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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/68/ 源義経黄金伝説■第69回鬼一方眼との死闘のため、頭や顔は朱に染まり、足取りもおぼつかぬ文覚は、大江広元屋敷の元を訪れている。 源義経黄金伝説■第69回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1199年(建久10年)鎌倉 文覚は、対決の後、しばらくして、広元屋敷の元を訪れている。 文覚の頭や顔は朱に染まっている。足取りもおぼつかぬ。鬼一方眼の打撃の後がゆっくりと文覚の体をむしばんでいる。鬼一の八角棒には、やはり丹毒が塗られていた。 「大江広元殿、鬼一方眼はワシがあやめた、これで、あやつらの王国、勢いがなくなろう」文覚は、大江に満足げに言った。「さようでございますか。それは重畳。しかしながら、いかがなされた。その傷は」「我のことなぞ、どうでもよい。よいか、大江広元、義行を逃がせ」「源義行を…、何を言う。気が狂られたか」 「よいか、大江広元。私、文覚は、元は武士である。鬼一との約束は守らねばならぬ」 文覚は息も絶え絶えに言うのである。 「皆の者、出て参れ。文覚殿、乱心ぞ」 大江広元は、屋敷の郎党を呼び寄せる。「くそっ、広元、貴様」 手負いの熊のように文覚は、広元の手の者と打ち合うが、多勢に無勢。おまけにひん死の状態の文覚は打ち取られる。「残念、無念。清盛、西行、お前らが元へ行くぞ」とらえられ、牢につれていかれる文覚が、いまわの際に叫んだ。◎ 文覚は,今は亡き好敵手西行の最期を、そして西行から聞いたある話を思い起こしていた。 ◎待賢門院璋子けんれいもんいんたまこは、西行の手を強く握りしめている。待賢門院璋子は後白河法皇の母君である。その臨終の席に西行が呼び寄せられていた。 「二人の皇子をお守り下され。西行殿。私の最後の願いでございます」「わかりました、璋子様、この西行の命に変えても」 西行は宮廷愛の達人でもあった。この時期日本は宮廷愛の時期である。 待賢門院璋子の二人の子供とは、崇徳上皇と後白河上皇である。 璋子は鳥羽天皇の間に後白河法皇を生み、鳥羽上皇の祖父である白河法王の間に崇徳上皇をうんだ。白河法皇は璋子にとり愛人であり、義理父であった。いわゆる源平の争いは、璋子を中心にした兄弟けんかから起こった。 西行は璋子のために終生、2人の御子を守り事を誓ったのだ。西行は璋子のために、京都朝廷のしくみを守りために、その生涯を捧げた。西行と文覚は、若き頃、恋いにそまりし王家を守る2人の騎士であった。 それでは、文覚は、日本の何を守ったのか。自問している。 文覚は若き折り、崇徳上皇の騎士であった。上西院の北面の武士である。しかし、文覚は保元の乱の折り逃げ出している。その折りの事を西行はよく知っているのだ、言葉で攻めていたのだ。 西行は、いまはのきはに、叫んでいた言葉を思い起こす。「文覚殿よ、天下は源氏におちたと、、思わぬほうがよい」「何だと」「頼朝殿の義父、北条、平時政殿の手におちるかもしれんな」西行の死に臨んでの予言であった。 いにしえ、坂東の新皇と自ら名乗った、平将門まさかどの乱平定に力があったのは、藤原秀郷と平員盛である。藤原秀郷の子孫は、奥州藤原氏、西行の家などである。平員盛の子孫が、伊勢平氏と北条氏であった。 (続く作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.29
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/67/ 源義経黄金伝説■第68回★1199年(建久10年)鎌倉大倉山に、伊豆からの春嵐がふきすさぶ山頂に鬼が二匹、己が思いに準じて闘いを舞い踊る。 源義経黄金伝説■第68回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube 第9章 1198年(建久9年) 鎌倉■5 1199年(建久10年)鎌倉大倉山 鎌倉の街の背後にそびえる大倉山山腹に、びょうと風がふいている。 鎌倉の周り北東西三方に山山がとりまき、南は海に開いている。鎌倉は自然の要塞であった。大倉山山頂から頼朝が作りあがた要塞都市の姿がよく見える。文覚はだれにも手出しできぬように、この決闘場を選んでいた。 伊豆からの春嵐がふきすさぶ山頂に鬼が二匹。 「鬼一方眼、今度が最後の勝負ぞ。いずれにしろ、お主らが丹毒で、頼朝様、もっても7日だ。お主らを倒しておかねばのう。この鎌倉幕府が持たぬわい」鬼一方眼も構えている。 「おおよ、その勝負、受けたぞ、文覚。俺も京都一条の鬼一法眼。あとくされない勝負だ。これで引き下がったとあっては、俺の名折れよ」 二人の体に、伊豆からくる少し早い春風が、吹き巻いている。 人の気配のない大蔵山の山頂に、二人とも八角棒を手にして微動だにしない。 「それに鬼一、安心せよ。儂は西行殿と9年前に約束しておる。勝っても負けても、源義行殿の命は安全よ」「それを聞いて安心した。お主も闇法師の端くれであったか。約束は守るのか」「当たり前よ。ましてや、西行殿の今際の際の言葉だ」「いざや、まいる」 とどちらからともなく打ちかかっている。激しい打撃音が、大倉山全体に響く。山に住む野生の動物たちが勢いで逃げ出してくる。 「よいか、鬼一。お前たち、山の民どもの住む所など、もうこの世には存在せぬ」激する文覚が声高に叫んでいた。「頼朝ばらに、我々の王国など支配できるものか。いあや、支配させるものか」鬼一方眼が、鋭い文覚の八角棒の一檄を受けて叫ぶ。 鬼一方眼の言う王国とは、京都大和王朝が成立しても、なお連綿と続いている、前の王朝、葛城王朝の流れを汲む『山の民の王国』である。歴代の京都朝廷も彼らの見えざる王国を認め、協力者としていたのだ。それを文覚は無くなると言うのだ。 「よいか、頼朝様が、征夷大将軍となり、十年前に奥州平泉王国を滅ぼした今、我々武家の世の中よ。日本は頼朝殿によって統一された。支配するのは鎌倉将軍。また山々、山山林のすみずみまで、鎌倉から守護、地頭をつかわし、網の目のように日本全土に支配を巡らせる。お前たち、山伏を始め、山の民の住む所なぞないわ。義経が逃げた場所などもうなくなる」 「くそっ、ゆうな。文覚、それであるからこそ、お主ら倒さねばならぬ。お主は鎌倉を代表する攻撃勢力。我々自由民のためにな」「無駄よ。京都朝廷を頼朝殿がおさえれば、『山の民の王国』など認めるものか」「平清盛殿、西行法師殿、後白河法皇様。皆、我らが味方であったぞ」「それも終わりぞ。義経殿も、もう日本には帰ってこれぬぞ」 文覚の言葉に鬼一はたじろく、(なぜそれを知っている)「貴様、なぜ、それを」 「ふふっ、金きんに逃れるところを、儂が、のがしてやったのだ。鞍馬寺の宝、征夷代将軍、坂上田村麿呂公の刀と引き換えにな」 「くそ、これが最後の一撃…」鬼一は、渾身の力を込めて、文覚に打ちかかっていた。 八角棒はぱしりと折れ、鬼一の棒が、文覚の頭蓋を、天頂を打ちすえている。 一瞬、時の流れがとまる。二人の体は止まっている。風も一瞬凪いだ。 急にゆるやかな太陽の光が、雲間からふたりの体を照らした。 折れた八角棒の先を、文覚は鬼一の胸板を貫いている。 相打ちである。 血のにおいがただよっている。鬼一の方が致命傷となる。足下に体液の流れが、大地をすこしづつ、赤黒く染めていく。 「くっつ文覚、どうやら、我々の時代は終わったのう」 苦しげに、鬼一は呻く。血が口からしたたり落ちてくる。 しばらくして文覚が告げる。 「鬼一、よい勝負だった。それに約束だけは守ってやろう」「約束だと」血みどろの鬼一方眼の疑問の顔が、文覚に向いた。 「源義行殿を、鎌倉から逃がすことじゃ」相対する文覚の顔と体も、すでに血にまみれている。 「それは有り難い、文覚殿。その事、恩にきる。ぐう」 ひとこと発し、鬼一の体がゆっくりと大地に沈んでいく。 血の気が失せていく鬼一の体に、文覚は両手で拝む。 「鬼一方眼殿のお仲間の方々、後はお願い申す」 まわりの気配に対し、文覚は周りを見渡し大音声でさけぶ。 折れた八角棒を杖として、頭から血を流しながら、文覚は鬼一の体を残しそこを去って行く。文覚は山道で立ち止まり、振り向く。目には血が流れ込んでいる。 「鬼一方眼殿、さらばだ」 文覚の姿が消えた後、山伏の群れ、結縁衆や、印字打ちの群が現れていた。 数人が鬼一方眼の遺骸を取り囲む。 「後を追うか」一人が叫ぶ。 「無駄だ、あのおとこには」 「刃の鬼聖」文覚の名前は、紀州にも響いている。文覚は日本各地の山伏の生地で荒行をくり開けしていた。 「頭の最後の命令にしたがおう」「それより、我々はな、、西行法師殿の伝説を、この世に広めねばなるまいそれが、われら、後に残りしものが役目ぞ」 鬼一方眼の義理の弟、淡海が、強くいう。目じりが光っていた。 (続く20131026改訂 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/#源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.29
