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2013.10.10
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カテゴリ: 小説
フリースクールで出会って友人になった俊と大輔が仕事をほったらかして昔行ってたフリースクールまでとぼとぼ歩くうちになんやかやの出来事が起きるロードムービー風の話。
三人称で俊と大輔の視点から物語が展開するものの、構成がよくない。冒頭の大輔が俊の家で食事する場面が終わると、一行あけて俊と大輔がフリースクールで出会った過去のエピソードが展開するけれど、このやり方は素人臭い悪手。冒頭の場面も短く、まだ人物像が固まらないうちにいきなり過去に話が飛んで人間関係を説明されても、場面が途切れて読者はおいてけぼりになる。その後はスプレーで落書きしに外出する場面になるのだけれど、ひとつながりの時系列にある物語をわざわざ中断して伏線にもならない猿がどうのこうのという過去のエピソードを持ち出すメリットがない。
「お前みたいにクリーニング屋で働けってことか?」という説明的な会話でお互いの職業を明らかにするのもリアリティを損ねていてよくない。
さらに話が進むと2年前に大輔がクリーニング屋で働き始めたころのエピソードにさかのぼり、また過去編かよ、ナルトかよ、と短編の中で何度も時間を行ったり来たりさせられるのにうんざりする。何年前に何歳だったときに何してたというエピソードよりも、今何歳なのか、これから何をするのかをはっきりさせてほしい。読者が関心を持ってるのは過去に何が起きたかではなく、物語世界における現在で何が起きているのか、これから何が起きるのかということなので、過去の話を小出しにされると物語の続きを読もうという気がそがれていく。過去の話をするにしても、わざわざ一行あきで区切ってエピソードを展開しなくても、説明や回想に織り込んだりするやり方もあるのに、作者の技術の引き出しが少なくてできないんだろうか。せっかくロードムービー風にしたのなら、過去のエピソードを一行空きで区切って現在の物語を中断させることはしないで、過去のエピソードを説明に留めてめまぐるしく現在進行形で出来事が展開していくというやり方のほうが場面の緊迫感を維持できるんじゃないかと思う。
大輔がクリーニング屋で働いているエピソードは出てくるものの、主人公と思われる俊のIT系の仕事の具体的な内容が出てこないのもよくない。俊はいつの間にか仕事をやめてるし、その心理も十分にかかれていないし、俊が主人公なら大輔のクリーニング屋の話よりも俊の仕事の話を書けばいいのにと思う。どっちが主人公なのか、どっちの心理を書きたいのか中途半端なのはよくない。二人の友情を書きたいという作家の心意気はわかるものの、一人の心理をちゃんと描けないうちに二人の心理を描くのも無理な話。ましてや長編でなく短編なのだから、中途半端にするくらいならせめて主人公だけでもちゃんと書いてほしかった。何をしたいのか何を考えているのかよくわからない人間の物語を展開されても、読者としては登場人物に共感も反感も持てず、物語に引き込まれることもなく傍観するしかない。
さらにオチはフリースクールに到着して終わりというだけで、警官を蹴って逃げただの、殴られたばあさんを助けるためにスプレーでSOSを描いただのといったエピソードを回収することもなく投げっぱなしで終わる。結局は中途半端な不良少年が社会の厳しさを知って甘えられる場所に帰ったというだけの話なの?それのどこが面白いの?とあきれてしまった。
登場人物の心理描写が乏しく、グラフィティという小道具の掘り下げが浅く、構成が素人臭く、伏線もなく、プロットも投げっぱなしとなると、まったく見所がない。特にリアリティと物語の構成技術は作家の腕がはっきり現れる部分なので、純文学作家ならたとえ新人でも純文学らしい完成度を期待したいのだけれど、これじゃ純文学としては落第点でエンタメを読んだほうがましなレベル。
本棚を整理していて2010年の文学界6月号が出てきたので捨てる前にまだ読んでないやつを読んでから捨てようという貧乏性でこれを読んだのだけれど、読まないで捨ててもよかったと思う。自分は知人が大麻と覚せい剤で逮捕されたり、やくざに脅迫されたり拉致されたりという話を実生活で見聞きしているので、リアリティのない甘えん坊の不良少年のフィクションを読んだところで何の刺激もなく、時間の無駄だった。

★★☆☆☆





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最終更新日  2013.10.10 05:50:37
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