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愛国者のフランス人のおっさんがドイツからアルザスを取り返すために第一次世界大戦に参加したら価値観が変わって社会主義に目覚めた話。クラルテはフランス語で光、明るさという意味で、作者は真理と希望を表してこの題にしたそうな。●あらすじ24歳のシモン・ボーランは両親が早死にして歳をとったジョゼフィーヌ伯母に育てられて一緒に暮らしていて、6年前に丘の上の工場の事務員として雇われてから毎日2つの町を行き来している。シモンは伯母を召使のように扱って喧嘩していたが、伯母は心臓発作で死ぬ。シモンは従妹のマリーに惚れていてデートして結婚すると、セフレたちも結婚式に来てお祝いしてくれた。マリーと一緒に暮らすとたかがカナリヤ一匹が死んだ程度で悲しみ続ける物わかりの悪さがうとましくなって、女をとっかえひっかえして情事をしていると、工場でストライキが始まってデモが起きたものの、デモ隊は城で用意されていたシャンパンで酔っぱらってデモが潰れた。結婚して10年経つとマリーは太って無口になって夫婦仲が悪くなって、35歳のおっさんになったシモンは女にもてなくなったけれど若い女が好きで、マリーの義妹の15歳のマルトに目をつける。戦争がはじまって町の男たちは招集されて、前線に塹壕を掘りに行って戦争について考え始める。シモンが百姓の女と納屋でエッチしようとしていたら砲撃をくらって女が死ぬ。愛国主義者のマルカッサン特務曹長は疲れた兵士たちに怒鳴り散らして、勇気を示すために無駄に塹壕の上に立って馬鹿な死にかたをする。ドイツ兵の大群は砲撃を受けながら前進してきたので弾がなくなったフランス兵は退却して陣地を奪われた。部隊は知らぬ間に突撃させられていてシモンは戦場で倒れて大隊に置き去りにされ、負傷した兵士の中ではきちがいのドイツ兵がぶつぶつつぶやいていて、シモンは自分が殺したドイツ兵や故郷のことを考えていると、また砲撃が始まって吹き飛ばされる。長い夢を見た後で病院のベッドで目が覚めると、マリーが見舞いに来て家に帰って生活を取り戻そうとする。シモンは以前とは考え方が変わって人間はみんな同じなのだという真理に気づいて、宗教から目覚めて神を信じなくなったが、マリーは不幸な人がくじけないように宗教という幻想が必要だという自説を曲げなかった。工場は大きくなって、庶民が戦って死んでいる中で商人は大儲けしていて、かつて尊敬していたジョセフ・ボネアは殺戮と破壊のもたらす利益を力説する阿呆に見えて、シモンは戦争を支持する町の人たちと決裂する。戦争記念館では戦争に行かなかった人たちが軍国主義とドイツを混同してフランス兵の勇敢さを称賛していた。シモンは中途半端な改革ではだめで全面的な改革をしなくてはいけなくて、世界を現在のような形にした支配者に改革を任せてはいけないと思う。もう愛し合っていないというマリーと一緒に結婚前の手紙を読み返して、シモンは真実に取りつかれて過去の情事を洗いざらいマリーに話して、むかしは自分のために君を愛したが、今は君のために君を愛すると伝える。●感想シモン(ぼく)の一人称。現在進行形の一人称になっている部分があってナラトロジー的におかしい点があるし、物語の時代が1913年だと明らかになるのが109ページで情報がでるのが遅いし、戦争批判の部分はシモンの思想というよりも作者の思想を展開するプロパガンダみたいで不自然だし、最後に浮気を告白して真実が大事なのだと言ってマリーが納得するのもご都合主義的でありえないような展開である。技術的な欠点はあっても全体的に文章は読みやすくて恋愛や戦争の部分はそれなりに面白く読める。おしゃれな芸術家を気取って印税で楽して暮らすために物語をでっちあげる現代の小説家と違って、第一次世界大戦前後の激動の時代を生きた当事者として書かずにはいられない物語を書いて、支配者が出す情報をうのみにして命じられたままに行動するのではなくて自分で考えろと訴えていて文章に熱意が込められているのはよい。独白を削って恋愛小説を物語ることに徹すれば作品の完成度が高くなっていただろうに、客観的に作品を見る目がないのはもったいない。解説によるとバルビュスは元々詩を作っていてマラルメに褒められて描写は20世紀のゾラと言われながら、真理に目覚めた人物が長々と独白して読者を説得しようとするのが癖のようで、他の作品も小説としては難があるようである。バルビュスは1873-1935年の作家で、ドイツの軍国主義こそ世界平和を攪乱する元凶と信じて周囲の反対を押し切って第一次世界大戦で41歳で一兵卒として出征して塹壕戦を戦って、この本は1919年に刊行されて無知な民衆を犠牲にして利益を得ようとする特権階級を打破して民衆による世界国家を樹立すべきだという社会主義的思想を表明して文壇からは敬遠される一方で負傷した旧戦闘員たちからは代弁者として支持されて、クラルテ運動という知識人による国際的な平和運動に発展したものの、運動が広がりすぎて統制がとれなくなって1925年に解散して、政治活動に熱心になったぶん創作は衰えて晩年は見るべき作品が乏しいそうな。