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生まれは水底の貝の中 なれど我はたなごなり親もまたたなごなれば 貝はただの揺りかごなるやされどこうして川底に横たわる貝を見やれば不思議と懐かしくもいとおしく我が卵を託すはここ以外にあらずと思われる2004/08/31一部削除
Jul 31, 2004
紙張子で作られた色とりどりの金魚は小さなロウソクを体に宿してほのかに光る珍しいけれどそれが故郷のお盆の風物女の子たちが金魚を提げて暗い夜道を行く様子はまるで金魚の精が里に遊びに行くようだ揺れるおさげ髪にふと懐かしい面影を重ねてひとりときめいて、そして痛みを覚える僕は得意げにコメットを作って渡したんだ……金魚を作るのは大人の仕事だったけど器用な子供も手伝ったでもあのコメットを作ったのは一度だけいや、あれ以来金魚を作っていないわざと手に怪我をしてそれから作らないようにしたコメットが少年だった僕の前を去って行く……ひとりの少女を連れて深い闇にむかって……彼女はまだコメットに導かれて暗い水の中を歩み続けているのだろうかぼんやりと考え込む前に、リュウキンが燈った赤い光に浮かび上がる娘の顔がひどく大人びて見える父が作ったちいさなリュウキンはきっと彼女を明るい水面に導くだろう子供だった僕の心ではこんなに暖かな色の金魚は作れなかったすっかり1日遅れの更新が普通になってしまいました。うーん、夏休みの日記のようなものですしょうか。金魚の紙張子は蒸気工場のある山間部の近くにある村の風物で、まだあまり知られてません。村の外に売るなんてことは考えずに、盆の祭りのためだけに作っているからでしょう。各地の蒸気工場はフル操業で、東京にも巨大な夏雲が吹き寄せられるほどになりました。あの雲の中に巨大な魚が潜んでいるかもしれないと思うと、どきどきしてしまいますね。では、また日常と非日常の間から……**************************************山口県柳井市には、8月にひらかれる金魚ちょうちん祭りというものがあるそうな。なかなかカワイイ金魚のちょうちんがズラリと並んだり、華やかで勇壮な金魚の山車が町に繰り出したりします。詳しくは、柳井市観光協会のHPをご覧ください。僕の想像したのは、これほどカワイイものではなかったのですが。山口県柳井市観光協会HPhttp://www.kanko-yanai.com/
Jul 30, 2004
またもこんな時間。終電で帰りますか。あとは自宅で思いついたら追加しましょう。暑過ぎて、近頃は魚も見かけません。風に流れる口笛は遠く離れた国の歌Aquarela do Brasil山の向こうから聞こえてくる盆踊りのお囃子のような明るい中にかすかな寂しさを潜ませた不思議な曲誰ぞ吹く懐かしい曲やがて消える透き通った風の口笛
Jul 29, 2004
仕事が詰まって、家に戻れません。会社で仮眠をとるぐらいなら家に戻れば、といわれるのですが、家に帰ると落ち着かないので、結局帰宅をためらってしまうのです。ネットに上がった台風の衛星写真の中に魚影を見つける。魚たちは巨大な雲の中で周遊を繰り返し、次第に生まれ故郷に戻ってくるのだ。だがいつも産卵する前に台風は消散して、雲の中にしか存在できない魚たちも次第に薄くなり、ねずみ色の空に消えて行く。彼らは再び太平洋に流れて、再び故郷を目指して台風に乗って戻って来る。彼らは自分たちがすでに産卵できる実体を持たぬことに気づかない。巨大な大気の塊、押しのける雲の形でしか存在を確かめられない魚たち。
Jul 28, 2004
思い出に針を落とすと心に流れ出すのは柔らかなあなたの歌声閉鎖された野外音楽堂であなたは歌ったあなたは舞台に立っているのにその歌声は見上げた青空から降り注いで来るようだったいまでも街で歌声が聞こえて来るとあなたを探してしまうささやくようなためらうような嘆きに身を任せるような歌声けれどあなたは悲しみに伏すことなくかすかに体を揺らしながら歌い続けていたI know I love you......You know I love you......そう歌うあなた自身は僕の心を知ることはなかったろうたったひとりで歌った歌手とたったひとりで聞いた観客あの野外音楽堂はもうないでも歌声だけはいまも僕の中に響いているあなたの知らない僕の心の中でえ~、会社です。帰れませんでした。日記も散文的な詩のようなものになってしまいました。この詩に当てはまる曲は1曲。でもイメージにはもう1曲関わっています。さて、そろそろ引き上げです。I know I love you......密かな思いは自分ひとりのもの。愛する相手にすら伝えぬ密かな喜び……。
Jul 27, 2004
