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見知らぬ道を指でなぞれば始まる地図の上の冒険旅行湯気立つティーカップにジャムたっぷりのスコーンを携え目指すは見知らぬ山々、名も無き海岸もしかしたら言葉も通じない別世界の町立ち止まったら赤いヘッドの待ち針立ててティーポットを取りに一休み帰りにはなぜかキュウリとからしバターのサンドイッチを手にして冒険再開!夜になったらペンライトで道を照らして更け行く夜の国を大探索目指すは深い大森林、名も知らぬ塚もしかしたら見た事も無い別世界の城立ち止まったら夜光塗料のシールを貼ってデカンターを取りに一休み帰りにはなぜかチーズと自家製ピクルスのサンドイッチを手にして冒険再開!目指すは曙の光、夜明けの始まる町もしかしたら体験したことのない新しい朝の国目指すは光溢れる窓辺、恋の始まる朝もしかしたらいつもと違う見知らぬあなた
Sep 30, 2004
仕事がうまく進まない。結局またもこのカウンターにたどり着く。まるで遭難した漂流者が、潮に流されて漂いつくような気分。カウンターの向こうでマスターが怪訝な顔で僕を見ている。なんか、他人のような気がしなかったのだが、やはり他人だ。彼に僕の頭の中になにがあるかわかるまい。僕の頭にはワイングラスがある。そこには少しずつストレスから生まれる赤い水がたまる。仕事が行き詰ると水かさが増えて、いまは溜まりに溜まって、水面がグラスのふちの上にぷっくりとドーム上に盛り上がっている。ちょっとでもゆするとこぼれてしまいそうで、つい歩くときも腰を落としてゆっくり歩かざるを得ない。大きな音がしたり、誰かがぶつかると激しい怒りが湧き上がってくるが、もし怒り出したら、きっと赤い水がこぼれてしまう。そうなったら、そうなったらと思うと、怖くて体がこわばって、思うようにしゃべることもできない。マスターは、頭を傾けないようににして、不恰好に座る僕を見ながら、何も言わずにワイングラスを目の前に出す。それからデカンターを手にすると、僕の目を見ながらゆっくりと赤い水をグラスに注ぐ。お願いだ、手元を見てくれよ。水がこぼれたら、こぼれたら、どうしてくれるんだ。お願いだから……。あっと声を上げたら、そこにはもうグラスはなかった。というかもとよりないんだ。僕がカウンターで寝ぼけていたらしい。マスター眉間にシワを寄せて、底の厚い安定したグラスに、炭酸水を注いでくれた。僕はそれを息もつかずに飲んだが、その水はすぐに両の目からこぼれてしまった。昔、赤い水を減らそうと、左手をはさみで突いたことがある。でも流れたのは赤い血だった。僕は自分の血を顔に塗って、それを洗面台の鏡で見て笑った。家族と同居していたらとうていできないことだ。一度ではない。いまもその傷は左手に残っている。マスターが、ほんのり甘い香りのついたお湯を湯飲みに入れて出してくれた。飲むとまた目からこぼれてしまう。口に入るとしょっぱいじゃないか。あぁ、櫻の塩漬けが入っていたのか……。2004.11.05一部修正***********************************************************お酒とつまみの好きなお方。新潮社から出たばかりの杉浦日向子さんの単行本『ごくらくちんみ』をおひとつどうぞ。マスターにもすすめてやろうと思ったら、ちゃっかりボトルの間に並んでた。もっともここには、その本に出てくるような珍味はあんまりないけど。まぁ珍客は多いか……。
Sep 29, 2004
すっかり腑抜けたようになってしまった。キーボードを前にしても、お気に入りペンを握っても、なにも浮かばない。台風の中に巨大な魚を想像したが、甚大な被害を及ぼしたそれを素材にするわけにもいかない。かといって自分の中になにもないわけではない、器の底にたまったドライアイスの煙のように揺らめいているが、けれどすくうことはできない。手を差し出せば文字通り霧散してしまう。ドライアイスで思い出した。例のカウンターバーのマスターが、一度だけドライアイスの煙を使ったカクテルをしゃれっ気で出した。底の深いグラスにフローズンダイキリを入れて、その上にドライアイスの煙を注ぐ。グラスはキンキンに冷やさなくてはならないし、注ぐのも氷の入ったアイスピッチャーの中でのこと。テーブルの上に出されたグラスの中では、確かに白い煙が渦巻いていた。僕は煙が消えないように、ゆっくりと細いスプーンを入れて、シャーベット状のダイキリをすくい出した。やけに気を使うカクテルで、酔ってる暇もない。マスターはストームマウンテンなんて名づけたけれど、2度と見たことがない。そういや、青い服の客も一度しか見ていない。まだスノウボールの少女を持ち歩いているのだろうか。