2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
全31件 (31件中 1-31件目)
1
静かに沈む 星の瞬きも 月の輝きも 届かぬ 深い夜の底へ かつて壮麗だった宮殿も いまはただ黒々とした 影ばかり 光の絶えることがなかった窓も いまはただ虚ろ咲き乱れる 庭園の花も みな枯れ果てた 香炉の煙のように ただ過去の思い出だけが ゆらゆらと 燐光を放ち 立ちのぼり遠い歳月の中に眠る 幼子の枕もとに流れ寄るこの子に幸あれ 忌まわしきこと 思い出しませぬように私が 煙を近づけぬ限り
Jan 31, 2005
さらさらと 流れ落ちるは私の涙 乾ききった ふたつの目の 砕けた瞳の その穴から さらさらと 流れ落ちて 私のひざに 降りかかるまるで 砂時計の 砂のよう もうこの目では 見えないけれど 俯いた顔から こぼれ落ちるのはわかる ああ世界など 消え去ってしまえ もう耳は 聞こえない 私が突いた 私が 世界から切り離されたのではない 私が 世界を斬り捨てたんだ 私が 捨て去ったんだ
Jan 30, 2005
風の吹き抜ける街中で 振り返る 呼ばれた気がした そんなはずもない ここに私を知るものは いない鬼のいない 鬼ごっこ 追跡者のいない 逃亡者 誰にも気にされたくないくせに 誰かに気にされたくて 街の中を肩をすくめ いもしない相手を警戒して ひとり ただひとりっきりで歩く 見回せば千人の人ごみ 潮のごとく流れる 人々その中であてどもなく流れる 浮標のような自分 少し気取って 少し落ち込んで ちょっと歌って ちょっとステップを踏んでまるで自分は誰からも無関係だと けれど誰よりも街と繋がっているのだと ヒトリ勝手に 決め込んで流れていく 流れていく 自分の背中を 見送る私私 私 わたし わ ……
Jan 29, 2005
深い夜の底から 月の輝く天穹を見上げる夜空は月のまわりに 大きく円を描き雲は渦を巻くように流れ 星は弧を描いて渡る見上げた月は夜空に開いた天の窓 白々とした光と耳慣れぬ音が ほろほろと降り注ぐ凍える頬に流れる涙を ぬぐいもせずにただ深い夜の底から 月の輝く天穹を見上げる
Jan 28, 2005
悲しみは黒く、暖かく、私を包み、ゆっくりと締め上げるだが決して私を死なせてくれない悲しみは私がいないと存在しないのだから……
Jan 27, 2005
登場人物]彼:村のために拳銃を抜き、自ら傷つきながら敵を全滅させた男。男:"彼"に初めて声をかけた初老の男。青年:"男"の息子。[舞台]乏しい水源の周囲に人々が集まりできた、谷間の小さな村。村の入り口は東の丘に向かう道が1本あるきり。3人は村の入り口、東へ向かう道の端に立っている。彼の傍らには毛並みのよい馬。すでに旅立つ準備は整っている。彼の前には村を瀬にして男と青年が立っている。時間はようやく東の空に曙光が差す早朝。だがすでに気温はあがり始め、乾いた風が赤い砂を巻き上げて村を抜けていく。 「さぁ、誰かが家から出てくる前に、丘を越えて行ってくれ。」 男はそう言いながら、彼を促すように右足を一歩前に出した。彼は深くかぶった帽子のつばのへり越しに、じっと男の顔を見ている。その表情は戸惑いとあきらめの交じり合ったものだった。 「父さん彼は村を救ってくれたんだ。奴らがひとりとして丘を越えられなかったのも、彼のおかげだろう。それを……。」 「だが、村の人間も多く死んだ。これまでそんなことにはならなかった。あんなひどいことは初めてだ。」 「けれど、おかげでもうやつらに悩まされることも、奪われることもなくなったじゃないか。もうやつらは……。」 青年の声は心なしか弱く、半分振り返った男の視線によってさえぎられた。男は青年の言葉を続けた。彼はじっと黙ったままだ。 「来ないだろう。だが、やつらみたいな連中は又来る。いなくなりはしないんだよ。」 ならなおのこと彼を、と言った青年を今度は節くれだった分厚い手で制した。青年は再び黙るしかなかった。 「そのときが来るまで、お前やお前の子供たちが強くなればいいんだ。村は村の連中で守ることが大事なんだ。いいかい、それならばどんなに犠牲が出ても納得できるんだ。」 だがな、といいながら男は彼のほうに顔を向け直した。 「あんたのような余所者が守って、村人に犠牲が出たとなると話が違う。感謝しとらんとは言わんよ。だがな、村人の中には、あんたが来たからこそ犠牲が出たと思う者も少なくない。息子はそれに腹を立てているが、息子はまだ肉親を失う本当の悲しみを知ってはおらぬ。あんたなら判ってくれるだろう。」 男の言葉にかすかにうなづいた彼だが、そのみぞおちに押しつけるようにして、男は皮袋を渡した。その中に金貨や銀貨が詰まっているのは、青年にもわかっただろう。彼は首を横に振った。男はなおも皮袋を押し付けてこういった。 「受け取ってくれ。これを受け取ってもらわないと困るんだ。あんたは私が依頼した用心棒だ。村人が金を出し合って雇った用心棒なんだよ。