ライトは小柄なやつだが、5体の小鬼の中で一番活動的で、目を離すとすぐにどこかへ行ってしまう。そのくせ身の危険を感じると、いの一番に逃げ出すのもライトだ。どことなく幼い子どもをイメージさせる球形のボディにふさわしい性格だが、それがグレムリンにとっては少々悩みの種。個性づけは技術ではない、グレムリンの妖精の力で与えたものだが、なんでこうなったのかは与えた本人もわからない。ただかわいいやつだと思うばかりだ。ライトのしぐさは、グレムリンに昔住んでいたガレージの持ち主の幼い子供を思い出させるのだ。 ライトがよたよたと斜面を下りて足を止めたのは、ガス帯の手前だった。見ればその周囲に血しぶきが飛んで、鉄さびとは違う鉄分の匂いと、胸が悪くなる生臭さが漂っていた。ライトに臭気センサーをつけなくてよかった思いながら、グレムリンはあたりを見まわした。するといくつものビニール袋が、乱雑に廃材にの間に放り込まれているのが目に付いた。ガス帯の外からここへ投げ込んだのだ。ビニール袋の中は刻まれた人体。投げ込んだとき袋が破けて、血と汚物が飛び散ったのだろう。有毒ガスのおかげでここまで人は入ってこないし、匂いは外にもれ出さない。しかも死体をついばむ鳥もここにはいない。死体を隠すにはいい場所だ。 隠遁したグレムリンには、もう人の生き死にはどうでもよいことだったが、このまま放置しておくのもどうも気分が悪い。近くにあった冷蔵庫の扉を開くと、その中にビニール袋を中身も見ずに詰め込んだ。もうないなと確かめたところで冷蔵庫の扉を閉めて、さらになんの部品だかわからぬ帯状の鉄板を使って封印を施すと、冷蔵庫を廃材の谷に転がし落とした。それから奇妙なしぐさでグレムリンが右手を動かすと、それを合図に向かいの斜面が崩れて冷蔵庫を埋めてしまった。ここまでやったところで墓標の一つでも立てたほうがよかったかな、と思うグレムリンだが、目立ったことはできない。下手に人の好奇心を引くのはよくないことだ。もう、直接人と関わることはしたくない。 汚れた手を布でぬぐったグレムリンが帰ろうとすると、ライトが何かを両手で抱えて、グレムリン背後の斜面を上がって来た。手にしたもののおかげでバランスを取るのが難しいらしい。ライトの左手は棒状のライトなのだから、なおさらのことだろう。大きさはライトの胴体の半分程だろうか。グレムリンはそれを見て、顔をしかめた。ライトが手にしているのは人の女の首だった。ライトが初めて出会った人が、これとは少々困ったものだ。 「割りにきれいだな。フム。」 切り口もさることながら、顔にも目だった傷も見当たらなかった。俄然興味を覚えたグレムリンは、首を受け取ると、車のホイールカバーの上において、両手で支えるようにして元来た道を戻った。まるでサロメとヨカナーンの立場を入れ替えたようだ。いや、グレムリンは歌ったり踊ったりはしなかった。ただささやいてはいた。トグロを巻くような自分の長い黒髪の上に鎮座した女の首に、グレムリンはささやいていた。「もしかしたら、お前さんの目を開かせられるかもしれん。もしかしたら、口をきかせることもできるかもしれん。さ、急がんと。」 ホイールカバーに載せた生首を持ち帰ったグレムリンは、作業台の上に置いた大きなガラスの器にアルコールをたっぷり入れて、その中に生首を浸すと、ラップで蓋をした。それから、慌てて天井に向かって大声で呼びかけた。その相手はグルマルキン。賢い魔女、輝く猫、グレムリンと同じほど生きてきた彼の唯一の相談相手。 グレムリンが3回呼ぶと、天井の一角にあるコードの切れ端から火花が散って、それはたちまち猫の形になった。スパークする火花で作られた大きな猫。しなる2本の尻尾の先で、ぴんと伸びたひげの先で、ちりちりと光が散った。大丈夫とわかっているが、いつもその火花が油やアルコールに引火するのではないかとグレムリンは思わず身を引いてしまう。最後に波打つように猫の頭から尻尾まで光の輪が走ると、そこには実体を持った大ぶりの三毛猫がいた。普通の猫と異なるのは尾が根元から二股に別れていること。グレムリンは足元によって来た猫に腰をかがめて挨拶をすると作業台の上を指差した。猫はわりに身軽に台の上に飛び乗ると、アルコールに付け込んだ生首の入った器の周りをぐるりと回った。 「また変わったものを拾ってきたね」 猫の口から言葉が聞こえた。彼女はグレムリンよりもっと以前からここにいた魔女だ。彼女は話したがらないが、コードを電気になって自由に走り回れるようになったのと引換えに、人の姿に戻ることができなくなってしまったらしい。以前のように複雑な魔法はつかえなくなったけれど、いまも簡単な魔法を使うことと、豊富な知識をひけらかすことぐらいはできる。分野違いの豊富な彼女の知識をグレムリンは度々頼みにしている。特に生物や自然の事象に関するようなことはグルマルキンの得意分野だ。 「この首の意識を取り戻したいんだ。体はダメだったが、ホラ首は綺麗だ。」とグレムリンが自慢げに話す。グルマルキンはフンと鼻を鳴らして応じた。「アルコール漬けというのはあまり関心しないけど、あんたのとこじゃこれがせいぜいか。意識を取り戻すぐらいはできるけど、そのあとどうなるかは……元あった場所に戻しちゃどうだい。」 「まぁ、ダメならダメでいいじゃないか。ちょっと試したいことがあるんだが、血液の代わりに使うモノがいまひとつ……。」グレムリンは猫にガラスの器を落とされるのではと、慌てて近寄った。 「わかったよ。ふーん、なかなか美人だね。なんでこうなったかね」 グルマルキンはピンクの鼻を擦り付けんばかりにして、器の中を見つめているが、どうやら気に入ったらしい。グレムリンはしきりに自分の首を縦に振りつつ、小鬼たちを呼んだ。部屋の隅に固まって成り行きを見ていたライトと兄弟の小鬼たちが、体をガチャガチャを言わせながら台の周囲に集まった。互いの体をこすり合わせるようにして、言葉は話さないが、やかましい連中だ。えー、深夜魚が泳ぎ寄ってこなかったので、週末載せようと思った部分を持ってきました。オチは思いつきましたよ。ええ、これで大丈夫……。
