PR
キーワードサーチ
コメント新着
世界のエリートは哲学が役に立つから学んでいるのだという趣旨で、古典から現代までの著名な哲学者の主張の要点をざっくり紹介した本。
ターゲットとなる読者は哲学を知らないビジネスパーソンなのだろうけれど、無理やりビジネスパーソンの思考法と結び付けている感じで、どのエリートが何を考えているのか、どうビジネスに役立つのかという具体性が乏しい。もっと突っ込んだ思考をしないとビジネスには役に立たないんじゃないかと思う。ビジネスパーソンが哲学に興味をもつきっかけとしての入門書としてはよいのかもしれないけれど、内容が浅くて、読んだところでせいぜい文系大卒の常識を補う程度なので、これを読んだからといって世界のエリートたちと哲学の会話をしてきゃっきゃウフフと盛り上がれるわけでもないだろう。それに世界のエリートが教養として哲学を学んでいるというより、ヨーロッパが幾たびも経てきた革命や社会の変化の根底にある思想として哲学があるのであって、別にエリートでなくても大卒なら歴史と一緒に哲学を知っているという程度の一般常識で、知っているからといって教養として自慢になるようなものでもないだろう。日本のビジネス界は「経営哲学」としてたまたま時流に乗って一時的に成功したにすぎない経営者の偏った考え方を崇拝して、自分で考えるような人材は従順でないから使いにくいとみなして脳筋体育会系イエスマンばかり集めたがる。その結果、経営者の伝記を無理やり読ませて洗脳まがいのことをして経営者を崇拝させて、組織の派閥の中でしか生きられないようなビジネスごっこパーソンがあふれて人材の多様性をなくして変化に対応できなくなって会社が傾いて、会社の肩書きと人脈がなくなると何もできないようなぼんくらパーソンがあぶれるというサイクルを繰り返している。そもそも何かの物事について自分の頭で考えずに偉い人の意見に従うのは哲学ではないので、「経営哲学」を崇拝するという儒教的で権威主義的な考え方から脱却して他人の意見に疑問を持って自分で考えることをしないと、哲学は論語読みの論語知らずのような意味の無い学問になってしまう。
日本のビジネスパーソンは教養としての哲学史を学んでエリートぶるよりも、まずは実用の哲学としての人権の概念を学んで法令を順守してブラック企業でなくなるのが先じゃなかろうかと思う。ナイキのような大企業でさえインドネシアで下請け工場が児童を労働させて人権違反で国際的にバッシングされたし、ワタミも一時はデフレ下の時流に乗って業績を伸ばしても従業員から搾取するブラック企業の実態が世間にばれると客に嫌気されて業績を下げたし、利益を優先して人権侵害でバッシングされる企業は多い。人権の概念を理解できないブラック企業のサイコパス経営者とか、自分や家族を犠牲にしてでも仕事一筋で周囲を不幸にするワーカホリックとか、無駄な責任感を持ってブラック企業に尽くして労働力ダンピングに貢献して自分の首をしめてるドMバイトとか、何のために働いて何のために生きているのか本人ですら理解していないんじゃなかろうか。そういう人向けに「日本のサイコパス経営者と底辺労働者が学ぶべき実用としての哲学」にテーマを変えたほうが大勢の日本人読者の役に立つんじゃないかと思う。
『小林秀雄全集第三巻 私小説論』 2024.02.25
ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』 2021.12.09
シンシア・ソールツマン『ゴッホ「医師ガ… 2021.06.19