そうだ、あんたはこの村の住人でなければ、誰の友人でもない。余所者は仕事が終わったらその土地を去るものだよ。これから先もしあんたがどこから命を狙われることがあっても、この村の住人はあんたを知らぬと言うだろうし、もし傷を追ってこの道を来たとしても、あの丘を越えさせはしない。」 うしろで青年が悲鳴のような声を上げて、男の言葉をさえぎろうとしたが、それはむなしい抵抗であり、だまっていろ、という男の一喝でやんだ。青年は地に力なくひざをついて、うなだれてしまった。男は声もなく子供のように泣いている青年の姿を一瞥して、また彼に向き直った。 「こんな息子でも鍛えれば人を撃つこともできるだろう。だからこの金を受け取って村から去ってくれ。もしかしたら、いや絶対にわしはひどいことをお前さんにしている。だが、そうしなくてはならない。わしらとお前さんは、雇われた者、雇った者、ただそれだけの関係でしかないんだ。それ以上の関係など、いっさいなかった。……そういうことだ。」 意を決して語気を荒げた男だったが、最後は肩を落とし、まともに彼の顔を見ることもできないようだった。彼は受け取った皮袋を馬の背に振り分けた鞄に押し込むと、そのまま古びた鞍に飛び乗った、まだ痛みがとれぬはずの右足をまるでなにもないように軽々と翻して。そして彼は二度と振り向くことなく、馬を進め始めた。馬はまだ眠いのかゆっくりと歩み出したが、それに合わせるように丘の向こうに真っ白な朝日が顔を覗かせていく。 丘を越えて、白々とした道に沿って朝日が谷間の村に流れ込み、馬に乗った彼の影を長く伸ばした。影は主人と違って、まだ村に未練がありそうだったが、それも引きずられて丘へ向かう。彼が進む道は燃え盛る朝日へと続いている。だが彼にとってそれは希望の朝日ではない。太陽は片時も彼が犯した罪を忘れることのないように、絶えず糾弾し続ける過酷な監視者であり、拷問の執行者であった。しかし太陽が西の地平に沈んだとしても、夜もまた彼に安らぎを与えることはないだろう。彼は自分の前で死んでいったすべての人の顔を忘れることはない。いまも、これからも。 彼は馬のわき腹を蹴って、太陽に向かって全速力で走らせた。丘の向こうで輝く地獄の劫火に、彼は自ら飛び込んでいったのだ。男は身じろぎせずに、じっとその様子を見つめ続けていた。その背後で青年はようやく立ち上がったが、その目にはいままで宿したことのない光があったが、男は知る由もない。青年の影が長く伸びた先の村では、まだどの家も扉を閉めて静まり返っている。その閉ざされた扉の奥には決して癒されぬ悲しみが、薄暗がりの中によどんで、人々の心を冷たく包んでいた。***********************************************************誤字脱字修正。一部文章を変更。2005/1/29
Jan 26, 2005
人の夢を糸に紡ぎ永い物語を機に織る始まりははるか遠くにあり終わりはいまだ見えることなく時はまわる糸車始まりもなければ終わりもなし終わりもなし 小さな部屋にいる彼女は自ら糸車をまわして糸を紡ぎ、その糸で機を織る。糸車の脇に置かれた籠には色とりどりの綿が満たされ、彼女は色を混ぜることなく巧に綿から、7色の糸を紡ぎだす。その糸で機を織り始めると、まるで最初から決まっていたように様々な物語が表われる。彼女は糸を紡ぎ旗を織るだけ、自ら思いついたものを、模様として織り込んだことはない。ただ四角く切り取られた青い空に、白い鳥が飛ぶ姿だけは、彼女が直に目にした風景だ。そのモチーフは物語の始まりと終わりに必ず織り込まれる。それを彼女が意識しているのか、それはわからない。広げた翼を 光に羽ばたかせ飛び立つ青空 どこまでもつづく白いくもの峰をこえてもはるかに遠き夢の国 かごの中は常に綿が満たされ、どんなに糸を紡いでもいっこうになくならない。織り上げた布は一度もはさみを入れられたことはなく、美しい木彫りの箱にひとりでに流れるように入っていく。だが決して箱から溢れることはなかった。彼女はいつから自分が紡いで織っていたのかおぼえていないし、いつまで続けるのか考えたこともない。 糸がなくなれば紡ぎ、紡いだら織る。その繰り返し。彼女は休むこともしなければ、なにかを口にすることもない。壁の高いところに設えた窓には常に青空があり、時折鳥たちが飛んでいくのが見えるだけ。この窓に夜が訪れたことはなく、星も月も太陽すらも彼女を照らし出したことはない。ただ鳥の羽ばたく音だけが、彼女の心を驚かし、手を休めさせる。そのときだけ、彼女のおだやかな顔の口元に、かすかな微笑みが浮かぶ。 鳥を見た彼女は、その様子を旗に織り込み、物語の終わりと始まりを告げる。どんなに恐ろしい姿が自分の手で織られようと、どれほどの悲劇が生まれようと、彼女はおだやかな表情のまま。模様は模様。彼女には紡ぎ、織ることだけがすべてなのだ。もし彼女がこの扉もない部屋の唯一の開口部である窓から顔を出したなら、自分がとんでもない高みに達した塔の片隅の部屋にいることを知るだろう。見上げれば塔の上は雲に隠れ、見下ろせば塔の下が雲に覆われていることを知るだろう。ただ鳥だけが訪れる。人の夢を糸に紡ぎ永い物語を機に織る始まりははるか遠くにあり終わりはいまだ見えることなく時はまわる糸車始まりもなければ終わりもなし終わりもなし