あれから新聞の縮小版を漁って、3年前に水没した地方都市の名前を思い出した。あんな大惨事を忘れてたなんて……。不思議だ。忘れてた。私はグラスを磨いて棚に戻す。カウンターに突っ伏していたいつもの客をぼんやりと見送った私は、カウンターの影にあるノートの画面を見て、登録のボタンをクリックする。あの客も日記を登録しなくちゃとつぶやいていたけれど、まさかね。厚手のグラスを1個冷凍庫から取り出して、アイスピッチャーに入れる。そう、煙を長持ちさせる秘訣は低温を保つこと。グラスの種類にそのヒントがあったのだ。ストームマウンテン。酔いどれが遭難する白い氷山。2004.11.05:一部修正*******************************************************そういえば、メイソウ亭日常のタイトルって、なんとなくカクテルの名前にならないだろうか、などと考えたりします。ただ、第1回のオートマターだけは、しっくりこないかな。第3回のTime after Timeは、きっとアル中向けだ。
Sep 28, 2004
二匹の鯉が輪を描いてまわる揺れる蓮の花緩やかな波に映る雲緑の葉 小さな泡風に運ばれる蓮の花弁は波も立てずに湖面を渡るほとりに建つ東屋床几の上に忘れられた和とじの本悪戯に頁は繰られていく紫の花弁が一枚閉じられた頁の中に封じられる透き通る緑 藤の葉陰鋭い山のいただきは黙って流れる雲を分けている二匹の鯉が輪を描いてまわる山のいただきを流れ行く雲の中をめぐりめぐる空の青さは壷の色吹き抜ける風はかすかに水の香りを伝える安らかな息吹いつの間にか本は持ち去られ藤の甘酸っぱい香りが誰もいない東屋に漂った**********************************************即興なので韻も踏んでなければ、文字数もばらばらです。しかも季節はなぜか初夏。藤は春の季語ですが、6月に咲くのなら初夏に入れてもよいかなと。蓮はそれより若干遅れるようですが、ともに咲くこともあるでしょう。特に、ここの世界では、同じ時にすべての花が咲いてもおかしくはないのですがね……。
Sep 27, 2004
1それは1本のケーブル2闇から光へと伸びていく赤いケーブル……3人の人生は、一方向に伸びる赤いケーブル。それは絡まりあい、離れて伸びていくケーブル。やがて途切れるケーブル。4ケーブルを拡大すれば、それは一瞬という単位で重ねられる、数え切れない面を持つクリスタルの薄いプレート。それが数え切れないほど積まれると、次第に赤い色を帯びて行く。5ケーブルは擦れあうことで、相手を断ち切ることもすれば、新たなケーブルを作ることもあるだろう。時に細く時に太くケーブルの束は光をなくした深い谷底より、まだ光以外のなにものでもない空に向かって上っていく。いつか最後の1本が切れて、すべてが谷底に落ちてしまうその時まで。0**********************************************************中学生だった僕は、赤い糸を小指をつなげるものではなく、人それぞれの人生を示すケーブルと考えていました。様々な座標の中にとった点を結ぶ、複雑な断面を持つ赤いケーブル。当時僕は目を瞑り数え切れない赤いケーブルが束になって闇の中を伸びていく様子を想像して愉悦に浸ってました。そういったことを幻視することが快楽のひとつでした。いや、いまでもそれは、心と頭を解放する方法のひとつとして、楽しんでいます。深夜魚もその中から生まれたのかもしれません。
Sep 26, 2004
ここに一枚の写真がある。青灰色に染まった空と鉛色に鈍く光る海。そこにあるのは明るい陰鬱さとでもいうのだろうか、荒れ狂う冬の日本海とは異なるのは、波が穏やかなせいだろう。取材の折り、足を伸ばした浜辺で何の気もなく撮った写真だ。この写真をひっくり返しても、ちょっと気づかないぐらいに空と海は同じように見えた。だが空と海が交じり合わないのは、水平線にくすんだ青い線があるからだ。一見それは内海を隔てた半島の海岸線のように思えたが、それにしては高さがない。そこでその部分を拡大鏡で見ると、それが半島の影などではなく。肩を丸め、うつむいて海面を渡る人影の集団だった。いったいどこへいくのだろう。撮影した場所を思い出すと、人々はなにもない外海へ向かっている。海から陸へならともかく、はるか沖を目指すのはなぜか? そこにニライカナイや蓬莱があるのか? 海を渡る影をじっと見つめていた私は、その中にひとりだけ、こちらを見ている顔を見つけた。白く浮き上がる顔の表情をしかと見定めることはできないが、なぜか穏やかな印象を受けたのだ。そのとき初めてこの写真の不思議な明るさの原因が、目鼻立ちもはっきりしない顔の、表情とは呼べない表情にあることを悟った。彼らはどこへ行ったのだろうか?
