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最近はクリエイターになりたい若者が多いらしい。バブル崩壊で年功序列がなくなって、もはやルーチンワークをする作業員はどれだけ長く会社勤めしようがほとんど昇給しなくなった。メーカーだと商品開発が人気なものの、希望部署に配属されるとは限らないし、パナソニックの津賀一宏社長が今のままでは次の100年どころか10年持たないと言ったように先行きは厳しい。会社員は創造性を発揮しにくい一方で、ネットが発達して会社勤めしなくてもプロのクリエイターになる道ができたし、コンテンツ制作のハウツー本や無料のソフトウェアやアプリなどのツールが充実して、クリエイターになる難易度がだいぶ低くなった。制作技術が未熟だろうが作者が不細工だろうが、YouTuberやライトノベルで人気になれば一攫千金できるという点ではクリエイターは夢のある仕事である。しかしコンビニの新商品を食べるだけの動画みたいな誰でもできるようなありきたりで低品質なコンテンツよりも、もっとクリエイティブで高品質で楽しいコンテンツが増えればよいと私は思うので、クリエイティブになる方法を考えることにする。
●凡人がちょっぴりクリエイティブになる方法
私が行っていた大学院で研究がどういうものか理解していなくて先行研究をまとめるだけの先輩がいたけれど、知識や学歴があるからといってクリエイティブになれるわけではない。クリエイティブであるためには自分はこれをやりたいんだという動機と発想と行動力が必要になる。他人がやっていることに追随するのでなく、他人がやらないことをやるのが創造の第一歩である。
・自由度の高い遊びを楽しむ
子供は放っておけば手元にある道具で新しい遊びを思いつくもので、楽しいことをやっているときに脳が活性化して創造力を発揮する。例えばマインクラフトというゲームはブロックで自由に建物を作ったりできて子供の想像力を高めるという点で高評価されていて、発売から10年たってもまだ飽きられていなくて世界中で人気がある。トランプも一組あればいろいろなゲームができるという点で自由度が高いし、すごろくのサイコロ代わりにトランプを使ったりしてオリジナルのゲームを作ることもできる。日本のサラリーマンの創造力が乏しくて日本でイノベーションが起こせないのは、上司に行動を監視された殺風景な刑務所のような自由のない職場で仕事をしていても楽しくないのが一因じゃないかと思う。
・ルーチンワークをやめて新しい刺激を受ける
脳は重要でないと判断した情報を自動的に遮断するので、同じ作業を繰り返していると効率よく作業できるようになる半面、本来脳に入るべき刺激が意識から抜け落ちて感受性が乏しくなってアイデアが出にくくなる。例えば家から職場や学校までの道のりはたいてい最短距離のルートに固定されるけれど、あえて普段通らない道を通って普段とは違う街並みを眺めたり、珍しい車やファッショナブルな人を見つけたりすることが刺激になる。あるいは珍しい魚を買って料理してみるとか、ランチで新しい店を開拓してみるとか、普段読まない雑誌を読んでみるとか、休日に博物館に行ってみるとか、お気に入りのプレイリストを聞く代わりに今まで聞いたことがない外国の音楽を聴いてみるとか、脳を活性化することでいろいろな刺激が脳内で結びついてアイデアが出やすくなる。
・考えるだけでなく作ってみる
「テーマは「贖罪」」という自信満々なワナビーによる名言があるけれど、ワナビーはアイデアを考えただけで何かをやった気になって創作技術がない。たいていの人は下手な作品を批判されるのが嫌だったり、技術的にうまくならないのが嫌だったりして、創作しようとしない。しかし実際に作ってみないことにはいつまでも創作技術は身につかないし、最初は下手でも作り続けることでうまくなっていく。最近はフリマの宿題代行の出品が規制されたけれど、読書感想文とか自由研究とかを受験の役に立たないからといってないがしろにする親がいるからそういうビジネスがでてきたわけである。しかし宿題をアウトソーシングしていくら要領よく受験に成功したところで、創造力のない人は指示された作業しかできなくなるので成人後の伸びしろが少なくなる。子供にクリエイティブな仕事についてほしい親はちゃんと宿題を子供にやらせて、失敗してもいいような小さな研究や工作で試行錯誤を繰り返して自分で考える経験を積ませるほうがよい。
・すぐに買わずに作ってみる