Jan 25, 2005
終電を降りて家まで歩く静まる町影多い道コートに身をくるみ帽子を目深にかぶるもし誰かが窓から見ればのっそり歩く黒い人影に眉とひそめ息をひそめることだろうけれど夜歩く身からすれば静まった窓の奥ほど恐ろしいものはないまるで寝静まっているかのようにして内ではゆっくりと死がもたらされているかもしれない冷たい体が白い布に包まれて板張りの床に転がされているかもしれない息を潜めカーテンの影からじっと私を見つめる目は狂気染まっているかもしれない暗い窓を見上げる私の目は少しおびえて蒼い影を宿しているだろう
Jan 24, 2005
言葉を文字にしてはいけない頭の奥からはじけ出る言葉を心の奥から迸る言葉をたとえ自分以外に耳にする人がいなくても言葉にした途端忘れてしまってもかまわないもし文字にしたのならばそれは再び言葉として読み上げられなくてはならないでなければ文字はただの言葉の標本忘れされほこりをかぶったむなしいもの******************************************* もう、なんとも矛盾したものですが、人間時には言葉を口にして発することが必要です。言葉はコミュニケーションのためだけの道具ではないのです。時には独り言をいうことをためらってはならないのです。まぁ、電波系に間違われたり、うるさいと罵声を浴びたり、冷たい視線を受けたりすることもあるでしょう。 でも言葉を発しなくては。それは誰かのために、誰かに何かを伝えるためにではなく、自分のために、自分自身に伝えるために。 白い息とともに冬の夜空に消えていく言葉、大気の中に拡散して薄れ行く言葉。文字にしないことで、その言葉がいとおしく思えるかもしれません。そうでなくとも、少しは開放的な気分になるでしょう。 無理して怒鳴ったり、歌ったりする必要はないんです。囁きやつぶやきでも、断片的な意味をなさないものでもよいのです。 形式にこだわりすぎた言葉は、フレンチフライを包む英字新聞風の包み紙の言葉よりも無意味なものです。さぁ、どうぞ、恥ずかしがらすに、理屈などてんから忘れて、さぁ、言葉を発してください。
Jan 23, 2005
わけあって眠ることができず、朝日と同時に自室を出て出勤しなくてはならなくなった。自分の不注意が悪いのですが。休日働いちゃいかんですね。*****窓の外から……**********************あなたの唇を離れた小さな白い煙は白いクラゲになって霙交じりの夜空にふわりを浮かんだ僕はそれを見つめながらもうひとつとねだったいくつものクラゲが夜空に浮かんで僕が見とれている間にあなたはいなくなっta足元には短くなった吸殻ひとつ*********************もう誰もいません****NHKの『みんなのうた』、ネットで歌詞を公開してくれないでしょうか。小冊子を買えばよいのですけど、「あ、あの懐かしい、あの歌」ってありますからね。NHKアーカイブスの延長で、"みんなのうたアーカイブス"。『アップル パップル プリンセス』とか『モッキンバードヒル』とか『テトペッテンソン』なんて、歌詞おぼえられませんよ。『アスタルエゴ』もよかったなぁ。大人っぽい歌でした「真夜中にふたりぼっち、音のない夢を見た」なんてね。研ナオコさんはいまになってかっこいい人だと思えるようになりました。大人向きな方です。+++++つぶやき+++++++++++++++++++++++++++++なんでも有料です。たとえいい歌でもメッセージが込められた歌でも、お金がないといけません。なんですかね。どんなにいい曲もCDの値段見た瞬間にしらけたりします……。++++++++++++++++++++++なんか寂しいのです++おっと、まだ1時47分(2月24日)ですか。まだ朝まで遠いです。とりあえずここはここまで、あとは1月23日の日記で。
Jan 22, 2005
久振りに窓を開けて寝た。タオルケットと毛布に包まって、ホットカーペットの上にじかに横たわる。少しばかり開いた窓からは、冷たい夜気が湧き水のように部屋に流れ込み、横になった私の顔の上を流れていく。風が吹くというのではない。水が低いところへと流れるように、極自然に、冷たい夜の空気がさらさらと流れ込んでくる。目に見えるものではないが、いくつもの小さな渦を作りながら夜気は部屋に流れ込み、ホットカーペットに暖められた空気と交じり合わずに、対流の中に巻き込まれていく。ほうっと息を吐くと、枕元の小さな電気スタンドの光の中に白い蒸気が現われて散って消える。それからゆっくりと小さく開いた口から夜の空気を吸う。雪が降りそうな冷たい夜の空気は特別においしく、そしてなぜか切ない、郷愁のようなものさえ感じてしまう。生まれた季節の空気だからだろうか?サケが自分の生まれた川を探し当てるように、私は無意識のうちに冬の空気の中に、懐かしい時間をかぎ当てているのだろうか?遠くにあるヒマラヤスギの林を思い浮かべ、いつか見た公園の冬木立を包む夕闇を思い浮かべ、冬の夜のやさしさに感謝しながら目をつむり、毛布から突き出た顔と髪がしんしんと冷えて来るのを感じながら、やがてゆっくりと眠りについた。さらに冷え込んだ夜明けの空気に起こされるまで。冬の夜は今日も訪れる。僕は窓を開いて、夜を招き入れることだろう。
