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2021.01.11
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最近はトランプ大統領のTwitterアカウントがBANされたり、Parlerという保守が使っているSNSがAmazonからサーバーを停止されたりGoogleとAppleのアプリストアから削除されたりして話題になっている。​ インターネット時代の言論の自由を考える ​という記事で考えたように、GAFAによって言論の自由が脅かされかねない事態になっている。そもそもなぜGAFAは躍起になって陰謀論を削除しようとするのか、陰謀論について考えることにした。

・陰謀論とは何か

陰謀論とは〇〇が××なのは△△(権力を持つ人たち)の陰謀だという主張のパターンである。例えば「人間が猫を飼うのは猫好きな宇宙人の陰謀だ」というように何でも陰謀をでっち上げることができる。主張の証拠がないのは権力者に証拠を握りつぶされているからだと陰謀論者は証拠がないことを正当化して、いつまでも証拠が出てこないままで陰謀が正しいと証明される可能性は低いので、一般的に陰謀論は考慮するに値しない詭弁扱いされている。

・なぜ陰謀論は流行るのか

科学的知識は本能的に得られるものではないので、人間は真偽を判断する能力があまり高くない。その一方で生存に関わる不安や恐怖に対しては偏桃体が敏感に反応する。偏桃体は原始的な脳の部分なので、後から発達した前頭葉の理性が弱い人は刺激をそのままうけとって疑わずに信じてしまう。アンガーマネジメントで怒りを感じてから6秒待つといいと言われているように、偏桃体とかの大脳辺縁系の情報が前頭葉に伝わって感情を抑えて理性的に判断するまでに数秒の時間がかかる。
これは詐欺犯が「オレオレ、会社の小切手を落としてしまったんで金くれ」とか、誘拐犯が「お母さんが事故にあったからおじさんが車で病院まで連れて行ってあげるよ」とか、占い師が「あんたこのままだと地獄にいくから高い墓を買って先祖を供養しなよ」とか言うようなもので、最初に不安を煽ると脳がパニックを起こして、冷静になるまでの時間を置かずに長文でワーッと不安を煽られると前頭葉の反応が間に合わなくて理性的に判断できなくなってしまう。陰謀論も刺激が強いので、「実はこの世界はあいつらに牛耳られているんだ」と真顔で言われると「な、なんだってー!」と信じてしまう人が出てくる。アメリカ人は科学的な思考方法をしない人が多いので、端的に言うと頭が悪い。2012年の​ ​​National Scince Foundationがアメリカ人2200人を調査したレポート ​によると、天動説と地動説の二択で地動説を答えたのが74パーセント、宇宙が爆発から始まったと答えたのが39%、人間は動物から進化したと答えたのが48%だそうで、宗教の影響もあるのだろうけれど未だに中世レベルの知識で止まっている人が少なからずいる。頭の悪い人はよくわからない正しい知識よりも、わかりやすい間違った知識を信用する。そしてしばしば陰謀論はいろいろな物事の辻褄が合うようにこじつけるので、ぱっと見はわかりやすい内容になる。そして確証バイアスで自説を支持する情報ばかりを集めてさらに陰謀論にはまりこむようになる。それゆえにトランプを支持する反知性主義の低学歴のアメリカ人労働者のような人たちが陰謀論を信じるようになるのだろう。

・なぜ陰謀論は駄目なのか

アトランティスやムーの古代文明がどうのこうのというオカルトや都市伝説のように、小人数が非実在的な存在を信じているだけなら放っておいても社会に害はない。しかし実在の人物や団体に関わる陰謀論を真に受ける人が多いと、抗議活動をする人が出てきたりして社会の害になりうる。アメリカ議会に侵入したトランプ支持者とかが有害な例である。特定の人種や宗教が陰謀論の対象になるとヘイトクライムの原因にもなりかねない。それに陰謀論が存在しないことを証明するのは悪魔の証明なので無理で、いったん社会で蔓延した陰謀論は取り消しにくい。それゆえにメディアは陰謀論を規制しようとする。特にユダヤ人は政治経済で影響力が大きくてそのぶんユダヤ人への批判も多いので、Googleとかのユダヤ系企業はユダヤ人を対象にした陰謀論を規制しようとする。