Sep 25, 2004
バイパスの両側に、果てなく続く高層ビルの窓。晩夏の陽射しを受けて鈍く光るブルーグラス。そこに映る疾走する青いスポーツカー。毎秒30フレームの連続写真。スピードメーターの針が示す速度とのギャップが、助手席から瞬きもせずに流れるビルの窓を見つめる私を幻惑させる。窓の数だけ分裂した青い車は、それぞれ思い思いの速度で飛んでいく。それはいつしか青い影となり、青い魚影となってスポーツカーを囲んで泳ぐ。青い車と海の中で競い合う幻の魚影。うねるバイパスにあわせて、魚群も上下にすばやく体を翻す。ついにビル群が終わる瞬間、自分の鏡像よりも一歩速く車が走り抜けた。私が思わず歓声を上げると、ハンドルを握る彼が、自慢気に無言で左の眉だけを吊り上げた。
Sep 24, 2004
少女は都を通る流れのほとりですっかり綺麗に洗われたなもなき魚たちの鱗をひろって集めます底が覗ける住んだ流れにはもう魚影はありません綺麗過ぎる水は酸素が足りなくて魚はもう住めないのです綺麗にしようとするあまり愚者はよってたかって流れに薬わ溶かし込みすっかり魚を消しましたいまは少女が拾う脱色された鱗ばかりが流れのほとりに残されるばかりでもあすはその鱗も取り除かれてあとはなにも住まない透明な虚無があるばかり*********************************東京はますます息苦しい場所になりそうです。人類を守ることは人類を完全管理することと判断した、狂った人工知能のように、都政や教育の中枢は強制と管理を推し進めます。よい結果は少なく、悪い要因が蓄積されます。太陽が西から昇ることすら、ここでは信じられるでしょう。まるでほかの世界から隔離された、宇宙を迷走する世代型宇宙船にも似ています……。
Sep 23, 2004
こんじきのバターロールみずいろのソーダあめしろいミルクキャンディ色とりどりのハッカぼうみんなあげるだからおねがいそのてのなかにあるビーだまをかえしてわたしのだいじなあおいほし*****************************吉祥寺の百貨店でのお楽しみはルーとライスが別の器で出るカレーライスと子供の口にはちょっと大きいバターロール。甘い中に塩のきいたバター味の飴。懐かしいけれど、戻ることはできない、袋小路の思い出。*****************************フジテレビ『サムライチャンプルー』終了。残念。後半おもしろくなってきたのにね。京の都も堺の町も、長崎の出島もなし。ま、コンティニューとあったから、続編を心待ちにしましょうか。そうそう、バズ・ライトイヤーの顔を見ると、どっかで銭形のとっつぁんと血がつながっていると思わずにはいられない……。2004.09.28本文一部削除
Sep 22, 2004
ビルに囲まれた空を見上げる月も星も沈んでかすむ空の淵流れ込む夜の闇がくろぐろとよどむ場所目の前が真っ白になりそうな激しい怒りを静めるために僕は無言で夜の淵を見上げ両手を差し伸べ乾いた地面を蹴る黒い水に熱を帯びた身を浸せば熱い怒りは静まることだろうたとえ淵の中に沈むことになろうとも体を焼き尽くしそうな怒りを冷ましたい黒い水面に浮かんで見下ろす街はいつものように輝いているだろうか明かりの一つ一つに感情を宿して静かに瞬きもせず輝いているだろうか怒りを静めた私に帰る場所は無い熱のない者に街を動かす力は無い生きるための怒りから逃げた私は黒い水の上をたゆたうしかない****************************************無闇に左肩と首の後ろが痛いので、暖めたり叩いたりしたが効果なし。仕方ないので残っていたボルタレンを服用。痛みは少々引いたものの、今度は気分が悪くて眠れない。難儀な体である。2004.09.22 04:41眠れず追記
Sep 21, 2004
小さくて愛しいものちょっと目を離したらすぐに見失ってしまいそうな小さな小さな愛しいものブルー、レッド、グリーンにイエロー色とりどりの小さな魚たち風に舞って思い出の片隅で揺れている小さくて可愛いものちょっと時間がたったら誰もが忘れてしまいそうな小さくて小さくて可愛いものブルー、レッド、グリーンにイエロー色とりどりの小さな魚たち透けた光がいろいろに混ざりあう今ごろ思い出しても遅いけど、あの日がとても懐かしい立ち止まれないし戻れないけれどまためぐり会えるならだから今日も光溢れる街をさまようブルー、レッド、グリーンにイエロー色とりどりの小さな魚たち風に舞って思い出の片隅で揺れているブルー、レッド、グリーンにイエロー色とりどりの小さな魚たち透けた光がいろいろに混ざりあうブルー、レッド、グリーンにイエロー色とりどりの小さな魚たちプラスチックの街を泳ぐセルロイドの魚たち2004.09.21 誤字修正
Sep 20, 2004
灰色の空から、天使が落ちてくる翼を炎で焦がし、色の無い瞳に深い悲しみを湛え、空から天使が落ちてくる。ビルの街に、緑の公園に、暗い海辺に、煙を吐き出す工場に、コンクリートの校庭に、誰もが俯いて早足で行き交う雑踏の中にも。道端で泣きじゃくる少女を見た。親はなぜ少女が泣いているのかわからないようだったが、少女は落ちてくる天使を指差している。夜になっても天使は降り続けた。まるで何百ものともし火が、ゆっくり地上へ落ちて来るかのようだ。このまま夜に沈んでしまい、もう二度と明るい朝が訪れないようなこの街をまるで弔うように。見上げた夜空には灰色の雲が、灰の吹いた炭のように赤い光を奥に宿しているのが見える。天国が燃えている。地獄のように真っ赤焼けている。誰が火を放ったのか、誰も止められなかったのか。まだ天使たちが翼を焦がしながら落ちてくる。あの少女はまだ泣いているだろうか。************************************************************似たようなこと書いたことがありましたが、もう少し終末っぽいものにしてみました。天使が悲鳴をあげながら落ちてくることも考えたのですが、それではあまりにも悲惨なので、彼らには無言で落ちてもらうことにしました。地面に落ちた天使はどうなったのでしょう。地面に飲み込まれたのでしょうか? それとも灰になって消えてしまったのでしょうか? 眠る前にちょっと想像してみませんか?