Jan 21, 2005
すりガラスの窓を通して、空の青が部屋の中に差し込む朝。僕はその光を背中で受けながら、ぼんやりと魚を思う。人差し指と親指で支えて、空にかざした鉛ガラスのキューブ。小さな魚の影がくるくると泳ぐ。すっとキューブを空からどかすと、魚の影は逃げ込むように、白い雲の向こう消えた。見送った僕は、空白を包んだキューブをそっと薬棚の小さな引き出しにしまう。その横にある引き出しからは、色のついた瑠璃の泡。赤、青、緑のみっつの玉を指にはさんで空に置く。赤い夕日、青い魚、緑の帆影。それぞれ映る不思議の風景。手をひと振りすれば玉は重なって、薄墨色の景色に変わる。息をふっと吹きかければ、瑠璃の泡はフワフワと青空に上がって消えていった。そうそう、フリーページ作って見ました。素っ気ない購入図書目録ですが……。
Jan 20, 2005
強いられて 歌う鶯 聞きぐるし首まわりがまたふえたのかと思いきや、世間が息苦しくなってきた。君が代の声量を事前指導せよ、などとまたも頓珍漢なことを都下の教育委員会が言い出した。そんなこと、といえば不敬になるが、学力低下とか、技術力の後退とか、将来の日本の国力の根幹に関わる一大事が出来しているというのに、声量を指導……。思うに、学力の話とか、科学離れをどうしようとか、そういった教育分野にはついていけないので、単純明快な部分に飛びついたのでしょうかな。そんな指導では国力は戻らないし、愛国心もわかないでしょう。いやな思い出だけが子供の心に残る。ゆがんだ心はゆがんだ心を作る。"お国のため"とか"陛下のため"などと、権力にすがるようではかえってお荷物。君が代と日の丸の印象を悪くするばかり。オリンピックで君が代を唱和し、日の丸に拍手する人も、学校では反発しかねなくなるような気がしますね。つまり理解されないから、場合によって歓迎されたり、無視されたりされてしまう。敬意をもたれるのは強制ではないと。国が敗れて学んだ世代がこの地を去っていくと、どうもいけませんな。国が嫌いなのではなくて、それを担いで声を荒げたり、ウデをむやみに振るうお人がいやですな。はァ、息苦しい、息苦しい。せっかくの非日常的日常が日常的日常に戻されてしまう……。
Jan 19, 2005
僕は知っているいつものように台所に立って家事にいそしむあなたが祈り続けていることを人は祈る時、形を作るけれどあなたは野菜を切り、鍋を煮込む手を休めようともしないそれでもあなたの祈りは深くそして強い……その思いは空をも越えて遠いかの地に届くだろう僕は祈るあなたの祈りが届くことをこうして窓辺に座ってしだいに蜜色に染まっていく空を見上げながら
Jan 18, 2005
何かを生み出すことは、それなりの責任を持つことになる。創ることもまた然り。その重圧から逃れるために始めた非日常的日常の日記もそこからぬけ出すことはなかった。あえてたいした校正もせずに、書き飛ばしてきたのだが、文字にして残すということがどれほど重いことか。匿名であっても書いたという事実は重荷になる。プレッシャーから離れるための策そのものが、もうひとつのプレッシャーになる。それが判らなかった。*****************************************************めまぐるしいほど思い浮んでは消え、混ざり合うでたらめな記憶と想像の霧の渦が、真実を隠そうとしている。それは自分自身の意思。真実を見通すとき迫られる選択は、いずれも厳しいものになる。行くや去るや、それはとりも直さず、生きるや死ぬやと同じこと。この生死に肉体の有無は一要素でしかない。肉体が滅びようとも、遠い未来へ貫かれる生。たとえ肉体があろうとも摩滅して果てる精神の死。どちらへ行くのか、選択を余儀なくされるプレッシャーは、存在すること自体の重圧であり、問いかけである。そのことを思えば、体の内部から引き裂かれそうな思いにかられ、そうならないのならと、激しく自分の体を自ら痛めつける。逃れようはない。選択を。存在してしまった以上、それから逃れる術はない。2005/1/19 誤字修正/文字の大きさ少々控えめに
Jan 17, 2005
