蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

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2005/08/19
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カテゴリ: 韓流ドラマ&映画
あれからソンジェは恭一に、彼女を脅すことはやめて欲しいと言ったが、恭一は意に介さなかった。

恭一の友人から連絡が入ったのだ。ソンジェは、恭一の友人から聞いた場所に出向いた。
『ソンウ、元気でいてくれたんだね?父さんが倒れたんだ。お前の愛した女性も連れて、一緒にソウルに帰ろう。心配要らない。お前の恋を僕は応援してやるから。そう決めたから。だって僕もお前と同じように、日本人の女性に恋してしまったんだ・・・。』
そう心の中で呟きながら、恭一にもらったメモの住所にたどり着いた。

かなり古びたアパートだった。表札はない。人の気配が全く感じられない。
「ソンウ?いるんだろ?」
ドアを何回もノックするが、返答はない。
「ちょっと」

「そこに住んでいた人、引っ越したわよ」
「引っ越した?いつですか?どこへ行ったんですか?」
ソンジェは矢継ぎ早に質問した。
女性は少し迷惑そうな表情になり、
「さあ、知らないけど」
とだけ言って、行ってしまった。
ソンジェは胸騒ぎがした。急いでメモに書かれているソンウの働いているという会社へ向かう。
その会社でも同じだった。ソンウはすでに辞めていた。
ソンジェはすっかり気落ちし、足どりも重く恭一の待つクレープ屋のワゴン車に戻ってきた。どさっとイスに座り込む。
「おう、ソンジェ。どうだった?ソンウはいたか?」
「いいえ、いませんでした。すでに会社もアパートも引き払っていたあとでした」



「そうか・・・。どっちみち間に合わなかったんだ。すぐソウルへ電話しろ」
「え?間に合わないって?」
驚いて顔を上げたソンジェに、恭一は青ざめた顔で告げた。
「お前の親父さんな、さっき亡くなったんだ。ソウルから電話があった」

ソンジェは何が起こったのか、しばらくわからなかった。


ソンジェはフラフラと歩き出した。
気がつくと、あの公園のベンチに座っている。

『僕はまだ父さんに親孝行をしていないんだ。ソンウを探し出して、ソウルに連れて帰ったら、父さんはどんなに喜んだろう。いや父さんが亡くなる時、僕は父さんの側についていてあげることさえできなかった。なんて親不孝な息子なんだろう』
優しかった父の面影が、急にソンジェの脳裏に浮かんできた。
ソンジェの目に涙があふれてきた。流れる涙を拭こうともせず、ソンジェはただ流れるままにしていた。
ソンジェの心を反映したのか、空までが泣き出しそうだ。
ソンジェは空を見上げた。
『父さん、ごめんよ。ソンウ、ごめんよ』

「あの・・・こんにちは・・・」
戸惑いの感じられる声を聞き、ソンジェは声のする方を向いた。
あの女性が困惑した表情で立っている。

『見られた!』
ソンジェはあわてて立ち上がった。
無防備に泣いている姿を、恋する相手に見られ、ソンジェは恥かしさで一杯になった。
彼女の誤解を解くことも忘れて、あわててその場から立ち去った。

ガマンしきれなくなったように、空からも雨が落ちてくる。
ソンジェは濡れながら、あてもなく歩いた。心が痛くて、じっとしていられない。
さんざん歩いて、気がつくと、彼女と出会ったコンビニ店の前にいた。
雨を避けて軒下に入る。
彼女に初めて自分の存在を知ってもらった、あの雨の日。あの日はうれしくて、雨に濡れても、全く気にならなかった。
しかし今日は違う。雨の冷たさが、体の芯まで染みる。
ソンジェは震えながら、立っていた。

ふと人の気配がして、ソンジェは振り返った。
ソンジェの後ろに、あの女性が立っていた。心配そうな表情で、ソンジェに傘を差しかけてくれていた。
ソンジェは驚き、口を開くことが出来なかった。
「あの私、この間は、ついカッとなっちゃって・・・。ごめんなさい。あなたの口から何も聞いていないのに。」
そう言うと、ソンジェの濡れた髪をハンカチで拭いてくれた。

甘い花の香りがする。ソンジェはますます口が利けなくなり、ただ切ない瞳を彼女に向けるだけだった。






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最終更新日  2005/08/20 12:02:06 AM
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