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/66/ 源義経黄金伝説■第67回★1199年(建久10年)鎌倉 頼朝への襲撃を大江広元、文覚が知り、各自の思惑で激論となる。 源義経黄金伝説■第67回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所★http://www.youtube.com/user/yamadakikaku2009 ■ 1199年(建久10年)鎌倉 頼朝近辺を護衛する武士の一人が、鎌倉政庁にいる大江広元に告げた。「頼朝様が、傷つき,かつぎこまれました」「何、よし、落馬されてけがをおわれたとせよ。この事、他の者に他言無用としろ」 「怪しげなる童…だと」大江広元は、体をこわばらせた。「大殿様の馬の側にうろついておりましたところ、捕まえてございます」 「よし、そやつの顔を見てみよう。私の前に引きだせい」 やがて、広元の前に、見目麗しい少年が引き出されていた。その少年の顔を一目見た一瞬、汗が吹き出てきた。広元は、その少年が誰であるかを、しっていた。 一三年前、1186年、鎌倉稲村が崎で、自分がすり替えて助けた童子。静と義経の子供。 この少年が取り調べた際、自分の身元をしゃべり出すようなことがあれば、類は自分にも及ぼう。この少年の処理、素早くせねばなるまい。広元の額にはうっすら汗が浮かんでくる。 「この罪人、牢獄へ引き立てい」 広元は、その後、磯禅師を別室に密かに呼んでいる。「お前の孫が、生きておったな」 雑色たちを所払いにし、開口一番に広元は言った。 「私の孫ですと。何をおっしゃいます」 禅師は慌て、そして顔色を変えている。 まさか頼朝の暗殺者が、あの静の子供だとは。禅師には思いもよらぬ展開だった。 京都からもそのようなことは聞いていなかった。 「まさか、何かの間違いでございましょう」 広元は、この暗殺者が義経と静の子供であるとわかると、自らの立場が悪くなることに無論気がついていた。お互いの眼が合う。おおよそ、広元と禅尼の利益は合致した。これは一つ、あの童を密かに殺してしまうか。 そう考えている時、巨大な動物が、奥座敷の戸板を打ち破り、二人の前に現れていた。「うわっつ」一瞬二人は何が起こったかわからない。 「大殿様を殺めようとしたのは、お主らか!。え、大江広元、禅師、お主らが企みよったか」憤怒の様相の文覚であった。もはや、全身が、怒りの塊と化している。 「よいか、広元。覚えておけ。お主ら、貧乏貴族が支配する日本のために、頼朝殿に俺が命を掛けた訳ではないわ。この日の本を、すばらしい仏教王国にするため、民が住みやすい国にするために、この文覚は頼朝殿に掛けたのだ」 憤怒の不動明王像のように見える文覚。その文覚に対して、広元は真っ青に り、一言もしゃべりはしない。禅師も部屋の隅に蹲っている。 「広元、決して、源義行殿を殺してはならぬぞ」意外なことを文覚は言った。 「源義行殿を囮に、鬼一法眼を、大倉山山頂に呼び寄せ、最後の勝負を挑む。ただし手出し無用。儂と鬼一で勝負を決める」 (続く (C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所★http://www.youtube.com/user/yamadakikaku2009ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
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2021年10月27日 | 源義経黄金伝説YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/65/ 源義経黄金伝説■第66回1199年(正治元年) 霧の中で落馬した源頼朝の目の前に炎上する鎌倉の姿が見えている。 源義経黄金伝説■第66回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube 1199年(正治元年) 鎌倉 鎌倉の朝。1199年(正治元年)1月13日 鎌倉街道の地面に落ちた霜が太陽を受けて、湯気をあげている。気おもいで気分のすぐれぬ頼朝は、単騎でゆっくりと動いて来る。大姫の死が、頼朝のこころを責めさいなんでいる。 鎌倉街道の要所、相模川の橋の完成式の帰りであった。この時のお共には、広元は最初から参加していない。頼朝は馬に乗り、見知らぬ道を通っていた。ふと、回りを見ると、いつもはいるはずの郎党共の姿が見えない。おまけに辺りにはうっすらと霧が出てきたようである。 「これは面妖な…、ここはどこだ…」きづくと霧の真ん中に頼朝が一人。 頼朝は、ひとりごちた。道の向こうに人影がぼんやりと見えている。「おお、あそこに人がおる。道を尋ねよう」頼朝はそちらに馬を進めた。 すでに鬼一法眼の術中に嵌まっていることに、頼朝は気付いていない。鬼一得意のの幻術である。 この時、頼朝の郎党の方は、大殿の行方を捜し回っている。が、みつからぬ。二股道の一方を頼朝が通ったあと、鬼一の手の者が偽装したのだ。頼朝は、郎党から切り話されて霧ふかき見知らぬ森の中にいる。護衛から全く切り離され、一人きりなのである。頼朝を乗せた馬は、一歩一歩と、その人影に近づいて行く。 どうやら、若い女性のようだ。旅装で網代笠を被っている。頼朝は馬上から尋ねた。女の体つきに、へんに見覚えがあった。「これ、そこなる女、ここはどこなのだ。そして、鎌倉までの道を教えてはくれぬか」 女はくぐもった小声で答える。 「頼朝殿、鎌倉へお帰りのつもりか。もう鎌倉はござらぬぞ。お前様は帰るところがない」頼朝は奇異に感じた。「何を言う、貴様、妖怪か」 叫ぶが早いか、頼朝は、女の網代笠を馬の鞭で跳ね飛ばした。瞬間の霧の中から、ごおーっという音が起こっている。おお、これは…、幻影か。 頼朝の目の前に炎上する街の姿が見えていた。霧の仲にくっきりとその映像が見えるのだ。頼朝は、平泉のことを思い出しているのかと一瞬思う。う、これは、なんとした事。が、よく見ると、そこは鎌倉なのだ。 「何ということ。儂の鎌倉が燃えている。どういう訳だ」自分が手塩にかけた愛しき町が燃え上がっている。鎌倉という町は、頼朝にとっていわば、自分の記念碑である。「き、貴様」女の顔を見る。 「うわっ、お前は大姫」 四年前に奈良でなくなったはずの愛娘、大姫の姿がそこにあった。大姫は頼朝の方へ両手を伸ばした。顔はて暗がりではっきりとは見えないのだ。「さあ、父上、私と一緒に極楽浄土へ参りましょう」 大姫が指さす方は、燃え上がる鎌倉である。 「あの中へと」 その炎上の中にいる人々の姿がはっきりと見えていた。平氏、奥州・藤原氏の武者、そして源氏の武者、おまけに義経の姿もある。今までの頼朝の人生で手にかけてきた人物たちである。「さあ、父上の親しい皆様が、ほれ、あのようにあちらから呼んでおいです。さあ、父上、はよう」 頼朝はゆっくりと馬から降りて、ふらふらとそちらの方へ歩んでいる。 突然、石つぶてが、頼朝の体といわず頭といわず降り注いできた。「ぐっ」 頼朝は、頭に直撃を受け倒れ、気を失う。淡海の部下が数名、投弾帯や投弾丈をもちいて、ねらいたがわず、頼朝に命中させていた。投弾帯は、投石ひもともいわれ石弾をはさむ一本のひもで、石弾をはさみ下手投げでなげる。時速八〇キロの速度はでた。 頼朝はしばらくして気付いた。が、目の前はまだ霧の森の中である。「い、今までのことは夢であったか」頼朝は叫んでいる。 人影がある。大姫の姿があった。「お、大姫。助け起こしてくれ」 今は亡き大姫の名前を呼ぶ。しかし、大姫は反応しない。 「儂が悪かった。許してくれい。お前の幸せを考えず、志水冠者殿を殺してしまったのは、俺の不覚じゃ。許せい」志水冠者は、頼朝が殺した大姫のいいなづけ、木曽義仲の息子である。 大姫の姿がするすると、頼朝のところへ近づいて来る。「本当に、そうお思いですか」顔をよせてきた。「そうだ」頼朝は、大姫の顔を仰ぎ見た。 いった瞬間、大姫の服が弾き飛ばされている。 そこには、うって変わって、りりしい若い武者が立っている。 「お、お前は何者」大地をころびながら頼朝が叫んでいた。「源義経が遺子、源義行にございます」 頼朝は、驚き、その人物の顔をしかと観察する。 「まてまて、お前は義経が子か」「そうでございます」 義行は、頼朝に対して刀を構えている。しかし目には不思議に憎しみはないのだ。頼朝に対する哀れみが見える。 この男は…、本来ならばおじになる。 が、我が父を葬った男。鬼一から話を聞き日々の憎しみを増幅させ、この計画を練ったのだ。しかし、実際に、頼朝と対峙してみる、と、悪辣なる敵のイメージとあまりにもかけはなれている。 源頼朝の姿には一種独特の凄みがありながら、その体から悲しみを感じるのだ。 愛娘を死なした絶望が見える。頼朝の人生は多くの人々の亡骸から気づかれている。悲しい人生かも知れぬ。おのの存在、源氏の長者として大きくみせなければならなかった。いままで、源氏のだれもが、望み得なかった高見に頼朝はいるのだ。 しかし、この悲しみの原因は何のか。そして、義行を哀れみの情で見ているのだ。驚いたことに頼朝は、涙を流しているではないか。 源義経の息子、源義行は思わずたじろぐ。 「義行か、不憫よのう、お主は、おのが父親、義経が、北へ逃れ、蝦夷の王、いや、山丹の王になっておるをお主は知らぬのか。吾輩みづからが、ある人物との約束で、それを許したのだ。」 何をいまさら、血舞よい事を。その言葉の一瞬、源義行は、頭に血が上り、この後に及んで、私をたぶらかそうとするのか。やはり叔父上は、見かけではなく、本当に悪人なのかも知れぬ。義行は、迷うが、怒りをあらわに再び切りかかる。 同時に、木陰から数個の石が雨あられと降り注ぐ。再び狙い過たず、頼朝の体に命中していた。額からは、うっすらと血が滲んでいる。頼朝が再び地に伏す。 「蝦夷だと、ええい世迷いごとを、、叔父上、 父義経の敵、覚悟…」 源義行が、大声で呼ばわり、大地に倒れている頼朝に走りより、刀で刺そうとした。 突然、じろりと頼朝が、うつむいていた顔を持ち上げ、義行にまなざしを向ける。 不思議な鋭い眼差しであった。空虚うつろ。深き絶望が、その眼の中に見えるのだ。 「ううっ…」義行は、振りあげた刀を、叔父の体に振り下ろすことができない。「うっつ、くそ」 義行は、叫び声をあげ、いたたまれなくなり、急に後を振り向き、霧の深い森の外に走り出した。 義行の体がおこりのように、体がぶるっと震える。 なぜだ、なぜ俺は、この父の敵の叔父上を打てぬのか。それに父が、、わが父、義経が蝦夷、山丹の王だと、聞いていない。鬼一方眼はそれを知っていたのか。疑問が渦を巻く。「くそっ」義行は、途中で思わず路傍に、武士の魂、刀を投げだすように捨てた、一目さんで逃げ出している。 倒れている頼朝の側に、霧の中からのそりと僧服の大男が現れていた。「頼朝様、ごぶじか」「おお、文覚、助けに来てくれたか」「鬼一方眼、ひさしぶりだのう。お主の計画、俺が止めてやるわ」霧の中に向かって文覚がしゃべっている。森の中の霧が、ゆっくりと薄らいできた。 霧の中から、同じような格好をした鬼一方眼が、背後に人数を侍らしながら現れている。「くそっ、文覚め。よいところで、邪魔をしおって。だが、いい機会だ。西行殿の敵、ここで討たせてもらうぞ」 鬼一方眼も言葉を返す。「ふふう、逆に返り討ちにしてくれるわ」「まて、まて」 二人は構えようとしたが、騒ぎを聞き付けて、ようやく頼朝の郎党が、刀を構えて走ってくる。 「勝負は後でだ、文覚」鬼一は走り去る。 「わかりもうした」文覚は、逃げていく鬼一方眼の集団にむかい叫ぶ。 「頼朝殿、しっかりされよ」 文覚は、頼朝の体を揺さぶり抱き起こした。気を取り戻す。「傷は浅手でございますぞ」「文覚、今、儂は、義経の子供にあつたぞ」「頼朝様、お気を確かに」 文覚は、あたりに転がっている頼朝を倒した石を調べてみる。石の表面がわずかに濡れている。何かの染料か。文覚は石の先を木の枝で少し触り、その匂いを嗅いでみる。 「くそ、鬼一方眼め、丹毒を塗っておる。いずれは吉次か、手下の鋳物師から、手に入れよったか」「はよう、大殿を、屋敷に」 文覚はあわてている。心中穏やかでない。この時期に頼朝殿をうしなうとは、鎌倉の痛手となる。ましてやこの文覚がそだてた頼朝殿を、日本の統一を手にした頼朝殿を、、この手配は、京都の手のものか。ゆるさじ。 続く20210426改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.29