どう伝えればよいのだろうか私の心に罪があることを他人の不幸を望み自分の幸せを望むことを他人の不幸に目をつむることを誰も平和を望まないというのならばいっそ世界が滅びてしまえばよいと思うことをときに犯罪者の心を自分の中に見出すことを批難されてもいたしかないだろうだが、もしこのことを受け止めずこの世のすべての罪を信じられぬことと言い切ってしまうのならそれは無知という大きな罪を抱えているにほかならない口に出さなくても、他人に伝えなくてもいい自分の中にある罪を自覚することは重要でありそれを現実のものとさせないことが肝要だ。************************************************深い海夜の底、烏貝の殻の影より謹んで
Jan 16, 2005
音は色や形や光に置き換えることができる、もしそれを常に気づかっているとたちまち頭の中に音と色と形と光がが氾濫して、私はすぐに壊れてしまうだろう。どの音がどの色や光、形に結びつきまた置き換わるかは人それぞれ、また状況によって異なるだろう。同じ音を耳にしてもそれが、必ず同じ結果をもたらすとは限らない*****************************************左の親指の付け根が痛むのと気が昂ぶり過ぎたので、すいませんがここまでこの話はいずれまた今度。みんさんも音が色や光、形を思い起こさせることはないですか、瞼の裏側、そこから耳の上あたりを通って即頭部の闇の奥に焦点を結ぶそこに幻視のスクリーンがある。もしくは逆に通じて瞼の裏に幻視が広がることもあるのです。眠くって、ちょっと掻いてることが妙ですな右手もつかれたのでお休みなさい。
Jan 15, 2005
重く低く強くゆっくりと力が抜かれやがてその奥から芯の強い音が導かれて心をゆさぶって背後へ消えていく・・・・・・幾本ものふるえる線が私を縛り伝えてくる振動としての音を・・・音に込められた思いと言葉を判じかね私はふるわされるままに悶えるしかないなにが言いたいなにを伝えたい私では無理ではないのか・・逃れるすべもなくしかし共鳴することもできず私はふるえたまますでに正確な振幅を失ったかもしれない絶え間ない振動に責めさいなまれ続ける・
Jan 14, 2005
思い出さなくてはならないことがあるこうしてこの世界のすべてが夕焼けに焼かれ蜜色に染め上げられていくときには背後から夕闇の迫る空に幾枚もの薄いガラスが連続して並びその1枚1枚に一瞬が焼き付けられている幻のような像をわずかに輝かせ私の目に見えるようにするのが夕日の役目私がどこからきてどこへ行くのか唯一知ることのできる道筋だが沈み行く夕日に向かう過去ほど明るくやがて来る夜闇に向かう未来は暗い風の中に混じるかすかな幻の響きにガラスは共鳴して私に時の片鱗を見せる私はその中に自分が記憶する以前の記憶を見る私の中でつながっている気の遠くなるほどの歳月その間に起きたことども蜜色の歓喜の中に忍び寄る闇の悲嘆弦の響きは私の心をも揺さぶりいまは問われることのない罪が私を引き裂こうとする暖かなまなざしが西の海に消えるとき私を責める暗い口の中に私はのみこまれるわずかに輝く月と星のみがいままで生きてこれた道筋の痕跡を見せる私は瞬く光と照らし出す光の元再び開かれる暖かなまなざしを追って東へ歩みだす絶え間なく吹く黒い風の中に弦の響きは止まぬ蜜色の輝きの中に写された過去は夕日のぬくもりとは相容れぬ思い出さなくてはならない罪夜を抜けて見る朝日の中にこそまだ罪を犯さずに輝く未来を見ることだろう
Jan 13, 2005
スキトオッタ/アオイフユゾラカラ/カゼニノッテキコエル/カスカナクチブエ/ヨウキナ/ミナミノオンガクヲカナデテイルマルデ/ズジョウヲ/オオキナリョカクキガトンデイクヨウナ/ソンナいめーじガ/ココロノナカヲヨコギル/ワタシガ/イルベキバショハ/ココジャナイハルカウミヲコエタ/アオイソラノシタカオモシラナイケレド/ナツカシイ/ハラカラガシロイハヲノゾカセテ/エガオデ/カンゲイシテクレソウナキガスル/クチブエハ/イマニモキエソウナ/タキビノケムリニニテ/カスカナカゼニ/ナガサレ/トオクニチカクニユラメキ/ソシテ/フットキエテシマッタ/ワタシハ/マタヒトリ/カレコダチノミチヲ/アルキダシタ/
Jan 12, 2005
逃げるもののとなりに、追われるものふたりとも駆け足で道を行く。逃げるものは追われるものに言った。「あなた、なにに追われてるんです?」「いえ、わからしまへんのやけど、おわれとんですわ」「もしかした、なにも追ってきてないんじゃないですか」追われるものは、ちょっと考えるふうだったが、足を止めることなく逆に逃げるものに問い返した。「あなたさんは、なにからにげとんの?」「いや、どうも逃げないといけないようですんで」「ほんまは、逃げなんでもええんとちゃうのん?」逃げるものは、ちょっと考えるふうだったが、結局逃げるものも追われるものも足を止めることはなかった。そのままふたりは別れ道にさしかかった。「ほなわし、ひだりいくさかいにな。うまいことにげぇや!」「こっちは右です。ではお互いさま!」ふたりは別々の道を走っていった。しばらくして右に行った逃げるものの声がした。「しまった、先回りじゃねぇか!」なにかが割れる大きな音が聞こえて、絶叫とともにやんだ。「なんや、あかんかったんか。成仏しぃや」追われるものは、律儀に手を合わしてナムアミダブツと唱えた。で、顔を上げると、正面から誰かが駆けてくる。それをみた追われるものは叫んだ。「あかん、前からきとったんやないか!」だが足はとまらない、駆けてきた相手と正面衝突して、追われるものは驚きと痛さで叫んで倒れた。あたりには鏡の破片が飛び散っていた。「自分からはよう逃げられんし、追いつかれないっちゅうこととはないな。。」追われるものは久しからず、逃げるものもさなり。相手が己であればなおのこと。