Jul 26, 2004
機械仕掛けの小鬼が手に血をつけて帰ってきたのにグレムリンが気づいたのは、小鬼たちの整備を始めた時だった。彼らがいる産業廃棄物の荒野にも、赤い血を流す生き物はいる。しかし自分が作った小鬼の手についた血が、滅多に来ない人のものだと直感でわかった。 人はここにはまず来ない。以前は様々な廃棄物を捨てに来ていたのだが、それも十年以上も前のことだ。グレムリン自身、人の姿を見ずに数年過ごしている。浮浪者でも来たのだろうか? しかし、この近辺に人が来ることすらできないはずだが……とグレムリンはひげを引っ張りながらひとり考える。老犬のようなグレムリンの顔は白いひげだらけで、それを引っ張りながら考え込むのは彼の癖だ。昔なら考え半ばでさっさと外へ飛び出したものだが、やはりもうお年と見える。数分考え込んだところで、やっと思い出して小鬼の手についた血をぬぐってやり、さらに油を塗ってやるとこう言った。 「連れてってくれんか。」 言われた小鬼はうれしそうに油を塗ってもらったばかりの手を振って、顔にはめ込まれたフォグライトをカチカチと点滅させた。答えはイエス。グレムリンは小鬼の頭をなでると、腰を伸ばして、出入り口に向かった。 グレムリンがここに来たのはまだ近くに人が働いていた頃だった。ここは巨大な都市から出た廃棄物が、ただ捨てられるために作られた広大な地域だった。ここに送り込まれるの廃材の多くが金属製品や合成樹脂、スクラップになった車や機械の数々。面積は現在の半分ほどだったが、すでに中心に立って見渡せば、周囲はすべて廃棄物の丘がうねうね続く、廃棄物の丘陵地だった。グレムリンはその中でも具合のよさそうなこんもりして密度の高い丘を見つけると、中を掘り抜いて住居兼研究工作室を作って住み着いた。 機械産業が無ければ生まれることのなかったグレムリンだが、老いた彼には元気に動く機械よりも、機械の残骸のほうが性合っていた。といっても自分も廃棄物と嘆くためではない。動く機械を故障させるのに飽きた彼は、動かなくなった機械を動かすことに興味を覚えたのだ。長い間知識をため技を磨いてきた彼は、周囲にある"材料"を選び出してまずは工作機械を作り、さらに工作機械を元にして機械仕掛けの小鬼たちを作った。 小鬼たちはグレムリンのよく知るゴブリンをイメージして作られたもので、それぞれ工作機械の特徴を持っている。いまは5体おり、中でもっとも小柄で、フォグライトを首の上に乗せた小鬼はそのまま"ライト"と呼ばれている。彼の役目は作業時や夜間の照明。顔のフォグライト以外にも、用途に合わせたいくつもの照明を体中に装備しているのだ。ちなみにフォグライトは彼のコミュニケーションの道具にもなっている。長い文章はモールス信号で、短いメッセージはグレムリンと仲間の小鬼たちだけが知る独特のサインで伝えるのだ。今はバッテリー温存のために、そのライトは弱めに絞られている。妖精の技をもってすればバッテリーもいらないが、それを潔しとはしなかった。このあたりが人間臭いと故郷の仲間に言われるところだ。もっともこれはグレムリンならほとんど誰にもあてはまる気質なのだけれど。 廃材の山の中にあるグレムリンたちの空間は、車のボンネットや金属の板を、複雑に組み合わせた柱と梁で支えられており、そこに巡らされた電線の所々に電球がぶら下がっている。これだって電球ではなくてもいいのだが、こだわるのだ、グレムリンというやからは。ライトを先に歩かせる彼は、何気なく切れた電球は無いかとチェックしている。トンネルは、大型のトラックから奪ってきたボンネットに、パイプやら鉄線やらをデコレートしたドアで終わる。一応カモフラージュのつもりだ。くどいようだが、妖精ならそんなことしなくても人の目をごまかすのはわけはない。これもあくまでグレムリンとしての彼のこだわりなのだ。 ドアを開くとそこは廃材の荒野の真っ只中、見渡す限りに褐色が目立つ廃材の丘が続く。すでの空は茜色に染まり、西にある丘の向こうに夕日が沈んでいく。グレムリンが尋ねると、小鬼は強力な小型ライトを仕込んだ左腕を、夕日とは反対の方向に向かって伸ばした。その先では群青色に染まりだした空が、ユラユラと揺らいでいる。グレムリンが、あの外かと重ねて聞けば、ライトは"顔"をチカと点滅させた。今度の答えはNo。揺らめいているのは、一部の廃棄物処理区域を区切るように存在する有害ガスのカーテンだ。これのおかげでまず人はここに寄り付かない。いつかはやむと思っているだろうが、そうはならないのは作ったグレムリンが知っている。 