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本田トヨタ作品 YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/64/ 源義経黄金伝説■第65回1199年(正治2年) 鎌倉 大江広元の屋敷に磯禅師が訪れていた。磯禅師は京都の総意をつげる。 源義経黄金伝説■第65回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube 1199年(正治2年) 鎌倉 「大江広元様、この鎌倉の政権をひぎたくはございませぬか」磯禅師が告げた。鎌倉広元の屋敷である。 鎌倉幕府成立後七年がすぎている、あの静の舞からも十三年がすぎている。 大江広元が京都から鎌倉に来てすでに十六年が過ぎ去っていた。 「何を言うか。この鎌倉には、頼朝様が、征夷大将軍に任じられてとしておられる」「大江広元様、この鎌倉幕府の仕組みを考えられたのは、他ならぬ眼の前におられる広元様ではございませぬか」 大江広元は世の仕組みを作る、言わば社会構造を考案し実行していた。また法律という国の根本を考えだし、関東の武士たちに一定の秩序を与えたのは、頼朝でははなくすべてこの広元の「さいづち頭」から出ていた。 つまり、広元が鎌倉幕府の全機構を考え出していたのである。 「さようでございましょう。王朝が変われば国の統一のために手助けした者、武将、ことごとく新しい王のために葬り去られましょう」「が、禅師、俺は武将ではないぞ」 「それゆえ、策略を巡りやすいとの考えもありましょうぞ。中国が三国時代のおり、諸葛孔明の例もございましょう」 大江広元は、考える。いかに禅師といえど、この考えは 「禅師、その考え、まさか、後白河法皇様の…」「いえ、滅相もございませぬ。これは京の公家の方々の総意とお考えくださいませ。よろしゅうございますか、大江広元様。源頼朝様の動きを逐一お教えくだされませ。そして、もし機会があれば…」「お主たち京の公家の方々が、大殿様を殺すという訳か」 「さようでございます。さすれば大江広元様、鎌倉幕府にてもっと大きな位置を占められましょう」「それが私広元にとって、よいかどうか」 「何を気弱な。よろしゅうございますか。頼朝様亡くなれば幕府は、烏合の衆。大江広元様が操ることもたやすうございましょう」「所詮、北条政子殿も、親父、北条時政殿も伊豆の田舎者という訳か」 磯禅師は、にんまりとうなずいた。 (続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.26
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2021.10.26
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THESEIJI作品 YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/27/ 夢王たちの宴■第27回■ ジェイポラード博士と仲間「夢結社」が世界に対するテロ活動で、国軍はじめ多くの国のミサイルがJP359を搭載していた。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第27回■1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube ワルシャワ条約軍、ポーランド国軍ソネ将軍は、慌てる。 「何だって、それはどういう意味だ」 [すでにJP359は、小型ミサイルに、核の替りに積み込まれていますよ」 「だれがそんな指令を出したのだ」 「それはあなたですよ。あたなの命令で国軍が動いたのですよ」 部屋に同席する聴聞官たちも、今度は顔色を変えた。 「ポラード、私に薬を便ったな」 「さっしがよろしいですね。その通りです」 「貴様、、」 「それに、敵陣営のミサイルもJP359のミサイルとなっているはずですよ。 私の仲間、「夢結社」の働きでね」 「やはり、君だったんだな。国家に対する反逆者は。敵がJP359 と同じ成分の薬を作りあげたという情報がはいったのだ。誰がその 裏切り者か我々は調査していた。君の処刑はこれで決定だな」 ソネ将軍は、急いで軍司令部へ電話をかけようとした。 「ソネ将軍」 ジェイ=ポラードが呼びかける。 将軍がボラードの方を見た。 ソネ将軍の顔へに、また聴聞官たちもへも、ボラードの顔から何かが飛んだ。 将軍たちは例れた。 ポラードの歯すべて入れ歯でその歯の1本1本が、神経剤の入った超小型ミサイルだった。 しばらくして、ポラードは命令する。 「将軍、私の言う通り電話でしゃべれ」 将軍はうなづく。ジェイポラードのあやつり入形となっていた。 「ボラードにかけられていた疑惑ははれた。彼を研究所に帰してい い、そういうんだ」 ソネ将軍は電話に向かってそうくりかえした。 ポラードは机の下にセットされていたテープからテープを抜き取り、新しいテー プにさし変えた。 そのテープにはポラードと将軍の会話がはいっている。 が、ポラードの疑いが晴れた形の内容になっている。ボラードが将 軍との過去から現在までの会話を総て録音し、編集しなおしたのだ。 国家安全局からおもてへ出る。 国家安全局前の通りを渡り、角を曲る。 助手であり、妻であるアイラが、フィアット車に乗って侍っていた。 「ポラード、大丈夫だった」アイラはだきついてきた。 「ああ、何とか脱出できたが、すぐ私のトリックに気づくだろう。 早く、あそこへ辿り看かなければな」 「わかったわ。すぐ車を出します」 「いいか、国家安全局の尾行に気をつけろ」 アイラはフィアットを勁かした。バックミラーで見るが、それら しい車は見つからない。 「尾行車はいないようね」 「わからん。奴らはプロだからな」 「ポラード、これからどうなるの」 「いいか、アイラ、よく聞いてくれ、俺はこの世界を滅ぼすことに決めた。 この腐り切った世界をな。新しい世界をきずくのだ」 「でも、ポラード」 「いい、アイラ、君のいいたい事はわかっている。でも何度もいっ た様に、各々の人間が自分自身の想い通り、人間らしく暮せるのだぞ。 最初の一発のミサイルでそれは始まるのだ」 ポラードの眼はまっ赤に燃え あがっているようだった。 (続く)20210323改訂1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-training●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.26
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/63/ 源義経黄金伝説■第64回・鞍馬山で鬼一法眼が育てていた義経の子供「源義行」は叔父である源頼朝への復讐を誓う。 源義経黄金伝説■第64回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube 1199年(正治2年) 京都・鞍馬山 鞍馬山は、京都市中よりも春の訪れが少しばかり遅い。僧正谷で武術修行にうちこむ二人の姿があった。老人と十二才くらいの童である。 鬼一法眼が手をとめて、「源義行」に話しかけてた。「和子は、このじいを何と思うておられる」「どうした、じいは。いつものじいではないのう」幼い義行にとって、鬼一は年をとった父親のようであった。不思議そうな顔をして、義行は、鬼一の方を見る。 「よいか、よく聞いてくだされ。わしも、もう長くは生きられぬ。そのため真実を申し上げる。和子は源義経殿が和子にござます」鬼一法眼は、深々と頭を下げる。びっくりする源義行だった。 「この私が、あの、源義経の子供だという、、、」 源義経が奥州平泉で襲撃されて十年がすぎている。義行は、義経がことを、日々の勉学に聞き及んではいた。 「この私があなた様のために、亡くなられた西行法師殿より預かっているものがござる。それをお渡しいたしましょう。また和子の存在を知っている者が、京に一人おられた」「おられたと。その方も…」 「そうです、七年前にお隠れなられた後白河法皇です。その方の指令がまだ生きておる。源頼朝をあやめられよと」 「源頼朝をあやめると…」 「じゃが、よーく聞いてくだされ。源頼朝殿を殺すも殺さぬも自在です。なぜなら、この鬼一法眼、全国に散らばる山伏の組織を握っております。和子を鎌倉に 行かせるは自在。が、西行殿、そして義経様が義行様に望んでおったことは、和子が平和な一生を終えられることです。また平和な郷を作られることです。この 書状には奥州藤原氏よりの沙金のありか書いてございます。これをどう使われるかは、和子が自由でございます」 「鬼一法眼殿、私はどうすれば…」突然、突き付けられた事実に、義行はたじろいでいる。 「どうするかは自分でお決めなされ。自分の生涯は自分で決めるのです。義経殿が滅びたは、自分の一生、自分で決められぬほど、源氏の血の繋がりが強かった。和子はそうではござらぬ。つまりは、和子は世に存在しない方。自由にお考えなされい」 「……」「が、義行さま、西行法師殿のまことの黄金は、あなたさま…。それほど大事に思われておったのです…」「……」「じい、決めた。