Jan 11, 2005
蝶の羽を細かく砕いて作った万華鏡繰り返される三角形の中でむしり取られた色とりどりの羽がつながり はなれ ひらいて とじる無限のつらなり夢幻のパターン飽きもせず見つめていると持ち主が返してと言った僕は素直に万華鏡を目から離して持ち主に渡すと彼女は僕の背中からむしり取った羽を器用に指先で砕いて青く輝く一片だけ筒に入れて覗き込んだ僕は万華鏡を覗く彼女を後ろから抱き寄せると耳元で囁くふりをして長い吻を彼女の耳の奥に滑りこませた羽のない蝶など、気味の悪い虫でしかない僕はグロテスクな姿のまま部屋を出た手には万華鏡を持って
Jan 10, 2005
私は夢の中で女だった濃い褐色の肌を持つ若い女だ動きにくい更紗に身を包み夜の闇の中、急な斜面に刻まれた階段を駆け上がって行ったそれは住宅地の真ん中に唐突にそそり立つ巨大な岩でまるで屏風のように薄く人がふたりすれ違えるがやっと両側には鎖が頂上から下まで通っていたがなぜか私の膝よりも低くて返って危険におもた私が駆け上がる岩の頂上には紫色の8面体の水晶が回転しながら淡い光を放っていた私はそれを手にしなくてはならない、私のあと追いかけてくる黒い人影よりも先に明かりといえば水晶の光のみおぼつかない足元更紗が足にまとわりつくそれでも水晶に行き着かないと望みは断たれる私がそれこそ必死の思いで水晶のすぐ傍まできたときついに恐れていたようにつまづいて転んでしまった絶望のうちに見上げた夜空ではでこぼこで磨きこまれてぎらぎら輝く鉛の月が回転しながら私の視野いっぱいに広がっていったそして私は目が覚めた私は現実の世界で男だったしかもまだ制服を着て学校に通う少年だった
Jan 9, 2005
雲ひとつない青い空指でなぞれば指の腹が青く染まりそうな空見上げれば濃く見回せば薄い丸で青い巨大なレンズを嵌め込んだよう冬の陽射しが焦点を結ぶところにいったいなにがあるのだろう暖かな小春日和それともすべての音が遮断された白い時間冬の太陽はレンズの緩やかな曲面に沿って西の空へ滑り落ちていく
Jan 8, 2005
白い庭の一隅に澄んだ池がありました。いつも青く透きとおり、下の下までよく見えました。時には真っ白く濁ったり渦を巻いたりするのですが、たいがいは今日みたいに澄み切っていたのです。ひとりの女の子が、白い衣のすそをひらひらさせながら池の端にやってきました。後ろにはたいそう年老いたおじいさんがおります。きっと女の子のおじいさんなのでしょう。「ねぇ、池のそこににめるのはなに?」「それは昔々にあった街が、池のそこに沈んでしまったものなんだよ」女の子の質問に、おじいさんはゆっくりと答えます。女の子は池の水が澄んでいるときは、いつも同じ質問をするのですが、おじいさんもいつもにこにこしながら答えるのです。女の子が指をさすところには、波ひとつない池の底に、小さなお家の屋根がたくさんたくさん並んでいました。じっとみていると、目が回ってしまいそうです。おじいさんは、それが古い古い町で、雨が降り続けて沈んでしまったというのです。この池はとっても深くて、だからこんなに小さく見えるんだともいいます。だからひとりで池にきてはいけないのだと、女の子にいいきかせていたのです。でも本当のことをおじいさんは言ってませんでした。うそをつくのはよくないことですが、女の子のことを思って、わざと本当のことを言わなかったのです。本当は池には水はありません。女の子がのぞいていたのは、大きな雲にあいた穴なのでした。女の子は雲の穴から下を見下ろしていたので、わたしたちが住んでいるまちを、小さな街だと思っていたのです。ですから、もし夜にここにくれば、池の底に沈んだ街が、なぜかきらきらと光っているのにきがついたことでしょう。でもおじいさんは夜に女の子を外へ出すようなことはしませんでした。では女の子とおじいさんは誰なのでしょう? 高い高い空の上、雲の上に住んでいるなんて、神様でしょうか、仙人でしょうか。いいえ、そんなことはないのです。だって女の子はあら、今日はもう時間になってしまいました。この子の話はまたこんど。でも雲を見上げても女の子の顔は見えませんよ。だって、ここは地下なんですから。絵に描いた雲に、上なんてありません。このお話は、詩人の夢のお話なんです。だから雲が本当にあるとか、その上に人が住んでいるなんて書いたのね。でも、とっても先生の好きな話だから明日続きを読むわね。さ、みなさんお昼寝の時間ですよ。めがねをかけて青いライトの下に寝転がってください……。
Jan 7, 2005