Sep 19, 2004
真っ青な犬が心の中を疾走する。ポインターのような大型の狩猟犬が、矢のごとく私の心の中をかけていくのだ。天も地もないただまっ白な空間を風のように走る犬の姿を私の視線は同じスピードで追っている。いつか犬が立ち止まることはあるだろうか?そのとき犬は振り返って吼えるのだろうか?それとも尾を振って私になつくのだろうか?でもいまは犬はただ一心不乱に走り続ける真っ青な犬が私の心の中を疾走する
Sep 18, 2004
モスグリーンの毛布にくるまった僕を乗せて地下鉄はどこまでも走り続ける。いくつもの駅を飛ばして、いくつかの駅に止まって、そしていまはどこまでも、どこまでも、暗い車窓をのぞく気にもなれず、熱っぽい体をもてあまし気味に、誰もいない車両の隅の席で、壁によりかかるようにして揺れている。汗に湿ったシャツのポケットに、切符はあるけれど、どこまで行けるのか覚えていない。検札は来ないからいいけれど、来ても切符を差し出すことも大儀でしかたがない。眠くてしかたないのだけれど、頭が痛くてうまく眠れない。できれば足の先まで毛布の中に入れてしまいたいけれど、横にはなりたくない。車両の電灯が前から後ろにむかって、次々と瞬いた。車両区が変わったのだ。いったいいくつのエリアを抜けてきたのだろう。駅の明かりを見なくなってずいぶんたったような気がする。このまま車庫へ向かっていくのか。ほかの車両に乗客はいるのだろうか。話し掛けられると面倒だけど誰もいないのは寂しい。少しずり落ちた毛布を引っ張り上げて肩を覆う。小さな横揺れと、規則正しい縦揺れ。レールのつなぎ目の間隔が狭まっているのではなく、列車のスピードが増しているんだ。僕はどこへ連れていかれるのだろう。この毛布を掛けてくれたのは誰だっただろう。実用一点張りのなんの変哲も無い毛布。でも、いまはこの毛布だけが僕を守ってくれる。列車はカチカチに固まった空気を押しながらはるか地表の下を走る。モスグリーンの毛布にくるまって、熱に浮かされて眠れないでいる心細い僕を乗せて。誰も知らないだろうトンネルをどこまでも深く、深く、深く……。**************************************地下鉄は好きですか? 地上を走るのとは違って、窓から見えるのはトンネルの壁ばかり。でもいつの間にか、短時間で長距離を移動している。しかし、乗っている自分はそれを自覚できず、どこをどうとおったのかわからないが、いつのまにやら目的地に付いている。時々不思議に思ってしまうのです。
Sep 17, 2004
銀の鱗をシャラシャラと揺らして泳ぐ君を観て思わず眼を細めてしまったのはまぶしかったからじゃない形のよいひれをユラユラとなびかせて泳ぐ君を観て思わず口の端が上がったのはヒゲがかゆかったからじゃない大きな瞳をクログロと見開くままの君を観て思わず視線をそらしたのは隣の水槽を気にしたわけじゃないわかってもらえないのは わかってるでもわかってほしいのは わかってよ銀の鱗をシャラシャラと揺らして泳ぐ君を観て思わず眼を細めてしまったのは僕が猫だからってわけじゃない2004.09.18一部修正
Sep 16, 2004
やっと風が変わった。青い空の向こうから、すうっと白い風が吹いてきて、僕はようやく人心地ついて、熱い息をふぅっと吐いて、少しばかり体温を下げた。風を浴びた僕の体は、少しずつ透けてく。両の腕をぐっと大きく広げて、僕はようやく頭を空にして、心を青と白で満たして、少しばかり軽くなった。流れる雲、かげる太陽、輝く月、これから降る雨は、優しく僕を潤してくれるこれから吹く風は、優しく僕を包み込んでくれる************************************************今日から秋です! そう気象予報士が一斉に宣言してくれるとうれしいのですが。秋は最も好きな季節です。そして冬の訪れが、また楽しいのです。幾人もの自分が風に運ばれ、様々な場所で移り変わり行く季節を目にする甘くて香ばしい秋の空気を呼吸する僕は秋に満たされ、秋に溶け込んでゆくいま、キーボードを打つ指が、それにつながる全身が、よろこびにぶるっと震えました。秋が来ることを楽しみに、震えるのです。これが。秋はバグパイプの調べにのって、スコットランドからこれは、いま頭に浮かんだフレーズ。なんか、百貨店のキャンペーンで使えないかな。ま、日記のタイトルには使えそうかな。
Sep 15, 2004
笛吹けば亡者が踊る月も星も見えぬ夜あかりのない堂にこもりいわくある笛吹けば、冴えある音、凄ある音、触れる音幽鬼の国、黄泉の国、死者の国にこだまして亡者の心をかき乱す亡者は踊る笛の音(ね)に合わせ、青い顔、赤い顔、黒い顔闇に浮かんで己が唇をこさえて落ちた枯れ枝、犬の骨、自分の骨を押し当て骨の指、筋の指、枯れた指を動かしてまるで自ら笛を吹くかのよう踊る亡者はみな笛に血を吸われ、命を吸われた者ばかりワシが吹く、私がうまい、われこそ上手と笛を吹いて堕した者もし朝が来る前に笛を吹くのやめたなら、亡者がそれとばかり襲い来て、笛ばかりか赤い血を、温かい肉を、臭うはらわたをこぼして、引き裂き、散らすだろうけれど最後は笛を奪い合い、ついに朝日に追われて幽鬼の国、黄泉の国、死者の国に逃げ帰る泣く笛吹くな 笛吹けば亡者が踊る**********************************************************一人の侍が、真っ暗なお堂の中で、陰気な曲を笛で吹いていると、その笛を吹いたが故に亡者となった連中が、ぐるぐる輪を描きながら踊る図を思い浮かべて書いてみました。元ネタは野村胡堂の中篇『魔の笛』、BGMはJobutsu Projectの『Listen in Clear Light』のDISC2でした。回文も入れてみました。蛇足でしたかね。