私は父上、源義義の仇を討つ」源義義の子供である源義行は、そう鬼一法眼に告げた。 「そのお考え、お変えになりませぬな」 鬼一の眼は、義行の眼を見据えた。義行の眼には、常とは違う恐ろしい別の者が潜んでいる。「武士に二言はないぞ」恐れず義行は答える。 「わかりました。が、義行様、この先に進めば、二度とこの鞍馬山に帰ることはあいなりませぬぞ」 「何…この鞍馬には二度と」「さようでございます。もし、源頼朝様を殺すとならば、義行様はこの日本に住むことできますまい。なぜならば、鎌倉が組織、すでに全日本に張り巡らされております。その探索から逃れることなど、絶対不可能」 「……」義行は急に黙り込んでしまった。 西行殿、許されよ。俺はお主との約束を破る。許してくだされい。俺は、義行様が不憫なのだ。鬼一はひとりごちた。 「なれど、義行様、安心なされませ。義行様をただ一人行かるじいではございません。私の知り合いに、手助けを頼みましょう」 鬼一法眼の屋敷は、京都では一条堀河にあった。義経は、陰陽師でもある鬼一法眼から、兵書「六闘」を授かっていた。 平安時代中期、藤原道長の霊的ボディガードとして有名だったのは、当時最高の陰陽師安倍晴明であったが、彼の子孫は土御門家として存続する。この土御門家に連なる一人が鬼一法眼であった。 鬼一法眼は、自分の屋敷から白河に向かい、ある一軒のあばら家に入る。 「おお、これは鬼一法眼殿、生きておられたか。伝え聞くところによれば、貴公、奥州に行かれ行方不明と聞いていたが」 のっそり出てきた優男は、京都で名高い印地打ちの大将「淡海」である。「淡海殿、お願いがござる」 鬼一法眼が頭を下げている。突然の事に、淡海はめんくらう。「これは、これは何を大仰なことを申される。法眼殿は義理の兄ではござらぬか」「いや、ここは兄としてではなく、「印地打ち(いんじうち)の大将」にお願いしている客と思っ ていただきたい」 「俺の、印地打ちの力を借りたい、、と、、申されるのか」 「実は、儂の人生の締めくくりとして、ある人物をあやめていただきたい。といっても、儂は、手助けをお願いするのみだが」「…、したが相手はだれぞ」 「鎌倉の源頼朝」「むっ…」淡海は唸ったまま、眼を白黒させている。 白河は、別所と呼ばれる。別所とは、別の人が住むところ。昔、大和朝廷が日本を統一したときに、戦った敵方捕虜をそこへ押し込んだのであった。別所は、大原、八瀬など、すべて天皇の命を受けて働く、別働隊の趣があった。しかし、また、武者などの勢力から、声を掛けられれば働くという、傭兵的な要素を持っているのである。 淡海たちは、石つぶての冠者、つまり戦士であった。 石つぶては、当時の合戦に使われている正式な武器だ。 「が、鬼一殿。相手が相手だけに、義兄さまの幻術も使ってもらわねば、難しいのではないか」「さよう、頼朝を郎党から一人引き離さねばのう」「どのような塩梅か」 「気にするな。我が知識の糸は、鎌倉にも張り巡らしてござる。それも頼朝にかなり近いところだ」「おお、力が入っておるのう」 「よいか、義兄弟。この度の戦さは、儂の最後の戦さ。また、あの西行法師殿の弔い合戦でもある。頼朝を仕留めれば、奥州の沙金の行方を追うこと、諦めるだろう」 「それでは、一石二鳥という訳でござるな」「そういうことだ。済まぬが、おの手の方々を、すぐさま東海道を鎌倉に下らせてくださらぬか」 「おお、わかり申した。色々な職業、生業に、姿を変え、鎌倉へ向かわしましょうぞ。京都の鎌倉幕府探題の動き、激しいゆえにな。動きをけどられぬようにな」(続く) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.26
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/26/ 夢王たちの宴■第26回ジェイの作った薬JP359は、超能力者に与え、その人物の「妄想」が、現実の世界として実現されるという。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第26回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube ■第26回■ ボラードは、ヨーロッパ、ポーランド。ワルシャワにある国家安全局の一部屋に すわらされていた。新薬研究はソビエト連邦軍よりの指令だった。 ソビエト連邦軍は、自国の衛星国の1つに依頼していた。 「ソネ将軍、なぜ、私がこのような扱いを受けるのか話してほしい」 「ボラード君、まだわからないのか。私は、君に、戦場の兵士の恐怖感を減 少させる薬を作れと命令したはずだ」 緊急にに呼びだされ、国家安全局にいるソネ将軍は機嫌を悪くし 「将軍、だから、私は兵士の気分がパッピイになる薬を作ったのですよ」 「私は君の報告書を涜んだのだよ」 「それじゃ、充分、あの薬についてはおわかりの、はず、ですね」 「が、君は恐るべき点を指摘していた。薬物JP359が、ある種類の超能力者に与えられた場合、 その投与者の「妄想」が、現実の世界として実現されるという、これは事実かね」 「そうです。いやそれ以上といった方がいい。自分の超能力に気づ いていない人間の超能力も目ざめさせらる働きをするのです」 「という事は、この今ある世界の基準値が崩壊するという事だ」 「そうです。逆にいえばそれゆえにJP359は、恐るべき兵器となるのです」 ポラードは、少しだまって、それから言った。 「その能力を使える者は、新らしい世界の創造者ともなれるわけですよ」 ポラードは。ソネ将軍を見てニヤリと笑う。 ソネ将軍は、青ざめ、そしてゆっくり言った。 「わかった。薬物JP359の使用を停止するように説得する」 ソネ将軍は厳然といい放った。 ボラードは顔色を変えた。 「なぜですか。なぜこんなすばらしい薬物兵器を」 「すばらしい兵器だと。君は、、この世界を滅亡させてしまうような兵器だぞ」 「将軍、いいですか、私達人類は、核爆弾という、本当に人類が、消滅する兵器 の上に住んでいる。それに比べれはJP359がどんなにすばらしい兵器 かおわかりにならないのですか。 JP359は実際に人を殺しはしない。人間をハッピイな気分にし、開放させ、攻 撃野本能を失しなわせてしまうのですよ」 ソネ将軍は、絶望の表情でつぶやいた。 「ジェイ=ボラード、、、君は狂っているよ。JP359は、一種のドラッグではないか、 こんな薬を戦争状態に使えると思っているのか」 「どうするおつもりですか」 「早刻、製造停止だ。君は、監獄に入ってもらおう」 ボラードは笑っていた。 「ソネ将軍、もう遅いですよ」 (続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-training●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.25
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源義経黄金伝説■第63回★★建久六年(一一九五)三月 奈良興福寺大乗院、宿にいる源頼朝の娘大姫のもとを、尼姿の静が密かに訪れてきた。2021年10月25日 | 源義経黄金伝説YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/62/ 源義経黄金伝説■第63回★★建久六年(一一九五)三月 奈良興福寺大乗院、宿にいる源頼朝の娘大姫のもとを、尼姿の静が密かに訪れてきた。 源義経黄金伝説■第63回★★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 建久六年(一一九五)三月 奈良東大寺 その夜、奈良興福寺大乗院宿泊所にいる大姫のもとを、尼姿の静が密かに訪れてきた。「どうしたの、静。その尼の姿は、和子はどうしたの」 静は出家し、大原寂光院のそばに庵いおりをいとなんでいる。すべては西行の手配りであった。 「和子は、私の手元にはおりません。今でも鎌倉でございます」静には、わざと子供の行方を聞かされてはいない。 「何、鎌倉ですと。母上は約束を守らなかったのか」「いえ、政子様は、こうおっしゃったのです。子供の命は助けると申した。が、その子供をお前に預けるとは、言ってはおらぬ」「では、和子は…」 「生きております。が、義経様に対する備えとして」「人質として、が、義経様は亡くなったのでは」「いえ、まだ、みちのくに生きているという噂、風の便りに聞きました。頼朝様は、その噂が恐いのでございます」 大姫はしばらく口を噤んでいる。 「いいがなされました。大姫様」「静、お前に会えるのも、これが最後かも知れぬ」「何を心細いことをおおせですか。まさか…」 「その、まさかですよ。静、私にはお前のように心から強くはない。父上、母上の顔を立てなければならぬ」 「お逃げなされ、大姫様」「私は、もう生きる希望を失っています」「…」 「ずっと昔、あの志水冠者しろうかじゃ殿が、父上の手にかかってからというもの、私は死者なのです」 木曽義仲の息子であり、大姫の夫志水冠者は、頼朝の手で殺されていた。 1184年元暦元年4月の事でありもう十一年の歳月がすぎていた。十一年の間、大姫はその姿を心にひきづって生きている。 「そこまで、もう長くは、私は生きていますまい。静、どうか私の来世を祈っておくれ」「大姫様」二人の女性は、鎌倉の昔と同じように、両手を握りあわせ、各々の運命の苛酷さを嘆きあう。 ■「北条政子様、どうぞ内へ入られませ。あのお方がお待ちでございます」磯禅師は、京都のとある屋敷へと、政子をいざなう。 「この方が丹後局様、皇室内のこと、すべて取り仕切られております」無表情というよりも、顔に表情を表さぬ蝋人形のような美女が座っている。流石の政子も思わずたじろぐ。底知れぬ京都の、連綿と続く力を背後に思わせた。 丹後局は、白拍子あがりだが、後白河法王の寵愛を受け、京と朝廷に隠然たる勢力をいまでももっている。いわば後白河法王の遺志の後継者である。 「これは、はじめてお目見えいたします。私が北条政子、源頼朝が妻にございます」政子は、深々と頭を下げた。目の前にいる女に頭を下げたのではない。あくまでも京都という底力に対してだ。そう、政子は思った。 「磯禅師より聞いております。大姫様の入内のこと、すでに手筈は調っております」「え、本当でござりますか」「が、政子殿。