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2015.08.20
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カテゴリ: エッセイ
1976-79年のSF小説や海外小説や学術書や漫画など様々な146冊の書評集。
書評でも筒井の手にかかると一筋縄ではなく、麻雀の役で評価したり、本の値段が高いなどと愚痴っていたりする。書評でも読者にとって面白い読み物になるように工夫している姿勢はよい。SF論、文学論、演劇論、虚構性についての持論など筒井の芸術観が随所に見えて、筒井ファンなら面白く読める。裏表紙にメッタ斬りと書かれている割には大半は褒めていて、失敗作としてボロクソにいわれているのはわずかしかなく、老齢の著者に対しては言いたいことを控えてやんわりと腐しているのでメッタ斬りというほどでもない。
富岡多恵子「動物の葬禮」のオビに書かれている「たくみな語り口+優れたユーモア感覚+にじみでる哀愁=面白い純文学」という宣伝を書いた文芸春秋の編集者にケチをつけているあたりが個人的に面白かった。文芸春秋の編集者が文学を見る目がないのは現代に限ったことではなく、昔から見る目がなかったようだ。
桂米朝「上方芸人史」では米朝の「落語というのは常識はずれをやって笑うのに、その常識がなかったらはずれようがありません」という言葉を引用して、若手作家のきちがいぶりを批判するあたりも筒井の芸術観が垣間見えてよい。作家がきちがいぶっている俗物だというのは現代の小説家の批判にも当てはまることかもしれない。
本の値段にまで言及する書評というのはなかなか珍しいけれど、本をひとつの商品として評価するからには内容だけでなく値段も評価対象になるのは当然だろう。私は小説はたいていブックオフで100円で買ってぼろくそに批判する最低の読者だけれど、その分値段を含めずに内容だけで評価している。ゴミ本でも100円だからこそまだ許せるわけで、もし私がゴミ本をクソ高い定価で買った日には罵詈雑言を通り越して呪詛を吐いて作者を呪い殺すだろう。ゴミ本をつかまされても許容できるほど私の人格と財布は優れていないのだ。作家には私のような貧乏人が食費を削ってでも定価で買いたくなるようなすごい小説を書いてほしいものである。メッタ斬りと称する書評家にはゴミ小説が間違って読者の手に届かないようにをきちんと葬ってほしい。しかしそもそも編集者の審美眼がきちんとしていればゴミ本が流通することもないので、元はといえば編集者が悪い。ゴミ本を書いた作者は批判されて当然だけれど、編集者も一緒に批判されてしかるべきだろう。その点で、編集者も批判している筒井の書評は真摯である。
筒井がル・クレジオの最高傑作と褒めた「巨人たち」、筒井がこれこそが小説だと完全に降参した新田次郎の「アラスカ物語」、中央公論社の事件を実名で書いた中村智子「『風流夢譚』事件以後」、世界の文豪をボロクソにこき下ろしたコリン・ウィルソン「小説のために」、筒井が悪口が麻薬的に面白いと褒める細川隆元「戦後日本をダメにした学者・文化人」、加瀬英明「日本の良識をダメにした朝日新聞」、カフカの三倍カフカだというフィレンツ・カリンティ「エペペ」、小説より面白いノンフィクションのG・ヴァルテル「ネロ」、人肉食のリアリティがすごいバリー・コリンズ「審判」などの面白そうな本があることを知ったのも収穫だけれど、こういう本はたぶんブックオフでは100円で売ってないだろうから図書館で探していつか読むことにしよう。

★★★☆☆





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最終更新日  2015.08.20 17:28:11
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