Sep 14, 2004
見上げた東京の夜空に星は少ない人は皆いつか星になると教えてもらったのに、教えてくれたその人の星もみつからないだから高いビルに上ってみた。誰も訪れない屋上の端に立って、夜風にあおられて少し揺れながら夜空を見上げた。なのに、そこにあるのは銀色に光る小さなベガとアルタイル。それらを隔てていた無数の星が流れる川はすっかり干上がってしまったようだ。もう誰も祈らなくたって、あのふたりはいつでも好きなときに会えるんだ。でも、それを許したくない。あなたちの想いのために、私の想いをつぶされたくない。無数の星、無数の人々の記憶と思い出、夜空を煙のようにたなびいて流れていく銀の河。都市の光は過去の人々の輝きを消して、新しい人の心に同じ記憶を焼き付けてしまう。私は最後の列車に乗って山へ向かう。暗い車窓から見える光のつらなり。流れるヘッドライトとテールランプ。あれは流れ星なんかじゃない。ひとり山頂の社へ向かう道を登る。山蛍の淡い光が外灯の光の外で彷徨っている。それを魂と呼ぶ人もいるけれど、私が探しているのは蛍が夜空に上がって作る星の明かり。山頂に上がって見上げる星空。それは初めて観る私にとって、おそろしいものだった。夜空にこれほどの星が瞬いているなんて、空全体が光っているといっても嘘じゃない。銀河の流れすらかろうじてわかるぐらい、星の輝きの中にかすんでしまっている。これが皆、人々の魂だなんて、込められた思いだなんて。無数の星、無数の人々の思い。この星で初めて人が身罷ったその日から増え続けた星。それはまるで鬼火のように夜空の中に輝いている。それはまるで、私の目と鼻の先、指させば蜘蛛の巣にかかった露のように弾いてしまいそうな輝き。ここにあの人を見つけることはできない、あまりにも多すぎて……。星が流れる。次々と流れて行く。空に上がった魂が、再び地上に生を得るため下りてくる。いくつも、いくつも、魂がシャワーのように降り注ぐ。もしかしたらあの人も再び地上に戻ったのかも。私がかつて、そうして星空から落ちてきたように。夜空が星で埋め尽くされないのは、いつか魂が流星になって地上に戻るから。天国が満杯にならないのも同じ理屈。私は立ち上がると目一杯背伸びして、両腕を広げた。降り注ぐ魂の輝きを自分で受け止めるかのように。いつか、きっとその日が来ることを予感しながら。夜明けの列車に乗って戻るとき、ゆっくりと消えていく星を街の中に見た。人が夜景に憧れるのは、自分の魂がやってきた星空を模写したものだから。星空に戻ることを憧れているから。でもそれを地上に作ることばかり精を出してたから、いつの間にか本当に帰る場所を消してしまった。そんなことするから、生きているときから迷ってしまう。あの山蛍のように。そんな気がする……。
Sep 13, 2004
振り返ると、背後から勢いよく音を立てて褐色の波がやって来るのが見えた。僕は痛む足をかばって、奇妙なステップを踏むように早足で進んだが、到底波から逃れることはできない。目の前に小さな褐色の飛沫が次々と散ったと思ったら、バチバチと奇妙な音を立てて、波が背中から襲ってきた。頭からかかぶった波が、水ではないことはすぐにわかったが、それはもっとひどいものだった。水の飛沫と思えたものは、すべて小さな鯊だ。潮溜まりにいる、メダカのように小さな鯊、それが無数に集まって鉄砲水のように襲って来たのだ。なんでそうなったのかわからない。第一ここがどこだかも見当がつかない。もう目だって開けていられない。小さな鯊だが、それが無数にのしかかってくると、立ってられないぐらい重い。思わず前のめりに倒れそうになって、両手をつくと、プチプチと手の下で、何匹もの鯊がつぶれた。慌てて起き上がろうとしたが、足がすべってそのまま倒れこんだ。自分の下でまた何十匹もの鯊がつぶれて、生き残った連中がうごめいている。あまりの気持ち悪さに悲鳴を上げたところで目が覚めた。やっと夢の名残をぬぐい去ると、両足がひどく熱く、赤く腫れ上がっているのに気がついた。まるで無数の鯊の吸盤が張り付いたように、赤い斑点が重なり合って足の一部を真っ赤にしていた。***************************************************************熱は下がったが、両足のすねとふくらはぎが燃えるように熱かった。水をかけてどうにか冷やして病院へ行ったが、診断は感染症。傷はないし、毎日洗っている。感染経路がわからない。ただ、ここのところ断続的に続いた発熱は、風邪ではなく、感染症が原因のようだ。
Sep 12, 2004