大姫様入内の前に、こちら側よりお願いしたき儀がございます」「何でございましょう。私ごときができることでございましょうか」 「無論、お出来になるはず。源頼朝様にお力をお貸しいただきたいことがございます」丹後局は少し間を置いた。 焦らしているのである。次の言葉が、政子には待ち遠しく思えた。「それは、一体…」 思わず、政子の方から口を切っている。 「いえいえ、簡単なことでございます。征夷大将軍の妻たる平政子殿にとってはな」再び丹後局は黙り込む。京都の朝廷で手練手管を酷使している丹後局である。 丹後局は磯の禅師と同じ丹波、宮津の出身だった。交渉力においては、まだ新興勢力である北条政子の及ぶところではない。 「摂政、九条兼実殿を、罷免していただきたい」 「何をおっしゃいます、兼実殿を…」九条兼実は、頼朝派の味方になった政治家だったのである。 ■北条政子が不在の折、興福寺大乗院前の猿沢の池で、頼朝と大姫は、舟遊びを楽しもうとしていた。猿沢池の両側に興福寺、反対側に元興寺、両方の五重の塔が威厳を誇っている。 興福寺は藤原氏の氏寺。元興寺がんこうじは、蘇我氏の氏寺である。 奈良猿沢の池を中心に奈良平城京ができた折りの政治状態が反映されている。今また新 しい新興勢力である鎌倉源氏が、この奈良古京こきょうに乗り込んで自らの政治勢力を固持している。 かがり火が、こうこうと照らされ、興福寺五重の塔が照り映えている。この船遊びは、気鬱の大姫のために頼朝が考えたのだ。 が、池の舟のうえで、事はおこる。 「よろしゅうございますか、父上。大姫はもう、この世の人間ではございませぬ」 湖の周りには、奈良以来の雅楽が演奏されている。空気はぴんと貼りつめ、篝火の届かぬ空間のその闇は深い。 「大姫、何を急に、、おまえは狂うたか」頼朝は、我が娘を別の目で見ている。篝火に照りはれる大姫の顔は尋常ではない。「狂っているのは、父上の方です。私は、私です。お父上の持ち物ではございませぬ」「むむっ、口答えしよって」 「私は、いえ私の心は、志水冠者様が、父上によって殺された時から、死んでおります」大姫は舟の上から、体を乗り出している。 「いとおしき志水冠者様、いまあなたの元に、この大姫は参り増すぞ」「大姫、何をする」「いえ、父上。お止めくださるな。父上が静の子供を死なしたようにするのでございます」 言い終わると、大姫の体は、波の中に飲み込まれていた。 「ああ、大姫」 源頼朝の腕かいなは、空をつかむ。重りをつけた大姫の体は、猿沢池底の闇に深く巻き込まれている。頼朝の両手は届かなかった。大姫の心にとどかなかったのと同じように。 ■「さあ、お言いなされ、母上。何を大姫様におっしゃったのですか」静は母親、磯の禅師を非難している。「この子は、何を急に、言い出すのか。大姫様が、いかがいたした」 「母上、私は、幼き頃より、母上の身働きを存じております。それゆえ、この度、大姫様が入水自害をされた…」 「何、大姫様が入水自害された…」禅師は驚いた表情をする。呆れ果てたように、静は告げる。「それほど、大姫様が憎うございますか」 「何を申す。これは源頼朝殿を滅ぼさんがためぞ。お前、義経殿を殺させた、源頼朝殿が憎くはないのか」 禅師は厳しい表情をし、声をあらげている。「そ、それは、義経様を…、殺させた頼朝殿は憎うございます。が、大姫様をなぜに殺された」 「愛姫だからのう。それに、頼朝殿の血が、京と天皇家に入内せしこと防がねばなりません」「それは、京都の方からの指令でございますか」禅師は答えぬ。 (続く) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube #源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.25
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尼崎城の紹介記事を大阪日日新聞2021年10月18日に掲載させていただきました。18面で日本旅のペンクラブ関西部便り250回です。山田は日本旅のペンクラブ関西部にしていただいております。
2021.10.22
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/25/ 夢王たちの宴■第25回■ゴルゴダシティの宮殿舞台で、ジェイ・ポラードはビブラフォーンになったアイラと意識が同調した。そして過去のドラッグウォーの記憶が。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第25回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube ■第25回■ 舞台の上では、ジェイと「ビブラフォーン」ことアイラの演奏は{ハルフォードの稲妻}の最終楽章にはいっていた。 観客はすべて感覚の世界に没入していた。 「気づいただろう、君と仏以外の人間はすへて恍惚状態にはいって る。すなわち我々の竟識のみが実在する、いや実在していた人間の それなのだ」 実在世界の名前は「スプローギン大佐」ある導師デルガは、道化師マリクに言う。 道化師マリクの実在世界の名前は「ドクター・シュッカ」である。 この時、すでにジェイ・ポラードはビブラフォーン・アイラとの意識が同調し、 一つの共生意識になっていた。 「ジェイ、私がわかるわね」 「そう、払は、今になってやっとわかった。許しておくれ、アイラ」 「私達はやっと一つになったわ」 「そうだ。そして我々は、我々だけの世界を作れる」 「いけないわ、ジェイ、この曲を聴く人々たちにも喜びをあたえてあげて」 「何だって、どうするんだ」 「ジェイP359をすべての人々に与えるのよ。 そうすれば、各々の人々が、自分自身の夢世界を持てるのよ」 ジェイは、実世界の過去を、思い出し始めていた。、、、 ■ポーランド、ワルシャワ大学。 研究室のドアを荒々しく開け、二人の制服の男がはいってくるのが、ジェイの目に映った。 制服から見ると、国家安全局の人間らしい。ベルトには銃が装着されている。 「ジェイ=ポラードだね」 背の高い方の男が言った。片ほほがビクビク動いている。 「そうです。私がジェイ=ボラードです。あなた方はすぐさまこの研究室 からでていっていただきたい。私はソネ将軍から全権を委任されている」 男はにやりと冷笑し、冷たく言った。 「その、君のいう、ご本人ソネ将軍からの命令だ」 もう一人の細面の男がいう。 二人は、同時にボラードの両わきを押さえた。 「ジェイボラード、君を、わが国家に対する反逆罪で逮捕する」 「逮捕だと?わが国家に対する反逆罪だと?何かの間違い、、ではないのか」 「それは、お前、白身の胸に聞いてみることだな」 「まさか、「プロジェクト・JP359」の件ではないだろうな」 「そうだ。ご名答だ。その「プロジェクト・JP359」の件だ」 「プロジェクト・JP359」は、人間を助ける計画でありながら、反面、全世界を破滅させかねない 特殊な麻薬医薬生産計画だった。 ワルシャワ大学科学部の研究者ジェイ・ボラード博士は、世界が足もとから崩れるような気がした。 (続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-training●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第25回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube ■第25回■ 舞台の上では、ジェイと「ビブラフォーン」ことアイラの演奏は{ハルフォードの稲妻}の最終楽章にはいっていた。 観客はすべて感覚の世界に没入していた。 「気づいただろう、君と仏以外の人間はすへて恍惚状態にはいって る。すなわち我々の竟識のみが実在する、いや実在していた人間の それなのだ」 実在世界の名前は「スプローギン大佐」ある導師デルガは、道化師マリクに言う。 道化師マリクの実在世界の名前は「ドクター・シュッカ」である。 この時、すでにジェイ・ポラードはビブラフォーン・アイラとの意識が同調し、 一つの共生意識になっていた。 「ジェイ、私がわかるわね」 「そう、払は、今になってやっとわかった。許しておくれ、アイラ」 「私達はやっと一つになったわ」 「そうだ。そして我々は、我々だけの世界を作れる」 「いけないわ、ジェイ、この曲を聴く人々たちにも喜びをあたえてあげて」 「何だって、どうするんだ」 「ジェイP359をすべての人々に与えるのよ。 そうすれば、各々の人々が、自分自身の夢世界を持てるのよ」 ジェイは、実世界の過去を、思い出し始めていた。、、、 ■ポーランド、ワルシャワ大学。 研究室のドアを荒々しく開け、二人の制服の男がはいってくるのが、ジェイの目に映った。 制服から見ると、国家安全局の人間らしい。ベルトには銃が装着されている。 「ジェイ=ポラードだね」 背の高い方の男が言った。片ほほがビクビク動いている。 「そうです。私がジェイ=ボラードです。あなた方はすぐさまこの研究室 からでていっていただきたい。私はソネ将軍から全権を委任されている」 男はにやりと冷笑し、冷たく言った。 「その、君のいう、ご本人ソネ将軍からの命令だ」 もう一人の細面の男がいう。 二人は、同時にボラードの両わきを押さえた。 「ジェイボラード、君を、わが国家に対する反逆罪で逮捕する」 「逮捕だと?わが国家に対する反逆罪だと?何かの間違い、、ではないのか」 「それは、お前、白身の胸に聞いてみることだな」 「まさか、「プロジェクト・JP359」の件ではないだろうな」 「そうだ。ご名答だ。その「プロジェクト・JP359」の件だ」 「プロジェクト・JP359」は、人間を助ける計画でありながら、反面、全世界を破滅させかねない 特殊な麻薬医薬生産計画だった。 ワルシャワ大学科学部の研究者ジェイ・ボラード博士は、世界が足もとから崩れるような気がした。 (続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-training●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)
2021.10.22