現代社会はたいていの物はお金を出せば買えるし、いろいろな便利グッズも売っている。しかしお金を出して既製品を買うだけだと創造性が育たないので、ありあわせの材料で自分でDIYして生活を便利にできないか考える姿勢が創造性を育てる。例えばハーフパンツが欲しかったら裾が擦れてきたズボンを切ってリメイクするとか、貧乏なほうが自分で何でも作るようになるので創造性がつく。
・答えを見ずにやってみる
現代社会はたいていの物についてWikiやハウツー情報があって、ゲームの攻略方法も化粧も魚の捌き方もなんでも調べればすぐ答えがわかる。しかし答えを見てその通りに行動するのでは単なる作業になってしまって創造性がなくなる。調べればすぐにわかることを考えるのは時間の無駄じゃんという人もいるだろうけれど、試行錯誤する工程が発見につながる。たいていの情報ページには推奨するやり方だけ書いてあってだめなやり方は書いていないけれど、失敗してみてなぜそのやり方ではだめなのかという知識や経験を得るほうが創造に役に立つ。
●誰もやっていないことをやる方法
誰もそれをやらないのには理由がある。誰もそれを思いつかなかったり、それを思いついた人はいるけど技術的に難しくて成功しそうにないからやらないのである。そこで月並みな技術でもできる新しいアイデアを一番最初に思いつくか、あるいは技術的に難しいことをうまくやるためのアイデアを思いついて誰も真似できない技術を身につけるかという二通りの方法で、誰もやらないことができるようになる。
・複数の要素を組み合わせる
創作の際にはジャンルとか登場人物の性格とかのいくつか要素がある。例えば10個の要素から2つを組み合わせると、10C2で10x9/1x2=45通りのパターンになるけれど、これだと45人以上がやったら誰かのネタがかぶってしまう。これが10個の要素から3つを組み合わせると、10C3で10x9x8/1x2x3=120通りになって、だいぶネタがかぶりにくくなる。例えば二次創作のやおい漫画なんかはキャラクターの中から二人選んで攻めと受けの組み合わせが一通り出てしまうとそれ以上やることがなくなるけれど、キャラクターの中から3人選んで三角関係にすると他の人がやっていない新しい展開になりうる。
・違う分野のものを組み合わせる
違う分野のものを組み合わせると、今までと違う新しい発想が生まれることがある。例えば私は主に文学について考えているけれど、小説の構造を数学で分析すればフォルマリズムになるし、美学で分析すれば受容美学になるし、視点を変えることで普通の文学研究とは違う新しい着眼点がみつかるかもしれない。
料理だとそれまで料理人の経験と勘の積み重ねだったのが、栄養学的な視点でカロリーや塩分に気を使った料理が出てきて、料理の盛り付けに色彩学の補色の考え方が取り入れられて、さらには科学的な分析に基づいた分子ガストロノミーの料理法が出てきて料理が進化している。制約条件の理論で料理のプロセスを全体最適化した時短料理とか、料理に数学を組み合わせた黄金比の寿司とか、料理に建築学を組み合わせた耐震構造の超高層重箱とかの新しい料理も考案されるかもしれない。
ハーバードビジネススクール出身のエリートビジネスマンだと自分の仕事とは関係のない分野の人と会うことを欠かさないそうで、社内だけ見て井の中の蛙にならないようにして新しい仕事のアイデアを出す手掛かりにしている。今は器用貧乏なジェネラリストよりもスペシャリストが求められる時代だけれど、スペシャリストだからといって自分の仕事以外は知らないという人は、AIだのIoTだのフィンテックだのの他分野で起きている技術革新をうまく取り入れられなければ時代遅れの月並みな人になってしまう。
・要素を還元して組み立てなおす
還元というのは何かを構成する単純な要素に分けることである。絵画だと写実主義が主流だったのが「色」と「形」に還元されて再構成されて、印象派やアトミズムやフォービズムや抽象画などの新しい流派が出来上がった。音楽だとレコードからサンプリングした音にメッセージ性が強い喋りを加えることでヒップホップという新しい音楽が出来た。物理学だと電子顕微鏡が進化して素材を原子レベルに分解して物質を構成できるようになって新しい素材が開発された。
・すでにある物を別のものに変える
小麦や卵にアレルギーがある人でも食べられる米粉パンとか、糖質オフの麺とか、昔からあるものを別の新しい素材で作ることに成功すれば新しい需要を作ることができる。あるいは全体を変えなくても、一部を変えるだけで別物のようになることもある。例えば昔のメロンパンは表面がネトネトしていて歯にくっつくので私は嫌いだったのだけれど、最近のメロンパンは表面がサクサクのクッキー生地になっていて、私は新しいメロンパンが好きである。
・温故知新する