魚はやってこない。深い海の闇に戻って、ここにはもう来ないかもしれない。私は疲れてしまった。どうしようもないほど。この先、どうなるのかわからないが、私の探しているあの巨大な魚が去ってしまったら、ゆっくりと崩壊が始まる。微熱が続く。さっぱりしたらよくなるかと、散発したら、全身が熱くなった。37度、人によれば平熱かもしれないが、36度ちょうどあたりが平熱の僕には、どうもつらい。テレビをつけてニュースを観ると、人が殺されたり、虐げられたりしている。アメリカでは映画『HERO』が、"帝国を打破しようとする名も無き男が、帝国の刺客と戦い、人々の心をひとつにする"などと映画配給会社が宣伝している。そんな映画でしたっけ? 映像の美しさも、人の悲しさもなし。アメリカっていったい……。ダメ。体調不良のせいか、じりじりと斜面を滑り落ちるように、悪いほうへと想像力が傾いてしまう。悪いことはより悪く、よいことは皮肉な目で見てしまう。この状態を抜けきれば、少しはましな頭に、きっと魚も帰ってくるかもしれない。
Sep 11, 2004
すっかり日記の更新を遅らせてしまった。書くことがない、のではなく書く気力が失われてしまった。ここには即興でもよいし、二度と読み返さなくてもよいから、必ず日常の刺激を受けて(それはその日でなくてもよかった、たとえば10年かけて次第に蓄積されたものでもよかった)生み出される非日常を書こうと決めていた。だが、時には非日常への扉が閉ざされ、その鍵を所有しているはずの私自身が締め出されてしまうことがある。そして私は扉の外側で、うねり、渦巻き、押し寄せる日常に相対することを余儀なくされる。それは絶縁体のはがれた電気コードに塩水をかけるようなものだ。 こうして、いまはどうにか入力を続けられるが、体が重く、また両腕も重い。少しくたびれて(まるで湿気をたっぷり吸った、塩が詰まった麻袋のような)はいるけれど、あと、もう1日ぶんの日記を書くとしよう。 大きく傾いた太陽が蜜色に輝き始め、公園の片隅にあるベンチに座ってぼんやりとしている僕の視界に収まるすべての空間が同じ色に包まれ始めた。楽しげに言葉を交わす親子、ボールを追いかける子供たち、はにかみながらも幸福そうなアベック、互いにいたわりあってゆっくりと歩む老夫婦。なにもかもが平和で、涙が出るほど幸福な風景だ。誰も彼もが蜜色に輝いて、まぶしいばかりだ。ここでは誰も眉間にしわを寄せたりしないし、声を荒げたりはしない、公園の外で起きている災厄はここに入ってくることはない。 僕は激しい感情にとらわれた。それは、突然に盛り上がる熱いマグマのようなものだ。僕はベンチから飛び出して人々の間に交わりたい、「平和です、ここは平和です、ここにいればなんの心配もないのです! もう大丈夫なんです、ここにいれば、大丈夫なんです!」そう言いながら、公園を散歩する人々を抱きしめて、握手してまわりたい、そんな気持ちにとらわれたのだ。 そして、ついにこらえきれず、僕はベンチから体を起こして、蜜色の空間に飛び出した。すると、周囲の空気は本当の蜜のように、体にまとわりついて、僕の動きを困難にする。いくら手足を動かしても光に包まれたみんなの処へは行けない。そのうち、みんなが光の中に輪郭を失い、溶け合い始めた。誰も彼もがネットリとした蜜になり、夕日の光を吸収し、そして放出しながら、溶けて行く。僕も僕も連れってくれ、僕も蜜色の時間へ連れってくれ! 暗い森の向こうに太陽が沈むと、潮が引くように蜜色の光は消えて、誰もいなくなった公園は静かに夜の中に沈んでいく。僕は体についた砂を払う気力もなく、ゆっくりと起き上がると公園を後にした。明日、明日またここにこよう。そうすれば、そうすれば……。
Sep 10, 2004
君はお気に入りの黄色い服を着て僕のすぐそばにやってくる-青い小部屋に白いベンチ-柔らかなカーブとエレガントな直線-流れに揺れる色とりどりの吹流し-透き通ったケープを揺らして君は僕のそばで踊る-青い小部屋に白い砂-光の網が君の黄色い服の上で揺れている-Qにgに8に0、奇妙な曲線のつらなりー少し疲れたのか君は紅の梢に体をあずけじっと僕を見つめている-冷たいガラスに囲まれた暖かな水-さようならまた明日見飽きない君の姿が水槽の中で揺れて見える*************************************************************JR恵比寿駅のアトレには、熱帯魚の水槽が置かれた休憩場所がある。仕事の途中でなければ、水槽の近くてじっと魚の姿を見ている。相手はオスかもしれないのに、僕は少しうっとりと見つめている。
Sep 9, 2004
西の山並みの向こうを巨大な黒い馬がゆっくりと歩んでゆく真っ黒な体の線を茜色の斜光が迫る夕闇の中に描き出す長い足は山の高みをはるかに越えて引き締まった腹の下を低い雲が流れていく見上げる馬の頭は星のきらめく夜空の中にあって黒い鬣に見え隠れする星々がまるで飛び散る馬の汗のようだ大きな黒目は月の光を浴びてもうひとつの月が浮かんでいるかのように浮かんで見えるあの足で歩むのならばすぐにでも視界から消えていきそうなものをなぜか馬は私の目の前で夜の中を歩んでいる西の山並みの向こうを歩んでいる*******************************************************夕焼けの中に黒々と浮かび上がる所沢の丘陵地を見上げながら、想像した巨大な馬。真っ赤に焼けた空いっぱいに、真っ黒な馬が夢の中にようにゆっくりと駆けていくというのが、元々幻視した風景でした。その馬は静かな力。たとえるならこの星が自転するような、余りにも大きすぎて、かえって感じられない力の象徴であり、小さな人間の営みなど省みない巨大な存在といったところでしょうか。サラブレッドではなく、足腰の太い、野生の馬です。
