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新米車掌がパンチョ・ビリャ討伐の騎兵隊をメキシコに輸送するために列車を走らせる間にいろいろ問題がおきる話。
●あらすじ
I とんぼ帰りで1916年3月、DQNに腕を折られて野球選手になるのをあきらめて高校を中退した18歳のキャシー(キャシアス・マッギル)はコネで列車の車掌助手になってこき使われていて、ようやく仕事を覚えたばかりなのに盗賊パンチョ・ビリャ討伐に行く騎兵隊をメキシコに輸送する際のオハマまでの区間の車掌を押し付けられることになり、助手を雇えなかったので幼馴染のろくでなしのロックス(ライリー・マコーリフ)を成り行きで仕方なく雇う。
II 蒸気を上げて
極寒の中で粗悪な石炭しかない状態で列車はフォート・ミードに到着して騎兵隊を乗せると、怪我した馬を殺したインプ少尉にロックスが殴りかかって逮捕され、アントロバス中佐は全速力で列車を走らせるようにキャシーに命令するものの、貨車は馬の輸送に向いていなくて酔いどれ獣医のドク・ローズが全速力で走ると馬がほとんど死ぬというので列車の速度を落として、それでも列車の中で馬が暴れて死んだり怪我をしたりするので、いったん停車して馬房を作る。キャシーが家畜輸送車を手配する電信を打っている間に兵隊は勝手に3人の娼婦を連れ込んで隠していて、それを見つけたロックスが女と仲良くしようとして兵隊のマッドやスナイヴィーにリンチされ、キャシーがママからもらったロザリオもスナイヴィーに盗まれる。オハマについても家畜輸送車はなく、交代するはずだった車掌が仮病を使ったので引き続きキャシーが車掌をすることになり、大金持ちのオーティス・ウェブスターが軍にエンジン車を売り込もうとして、ウェブスター一行がチャーターしたマザーロードという高級車両も連結され、キャシーはウェブスターの娘のキャシディに惚れるもののヴァン・インプが口説いている。ウェブスターの提案で戦争の前線に間に合うように8時間短縮すればキャシーたちにボーナスが出ることになる。
ロックスはジョリーン・ポッツは娼婦ではなく兵隊にさらわれたと信じていて助け出そうとして失敗して殴られるものの、あきらめずに手榴弾で注意を引いた隙にジョリーンを車掌室の床下に隠し、ロザリオもポーカーで勝負して取り返すことにする。テキサスのダルハートで停車するとキャシーが電報の到達時間に「午前」を入れ忘れたミスのせいで機関士の交代がいなくて列車が遅れることになり、兵隊は自由時間をもらって遊びまわって町をめちゃくちゃにして、その間にキャシーはポーカー勝負をしてビニオンがいかさまをしているのに気づいて乱闘になって、ロックスはスナイヴィーを撃ち殺して、ロックスとジョリーンはマザー・ロードに隠れる。
III 屈辱に耐えて
マッドはキャシーとロックスがスナイヴィーを殺したと思って列車内の捜索を始め、キャシーはウェブスターたちに歌を歌って才能をほめられたところでスナイヴィーの死体がみつかり、後で軍法会議にかけられることになる。フォート・ブリスに到着すると列車の遅れが原因で騎兵隊は前線に出られずに後方任務につくことになって兵隊たちが苛立ち、マザー・ロードが切り離され次第に車内を捜索してロックスを殺すつもりでいたので、キャシーはキャシディにロックスたちをかくまうように頼むもののヴァン・インプたちに見つかってロックスは撃たれて負傷して、軍法会議を待たずに銃殺されることになったとドク・ローズが言うのでキャシーがロックスを逃がすと代わりに捕まり、鉄道会社からの伝言を伝えにきたテレンス・スウィニーもマッドに捕まって監禁される。中佐は司令部に馬を大量に死なせた責任やダルハートの騒動の責任を問われて、司令部からのメッセンジャーも監禁する。パンチョ・ビリャ軍との戦闘の後、中佐は狂人扱いされて、キャシーの罪は免除される見込みになり、マザーロードを連結してエル・パソまで行く指令をうける。キャシーは会社から受け取るはずの金を受け取ってロックスに金を渡す手続きをして、ウェブスターとメキシコ人の処刑を見物に行ったあと、スウィニーが女を買いに行くのについていくと、ジョリーンたちと再会して、ジョリーンとエッチしたら全財産を盗まれる。
キャシーはパンチョ・ビリャの報奨金目当てにひとりで討伐に向かったロックスを探すために軍隊に入隊して南に偵察に行くと、ロックスは磔にされてちんこを切られて口につっこまれて死んでいて、そこにいたメキシコ兵と戦って負傷して戻ると、マッドからロザリオを返してもらい、ロックスの棺を列車に積み込む。
●感想
三人称。実話を元にして脚色したフィクションらしい。ちょっと無頼したい気分だったのでタイトルだけ見てセガール風の無頼マッチョが悪党をばたばた倒す話かと思って買ったものの、ヘタレ車掌が主人公で列車の中の出来事が物語になっていて意外性があってよい。冒頭でキャシーがこき使われている描写をして、読者を主人公に同情させて物語にひきつけるテクニックはよい。ドラえもんの野比のび太とかバックトゥザフューチャーのマーティー・マクフライとか、ヘタレは成長するのびしろがあるぶん主人公向きである。ただでさえキャシーが経験不足なうえに、まったく信用できないロックスが助手になるという不安しかない状態で出発することで期待をあおる展開の仕方は長編の冒頭部としてはよい。中盤は予想通りロックスがトラブルを起こすという展開だけれど、車掌としての仕事をしないといけないキャシーのかわりにロックスが物語の牽引役になっていて、脇役をうまく使っている。物語の展開としては中盤で娼婦や大富豪一家を登場させてテコ入れして、期限内のメキシコ到達、ママのロザリオ奪還、娼婦ジョリーン救出、キャシディへの片思いのプロットを同時進行させて物語が停滞しないようにしているのはよい。各登場人物はヘタレのクリスチャンのキャシー、アイルランド系の酔っ払いのロックス、良い黒人のネルソン、アル中獣医ドク・ローズ、くそ野郎ヴァン・インプ少尉、あらくれ兵士のマッドとスナイヴィーのように、ステレオタイプ気味にキャラ付けしていて登場人物が多くても読者が性格を理解しやすいようになっていて、その性格上の欠点がうまくプロットにつながるようにしている。怪我をしているロックスがひとりでパンチョ・ビリャ討伐に行くのは普通ならありえない行動だけれど、馬鹿だからしょうがないという説得力でうまくごまかしているし、ロックスがちゃんとみじめに殺されていて荒唐無稽になりすぎない程度にロックスの死にリアリティーを持たせて印象付けて話を終わらせた点は落としどころとしては妥当。
600ページほどあって若干冗長でスラップスティック気味な誇張が目立つ部分もあるものの、列車だの騎兵隊だのパンチョ・ビリャだのといった20世紀初頭のアメリカらしい無頼な雰囲気がよい。著者はワーナーブラザーズ等の映画業界で脚本の仕事をしていたことがあるようでエンタメとしての盛り上げ方がうまく、スムーズに物語が展開していて読みやすく、トラブルやら乱闘やらポーカー勝負やらで盛り上げる見せ場を用意していて、終盤にはキャシーが機転をきかせて物事を処理するようになっていて主人公の成長が感じられる点もよく、長編小説としてはうまくまとまっている。旅行中に新幹線の中とかで読むと暇つぶしによいかもしれない。
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