現代人は効率的な教育システムの中で全国で画一の教育を受けているけれど、近代化や合理化で失われた伝統的なものや地域的なものに現代人が見落としているアイデアがあったりする。例えば石川県の郷土料理の河豚の卵巣の糠漬けがどういう原理で除毒できるのかという原理は現代でもわかっていないものの、昔の人はそうすれば食べられるということを見つけ出した。現代人なら毒のある部分をわざわざ食べるために除毒する方法を探そうという発想はしないので、食べ物が貴重だった昔の人ならではのアイデアである。他にも除毒できたらおいしい食材があるかもしれないし、捨てていたものが役に立つようになる発見があるかもしれない。
・先入観を捨てて観察や実験をする
メンデルの遺伝の規則性は発表当初は権威者たちに全面的に否定されたけれど、当時は何が正しいのかを見抜く能力さえなかった無能な人が偉そうにして、メンデルとは対照的に死後に名前が残らなかった。あるいはソーカル事件で偉そうにしていた学者たちが論文を見る目がないことが明らかになったこともあった。権威というのはその程度のもので、権威ある本に書いてあることを事実だと思い込んで自分で確認しないでいると、本が間違っていることに気づかないことがある。アリジゴクは排泄しないという通説が本に書いてあっても、小学生がアリジゴクが尿のようなものを排泄したことを観察して表彰されたように、暇な小学生が観察して確認することでも忙しい大人は観察しないまま通説をうのみにしてしまうのである。世界中のあらゆる学問を疑ってかかると時間の無駄になるので懐疑主義になる必要はないけれど、自分の専門分野は他人の研究をうのみにしないで自分で確かめる注意深さが必要になる。そこから権威や通説を覆す新しい発見が見つかる可能性がある。
・苦手なものに目をむけてみる
クリエイターを目指す人は将来アレで食っていくからとたかをくくって専門知識以外を勉強しようとしなかったりするけれど、それが逆に欠点になりうる。漫画ばかり読んで漫画家になった人の作品はつまらないとか、アニメばかり見てアニメーターになった人の作品はつまらないという議論がしばしばあるけれど、他のクリエイターができないことをできるのか、プロに共通する業界の専門知識や専門技術以外に何を知っているのかがクリエイター同士の勝負になる。私は上のほうでmCnという数学のコンビネーションを使ったけれど、数学は苦手だしどうせ役に立たないからといって数学を全く勉強しない人は確率や統計や図形などを使った数学的発想ができなくなる。芸術家を目指すからといってデッサンばかりして物理や化学を勉強しないでいると、新技術や新素材を使ったインスタレーションとかの現代アートについていけなくなる。自分が苦手なものとして切り捨てた分野に本来自分が必要とする発想があるかもしれないし、それが他のクリエイターとの差別化になるかもしれないので、行き詰ったときは自分が避けてきたものを見直すことも大事である。
・成功するまで失敗し続ける
そもそも誰でも簡単にやれることは失敗しないし、失敗するのは新しいことに挑戦している証である。トライアンドエラーの試行回数を多くして、失敗した原因を分析して失敗から学ぶことで成功につながる。このパターンの成功例がエジソンや人工知能である。囲碁のAIは演算能力の速さを活かして何万局も対局して人間では物理的に不可能なほど自己学習することで、一気に人間の棋士以上の強さになった。試行回数が多いほど成功が近づくので、あきらめない情熱と暇が両方ある人向きのやり方である。企業の場合は予算の都合があって決算とかの期限までに結果を出さないといけないのでこのやり方はできないだろうけれど、芸術家や発明家を目指す個人の場合はこのやり方が向いている。ミケランジェロはgeneus is eternal patienceと言ったそうだけれど、たいていの人は失敗の連続で心が折れて天才になる前に諦めてしまう。
●まとめ
マニュアル通りに物を作るのは創造性が必要ない単なる作業である。アイデアを思いついただけだと単なる想像である。アイデアを基にして、技術力によって新しい物やサービスを作り出すと創造になる。現代社会は合理化されて物も情報も行きわたって均質的なので、似たような環境で育って似たような考え方をする人だらけ中で独自の新しいものを創造するのは難しい。しかし難しいからこそ創造に価値がある。未熟さを感じられたときは成長の兆しで、失敗こそが成功の糧になるので、これから何かを作りたいという人は失敗にめげずに頑張ってほしい。
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