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/61/ 源義経黄金伝説■第62回★★建久六年(一一九五)三月奈良東大寺 法皇崩御3年後。すでに頼朝は兼実の手引きにより征夷大将軍の地位を得ていた。 源義経黄金伝説■第62回★★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 建久六年(一一九五)三月 奈良東大寺法皇崩御3年後。 すでに頼朝は兼実の手引きにより征夷大将軍の地位を得ていた。 後白河法皇御万歳ごばんさい三ヶ月後、一一九二年七月十二日。征夷大将軍の位を得て、鎌倉幕府が誕生した。日本始めての武家政権である。 東大寺落慶供養は、源頼朝、政子の列席のもと、建久六年(一一九五)三月十二日に行われる事になった。 また、このときが、源頼朝、政子の愛姫、大姫の京都貴族へのお披露目の時である。 重源を頭目とする勧進聖たちは、立派にその役目を果たし、聖武天皇以来の大仏と大仏殿が再び人々の目の前に姿を表していた。以降、大仏様という建築様式で呼ばれることになる壮麗な南大門の中には、京都仏師に対する南都仏師運慶、快慶の仁王像が力強い時代の到来を告げることになる。 鎌倉幕府の時代、武士の時代の始まりである。 貴族の牛車引きたちが、武者たまりでしゃべっていた。「あれが東国武士か。恐ろしげなものよな」「我々とは、人が違う。主も思うだろう」「そうじゃ。あの大雨の中で揺るぎもせず、目をしばたかす、武者鎧をつけて、身じろぎもせず立っておるのだ」「頼朝という者を守るためにのう」「やはり、人ではない。動物に近いものだ」「あやつらに、荘園が取り上げられて行くのか。悲しいのう。悪鬼のような、仕業だ」「いや、あやつら板東武者の力を借りて、貴族は荘園を守るしか仕方があるまいて」 東大寺正門から両側の道に、ずらっと頼朝が武者が立ち並んでいる。 南大門、その他の門前にも、東国武士の恐ろしげな顔をした者共が並んでいた。 折あしく、春嵐が奈良近辺を襲っていた。読経の中、空は暗雲に包まれて、若草山から、風雨が吹き荒れている。 居並ぶ京と貴族達は、これからの自分たちの行く末が、暗示されているような気がしたのだ。東大寺全体、奈良のすべてがまるで嵐の中、頼朝を長とする、源氏の軍勢に占領されているように見える。 貴族たちの牛車は、脇に寄せ集めて、その他大勢の背景であり、時代の主役の乗り物ではない。この時、北条政子は、夫、頼朝にせっついていた。「はよう、大姫、入内できるようお取り計らいくださいませ。あなたは、もう征夷大将軍なのでございますよ。それくらいの実力は、おありになりますでしょう」「わかっておる。すでに九条家を使い、かなりの沙金を貴族の方々に、ばら蒔いておるのだ」にえきらぬ頼朝の態度に、政子はいらついている。 (もし、頼朝殿の手づるがだめであるならば、そうだ、磯禅師の手づるを頼もう。あの磯禅師の方が、このような宮廷工作には長けておるはず) 供養の途中、重源は、傍らにいる栄西に語りかけていた。 「良くご覧になるがよい。あれが源頼朝殿」「では、あの小太りの田舎臭い女が、北条政子殿か」 「さようだ。話によると、頼朝殿は尻に敷かれているという」「が、栄西殿は、せいぜい取り入ることじゃ。お主の茶による武者の支配をお望みならばな」後に、栄西は、尼将軍北条政子の発願により、鎌倉に寿福寺を開くことになる。 「それで、重源殿。奥州藤原氏の沙金は、いかがなされました」重源は、栄西にすべてを語るわけにはいかぬ。 「それよ、栄西殿。西行殿は、はっきり申されぬうちに、亡くなってしまった」「もしや、頼朝が沙金を…。」「うむ、頼朝殿奥州征伐のおり、かなりの砂金を手に入れたと聞く。この砂金をつかい、今の地位を得たという話だ」 「もしや、西行殿が源義経殿の命の安全を図るために、砂金を使うという、、、」「そうだ、その可能性はある。西行が、あの沙金を義経殿の命と引き換えにしたということは考えられるのう」 西行の入寂後、なぜ、重源は、東大寺の大仏殿裏山を切り崩したのか。あるいは、あの裏山に奥州藤原氏の黄金が、と栄西は考えた。 では、頼朝よりの寄進とされる黄金は、ひよっとして、西行が運び込みし、秘密の黄金かもしれぬ。では、その黄金を、頼朝からの寄進とすることで西行が頼朝が得たものとは何か?少し、目の前にいる、食えぬ性格の重源殿に鎌をかけてみようと、栄西は思った。 「西行殿は、なぜそのように義経殿に肩入れをなさったのか」重源は、その栄西の質問にしばし黙り、考えているようだった。やがて、意を決して 「よろしかろう。栄西殿ならばこそ、申そう。西行はある方から、義経殿の身の上を預けられたのだ」「ある方じゃと、それは一体」「よーく、考えてみられよ。西行殿の関係をな」栄西はよくよく考えて、頷いている。 「そうか。相国、平清盛殿か」得心した振りをして栄西は、 重源の晦渋さを再認識した。この腹の裏をもたねば、これからの京都や鎌倉を相手に、勝負ができぬわけか、、 ■西行がなくなり、五年がたつ。平清盛が、1181年治承5年、五十四歳でなくなり十四年の月日が流れている。 地位を手にいれた家族が幸せかどうか。 東大寺落慶供養の式次第の後、 大姫と頼朝、政子は、奈良の宿所となった興福寺大乗院の寝殿で争っていた。 「どうした、大姫。顔色がすぐれぬが」「そうですよ。これも皆、お前を入内させんがため、父上も私も努力しているのですよ」 「私は、私は…」大姫は小さきか弱き声で自分を主張しようとした。「どうしたのじゃ、思うこと言うてみなさい」 「いまでも志水冠者様を愛しているのでございます。皇家のどなたの寵愛も、受ける気はございません」 「何ということを言うのか」「お謝りなさい、大姫」「いやです。私は私です。私は父上や母上の、政治の道具ではないのです」「何を言うのじゃ。俺はお前の行く末を思えばこそ」「嘘です。父上は、私のことなど、お考えではない」「バカモノめ」勢いあまって、頼朝は、大姫に平手を食らす。「まあまあ、落ち着いてくだされ。大殿様、仮にもここは晴れの席。まして大殿様は、いまや征夷大将軍でございますぞ」 その場は落ち着かせた。政子は、鎌倉をたつ前にあることを思いついていた。静を大姫に合わせることである。 20131020(続く) 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#源義経黄金伝説
2021.10.22
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/24/ 夢王たちの宴■第24回■ゴルゴダシティのマリクは導師デルガに反乱を起こす。がデルガの 口からはこの夢世界、そしてドラッグウォー以前の、各人の本当の姿とジェイの秘密が語られる。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第24回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube ■第24回■ ゴルゴダシティの 移動宮殿「フォトン」の内部では動揺がおこっていた。 モーター達が反乱をおこしたのだ。 きっかけは「ハルフォードの稲妻」第2楽草だった。 モーター達の胴体を包んでいたチューブはひぴわれた。 一気に地下部から彼らは舞台の方へかけあがっていく。 モーター達の首に埋められていろ電極のコントロールは効かなくなっている。 フォトンは振動し始めていた。 コントロールルームはすでに叛乱のモーター達により破壊されていた。 ジェイのビブラフォーンの演奏を聞いているというより、すでに、ジェイ とビブラフォーンによって作りあげられた感覚世界に酔っている観 客に何も気づいていない。 バルコニーの所にいるデルガに、モーターの叛乱が知らされた。 「何だと」デルガは顔色を変えた。 「マリク、早く、叛乱をおさえるのだ」 マリクは返事をしなかった。 「マリク、どうしたのだ」デルガが不思議な顔をした。 「そうか、お前だったのか」 マリクは、デルガの顔を見てニヤリと笑う。 「残念ながら、そのようですな。 さあデルガ、私にこのゴルゴダシアイの大導師の地位を禅譲していただきたい。 ここで宣言して下さい。 さいわい、観客はジェイのビブラフォーンの演奏で気づいていない」 「マリクよ、お前はまだ気づいていないのか」 「何をだ」 マリクは、デルガが笑っているのに驚いた。 絶体絶命の危機にあるというのになせだ。 「私に対して叛乱をおこすことなどなかったのだよ、マリク」 デルガはすっきりした表情でいう。 「どういう事なのだ、言ってくれ」 マリクは不思議に思った。 「私がジェイに『ハルフォードの稲妻』を演奏してくれと面会した時から 、ここゴルゴダシティは消え去る事は決定されたのだ」 「デルガ、、あなたはわかっていたのだな。 ジェイがジェイ・ボラード、神の手を持つ男だと」 「後で気付いたのだ。あの『ハルフォードの稲妻』が普通の人間には、演奏できるわけではない。 ジェイ・ポラードの集早く動く神の手でなければ、はだめなのだ。 道化師マリク、いや、ついでに前の夢世界での名前を言ってやろう」 デルガはにこやかな表情だ。 道化師マリクはたじろぐ。 いや、そんなはずはない。前の夢世界での名前だと、これはだれかの夢世界なのか。 「ドクター・シュッカ、君はまだ気づいていないようだな」 ドクター・シュッカという前の夢世界の名前で呼ばれた、、、 道化師マリクの顔はまっ青になっている。 「君は、この幾重にも重なる夢世界。 ドラッグウオー後の夢世界。私の夢世界でコルゴダシティの1部分なのだ。 私、デルガの夢世界が崩壊すれば、君自身、道化師マリクも無論、消えてなくなるのだ」 「信じられん」 マリクはしばらく考え、やがてある事に気づき、デルガの方に指をむけた、 「あなたは、、、スプローギン大佐だな、あなたは」 マリクは、前の世界の名前「スプローギン大佐」で、デルガを呼ぶ。 デルガは笑っている。 「そうだ。が、、少し違う。 私はあのポーランド、ワルシャワ条約軍にいるスプローギン大佐自身ではない。 スプローギンという男の作った「夢世界」の彼自身の投影なのだ。 ドラッグウオーの引き金を引いた男のね」 「それじゃ、あのビブラフォーンは」 マリクは、今にも目玉が飛び出しそうな表情だ。 「そう、気づいたかね。 あのビブラフォーンは、ジェイ・ボラードの恋人、「アイラ」の変化した姿なのだ」 20141126改訂(続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-training