ちょっとでも気を許せば、足元からなだれが起きるのでは思われる廃棄物の上を小鬼とグレムリンはひょいひょいと渡って、東に進んだ。廃棄物の多くはパイプや折れ曲がった金属板、合成樹脂で作られた部品の破片。その中に混じって、原型をとどめた家電製品がゴロゴロ転がっている。ライトは、斜めに丘にささった車のバンパーの端に飛び乗ると、それをばね代わりにピョンと遠くに飛んだ。しかしそのまま放物線を描いて、ガス帯の手前にある廃物の中に落っこちて、ちょっと派手な音を立てた。グレムリンは舌打ちをすると、それまで倍以上のスピードで走り出し、なにひとつ廃材を落とすことなく岡を上り、扉の無い電子レンジに頭を突っ込んだライトを引っ張り出した。鉄のフレームで守られていたおかげで、ライトの重要なフォグライトは無事だった。グレムリンはライトを立たせて、作業着のベルトにはさんだ布を引っ張り出すと、ライトの体を簡単にぬぐってやった。(続く) HDの中を探っていたら、『機械仕掛けの小鬼ども』(7月12日参照のこと)の書きかけ断片を発見。この先オチを考えつつも、週一程度に連載をしてみましょうか。いえ、深夜魚は出てこないですけど……
Jul 25, 2004
僕の知っている店に、風変わりなものが置いてある。 それは一体のオートマターなのだが、すでに動かなくなって久しい。だが、10代半ばの少女の姿をしたオートマターは息を呑むほど美しいのだ。 いや、これはあくまでも私の好みであって、悪友に言わせればちょっと地味なのだとか。いつもこの店に来る頃は出来上がっている彼の酔眼では、彼女の魅力は判るまい。 ピグマリオは、彫像を行きたい女性にしたかった、けれど私はそのオートマターは動かぬオートマターであってほしいと思う。ピグマリオはまず生きた女神の姿ありきで、その代償として彫像であった。彼に力があれば、悪戯なギリシャの神の力を借りずとも、恋人をその手で作っただろう。 動かぬものなど楽しいか? ピンナップでもよかろう、とは悪友の言葉だが、そうとも違う。動くことを前提で作られていながらいまは動かぬオートマターの、「動く気配」を感じさせつつ動かぬところが私をひきつける要因のひとつでもある。 しゃべりもせぬぞ、笑いもせん、見つめてもくれんのがよいか? 悪友は3杯目を空にして絡んでくる。いつものことだ、彼だってオートマターの美しさはわかっているが、動かぬもにいまひとつ魅力をもてない、酔っ払いのピグマリオだ。動かない、見つめない、私の話に耳を傾けない、それでよい。それでなくては献身的な想いを秘め続けることなどできようか。あ、ちょっと私も酔ってきた……。キップソーンのアルバム『モンティーノ No.5』にある『ブーガルーチェアー』は、シングルカットされる人気の曲だが、これを聞いて浮かぶ情景は、なぜかビルの谷間にある小さな公園のベンチで、一人熱心に少女に愛を語る少年の姿だ。彼は自分たちがいかに愛し合っているか、彼女のすべてを愛しているかを熱っぽく語っている。だが、私のイメージの中では、その少女はこの店のオートマターなのだ。少年の愛に応えようのない存在なのだ。それでも少年は毎夜公園のベンチに座るオートマターに真剣に愛を語る……。彼を不幸などと、私は誰にも言わせはしない。この店の小さな窓から見える二人の姿を私はいつもこうして祝福して…………あ、またイメージが混ざりだして、となりのあくゆうはいつのまにかしょうねんのすがたでよいつぶれて、マスターはねじがきれてグラスをもったままうごきをとめている。あぁ、にっきのこうしんはあしたでいいか……ちょっとねてこう
Jul 24, 2004
悪魔は神を愛し人は神を畏れるなによりまして神は人を愛するとは、学生の頃考えた小説のタイトル。キリスト圏では使えませんなこれは。主人公は満月の夜の公園で、ひとりの老人に会います。彼は自分が地球を創造した"ひとり"であり、現在も観察を続けている最後のひとりだと話します。どう考えても妄想としか受け止められない主人公。老人は地球がほかの"人類"によって作られた実験場であり、その"人類"が自分たちの存在意義を知るべく、クローンを繁殖させてその成り行きを観察していたのだといいます。結局実験は研究者たちの倫理上の衝突から起きた"事故"で失敗に終わり、最後に残ったのが老人で、本来なら実験の失敗のおりには地球上の人類を一掃しなくてはならないが、それが今もできないでいて、いつも月から見下ろし、時にはこうして地上にやって来るというのです。主人公はとても危険に思うのですが、おだやかに話す老人の傍は離れがたかった。結局老人が地球人類の宗教、文明の発展に手を貸した存在であるという話まで聞かされる。主人公がどうにか老人から離れ、公園を去るとき、木の陰からそっと出てくる少女に会います。彼女は主人公に、これ以上老人に近づくな、話を聞くなと責め寄ります。主人公は、その少女の魅力に惹きつけられてしまいます。このあとは、老人が本当に逸脱した行動をとる"観察者"なのか。少女が実は老人とその仲間が作った、人類に刺激を与えるファクター"悪魔"であるのか、ということを主人公が追いつつも、彼らの周囲でほのぼのとした、時にはどうしようもなく救えない数々のエピソードが続き、やがて公園には誰の姿もなくなる、といったようなストーリーが続く予定でした。