性を出して、誰が召集を掛けたわけでもなく、オレたちが着いた時には、既に博物館の門のところに賑やかに集まっていた。「お、きたきた。おーい、こっちだ」 オレたちの姿をいち早く見つけ、手を振ったのはロヴィンだった。「本当だぁ! も~ぅ、いつまでプリシラを待たせるのよぉ。ぐずシャトル!」 と頬を(可愛らしく?)膨らませるプリシラ。「まーまーまー、プルったら。そんなこと言ったらダメだよ。本当のこと言われたら、鈍いシャトル君だって傷つくよ?」 と、プリシラに輪にかけてひどいことを言いやがったのはアイリーンだった。 それを聞いてロヴィンが苦笑する。「アイリーン・・・、それ、まったくフォローになっていないぞ」「あれれ? そう?」「でも、事実は事実だよ。シャトルは、ぐずで鈍いの、そのくせ直ぐ怒るしねぇ~」「ほぉ・・・、それがわかっているってことは、怒られてぇのか、プリシラ? オレは、悪い子はきっちりしつける主義なんだがなぁ」 「わわわ! シャトル!? 今の聞こえた?」「あったり前だ!」「お、お兄ちゃん。落ち着いてぇ」 そう、パピーに跨ったままジオが宥めてきた。「って、ジオ。お前まで来ていたのか」「う、うん。おじさんが大変だって聞いたものだから、ボクにも何か手伝えないかなと思って・・・」「そっか、サンキューなジオ」「シャトルさん、ボクもお手伝いしに来たよん」 と、ダイアナ。「・・・ダイアナ、お前は病院の仕事は良いのか?」「うん、事件のことを聞いたお父さんが、『新薬の開発は良いから、暇ならお前はロックフォードさんの事件を手伝って来い』って言うものだからさ」「な、なるほど・・・」 どうやら厄介な娘を体よくあしらったらしいな、あのドクターは・・・。 そんな親心を知ってか知らずか、ダイアナは背負っていたリュックを下ろして、中のものをごそごそあさり始めた。「んで、うちからいろいろ持ってきたんだけど。どの薬が役に立つかなぁ」「いや! 薬は今のところ必要ないからしまったままにしろ!」「およ?」 落ちがついたところで、6人目のソーニャが口を開いた。「シャトルさん、この度はとんだことで・・・」 ――って、おい。「・・・ソーニャ、お前その挨拶なんか変だぞ」「そ、そうでしょうか?」「なんか、お悔やみみたいだ」「な、確かにそうですけど! そういう言い方ってないんじゃないですか・・・!」 「事実は事実だろ。縁起でもない」「ちょっと、言い間違えただけじゃないですか!」「本が好きなら間違うなよ」「誰にでも、うっかりはあります!」「うっかりの範ちゅうを越えているだろうが」 と、またソーニャとの言い争いが始まってしまう。 そんなオレたちをレイが止めに入った。「待った、待った、お前達の仲が良いのはわかったからそのくらいにしておけ」「そうだ女の子を相手にムキになってみっともないぞ、シャトル」 マリノがそう言うと、ヒューが頷く。「うんうん、例え女の子に非があったとしても、もっと紳士的に優しく扱ってあげないとなぁ」「君の口から『紳士』という言葉が出るとはね・・・」「何だよ。ウィル、文句あるって言うのか?」「いや、そこまでは言わないが」「じゃ何か、お前は紳士なのか?」「・・・そうだな、君よりは紳士的である自信はあるが」「何を!」 と、元々馬の合わない男同士の言い争いが別の場所で始まろうとすると、マリノがヒューを、レイがウィルを、お互いに軽くこずいてを止めさせた。「落ち着け、色ボケ男」「まだまだ子供だなぁ、ぼうやも」「う・・・」「・・・ぼうやは、よしてください」「うふふ、いつものメンバーが、これだけ揃うと賑やかね」 アイリーンがのんきに言うと、ロヴィンが頷く。「まったくだ。これから事件の捜査に行くというのに」「こんな様子じゃ、先が思いやられるわねぇ」 と、もっとも不安要素満載のプリシラが言った。 ――おいおい、お前がそう言うか・・・。「む・・・。やはり、お前達も来るというのか」「うん、ダメかな? お姉ちゃん・・・?」「う・・・」 ジオが上目遣いにそう訴えると、さすがのレイも、たじたじと困惑の様子を見せる。 ――さすが、天然レディ・キラー。「ボクもお役に立ちます。実は前々から、事件捜査に科学の力が役に立つかどうか研究したかったのです」「私もお手伝いさせてください!」 ダイアナ、ソーニャの二人も名乗り出た。「まぁ、みなさん。私たちのために、ありがとうございます。レイチェルさん、私からもお願いします」 と、ファラの言葉がダメ押しだったらしく、レイは悩み疲れた様子で頭を垂れた。「・・・ふぅ、わかった。こうなれば何人集まろうが同じだな」 * こうして、異例な民間人だらけの捜査隊が組まれたのだった。 ここだけの話、多少、心強いものを得た気がした・・・。
2007年06月03日
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