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1980年代後半に書かれたエログロバイオレンス脱糞短編集。
「薬菜飯店」はおれが効能がいい中国料理を食べて体中の毒を排出する話。おれの一人称。
「法子と雲海」は夢を説いて虚構の想像力を語る危険思想家の法子先生と弟子たちが夢と現実を行き来したりする話。三人称。
「イチゴの日」はプロデューサーがブスの島川ユリエを子供の頃から美人のスーパースターとして騙して育てて18歳の誕生日でブスだと発表する壮大ないじめを企画していて、それを島川ユリエが知って悪魔を呼び出して復讐する話。三人称。
「秒読み」は50代の軍人のボブ・ギャレット大佐が核戦争で世界が終わる秒読みが始まる前に意識だけが40年前の少年時代の自分にタイムスリップして少年時代をやりなおす話。おれの一人称。
「ヨッパ谷への降下」はヨッパグモを大切にする村で朱女と暮らしていると、朱女が数万匹のヨッパグモの巣があるヨッパ谷に転落したので助けに行く話。主語なしの一人称。
「偽魔王」は吉井真弓の息子の純が大河内君に屋上から突き落とされて死に、素行が悪いやくざの猿田が組長の遠藤に殺されて、二人は悪魔がいる世界で会い、悪魔たちはファミコンを通じて人間に憑依して悪魔をスカウトしていて、猿田は素質を見込まれて臨時の魔王になって純の大河内一家への復讐を手伝う話。三人称。
「カラダ記念日」は俵万智の「サラダ記念日」のやくざ風パロディ短歌集。巻末には俵万智が自分の短歌と比較した解説がついている。
●感想
エログロバイオレンス脱糞、ファンタジー、タイムスリップSF、パロディ短歌と、バリエーションが多彩で短編集として飽きなくてよいものの、脱糞がやたらと多いし、「偽魔王」には露離婚や近親壮観の場面もあるので、そういうのが苦手な人は注意したほうがよい。
「イチゴの日」はジム・キャリー主演の映画『トゥルーマン・ショー』的なアイデアを先取りしているけれど、途中から脈絡もなく悪魔が出てきてなんでもありのファンタジーオチで終わってしまったのは残念なところ。長編に展開しうるアイデアを短編で浪費してしまうのはもったいない。「イチゴの日」と「偽魔王」の悪魔系短編が二つもあるけれど、当時はオカルトが流行っていたんだろうか。悪魔がそのまま暴れるというのは筒井の割には安直な展開で、「偽魔王」では最後に作者批判してオチがないことをごまかしているけれど、オチを考えるのを放棄してメタフィクションに逃げているように見えてしまう。
★★★☆☆
薬菜飯店【電子書籍】[ 筒井康隆 ]
辻原登『家族写真』 2026.01.10
伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』 2025.12.09
辻原登『Yの木』 2025.11.05