3人が少しかみ合わない話を続けて、それぞれの立場から人間を語るという満月の下の一幕芝居風なストーリーも考えてはいたのですが、なんとも筆不精でして……。神と名乗る老人は、自分が作った人類を限りなく愛しており、しかし人類が老人たちの仲間と同様に、いさかいに命を落とすこと哀しんでいる。老人に作られたことを自覚する悪魔と名乗る少女は、自分がただの道具として作られたことを苦痛に思い、老人に愛される人類に対して激しく嫉妬して、さらに人類に救いようのないいさかいを続けるように仕向ける。彼女が愛するのは自分を作ったとする老人です。主人公はやがて老人の存在を畏れ始めます、それでも捨て置かれない心に突き動かされ、老人のそばにいようとします。それがタイトルの意味するところだったのです。
Jul 23, 2004
--断片1--ここでまた逢えるなんて約束は誰にもできないけれどこの朝のことは忘れない小さな窓から差し込む白い朝日に冒険の無事を祈りつつこれが最後になるかもしれない朝餉を腹に詰め込んでいく磨いた剣、繕ったシャツ、鋳掛けた鎧汗臭い兜にだって祝福の光がこぼれる明日は仇になるかもしれぬ今日の友よいまここでは剣を交えず握手を交わそう------------------ペンタウァにて以下、本日中に暫時追記予定また日付越えました。ではいくつかの断片を夜明け前にはめ込んでしまいましょう。廃屋の庭、茂る緑の真ん中に、平たい大きな石がある。そこには3膳の箸と、欠けた3つの茶碗に砂がもられておかれてる。ひとつは赤く、ひとつは小さく、ひとつは大きくでも傾いて砂がこぼれている。きけばひとりのみすぼらしい男が、廃屋から箸と茶碗を持ち出して砂を盛ってママゴトしていた。でももう男はいない。大声で泣いて、そして誰にも見られず姿を消していた。荒れすさんだ部屋の中吐き気をこらえて一人立つ壊れたグラスとティーカップ敗れたクッションと乱れたシーツ服は乱れ落ち本が散乱するその上に振りまかれた赤逃げたいけれどドアの前には がある空気が吸いたくなってカーテンを引きちぎるように開くとそこに大きな目が在った無表情なまあるい眼じっとクエが僕を見ていた…………そして彼女は緑のドアを開いた…………………………その鉄の扉の影には………………………パイプの継ぎ目から流れるオレンジ色のワックス……ゆっくりと口の中に広がるメタルブルー………………緑のカプセルはあなたの安眠を保証………その……背中は……旗を振る……机に…………………お帰り……なさ……い……もう……お休み。では、また今日もしくは日付を越えた頃に。
Jul 22, 2004
深い海に捨てた過去の想いを深夜魚はその大きな口にすくい上げ私の枕元に運んでくる無表情な魚から深い情を込めた自分の言葉が重苦しく聞こえてくることのなんと切ないことか過去の亡霊がイタコの口を借りて語りかけるように過去の私が呼びかけてくる時にそれは私を慰撫し時にそれは私を責め苛む忘れ捨てた幼い私は置き去りにした我が子のよう黒い波間に沈む不安気な顔が私の胸を締め付ける私は枕を錘に変えて深い夜に沈んでいく幼い自分を胸に抱き忘れた想いを人知れず流れる潮に探す--もっとも深夜魚らしい深夜魚。イメージはフクロウナギなのですが。
Jul 21, 2004
人知れぬ小さな盆地に陽炎に揺らめく蒸気工場があるそこでは夏になると油をタップリ含んだ蔓松を周囲の山から刈り取って谷川の水が注ぐ大釜をいくつも焚くすると工場の何百という煙突から一斉に白い蒸気が空に噴き出して熱気をはらんだ霧になる今年は特に蔓松が茂って都会で職を失った人が増えたから工場は休むことなく昼夜も操業おかげで20日は39度を越えましたあぁ、忙しくて、会社から出られません。いえ、みんな帰ったので、コンビニに行くぐらいは抜け出せそうです。すっかり日記の更新も遅れました。ちなみに人の通わぬ入り江の奥には夜霧の工場があり、森には朝霧の釜があります。あまり知られていないことですが。
Jul 20, 2004
『煙草の魚』吸いもしないくせに手持ち無沙汰で火をつけた長くなった灰を落とすばかりで口をつけようともしないゆっくりと二人の間を横切る煙をみつめれば小さな魚が二匹で無邪気に戯れながら決して煙を乱さずにいつまでも泳いでいる『私の魚』ガラス細工の小さな魚指でつまんで舌に乗せると冷たくて ほんのり甘くて 喉の奥がすっとするおいしい魚噛んだら破片が広がって口を傷つけることはわかってるだけど今にも噛んでしまいそうそれともいっそうのこと噛んでしまおうかもし魚の中に毒薬の一滴が入っていてすっと心臓を冷ましてくれるなら……口の中から魚を取り出して、絹の手巾でぬぐったらそっと小さなグラス中に入れて水を注いで冷やしておこう小さなきれいな私の魚いつもその日の最後に日記を書こうと思うと、こんな時間の更新になってしまいます。本日からトップページに『ゆんフリー写真素材集』よりお借りした画像を貼りました。素材について詳しくは、http://www.yunphoto.net の内容を参照してください。イマジネーションをかきたてる写真ばかりです!
