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老人が横丁の人たちの思い出を雀横丁年代記として書く話。
●あらすじ短く狭いながらも人が多くて賑やかな雀横丁に住んでいる孤独な老人であるヨハネス・ヴァッハホルデルは子供のころからの思い出を年代記として気ままに書くことにする。フランツ・ラルフの娘の幼いマリーが亡くなった話、漫画家ウルリヒ・シュトローベルと知り合った話、フランツの叔父が臨終の際に話した半生、クリスマスに踊子のロザーリエ母子と会った話、フランツが死んで小さいエリーゼ(リーゼ)が孤児になったので養父になって世話をした話、遠くに住んでいるエリーゼが帰ってこない話、エリーゼが風邪をひいた話、エリーゼが死んだ小鳥を見つけて泣いた話、「デッペ」(deppeはドイツ語でバカを意味する)を言った学士ハインリヒ・ヴィンメルが警察から追われて横丁から出て行った話、エリーゼや学士たちと森に行った話、老婆マルガレーテ・カルステンが1807年に8人のフランス人を家に泊めてその後自由戦争で息子を二人亡くした話、未亡人ヘレーネ・ベルクと14歳のグスタフが引っ越してきてグスタフとエリーゼが仲良くなる話、1841年に横丁を追放されてアメリカに行ったヴィンメルがナネッテと結婚したと知らせる手紙、ロザーリエが女王の誕生祝で仕事を休めずに踊っている間に息子が死にかけていてなんとか臨終に駆けつけた話、乙女になったエリーゼとグスタフが仲良く喧嘩した話、シュトローベル草紙、月夜のエリーゼとグスタフの初恋の話、シュトローベルが旅行に行く話、エリーゼとグスタフが結婚した話を書いて年代記は終わる。
●感想
ヴァッハホルデルの一人称の日記形式。1937年に翻訳されたやうで、旧字なので読みづらいのである。内容は老人が大都会の横丁の知人たちを回想するというもので、いわば東京の下町の人情話のようなもので、普遍的な人間の喜びと悲しみを書いているので、ドイツの庶民の生活に興味がない人でも共感できるだろう。時系列順に書かれていないせいで読みにくくはなるもの、フランツの話をしたあと急にフランツの死後の話に移ることで人物を印象付けることに成功していて、物語の面白さではなく感情に訴えるのがこの本の狙いなので、その点ではよくできている。映画がなかった時代に映画のカットのように時間をとばした話のつなげ方をしている構成は凝っていて、うまく映画化したらそれなりに面白いんじゃなかろうかと思う。
1856年に著者が25才くらいのときに書かれた処女作で、お涙頂戴の死別エピソードの一辺倒で終盤はエリーゼとグスタフの幸福な恋と結婚で締めるあたりはステレオタイプ的というか若さゆえの性急さというか、不幸な死と幸福な恋で読者の感情をゆさぶろうという姿勢が露骨に見えるし、語り手を老人にしている割には人生や社会への洞察がないのは物足りない。処女作なので欠点があるのはしょうがないけれど、娘思いの老人を書いた小説ならバルザックの『ゴリオ爺さん』やラーゲルレーヴの『ポルトガリヤの皇帝さん』のほうが面白いので、あえて現代にこの小説を読む価値があるかというと、あまりないかもしれない。
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