・陰謀論は排除するべきなのか

陰謀論が論として駄目だからといって、表現の自由を無視して排除してよいのかが問題になる。国家が憲法で表現の自由を保証しているのに、国家に所属するいち企業が規約を盾にして表現の自由を侵害してよいのか。本来は社会インフラとして税金で整備するべきITの表現の自由に関わる部分を民間企業が先にやってしまったので、民間企業のほうが国よりも影響力が強くなってしまって、GAFAが表現の自由を脅かす事態になっている。現役大統領のSNSアカウントがBANされて表現の自由の侵害を訴えるのは自由民主主義国家としては異常な事態である。アメリカでは水道の民営化でも問題が起きているけれど、インターネットを含めてインフラを民間企業にまかせてよいのか、営利目的の民間企業の倫理観は信用できるのかという点はアメリカ以外の国でもよく検討しないといけない。
たとえ意見がおかしいとしても、人間には間違った意見を表現する自由があるので、出版であれSNSであれ主張する場を奪ってはいけない。アメリカだと連邦通信品位法230条でコンテンツを規制する権限を与えているそうだけれど、暴力を扇動するわけでもないトランプ支持のツイートまで削除するのは越権行為である。AmazonがParlerへのサーバー提供を終了したように、Amazonが本の内容を検閲して気に入らない本の販売を一方的に停止することだって今後起こりうるし、黒人とゴリラの区別がつかないAIのガバガバ基準で検閲したらウンベルト・エーコの小説のようなフィクションとしての陰謀論まで検閲や出版禁止などの言論弾圧の対象になりかねない。陰謀論者を強制的に排除しようとすると、やましいことがあるから排除するのだ、やはりディープステートは存在するのだ、とさらに陰謀論に傾倒してしまう。BANしたからといって陰謀論者が地上から消えるわけではないし、反陰謀論者と議論する機会もなくなってアングラサイトで先鋭化するようになる。元々Twitterは誤BANがあってBANの基準がおかしかったし、陰謀論者をテロリストかのように扱って一様にBANしたりツイートを削除したりしたのは対応がまずかった。名誉棄損とか威力業務妨害とかの法律に基づいて対応するべきだろう。
陰謀論をなくすためにアメリカがやるべきことはアカウントのBANではなくて、科学的に正しい情報やデータに基づいて論理的に思考する方法の教育をやるべきである。しかしいくら最先端のITサービスがあったところで貧乏人がまともな教育を受けられなくて地動説や進化論さえ浸透していない有様では陰謀論をなくすことは無理だろう。アメリカは新自由主義で格差拡大を放置してきたのだから、貧乏人が陰謀論を支持するだのBLMで暴れるだのマスク非着用でコロナが蔓延するだのの様々な混乱が起きるのは自業自得である。最近はようやくトリクルダウンが起きないことが証明されて新自由主義の害が認知されて、結局はちゃんと教育を受けた中間層が厚い国のほうがよいのだと格差が見直されつつあるけれど、民間企業が大統領以上の影響力を持つほど増長してしまった後では修正は難しいだろう。最近はGoogleの親会社のAlphabetに労働組合ができて従業員が「Don't Be Evil」というGoogleの当初のモットーに戻るように訴えているけれど、すっかり拝金主義のEvilになって中国進出するようなGoogleを変えるのは難しそうである。バイデンが富裕層に増税して格差を是正しようとしても任期中の数年でアメリカの拝金主義の体質を変えることまではできないだろうし、バイデンの次の大統領選挙も荒れるだろうし、アメリカの混乱はしばらく続くと思う。






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最終更新日  2021.09.28 20:37:54
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