Jul 19, 2004
海から流れ込んだ大気は潮を含んだ白い霧となって深夜に沈む街を包み込む摩天楼の赤いランプの明滅はまるで霧の中をあてもなく行く難船を思わせる霧に紛れたさまよえる阿蘭陀船が破れた帆を揺らし竜骨を軋ませてビルの谷間をゆっくりを進んでいくいまビルの窓から外をのぞけば舷側に並ぶ悲しげな船員たちの顔を見ることができるだろうその中に自分の顔を見たのならすでに魂は船に取り込まれ霧の中で永遠の時に囚われる残った体は意味もなくキーを打ち続けるがその音も朝には止んで部屋にはかすかに潮の香りが漂う実家にいて、更新が遅れました。とまれ18日分の日記にかえて、暑苦しい夜の幻視をひとつ
Jul 18, 2004
出張から戻ってまいりました。かの地の空はどこまでも青く、透き通った陽射しは肌にひりつくほど強いのですが、吹く風は冷たく心地よいことしきり。日本が次第に亜熱帯へと変貌する中、かの地へ移住したくなるという言葉がよくわかりました。そうそう、かの地とはアメリカの西海岸、サンフランシスコ。アメリカでも人気の街です。けれどここにも海の潮と同じく、街の様子がきっぱりと分かれ、外来の者を拒む場所もありました。魚の世界なら住み分けというのでしょうが、人の世にあっては、それは悲しい出来事です。翼の下に広がる白雲は寄せて泡立つ波のよう翼が切り裂いた雲の裂け目からのぞける街は誰もいなくなった廃墟のよう熱に揺らめいて次第に溶けて鉛色に沈む後ろ髪を引く喧騒もここまでは聞こえてこない熱狂をはらんだねっとりとした大気もここにはないけれどここに私の居場所はない深海の闇と深夜の闇を重ねて魚が地上に出現するならば海の青と空の青を重ねて天空に泳ぎ出す魚もいるのでしょう雲と雲の間の空に銀糸をまいたようなきらめき風の流れを潮と見て翻る魚の群れ雲に似て白い魚の多いことわりでは深夜の闇と空の青を重ねると、どのような魚が現われるというのでしょうか月明かりの下でうねる雲海に大魚の姿立てた背びれは峨々たる山脈の影か緑にぬれる鱗を滑り落ちる霜は青い光に輝いて清流の流れと目を欺く雲を貫いて機影が月にかかるとき大魚は難船の軋みのような声を残してさらに高みの雲へ消えた天空にも深海にも人知れぬ流れがあり、なにか人々が感知できぬ存在が世界中を移動しているのかもしれません。
Jul 17, 2004
明かりを落としたビルの谷間肩を落として歩く僕の前に小さな明かりがともる期待を込めて目を上げれば目の前には小さな黄色いハコフグ豆電球を飲み込んだように小さな体を透かして暖かな光が漏れている「すまないね」そうつぶやくと二本の角で僕の額を軽くつつくくすぐったくて笑い出すといつの間にか落ちた肩に少し元気が戻っている夜道を照らすほど明るくは無いけれど、僕の心に明かりをともす小さな小さな深夜の魚16日もまだ出張中。空欄は寂しいので眠い頭で書いてみました。水槽でせわしなくひれを動かしながら、そのくせのんびり泳いでいるように見えるハコフグはなんとも憎めないかわいいヤツです。
Jul 16, 2004
僕の友人は頭にウミウシの帽子を載せてやって来るフワフワした房をつけた半透明に赤の斑を散らしたかわいい飾りほめたらよろこんでたけれどそれじゃ地上には上がれない去年はクラゲを身にまとってたけどあれは誰も近寄れなかったホヤのドレスもかわいいけれどそれではダンスは無理だろう奇抜なのはいいけれどその、ほんの少し控えめに実際は出張中の空の下なのですが、空欄にするのももったいないので、18日の夜明け方にいい感じに眠気でシビレた頭で書いてみました。ウミウシの帽子にウミシダのファー、宝貝の外套膜を羽織ってウミウチワの扇子を片手の海の貴婦人。靴がホネガイなのは、しつこい紳士を撃退するささやかな武器……坂田靖子先生に絵にしていただいたらよいキャラになると思うのですが、どなたか描いてみませんか?色とりどりの珊瑚とイソギンチャクとウミカンザシに飾られて、ホヤの絨毯を歩いて、青い深みへ下りていく貴婦人。誘われたら、海の底まで御一緒しましょうか?
Jul 15, 2004
本日渡米です。2日間寝てないので、きっと飛行機の中ではぐっすりでしょう。閉所恐怖症なので、狭いエコノミーに詰め込まれると、時々パニックを起こしそうになります。出張なので、ビジネスクラスを選べないのは不条理ながらも、きっとみんな納得。で、日記も土曜17日までお休みです。昔書き溜めた深夜魚の目撃談を読み返すと、夢の中で書いたような、あやふやで、そのくせ妙に淡々としたものでした。少し手直しして、ちょこちょこ書き出していくつもりです。そうすると魚たちがよろこんでくれるような気がするのです。で、眠いのです。とっても。
Jul 14, 2004
葬列に行き会った。ブロック塀に挟まれた狭い道。先頭を歩くのは、すらっとした足に白いタイツが印象的な少年だった。その後ろ俯いた喪服姿の大人たちが2列に並んでついていく。少年が覗き込むよう抱えているのは空の金魚鉢。意外にことに声を上げた僕に、大人たちが顔を向けた。それはどれもこぼれそうな大きな目を潤ませた肌色の出目金だった。
Jul 13, 2004