2021.10.22
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/60/ 源義経黄金伝説■第61回★建久三年(1192)3月13日、後白河法皇、66歳で崩御。「わが王朝と貴族の連枝を守るのだ。藤原の兼実殿のお役目ぞ」と遺言する。 後白河法皇の最愛の人、丹後局たんごのつぼね高階栄子が、藤原(九条)兼実をせかす。「それそれ、兼実殿、よいか、よーくおおききいれくだされや。猊下のお言葉です」。 「よいか、兼実殿。京都に残るすべての貴族方々に告げられよ。皆々、その連枝を以て、家伝とされ、それを子孫についでゆかれよ。またそれを以て、朕が、皇家を護るらしめよ。その連枝れんしをもって我が王朝を助けよ。まもれよ」 「坂東の族どもには、それしかないとおっしゃりますか」 「幸い、西行がはり巡ぐらせし「しきしま道」は、朕らが皇家の護りとなろうぞ。「しきしま道」和歌により、、言葉にて、我国土は護られようぞ。言葉の守りぞ。外つ国には、 断じて我が領土は、ふめぬ、、わ」 言葉による防衛網が、張られていると、後白河法皇はいうのだ。 本文編集源義経黄金伝説■第61回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 建久三年(1192)3月13日京都後白河法皇の御殿に藤原(九条)兼実が現れる。後白河法皇の最愛の人、高階栄子からの至急の呼び出しがあったのだ。彼女が丹後局たんごのつぼねである。 法皇の部屋には、病人独特のにおいが立ちこめ、香りがたかれていて、九条兼実は、むせかえりそうになった。兼実は、すでに死のにおいをかいでいる。 病床にある後白河法皇は、力なくやっと左手をあげ、「兼実、ちこうまいれ」と弱々しげに言った。 「ははつ、後白河法皇様。何かおっしゃりたきことがござりますやら」「そばに行かれよ」後宮の女帝、高階栄子が、兼実をせかす。 「朕の遺言じゃ聞いてくだされ」「、、、、」「よいか、それぞれの貴族の家は、古式ののっとり、各家々の特異技を家伝とされよ」 「それが、板東の奴輩に対抗する手でござますか」藤原兼実も、すでに藤原氏の氏の長者うじのちょうじゃになっているのだ。 「朕が遺言、よくよく聞いてくださるか。兼実殿」後白河法皇が、言った。高階栄子が、兼平をせかす。「それそれ、兼実殿、よいか、よーくおおききいれくだされや。猊下のお言葉です」。 「よいか、兼実殿。京都に残るすべての貴族方々に告げられよ。皆々、その連枝を以て、家伝とされ、それを子孫についでゆかれよ。またそれを以て、朕が、皇家を護るらしめよ。その連枝れんしをもって我が王朝を助けよ。まもれよ」 「坂東の族どもには、それしかないとおっしゃりますか」 「幸い、西行がはり巡ぐらせし「しきしま道」は、朕らが皇家の護りとなろうぞ。「しきしま道」和歌により、、言葉にて、我国土は護られようぞ。言葉の守りぞ。外つ国には、 断じて我が領土は、ふめぬ、、わ」 西行法師を始め和歌によって、言葉による国家の霊的防衛網が、張られていると、後白河法皇はいうのだ。 「これによりわが国は神と仏による鎮御国家となった」 「まずは藤原定家が先陣かと考えます」 法皇は、急に目をつぶり、静かになる、「母君、兄君。いまおそばにまいらせましょう。目宮めのみや君、萎宮なおのみや君もな」法皇は、4人目の宮、4つの宮であり、自分の兄弟の名前を呼んだ。目宮は眼が見えず。萎宮は体が動かなかったのだ。 「御家を、それぞれの家を、古式由来の技で守ってくだされや。いにしえよりの我々貴族の技わざこそ我ら貴族を守る。朕の遺言ぞ、、」 「兼実殿、、、」 「はっつ」「お、お主とは、、最後まで、、分かり合える事は、、なかった、、な」「、、」「が、頼んだぞ。わが王朝と貴族の連枝を守るのじゃ。、、それが藤原の、、」 「よいか、藤原の兼実殿のお役目ぞ」丹後局である高階栄子が、かたわらで繰り返す。 法皇の様態が変化した。「弁慶に謝ってほしい。お、お前から伝えてくれぬか、、」「弁慶どの、、ですか、、」兼実は言いよどむ。熱病にとらわれているのか、法皇は、すでに弁慶がこの世の人ではないことを忘れている。 4年前1189年文治5年4月30日に衣川でなくなっている。 「兼実殿、猊下のお言葉にあわせられよ」高階栄子が、叱咤する。 「朕は、この父は、悪人であった。弁慶お前を我が王朝の闇法師として使ってのう、許してくれ。お前の一生を犠牲にしてしまっての」 法皇は、弁慶が目の前にいるようにしゃべっているのである。兼実が弁慶に見えるようだ。兼実は、法王のいいがままにしている。 弁慶は法皇の子供だった。 「朕はな、この京都を守りたかった。あの鎌倉が武者どもに、板東の蛮人どもに政権は渡せぬぞ。血なまぐさき奴輩。京都を源頼朝や藤原秀衡に渡してなるものか」 しばらくは沈黙が続く。 「そうじゃ、西行は、西行はどこだ。崇徳上皇の霊が俺を呼んでおる。早く、早く、崇徳の霊を追い払ってくれ。のう、西行。そうだ、平泉にの霊御殿をつくる話は、、いかがすすんでおる。藤原秀衡は喜んでおるか…」 兼実は、西行になったつもりで、告げた。「西行はここにおわしますぞ。どうぞ、法皇様。経文を、経文をお唱えくだされませ」「何、経文をか。よしわかったぞ。それに西行、もし朕が亡くなれば、よいか。あの法勝寺殿の跡に葬ってくれ。くそっ、木曾義仲め」 法勝寺殿は、現在の三十三間堂あたりにあった法皇の御殿であり、義仲の襲撃によって焼き払われていた。 八角九重の塔は、八十二mの高さを誇り遠くから望見できた院政と京との象徴であったが、今はそれもない。 「法皇、安んじなされませ。やや、経文をお読みくだされ…」「おお、そうだ。そうだ」後白河は、経文を六度唱えた、そして静かに。院政最期の巨人は崩御された。 「猊下…」丹後局以下侍女たちが嘆き悲しむ。 しかし、藤原(九条)兼実は、法皇の亡きがらを前に、考える。 これで、、頼朝殿に征夷大将軍の位を与えることができる。 藤原(九条)兼実は鎌倉殿、頼朝びいきの男であった。 建久三年(1192)3月13日、後白河法皇、崩御。66歳であった。 その昔、西行は崇徳上皇の霊をしずめることで、後白河法皇の信任を得ていた。西行は、平泉に第二の御所をつくることと引き換えに、崇徳上皇の白峰神宮をつくることを約束していたのである。 (続く) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.20
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/59/ 源義経黄金伝説■第60回 建久元年(一一九〇)三月 京都 落ち込んでいる、師匠の文覚を明恵(みょうえ)と戒名した夢見がたづねる。 「この手で 西行をあやめたのだ。頭にこびりつく。」 ●前書き●後白河法皇の前に、歌の名人、藤原定家ふじわらていかが呼ばれている。「西行の名前を残して起きたいのだ」「西行様の歌を後世に残す、麻呂も賛成でございます、で、いかかななりあいといたしましょうや」「よいか、お主が編纂をしておる歌集に、西行の歌を数多く入れるのだ。 西行法師を歌聖人としたい。それが、西行に対する朕のせめての償いないとなろう。 わが国の「しきしま道」の戦士としての。西行の名を高めよな」 後白河法皇の頭の中には、色々な今までの西行に対する命令がうづまいていた。「まあ、よい、奥州藤原に対する絆の一つが消えたが、すでに平泉が 源頼朝のものとなっては、、後は、頼朝にたいする、いや、板東に武家のたいするわが王家の 仕組みをどうすすか」西行をうしなった後を、誰でうめようか。と後白河法皇は考えているのだ。 が、後白河法皇は、弟、崇徳上皇の霊にも対応をせねばならなかった。 源義経黄金伝説■第60回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 建久元年(一一九〇)三月 京都後白河法皇の前に、歌の名人、藤原定家ふじわらていかが呼ばれている。「西行の名前を残して起きたいのだ」 「西行様のおお名前を、麻呂も賛成でございます、で、いかかな手立てを施しましょうや」、 「よいか、お主が編纂をしておる歌集に、西行の歌を数多く入れるのだ。 歌聖人としたい。それが、西行に対する朕のせめての償いとなろう。 わが国の「しきしま道」の戦士としての。西行の名を高めよな」 法皇の頭の中には、色々な今までの西行に対する指令がうづまいていた。「まあ、よい、奥州藤原に対する絆の一つが消えたが、すでに平泉が 源頼朝のものとなっては、、後は、頼朝にたいする、いや、板東に武家にたいする 仕組みをどうするか」西行をうしなった後を、誰でうめようか。と後白河は考えている。 が、後白河法皇は、弟、崇徳上皇の霊にも対応をせねばならなかった。 西行が企み、それは、平泉を陰都として、崇徳上皇を祭り、北の都の祭りとし、頼朝に対応される事であったが、頼朝が、西行と法王の企みすべてを打ち砕いていた。奥州平泉は先年(1189年)文治5年に頼朝の手におちている。 おう、身震いがした、 崇徳上皇が悪霊か、、 後白河法皇は遠く讃岐の方を見た。後白河と崇徳とは、兄弟と記録されているが、崇徳は本来の兄ではない、、 それが憎しみを深めた。そのあたりの事情は西行法師がよく理解していた。 ■2 建久元年(一一九〇)三月 京都 文覚が、自分が勧進を行った京都神護寺じんごじにて打ち沈んでいる。お師匠様、いかがなされました」夢身、今は明恵みょうえと名前を改めている。 「おう夢見か、ワシはな。この手で西行をあやめたのだ。それがのう、頭にこびりつく。また。ワシに、あやつは、大きな仕掛けを残していくよったのだ。いわば、ワシをあやつらの仲間に抱きいれるような、、」 「師匠様が、西行様のたくらみの手助けをなさる」「そうだ」文覚にとっては、めずらしく煩悶していりのだ。それゆえ、弟子の夢見、明恵の、その文覚の言葉を聴いての動揺も気づいではいない。夢見は、数ヶ月前の事を思い起こしていた。 ■仏教王国、平泉陥落後のち数ヶ月後、西行が、京都神護持をおとづれていた。「夢見どの、いや今は明恵殿とお呼びしなくてはなりませんか。文覚殿はおられるか」「師匠様は、今留守でございますか。何かお伝えすべき事がございましたら、私にお伝え下させませ」「あ、いや、夢見殿がおられれば十分だ」 夢見は、西行を部屋に入れている。