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2013.08.15
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カテゴリ: 小説
鍛冶屋で育った田舎者のピップが謎の人物の遺産を相続することになり、都会の紳士になって片思いの美女エステラと結婚したかったけど、失恋したうえに遺産を失って独身のまま平凡に暮らす話。
一人称で、主人公ピップが自分の物語を回想する形式。翻訳が原文の冗談や皮肉の意味を拾いきれなくて本文中に()で説明するのは若干読みづらい。

上巻:20歳年上の姉に虐待され、姉の夫の鍛冶屋のジョウに同情されて育てられている少年時代のピップが逃亡した囚人を助けてやったり、恋人に捨てられて狂った富豪の老女ミス・ハヴィサムの遊び相手に選ばれて、ミス・ハヴィサムが溺愛する養女のエステラにいじめられたり、姉が何者かに殴られたりする話。
上巻感想:ピップが始終酷い目に合いっぱなしでいろいろ事件が起きるので、ピップに同情しつつ面白く読める。キャラ立ちしていて登場人物の特徴がわかりやすいのもよい。逃亡した囚人の素性とか、ミス・ハヴィサムがピップを屋敷に呼んだ理由とか、ピップの姉を襲撃した犯人とか、ピップに遺産をあげた人物とか、多くの謎が残されたままで好奇心をそそり、長編小説の冒頭部分としてはよい。ミステリーやサスペンス的な面白さがある。

中巻:ピップが謎の人物の遺産を相続することになり、後見人の弁護士ジャガードの指示でロンドンの家庭教師ミスター・ポケットのバーナード旅館に住みながら紳士になるべく教育を受けつつ、ミスター・ポケットの息子のハーバードと浪費したり、エステラに恋したりしてリア充な20代を満喫していると、ピップのもとに少年の頃に助けた囚人プロヴィス(マグウィッチ)が現れて、ピップに遺産をあげた人物はミス・ハヴィサムではなくてプロヴィスだったということが判明する話。
中巻感想:上巻でのピップの情けなさと比べて、青年になったピップは無駄遣いして遊んでるだけで、これのどこが紳士なんだというくらい嫌な奴になっていて、主人公がまったく魅力的でなくなっている。敏腕弁護士ジャガードやクソ野郎のベントリー・ドラムルといったキャラ立ちしている登場人物が物語を締めるものの、主人公自身に魅力がないのではどうしようもない。上巻で展開した囚人絡みのプロットやエステラとの恋愛はあまり発展せず、サスペンス要素が薄れて緊張感がなくなる一方で、登場人物が無駄に多くなり、誰かと晩餐をとっただの劇を見ただの下男の復讐小僧を雇っただのという面白くもない脱線気味のエピソードが続いて中だるみする。ジャガードが家政婦の腕をつかんで力自慢だと言うあたりとか、下巻でこういう些細なエピソードはプロットの下準備だとわかるものの、いかにもプロットですよという感じの仕込みで不自然で、物語から浮いている。

下巻:プロヴィスが恨んでいる男がミス・ハヴィサムを振ったコンピスンだと判明する。ピップがハーバードと共にプロヴィスを国外に逃がす計画を立てていると、エステラがクソ野郎のベントリー・ドラムルと結婚して、ピップは失恋する。その後ピップの調査でエステラの母親がジャガードの家政婦の女で、父親がプロヴィスだということが判明し、ミス・ハヴィサムは男に復讐するようにエステラを育てたことを後悔して死ぬ。プロヴィスを国外逃亡させようとするとオーリックがピップに復讐しようとするもののハーバードに助けられ、その後コンピスンによって逃亡が邪魔されてプロヴィスは捕らえられ、負傷したプロヴィスはピップに娘のエステラが健在だと知らされて死を迎える。プロヴィスの遺産相続をしそこねたピップはジョウに負債を払ってもらったのち、エステラがだめならビディと結婚しようかと思ってたらビディはジョウと結婚してしまい、ピップはハーバードと順調に事業をこなして独身のまま三十代になり、ある日ドラムルに虐待されて落ちぶれてやさしくなったエステラと再会してずっと友達でいようということで終わり。
下巻感想:上巻・中巻にちりばめられたプロットが下巻で一気に回収され、物語は急展開するもののプロットを優先したためリアリティを損なっている。リアリズム以前の作家なのでしょうがないとはいえ、やりすぎ。エステラの父親がプロヴィスだと判明するくだりは登場人物の中で全てのプロットの因果関係を説明しようとするご都合主義的展開なうえに、それがたいして物語の面白さにつながっておらず蛇足気味。とはいえ悪人であったはずのプロヴィスがピップへの恩返しに献身的だったり、男への復讐に燃えていたミス・ハヴィサムが自らの過ちに気づいてピップに許しを求めたり、ピップがジョウへの忘恩の許しを求めたり、冷淡なエステラがやさしさを取り戻したりして、金を捨てて人間的愛情を取り戻していくというディケンズ的ヒューマニズムが次々に展開していく勧善懲悪的な終わり方のカタルシスが演出してあって、読後感は悪くない。しかし落ちぶれたエステラを最後にもってきて友達エンドというあたりはいまいち。ピップとドラムルが何度か口論する場面があったものの、結局ピップはドラムルと決闘もしないでエステラに振られてあきらめたヘタレのまま物語が終わってしまった。遺産相続をめぐるサスペンスとしては面白いものの、恋愛小説としてはエピソードも心理描写も端折られていてつまらない。
文庫本の裏表紙の宣伝によるとこれがディケンズの最高傑作らしいけれど、無駄なエピソードや伏線を削ってエステラとの恋愛を掘り下げていったらもっと面白くなりえたんじゃなかろうかと思う。例えばドラムルがコンピスンの子孫ということにして、コンピスン、ドラムル対ミス・ハヴィサム、プロヴィス、ピップという対決構図にして、親の敵と結婚したエステラを奪還してハッピーエンドのほうが面白かったかもしれない。








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最終更新日  2013.08.15 23:40:03
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