こんな物語を想像している。文章にしようとはなかなか思わないのだが、こんなやつらが、見捨てられたどこかの埋め立て地の果てにいるのかと思うとひとり楽しくなってくる。ひとりで遊ぶのが好きだった、小学生時代から続く空想癖……機械仕掛けの小鬼ども産廃山のその奥でグレムリンに作られた鉄、金、樹脂の小鬼ども海の夜風はボルトにしみる霧がしぶけば基盤がはぜる歯車回れ、ライトよ瞬け機械仕掛けの小鬼ども故郷を持たぬ小鬼ども設定を申せば、人間の機械にいたずらするのに飽きたグレムリンが、産業廃棄物で作られた海浜地域に住みついて、機械工学の知識と、ちょっとの魔法を使って、自分の好きなものを作っているというもの。機械仕掛けの小鬼(ゴブリン)は、グレムリンが自分の助手として使うために作った、ぶかっこうなロボットたち。それぞれ個性的でちょっとヌケてて、それでもけなげに働いているやつら。夜ぼんやり歩きながら、遠くにある産廃の丘陵地でガチャガチャやってるやつらを想像しては、ひとり微笑んでいたりします。偶然見かけた人は、気味悪がっているにちがいないでしょう。近頃は、その丘陵地に業突く張りのスプリガンと、その用心棒のゴーレム。おせっかいなグルマルキンも住み着いてます。どこのどこだかわかりませんが、こうして彼らのことを書いている今も、彼らは彼らなりに楽しくやっているのでしょう。機械仕掛けの小鬼ども奇妙奇天烈みょうちきりんなその姿ゴム、銅、真鍮の小鬼ども雨が降ればショートして雷落ちればはじけ飛ぶドリルよ回れ、アークよ輝け機械仕掛けの小鬼ども親など持たぬ小鬼ども(☆詩を書きましょう☆というより、テーマがコチラに近いようなので移ってきました。ここも、少し違うかな……)
Jul 12, 2004
魚がね、と僕が言うと、また魚? と君が返す。しかたがないよ、僕の頭の中は魚と君のことしかないのだから。結局買えずじまいの水槽の様子を思い描きながら、僕はまた君に言う。魚がね……。魚がどうかしたの? と君が尋ねる。こうして長い時間を共有してきたのに、いつも同じ言葉でしか会話を始められない。魚が欲しいんだ/駄目でしょ、場所がないわ/もっと大きな水槽があればいいのに/あなたには支え切れないもうこれ以上大きな水槽は僕の想像力では支え切れない。広げれば細かなディティールがぼやけてしまう。そうしたら君を、僕は失ってしまう。私だけじゃ、駄目なの? 僕の水槽越しに君は微笑む。ちょっと怒ったような口元まで僕は想像する。短い君の髪が、水槽の中で花の様に広がってゆく。白く長い指が水槽を越しに僕の指と重なる。僕が顔を近づけると君は青い鰭を翻して離れてしまう。やっぱり少し怒っているのだね。僕は水槽の中の君をこうして今日も見つめている。-----------------------深夜魚"魚がね"まとわりつく大気の中、僕は奇妙に手足を曲げて、踊るように、揺れるように歩く、歩く。透明だけど重たくて、まるで水ガラスの中を歩むよう。ふやけた大気から塊を噛みとるようにして、のどを詰まらせてやっとの思いで空気を肺に飲み下す。たっぷりと水分を含んだ大気は、まるで水面をいくらも重ねたようで、風景を微妙にゆがませている。寝不足な頭はよけいにくらくらとして、閉じがちなまぶたの奥でふたつの眼がゆるゆると膨張と縮小を繰り返して揺れている。さっきまで一緒に歩いていた人々の影はもうない。いつのまに遠くに彼らの背中が見える。誰も見ていない、だからもっと気ままに揺れて歩くことができるじゃないか。今日あったこと、明日あることなにもかもが揺れている。体が自然に前後左右に揺れ始めると、次第に目の端にちらちらと細かい大気の揺らぎが見えてくる。小さな大気の揺れ、さざ波。ただの揺らぎだった小さな波が、やがてひとつの方向に向かう流れになっていく。その流れの小さな波の一つ一つを見つめていると、それぞれが、透明で小さな魚になった。何百、何千もの存在が揺れる僕を包むように泳ぎ、流れてゆく。呼吸をすればするすると魚たちが僕の中に吸い込まれていく。さっきまでの息苦しさがうそのように、大気が、魚が、僕の中に流れ込んでいく。僕は魚とともに、きらきらととゆれながら、流れてゆく。流れてゆく。--------------------深夜魚"揺れて流れる"2004.10.26 タイトル変更
Jul 11, 2004
今日も暑くて、威圧か青空もアスファルトのように溶け出すのではと心配になるのです。__________________________澄み渡る青空を深くえぐれば流れる血潮ねっとりとしたメタルブルー 指先でさすれば、青い顔料がつくのではないかとおもうほど青い空。でもその裏に湛えられているものは、 ねっとりとしたメタルブルー 空の上には宇宙はない。瑠璃の天蓋に覆われた空の上にはねっとりとしたメタルブルー 魚のはらわたからにじむ油のような、粘液質の色彩が満たされている。誰も気づかない、僕が爪の先でつけた空の傷から滴り始めたねっとりとしたメタルブルー ぷっくっりと丸い玉になっていまにも弾けてしまいそうなのに。_______________________________<小休止>上野のかはくの魚類研究室が運営する魚サイト、学術的な部分もありますが、一般向けの魚の話、海外の博物館や魚市場紀行などちょっと目を引くコンテンツがあります。魚好きな方はどうぞ。http://research.kahaku.go.jp/zoology/uodas/________________________________これも、深夜魚ではないのですが……ひとつ、どうぞビデオを逆転再生する。降りしきる雨が器用に傘を避けて空へと帰っていく。僕はビデオの中で濡れた道を後退っていく自分の中に入って、不思議な雨を体験する。僕の目には上がっていく雨粒の一粒一粒がはっきりと見える。見上げれば日陰に置かれたミルクのような色の雲へと、雨が吸い込まれていく。まるで地上の水分すべてを雲が吸い上げていくようだ。僕の体の70パーセントが水分ならば、僕も空へと吸い上げられていかないのだろうか。それは心配などではなく、期待だ……。
Jul 10, 2004