塗り込められる灰色の中に希望も夢もなにもかも塗り込められているのは自分塗り込めているのも自分奪われたのではない手放したのだあきらめたのだこれまで笑顔はすべて灰となりこれからの笑顔は仮面疲れた疲れてしまった*******************************灰色は感染する
Jan 6, 2005
「もういいの、ここで」彼女は足を止めた。僕も立ち止まって握った彼女の手を離した。見下ろすと表情のない彼女の横顔があった。連れ出してくれと頼まれたわけじゃない。ただ「楽園に行きたい」という彼女の言葉を聞いて、僕は彼女の手を引いてここまで来た。街からはとうに離れて、周囲は赤茶けた荒野が広がっている。けど、あそこよりはいい。砂漠の楽園なんて、とんでもない。バラを咲かせるには、それなりの手入れと肥料が必要だ。けれど花に群れる虫たちは、そんなことを知りはしない。僕はもう他人の花の手入れには嫌気が差していたし、彼女をこのまま肥料にさせておくわけには行かなかった。「ここで、なにもない。なんにも」なにもない、そして僕も彼女もなにも持っていなかった。最初からどこかへ行けるなんて思ってもいなかった。ただ街から離れたかった。どうせ肥料になるなら、本当に荒野のバラを咲かせるほうがいいと思っていた。彼女の横顔を見ながら、僕は彼女を巻き込んでしまったのかと後悔した。けれど彼女は表情を少しも変えず、巨大な岩山のエッジからゆっくりと顔を出し始めた朝日を見つめていた。太陽のほうから流れてくる暖かな微風に、色の抜けた彼女の髪が揺れている。茜色の太陽の中で、彼女の顔も暖かな色に輝いているように見えるけれど、本当はつやのない青白い肌をしているのを知っている。彼女はなにもかも奪われ吸い出され……。「でも、こっちのほうが」彼女は僕のほうを振り返ることもなく、ひとり道から離れて歩き始める。僕は引き戻す気もなく、揺れる彼女の髪を見つめながらあとについた。髪のつやもない。あの街は吸い上げる。なにもかも吸い上げる。蜜は自然に湧き出すもんじゃないんだ。また怒りがこみあげて、僕らが歩いてきた荒野の向こうをにらんだ。今日も虫が蜜にあふれた花に群がっていることだろう。おぼれてしまえ。「そうね、ここ」彼女は岩山の影になった比較的滑らかな砂地が広がる谷に来た。かつてはここにも豊かな水が流れ、緑を作り、本物の花が咲いていたのだろう。でもいまは涸れている。彼女は立ち止まると、足元の赤い砂を両手ですくった。それを渇いた青らにささげるようにして、自分の前に突き出した。するとどうしたことだろう、1頭の蝶が、小さな白い蝶がどこからともなく、ふわふわと飛んできて、彼女の両手にすくわれた砂にとまった。まるでそれを合図にしたように、砂の真ん中の色が変わって、みるみる水があふれてきた。水は次第に量を増して、彼女の手から砂を押し流した。彼女はそれでも微動だにせず、表情ひとつも変えなかった。自分の目の前に起きていることをはなから承知しているのか、それとも気づいていないのか。僕は立ちすくんでいた。とても彼女に声をかけることなんてできない。蝶は水を避けて舞い上がると、僕の頭上を越えて空の中に消えてしまった。「ここが楽園、あなたの」彼女が初めて僕に呼びかけた。僕は彼女の正面にまわりこんだ。少女の表情は変わらなかったが、ふたつの瞳は初めて私をまっすぐに見つめている。流れ出した水は僕らの足元にたまり、ゆっくりと広がっていく。この荒野で、すべての水を吸い込んでしまう荒野で、いま水がたまり始めている。砂と水の混じったにおいが、水だけのさわやかなにおいに代わり、風が変わった。僕はもう足首ほ深さまで溜まった水にひざを落として、彼女の前に首を垂れた。裾の破れた彼女のワンピースが揺れている。やせた足はますます青白く、見上げた彼女の瞳に光はない。僕は初めて涙を流して、水とひとつになった。願わくばここが楽園となりますように。そして人間の目には決してふれないように。僕は揺れて見える青空を見上げながらそう祈った。******************************************途中で力尽きました。書き込みが足りません。水があふれてからの部分をもっと。
Jan 5, 2005
あぁ、あそこにあるのは悲しみでしょうかそれとも憎しみでしょうか秘められた怒りかもしれません近づくことすら本当はとても危険なことかもしれませんけれど、それ自体はひどく惨めで寂しそうで、つい声をかけたくなってしまうものですできれば両腕で抱きしめてあげたいとも思えるのですそうすれば悲嘆も憎悪も憤怒も消えてしまうように思えるかもしれませんけれども、もしあなたが抱きしめたなら激しい痛みがあなたの心臓を貫いてしまうでしょうそれでもかまわないというのならあるいは、あなたが思うようなハッピーエンドが待っているかもしれませんでも、もしかしたら心臓を貫かれたあなた自身があのように新しい犠牲者を待ち続け暗い心の牢獄につながれたままに永い時を過ごすことになるかもしれませんけれどもあれはあのようにとても悲惨で慰めずにいられぬ姿をしていますどうするかはどうぞ、あなたがお決めください