バルビュスは社会主義が失敗することを知らないまま死んだけれど、現代人は社会主義国家が軍国主義とは別のやり方で民衆を弾圧して思想的にも経済的にも失敗した顛末を知っているので、マリーが宗教の幻想は必要だというのがシモンの社会主義の幻想に対しても当てはまっていて、真実を知ったつもりになってマリーを馬鹿扱いしているブーメランがシモンに刺さっているのが面白い。光が強いほど闇が大きくなるもので、社会主義の闇はいまだに中国やロシアに影を落としていて、中央集権にしすぎたせいで言論の自由がなくて政府を批判する知識人を投獄して検閲で民衆を無知のままにとどめようとしていて、自分で考えることを説いたシモンの理想の社会主義が民衆が自分で考えることを奪う結果になるとは皮肉なものである。失敗した社会主義思想について今更知ってもしょうがないけれど、なぜ当時の人が社会主義を支持したのかということを知るうえでこういう小説を読む意義はあると思う。シモンは中途半端な改革ではだめで全面的な改革をしなくてはいけないと思い込んでいるけれど、いまの権力者がだめだからといって別の権力を作ったところで、政治でも経済でも軍事でも宗教でも結局は人間が権力をもつと私利私欲の為に権力を濫用して腐敗してしまってだめで、どんな分野であれ権力を監視する仕組みを作るべきだった。軍国主義も社会主義も膨大な犠牲者を出した間違った選択だったけれど、幻想に頼って手探りで不幸の中を生きてきた人たちの失敗の歴史を人類の財産として活かして将来につなげていかねばなるまい。政治は民主主義で政治家を監視して、最高裁の裁判官が変な判決を出したら投票でやめさせて、官僚は政治家が監視して、軍隊はシビリアンコントロールで監視して、経営者は株主が監視して、宗教は政教分離で宗教指導者が政治的権力を持たないようにして、セレブの奇行はスポーツ新聞が監視して、現代社会は問題を抱えながらも権力が悪用されないように監視してなんとか破綻せずにやっている。社会は完成することがなくて科学技術の発展や世界情勢の変化と共に生活も制度も変わっていくのだから、長期的に物事をみて漸進的に制度の修正を続けて変化に対応していくほうが大事なのだけれど、短命な人間は自分が生きているうちに権力を持ちたがってすぐに結果を出そうとして長期的な計画をだめにしてしまうのである。その時に変化を強調してかっこよく旧体制と戦っているようにみえる改革や革命というスローガンが使われる。小林虎三郎の米百俵の精神は少ないたくわえを使ってでも若者を教育して未来を託すという精神だけれど、改革なくして成長なしといった小泉純一郎は米百俵の精神に言及しながら経団連の目先の利益の為に若者を教育せずに非正規雇用で使い潰すという真逆の政策をとった。今になって経営者は優秀な若者がいない、経営幹部がいない、物が売れない、若者の〇〇離れと慌てているけれど、米百俵の蓄えを若者にやらずに老人が食べたら多少の延命と引き換えに未来がなくなるのは20年前にわかっていたはずである。歴史を振り返るとこんな短絡的で非合理な決定があちこちで見つかるけれど、何かが真実や正義だと信じて疑わない人は、懐疑や批判を敵視して自説を正当化するために物事を考えて、何が正しいのか根源的に考えることをやめてしまって、簡単な間違いにも気付かないものである。シモンが言うように大本営発表をうのみにして命令に従うのでなく自分で考えるのは大事だけれど、真実を見つけたと思い込んで有頂天にならないで自分が間違っている可能性についても考えないとだめだろう。★★★★☆
2019.11.24
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自伝の書き方を解説した動画をアップロードしました。私がまだ若くてワンマン零細ブラック企業で働いていた頃に、青年会議所つながりで社長の知り合いから自伝がメールの添付ファイルで送られてきたことがあってちょっと読んだのだけれど、それなりの歳の偉い人の割に読書経験が乏しいようで、だいぶ拙い文章で文章がぶつ切りで一行空きが多くてあっちこっちに話題が飛んで、その人は自伝を書いたから読んでくれと意気揚々としていたのに自伝として他人が読めるレベルに至っていなくて、書いた本人は自分の文章の欠点に気づかないものなのだなあと思ったのです。自伝を書けるのは本人だけなのに、仕上げ切れずに中途半端な形で残るのはもったいないと思うので、自伝を書くなら書くでちゃんと後世に残せる形にまで仕上げてほしいものです。日本中の暇な高齢者が自伝を書いて、自伝投稿サイトみたいなところに後継者不足で途切れた様々な技術やノウハウをアーカイブしておけば文化的な価値が出るかもしれないので、暇な出版社はそういうサービスを始めてみてほしい。
2019.11.16
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