本日はふたつほど、直接深夜魚とは関係しないのですが……。<魚缶>安い魚の缶詰を買ってきた。お湯を張ったなべに中身を空けて、適当に煮れば喰えるらしい。どれと缶を開くと、小さなふたつの目がこちらを覗いている。丸くて白くてぷにぷにした魚。これ全身白子でございといったふうの缶詰の魚。気味は悪いが腹も減ってる。えいやと缶をひっくり返すと、白い魚がドロリと出てきてなべの底で丸くなる。箸でつつくのも気味悪く、煮えるのを待つことにしたが、これが一向にその気配がない。なべの底から泡立って、先に入れたザク切りのねぎが、くるくるまわり始めている。すると魚がしまりのない口を開けて、次々ねぎを呑み込んだ。それから泡立つなべの底からこっちを見上げてヒレをふる。さぁお次はどするの? 魚が私を見上げてる。<父の海老缶>父は胃散の大きな空き缶に小さな海老を飼っている。透明でところどころに白い斑点を散らした、小さな小さな海老。父は日中この間を机の上に置いて、時折フタを開けて、たまにふやかした海苔を与えていた。スチールの缶の中で、安全と食料をあてがわれ、暗くて狭い缶の中で一生過ごす、海老はそれで満足なのか。父は洞窟の奥で狭い行動半径で生きる海老なのだから、これでよいのだという。久々帰った実家では今日も父が缶を開けて満足そうに中の海老を覗いていた。私が家を出るまで、いつも私の部屋を覗いていてた、あの時と同じ目で。
Jul 9, 2004
本日は深夜魚の話といたします。深夜の商店街。職場を抜け出して、ねっとりとした夜の中をコンビにへ向かいながら、どうも今夜はいつもと違うと首をひねる。眠い目をこじ開けてみれば、片付け忘れられた七夕の飾りが、あちこちで薄暗い中に色を添えている。おととしあたりから、商店会が合同で七夕の飾りをつけるのをやめ、有志が思い思いに飾るようになったのだ。手づくりの短冊や色紙の飾りが懐かしくも新鮮で、つい歩みがのろくなる。深い海の中でなぜイソギンチャクは色とりどりなのでしょう。暗い夜の中でなぜ七夕の飾りは色とりどりなのでしょう。暖かな風がゆっくりと商店街の道を流れて、笹の葉の擦れ合う音は波のよう、風に吹かれて舞う飾りは魚のよう。潮に乗って北へ流される稚魚のよう。人の目を楽しませてくれるのに、彼らの望みははかなく秋を前に消えていく。七夕の短冊の望みはどうだろう。織姫と牽牛。ふたりが渡る橋はかささぎとも白鳥ともいうが、大きな魚の背ではなかったのか……。風がとおり抜けて、少し闇が増した商店街をまた歩き出す。ねっとりとして重い、深夜の大気の中を泳ぐように。
Jul 8, 2004
奇妙なことがありました。どうも私におぼえのないことなのです。仕事の打ち合わせで喫茶店に入った時のことです。私のほかにふたりおりましたが、私の向かいに座った彼らが、ウェイトレスがお冷を置くと間髪いれずに注文をしたのです。私も注文するためにメニューをもらおうと思ったのですが、ウェイトレスは、メニューを持ったままカウンターへ戻ってしまいました。目の前にお冷があるところを見ると、私の存在に気づかなかったわけではないようです(たまに忘れられます)。しばらくしてウェイトレスはごく自然に3人分の注文の品を運び、私の前にはアイスコーヒーを置きました。私は頼んでいないのに……。そのことを前に座るふたりに話すと、今度は彼らが怪訝な顔をしました。聞けばアイスコーヒーと私の声がしたから、あわててふたりもメニューを見ずに注文したというのです。これだけですが、腑に落ちません。それにふたりが「私の声がした」という表現もなんか妙です。声がした……本当に私のですか?
Jul 7, 2004
昨日は夢の話でしたが、今日は深夜魚の話をいたしましょう。深海の闇から深夜の闇を抜けて、魚は私たちの前に現われるのです。 夏の庭に面する客座敷。夏の陽射しのあまりの激しさに、庭の色彩はとんでしまってまるで影絵のようだった。そんなに強烈な陽射しでも、座敷の中にはひとつも入ってきはしない。それどころか涼しげな風が座敷を吹き抜けて、風鈴をチリンと鳴らしてゆく。 青々とした新しい畳の爽やかな香りを楽しみながら、夏座布団の上に正座した。目の前には主人の白い座布団置かれている。ここに座るべき主人は大方暑気払いで昼寝をしているのだろう。 ちょっと変わった座布団だなと、留守の座布団をみつめていると、突然廊下側の襖が開いて、見知らぬ和服の女が座敷にスタスタと入って来た。当然何か声を掛けてくるのかと思ったら、彼女は無言のまま主人の座布団をぽんぽんと叩いてひっくり返して、またスタスタと座敷を出て行った。 ひっくり返した座布団は、淡い砂色に変わってる。おや不思議な座布団だなと顔を近づけると、座布団の一角に小さな黒い突起が現われて、こっちをぐりっと見上げた。こいつはヒラメか! と思った途端に目が醒めた。もう座敷には西日が鋭い角度で射し込んでいる。いささか客を待たせ過ぎのようだ。<了>
Jul 6, 2004
今日昨日の夢じゃないんですがね。なぜか私は、白い家の白い勝手口の門に向かって封印しようと、指を動かしてるんですよ。 まず左の門柱の上下を指差し、次に右の門柱の上下を指差す。で、お次は左上から右下へ、右上から左下へって指を動かして、門をバッテンで封印しようってことなんですがね。これを何度か繰り返して、なんとか封印しなきゃって必死なんですよ。ところがいきなり耳元で、男の子の声が聞こえたんですよ。「むだだね」 そこで目が覚めました。怖い、ていうよりはこれは下手打った、まずいことになったぞ、って気分でしたね。まぁ、自分が封印だなんて、大それたことできやしないのは当然なんですけど。なんとも変な夢でしたね。
Jul 5, 2004
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