Sep 8, 2004
日が暮れた街の上に黒い獣がうずくまる黒いビロードの毛並みは闇となり金色に輝く片方の目は月となり口元にこぼれる牙は星となり吐息は熱い夜風となって街の中を拭きぬける姿は違うが同じ名を持つ魔物は口から甘い芳香を漂わして仲間を酔わせて魔の宴を盛り上げるという夜獣の息は人の中に眠る仲間を呼び覚ますそれを不快に思う者は襟を合わせて閉じた窓の奥にひとりこもり息の香りに酔う者は肌も露にして街へと繰り出す人の心を銀色のヒゲで巧み探り熟した者を前足の爪に引っ掛けて真っ赤な口の中に放り込むそして真っ黒なもうひとつ目で自分の行ないを見てしまった人間を探すもし真っ暗な空に真っ赤な口が開いたのを見た者はしなやかな尾に打たれてたちまち狂って忘れてしまう同じ尾はようやく上がる朝日すら地平線の向こうに叩き落とす朝の訪れぬ街の上に黒い獣がうずくまる
Sep 7, 2004
僕のいきつけのカウンターバーには、スリムで背の高い柱時計がある。そんなに古いものではないが、観ていると妙に味わいがあるのは、作った職人が心を込めて作ったからなのだろう。どんな人が作ったのかとマスターに問えば、時計を作るのが楽しくってしかたなかったひとたちですよ、と答える。木枠の部分はわかるのだが、時計の本体も複数の職人が手分けして作っているのだとか。この時計が曲者で、じっと見ていると語りかけてくる。「忘れなさいよ、時間だなんて」時計の癖になんてことをと思うのだが、店にはこの時計にしかないのだから、だまされないように気をつけなくてはならない。時間など"流れ"を都合よく区切るために人間が勝手に作った単位だ。まるで時間自身が"流れ"を作っているように錯覚しがちだがそれは勘違い。時計はそのことをよく知っているから、あんなセリフを言えるのだ。あめ色の文字盤の上をシンプルだがよく磨きこまれた黒い針が滑るように動く。だが、その針の動きが一定のリズムではないことは、経験上よく知っている。けれど、この時計が狂っているってわけではない。こうしてグラスを重ねるたびに時間の進みが変わるのだ。私は時計が客に催眠術をかけるのではないかと疑っている。それは振り子ではなく、3本の針によってだ。もしかしたら、微妙に文字盤も動いてるのでは。時計のネジを巻くのはマスターの特権。誰にも時計を触れさせない。そしてネジを巻くたびに、時計に向かってなにか囁いているのだ。きっとこう言っているに違いない。「客に時間を忘れさせろ、だますんだ」マスター、だからカウンターの向かいに鏡を置いて、カウンターに座る私の目に時計を見せているんだな。でもこっちにだって自前の時計があるんだ。もう8年使っている懐中時計……ん、お前もグルか!そんなわけで、日記の更新が遅れたのはマスターと時計たちのせいなんです。いざっていうときに、懐中時計すら止まったんだから。ゆるされますよね……。ねぇ?***************************************懐かしい同名の映画をやっていたので、またまた即興で書いてみました。すいませんちょっと冗長でしたか? ちなみにtime after timeをそのまま訳すと"しばしば"ってことになるそうで。時間旅行とはあまり関係ないようですね。
Sep 6, 2004
扉がひとつっきりしかない小さな部屋で、幾度となくひらめくナイフ。次々と切り裂かれるクッション、枕、シーツ、マットレス。でも狙われているのはそれではない。本棚の本が一斉に床になだれ落ち、その数冊がナイフに向かって飛んだが、ナイフはそれをものともせずに迫る。切り裂かれたクッションが放られて、白い羽毛が部屋中に飛び散りまるで養鶏舎に野犬が飛び込んできたような勢いだ。続いて机の上のインク壷が飛んで黒と赤のしぶきが部屋全体にぶちまけられ、壁の古い染みの上にもにじんだ。ノートも書類もいっせいに部屋の中に舞ったが刃をひるませることすらできない。ベッドのマットレスが激しく軋み、ベッドサイドの電気ランプが壁に当たって音をたてて電球が割れた。小さなガラスの破片が、切り裂かれたシ-ツの上に飛び散って輝く。ドアが内部から激しく叩かれたが、廊下の奥から足音が近づく前に、ナイフがドアに音を立ててささり、それで一切の音が止んだ。扉が外部から開かれた。施錠もされていないのか、ドアノブが回ってゆっくりとドアが開き、真っ青な二つの顔が覗いて、おびえた目が部屋の中を見回すと、甲高い悲鳴が無人の部屋に響いた。扉は乱暴に閉められて、恐怖に逃げるふたりの足音が廊下の向こうに消えて行く。扉にささったナイフの刃はいつの間にか錆びて、荒れ果てた部屋には厚くホコリが積もっている。ここは誰もいない部屋、そうここは誰もいない部屋。**************************************************************NHKのクイズ番組"誰もいない部屋"。タイトルを聞いて不気味さを感じたのは、私だけではないでしょう。そこからイマジネーションを膨らましていくつか短編を書いた覚えがあります。上記のは、同番組のテーマ音楽、COBAの"チャンネルMを探せ"(Nじゃない!?)を聞きながら、即興で書きました。実は同趣向でもっとおだやかなバージョンの短編がありまして、個人的には、そちのほうがすきなのですが、いかんせん、COBAの曲を改めて聞き直したら、雰囲気が合わなかったので即興で書いたのです。人のいない部屋で起きること、それを観ているだけの自分。それは怪談を聞いたり、ホラームービーを観るのと似た状況にあるような気がします。