Jan 4, 2005
青の間に消える船影流れる潮風は焼けて白いひとつの水平線に大洋と月がかかる波間にたゆたう紙ふぶきいまは見えぬ船に続く五色の道戻らない軌跡振り返る間に10年の思い出埠頭のうしろに黒い山並み私に翼はないのだから烏のように海を越えることはできない茜に間ににじむ島影流れる潮流は速くて黒い私に翼はないのだから烏のように海を越えるすべはない去った船を追うこともできない
Jan 3, 2005
新年を迎えたいつもの店。客は少なくマスターの口数も少なかった。せっかくカウンターの席からでも見やすいように飾られた、笑った鬼の面もむなしい。マスター、来年の話を景気よくしてもらおうって魂胆だったけれど、あの大雪じゃ客は来ないよ。 店の片隅にはアップライトのピアノが置かれているけれど、毎日弾かれているってわけじゃない。たまに水色のドレスを着た若い女性が、速いテンポの曲を弾いていたのを覚えている。といったって去年に3度。歳は20前後。音楽学校に通う学生のバイトなのかと思っていたが、マスターもことさら教えてくれるでもなく、ただ曲のイメージだけが残っている。長いのだ、曲が。耳でおぼえていられない。音楽は聞くけどね。だから曲の断片とイメージが残っている。それは透明感とスピードがあり、僕は当然のごとく自分が魚になって澄んだ水の中を泳ぐのをイメージした。時には流れの速い渓流を、時には潮が道しるべにになる大洋のど真ん中を、小さな小川や、時の流れを象徴するかのような大河もイメージされた。そのたびに私は違う魚になっていた。 「もうこないのかな」と、ピアノを見つめながらマスターにたずねた。初めてのことだ、彼女のことを話題にするのは。もっと早くきいときゃよかった。 するとマスターがカウンターから、そっと取り出したのは水色の表紙のスコア。そうそう、彼女はいつもこれを広げて30分もある曲を引き続けていた。さっそくひろげてみたが、表紙よりも薄い色の紙の上には音符のない五線譜だけが並んでいた。最近お気に入りの右の眉をひょいと合える表情でマスターを見上げると、彼は水色の液体がなみなみ注がれた、細身の長いグラスを差し出したのだ。受け取ろうと手を伸ばすと、首を振って楽譜をカウンターの上に置いくれといった。 マスターのいうとおり、手にしていた五線譜だけのスコアをひろげたまま置いた。するとマスターはグラスを傾けて、ページ綴じ目に中味を注いだ。驚いて声を上げたの、いきなりグラスを傾けられたからじゃない。注がれた液体は、たいしてしぶきを上げることなくスコアの上に濃い青いしみになってひろがっていった。するとどうだ。五線譜の上に次々と音符が浮き上がった。しかもそれは見知った音符じゃない。ひとつひとつが小さな魚の魚影になっていたのだ。魚たちは五線譜に重なることなく並び、体を曲げてそらして異なる音符を表現していた。どのページを開いても、それはしっとりと濡れ、そして魚たちが躍っていた。これが彼女の楽譜。あのイメージは本当だった……。 「どこいったの! 彼女はまた来るの?」 その問いにマスターは顔を横に振って、スコアをカウンターの中に戻した。そしてさっきと同じグラスを目の前に置いた。中には水色の液体が注がれていた。マスターの新しいカクテルは、さわやかでほんのり甘く、どこかすっぱくて、かすかに塩みが効いていた。それが彼女の正体をほのめかしているのか、考えているうちにまた更新が遅くなってしまいそうだ。
Jan 2, 2005
大地に轟け百万のドラム!天を揺すれ百万のゴング!果てなく続く過去と未来を貫く百万のホイッスルよ!一瞬よりも早い時間の連続に並ぶ百万のベルよ!私が私でなくあなたがあなたでなくみんながみんなでなくすべてがひとつになりうねって連なる音色に彩られ興奮に己が体をゆする連山となって夕暮れと朝焼けの間を進むしっかりとした街の建物が音の振幅にゆすぶられ輪郭を失い動く連山の中に取り込まれて見る見る新たな色と音を与えられて生まれ変わる大地に湧け数千万の歓声!天空を割れ数千万の拍手!生命が生まれ来る音の弾ける数千万の爆竹よ!時空を踏み砕きひとつに踏み固める数千万の足踏み!彼我の岸もいまはなく生も死もここではすべてが音に激しく揺さぶられ溶け合ってひとつになる夜の闇までがかつてない色彩を帯び瞬く星々が次々と降り注ぎ月まで溶け出して銀色の光の流れになって巨大な音と色の連山を彩っていく伝えられた歴史と見知らぬ未来が音の振幅にゆすぶられ輪郭を失い震える連山の中に取り込まれて見る見る新たな色と音を与えられて生まれ変わる鼓動が鼓動に触れて新しい鼓動を生む時が時に触れて新しい時を生む時計の針が一瞬を刻みすべてが爆発して混ざり合い一瞬前とは違う新しい世界になって始まるあけましておめでとう!山は新たな1年が来るまで日常の音の中に消えていく私が私になりあなたがあなたになりそして新年を祝ってもう一度ひとつになる
Jan 1, 2005
全31件 (31件中 1-31件目)
1


