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2025.10.17
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頭文字G(あたまもじじい)──。それは、貧乏なおっさんが一日20分ギターを練習してじじいになって頭が禿げる前に三流天才ギタリストになることを目指す極小プロジェクトである──。




●不完全であることの是非

この演奏の完成度は8割くらいで下手なところが目立つけれど、ギターの12/8拍子でやろうとしたことの大まかな感じは十分伝わると思ったので、とりあえずこれでいいやと思って動画にすることにした。正しい猫はいないし正しい猫の夢もないし猫はジャンプに失敗したりするのだからどう演奏しようがコードを外れようが不協和音だろうが間違いではないというコンセプトの曲なので、完璧でなくてもよいのである。ニャ長調はそんなもんである。そんで残り2割の完成度を高めるために練習するよりも次の曲の作曲をしたくなったのである。
そもそも芸事の発表では完璧である必要はないと思う。音楽のコンクールとかだと技術が評価対象になるので楽譜通りの完璧な演奏を求められるしそれが演奏家のキャリアになるし技術の向上にもつながる。しかし鑑賞する側は苦行の結晶のような緊張に満ちたものを見せられてもリラックスして楽しめないだろう。世界文化賞を受賞したピアニストのアンドラーシュ・シフが「コンクールは消えてしまえばいい」と言ったように、芸術はスポーツとは違うのだから難しい曲を早く正確に弾ければよいというものでもない。明治時代のピアニストの久野久は爪が割れるまで練習して鍵盤を血まみれにして演奏したそうだけれど、そういうのは演奏する側も聞く側も音を楽しめないので「音楽」ではないし、ストイックが必ずしも良いこととは限らない。
兼好法師の『徒然草』の150段には芸事がうまくなるまで人に知られないようにする人は芸を身に付けられなくて、未熟な時に上手な人に交じって嘲られても練習を続けられる人が年を取って達人になるというようなことが書いてある。これは私も同意で、未熟で下手なのは恥ずかしい事ではなくて伸びしろがあると言えるし、江口寿史みたいに基礎練習をせずに歳をとっても手がうまく書けないままで写真をトレースして実力以上のクリエイティブを偽装するほうが恥ずかしい。江口寿史は未熟さに向き合わずにトレースに頼って成長が止まったことを作風の完成と勘違いして大御所ぶって傲慢になって晩年になって名声を失っていて、若い芸術家の反面教師になるだろう。全知全能の人などいないし何かの専門家でも他の分野では無知で未熟な素人なのだから、自分の未熟さを自覚して知らないことを謙虚に学んで間違いを正す姿勢を無くしたらだめである。人間国宝級と言われるレジェンド寿司職人の森田一夫は90代になっても現役で寿司を握りつつ弟子を育てていて、「いちばん大切なことは礼を尽くすこと。人にも食材にも謙虚であり続けること」と言っているけれど、江口寿史も人に対する謙虚さがあれば後輩に嫌われるような老人にならなかったかもしれない。
オードリー・タンは京大AI特別講演の学生へのメッセージで「朽ちる前に公開せよ(publish before I perish)」が重要で、完璧なものを投稿したら他の人はいいねを押すだけで去っていくけれど、不完全なものを投稿したら他の人が直さなきゃと思うので友人が増えたというようなことを言ったそうな。この考え方は変化が激しい分野では重要で、ITは技術の進歩が速くてハードの規格が変わったりするので、ある程度形になったら無料ベータ版でテストユーザーを募ってテストしたり不完全なままリリースしたりして、ユーザーのフィードバックをもらいながらバグを直したり機能を付け足したりしていく開発の仕方が主流になっている。
レオナルド・ダ・ヴィンチは未完成作が多くて、『モナ・リザ』は手放さずに何度も修正していたそうだけれど、どの段階で芸術作品を完成と見なすのかというと、大まかな形が出来上がって作家がそれ以上修正しなくなったときが完成と言えるだろう。クリエイターは納期までに作品を仕上げて売って収入を得ないと生活できないし、ITのサービスやオンラインゲームと違って作品を売った後で修正することができないので、修正点があるとしてもこの程度ならまあいいやと妥協して作品を売ったり公開したりしたときが一応の完成となる。作者が日々成長していたらその都度修正したいところが出てきていつまでも作品が完成しなくなるし、新しい作品に取り掛かることができなくなるし、何点か作品を展示しないと客の興味も惹けないので、コンクール用とかでないなら完璧でなくてもある程度仕上げたところで作品を発表してフィードバックをもらって、フィードバックを活かして新しい作品で別の挑戦をするほうがよいだろう。





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最終更新日  2025.11.05 07:03:50
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