Sep 5, 2004
夢の家建築会社の新世代型住宅の2階建てモデルハウス白いレースのカーテン揺れる窓に、幸せそうな笑みを浮かべた顔が並んで見えるどの窓にも、いっぱいに隙間なく……************************************************某テレビCM、COBAのBGMが流れるあのCMには、いつも気味の悪さを感じてしまう。COBAのアルバムで聞く分にはいい音楽なのに、あの映像に合わせるとなぜかいいイメージを受けないのだ。なんでだろう。実家にもどっていて、更新が遅れました。4、5日ぶんの枠を記入しておきます。現在6日の午前12時35分。近畿地方で強い地震があり、その余波が東京にも届きました。
Sep 4, 2004
あなたが知っている海の魚はなんですか?色鮮やかな熱帯魚?食卓でおなじみの魚?水族館で見た珍しい魚?あなたが部屋でひとり眠っているとき、すぐ顔の上を魚たちが泳いでいるのを想像してみてください。まるで幻灯のよう、それともベビーベッドで見たメリーゴーラウンドのよう?天井はいつの間にか、ぼんやりとした青い光に包まれて、光の綾がゆらゆらとしています。もし目が覚めても慌ててはいけません。もし慌てて起き上がると溺れてしまうから。静かに目を開いてください。大きな魚がたくさんの取り巻きを引き連れて、ゆっくりとあなたの上を通りすぎて行きます。時々おせっかいな小魚が、あなたの歯を掃除しに来ますが、決して口を開いてはいけません。口の中を掃除されているとき、あなたはくすぐったくて、きっと口を閉じてしまうでしょう。だから。もし、魚を見たいなら、部屋の電気は消しておきましょう。深夜魚は闇を通ってやってくるのです。そしてなぜか闇の中でも、その姿は見えるのです。まるで幻灯のよう、それとも夜店で買ったきれいで不思議な万華鏡のよう?それから夜が明ける前に、ちゃんとねむることが大切です。もし目が覚めたままなら、そのまま海の底に招待されてしまうかもしれません。いくら素潜りに自信があってもきっと助からない。だから……。
Sep 3, 2004
皮膚と皮膚の間に、薄い層があり、ここがブルブルと震えて脱皮が始まる。ただ外皮が取れるだけではなく、いつの間にか新しい器官が体のどこかに生じているのだ。最初は指が4本に増えた。次は髪が生えた。親指がそろったときには、鼻も出っ張ったのだ。もしあの時うつぶせになっていたら、きっと獅子鼻になっていただろう。耳たぶもあとからついた。足は手の指がそろってから、一気に生じたのだ。そして心。最初は目と耳を総動員して自分の周りを感じるだけのものだった。危険か否か、誰かいるのか。それが脱皮を繰り返すごとに新しい感情が生まれた。髪が生えると羞恥心を知った。手の指がそろうと好奇心が湧いた。声が出るようになると、みんなといっしょにいたくなった。今度の脱皮で私が知るのはどんな感情か。憎しみか愛情か、ねたみか哀れみか。こうして震えているのは体がむずかゆいのではない。脱皮したあとの自分に不安を覚えて震えているのだ。************************************************************************カゼを引きました。体の節々が痛くて、シャツが触れるだけでも皮膚が痛みを感じます。そこから脱皮へと連想がつながったのです。まいりましたよ。イタタタタ。
Sep 2, 2004
鋼鉄のボールが降り注ぐ、形の異なる鋼鉄の切片に次々とぶつかって、甲高い不思議な音楽を奏でている。その音の一つ一つが、じかに鋼鉄のボールを投げ当てられたような衝撃で体の奥に響いてくる。痛いのではない、心地よいのだ。打ちのめされる感覚は、決して被虐の喜びではない。私の体そのものが音を響き返しているような気がする。私自身が響きのひとつなって、硬質な音の中を渡っていく。音は色に置き換わる。シャープなエッジを見せる白銀の針の雨、目には1ミリたりとも動いては見えないのに、次々と振動し、音を伝え、ぶつけ、響かせている。私のその中の針のような雨粒の一つに過ぎない。雨粒はやがて鈍く光る鋼鉄のボールになり、同じ鋼鉄の切片にぶつかり甲高い音を立てる。音は色に置き換わる。それは永い時を繰り返す、白銀の雨、闇に浮かぶ鋭いエッジ、響く、響く、響く。あぁ、壊れてしまう、けれど決して傷一つつかず、永遠に繰り返す。解放はない、、、、、、*********************************************************本来なら"東京-奇-人"に入るべき1篇ですが、すっかり抽象的になりすぎてしまったので"心象風景"に。ちなみ、このタイトルが曲名として入っているアルバムが、"東京-奇-人"の元になっているのですがね。雑誌ではなかったのです。
Sep 1, 2004
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