急に、西行が、夢見に対して頭を下げていた。「夢見殿、この後の事、お願いいたすぞ」「え、何か、」 「この日の本のことだ、たくすべきは、おぬししかあるまい」西行は、夢身を顔をしっかりと見て、断言した。「また、大仰な、私は文覚の弟子でございます。そのような事はお師匠様に、お伝え下さい」「あいや、夢見どのおぬしではないとな。文覚殿では無理なのだ」 夢見は、無言になり、顔を赤らめた。神護寺は、京都の山中にあり、ふきあげる風が寒々とする。山並みが遠く丹後半島まで続いている。遠くで獣の鳴き声が響く。 「この国は今変わろうとしておる。が、わしの命も、もうつきよう」しみじみと言った。 「この国を仏教王国にしていただきたい。神と仏が一緒になったな。わしが重源殿とはかり、東大寺の200人の僧を伊勢参拝させたのだ。この源平の戦いの後、どれだけの血がながれていたか。夢見殿のお父上もまた戦でなくなれれていよう」 「それは、いささか、私の手には、重もうございます」「いあや、鎌倉の武家の方々にナ、仏教を思い至らしていただきたい」「それは、お師匠様が」 「いや、わしと文覚殿の時代ももう、おわろうて。武士の方々を仏教に結縁させていただきたい。そいて、この世の中すべてうまく回る仕組みを作っていただきたい」 「仕組みとは」「たとえば、貴族の方々は、遠く桓武帝がおつくりになった立法を守り、行ってきた。これから新しく規範が必要なのだ。世の基準をつくり、武家、庶民が豊かにくさせる世の中にしていただきたい。 いや、これは、西行の戯言と思っていただきたいが、源氏の後には 北条殿が、この世の中を動かすであろう」 「北条様は、しかし、源氏の家臣ではございませんか。また、鎌倉には大江広元様がおられましょう」 西行は冷笑した。「ふつ、大江殿がどこまで、お考えかわからぬぞ。果たして、世の動きを作りは源頼朝の大殿か、大江殿か」 西行は、ふっと考えている。この諧謔さが、師匠の文覚の気にいらぬのだ。 「よいか、夢見殿、和が話したことは、文覚のみは内緒ぞ」 「二人の秘密になるのじゃ。北条殿を助け、その世の仕組みと基準である、理ことわりを作られるのだ」 「それは東大寺の重源様、栄西様のお仕事では、、」 「あの東大寺の方々には、他のやり方がある。夢身殿には夢見殿の考え方と生き方が ござろうて」西行のと明恵の会話は続いた。このことは、文覚は知らない。 ■ 続く)20191128改訂作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.19
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/58/源義経黄金伝説■第59回 1190年(建久元年) 葛城弘川寺桜吹雪の降る中 荒法師文覚が繰り出す八角棒を擦り抜け、文覚を 西行の拳がついている。 源義経黄金伝説■第59回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1190年(建久元年) 葛城弘川寺 荒法師、文覚が、次々と繰り出す八角棒を擦り抜け、文覚の体が浮いた瞬間を西行の拳がついてくるのだ。 文覚が八角棒で次々と颶風を起こし、西行の体を狙うが、西行は風のように擦り抜けている。回りで見ている文覚の部下たちも、二人の動きの早さに驚いている。七十才の老人同志の争いとは見えぬ。 ここ、河内葛城の山を背景に、桜吹雪の降るなかで、二匹の鬼が舞い踊っている。一瞬、その時がとまり、桜の花びらが、どうと上に吹きあげられる。 一瞬、文覚の一撃が、西行の胸に深々ととらえた。突き刺さっている。常の西行ならば、避けられないものではない。西行の体は地に付している。文覚は西行をだきおこす。 「これで、気が済まれたか、文覚殿」西行はいきたえだえに言う。 「なぜじゃ、西行。なぜ、わざとおれにやられた」「ふふう、お主に対する義理立てかな。ふふう」ふと、西行のある歌が文覚の頭を掠めた。『願わくば花のしたにて春しなむその如月の望月のころ…』 「くそっ、西行、いやな奴だな、お主は。最期まで格好をつけよって、自らの死に自らの歌を合わせよったか」 「そうだ、しきしま道のものならば、、文覚殿、我々の時代も終わりぞ」「清盛殿、死してすでに七年か」文覚、西行、清盛は、同じ北面の武士の同僚であった。 「文覚殿、最後に頼みがござる」「頼みじゃと、さては貴様、俺にその約束を守らせるために、わざと…」 「義経殿の遺子、義行殿に会うことがあれば、助けてやってくれぬか」「義行をな、あいわかった」文覚は顔を朱に染めている。 「ありがたい。俺はよき友を持った」西行よ、安んじて璋子たまこ様の元へ行かれよ」 「おお、文覚殿、その事覚えていたくだされたか」「しらいでか」西行は、一瞬思い出している。 ●「西行殿、よく来てくだされた。この璋子たまこの最期の願を聞いてくだされ」「璋子様、最期とは何を気弱な事を」 待賢門院璋子けんれいもんいんたまこが病床に横たわっている。この時代の人々は、この世のものならず美しい姫君を、竹取物語にちなんで「かぐや姫」と呼んだ。白河法皇にとってのかぐや姫は璋子だった。そして西行の悲恋の対象である。「西行殿、自分の事はよくわかります。我が入寂せし後、気がかりな事ございます。その後の事を西行殿におまかせしたいのじゃ」「お教えくだされ」西行は、やつれぐあいに、感がきわまり声がかすれる。「璋子様。」 「我皇子たちのことじゃ」「、、、、」 「影でささえてくだされや。璋子の最期の願じゃ」璋子は、西行の手をしっかりとつかんでいる。が弱弱しいのが、西行にはわかる。思わず、頬をつたわるものがあった。「わかりました。璋子様、我命つくるまで、お守りいたしましょう」宮廷恋愛の果て、待賢門院璋子のため、西行は、2人の皇子を守ろうとした。 2人の皇子とは、19歳の折りの皇子、後の崇徳法皇と、27歳の折の皇子、後の後白河法皇である。待賢門院璋子は、鳥羽天皇の中宮であった。この親子兄弟対立相克劇が、保元平治の乱の遠因となる。 ● 最期に、西行は、目を開け、文覚を見た。そして、懐から、書状を出す。「文覚殿、頼朝殿への書状だ。またワシの最期、奈良の重源殿に伝え下され」西行は目を閉じた。「く、」 文覚は膝を屈した。しばらくは動かない。やがて、面をあげすくと立ち上がった。 「皆、この寺を去るのだ」「文覚殿、せめて仲間の死体を片付けさせてはくれぬか」「ならぬ、鬼一らが手の者、こちらへ向かっていよう。すぐさま、ここ弘川寺を立つのだ」「それは、無体だ」「無体だと。俺は今、友達を自らの手で殺し、嘆き悲しんでおる。味方だとて、容赦はせぬ」「文覚殿、我々を相手にされるというか」「おお、お主らが、望むならばな」 「文覚殿、お主は頼朝殿のために働いていたのではないのか。それならば、最後に西行から黄金のありかを聞くべきだったのではないか。先刻の西行の最後の一言、その書状、何か意味があるのでは…」文覚は、きりりと眦を聖たちの方に向ける。 「ふふう、そうだな。お主ら、義経殿が遺児のことを聞いてしまったな。やはり、ここで始末をつけねばなるまいのう」文覚は、残りの聖たちの方に、ゆっくりと八角棒を向けた。 半刻後、鬼一法眼おにいちほうがんの率いる山伏の一団、結縁衆が、弘川寺の周りに集まってい た。「血の匂いがいたします」偵察の一人が言う。「遅うございましたか」山伏たちは、西行の草庵をあうちこち調べる。「襲い手たち、すべて死に耐えてこざる」 数人の体や首に、桜の枝が、ふかぶかと突き刺さっている。 桜の枝が朱に染まり生々しい。「ふふ。さすがは西行殿。殺し方も風流じゃ」結縁衆のひとりがつぶやいた。 「せめて西行様がこと、我らの間で語り継ぎましょうぞ」「おう、そうだ。それが我ら山伏の努めかもしれん」 「それが、供養でございましょう。西行様がこと、義経様がこと」山伏たちは、草庵の後を片付け始めた。鬼一はひとりごちた。「さては、聖たちがしわざ、文覚殿か、重源殿か…」 建久元年(一一九〇)二月一六日、河内国弘川寺にて西行入滅。 ■西行の入寂後、すぐさま、東大寺の重源は、ある命令を発した。 再建中の大仏殿の裏山が、切り崩しである。その裏山に隠されていたものについては歴史は語っていない。西行と東大寺がどのような約束があったかは不明である。 西行が、その最期に、文覚に託した手紙も不明である。が、頼朝はその書状を見て青ざめた。 かくして、西行も歴史の中に、人々の記憶に伝説として生きる事となった。 (続く) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube #源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.19
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/58/源義経黄金伝説■第59回 1190年(建久元年) 葛城弘川寺桜吹雪の降る中 荒法師文覚が繰り出す八角棒を擦り抜け、文覚を 西行の拳がついている。 源義経黄金伝説■第59回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1190年(建久元年) 葛城弘川寺 荒法師、文覚が、次々と繰り出す八角棒を擦り抜け、文覚の体が浮いた瞬間を西行の拳がついてくるのだ。 文覚が八角棒で次々と颶風を起こし、西行の体を狙うが、西行は風のように擦り抜けている。回りで見ている文覚の部下たちも、二人の動きの早さに驚いている。七十才の老人同志の争いとは見えぬ。 ここ、河内葛城の山を背景に、桜吹雪の降るなかで、二匹の鬼が舞い踊っている。一瞬、その時がとまり、桜の花びらが、どうと上に吹きあげられる。 一瞬、文覚の一撃が、西行の胸に深々ととらえた。突き刺さっている。常の西行ならば、避けられないものではない。西行の体は地に付している。文覚は西行をだきおこす。 「これで、気が済まれたか、文覚殿」西行はいきたえだえに言う。 「なぜじゃ、西行。なぜ、わざとおれにやられた」「ふふう、お主に対する義理立てかな。ふふう」ふと、西行のある歌が文覚の頭を掠めた。『願わくば花のしたにて春しなむその如月の望月のころ…』 「くそっ、西行、いやな奴だな、お主は。最期まで格好をつけよって、自らの死に自らの歌を合わせよったか」 「そうだ、しきしま道のものならば、、文覚殿、我々の時代も終わりぞ」「清盛殿、死してすでに七年か」文覚、西行、清盛は、同じ北面の武士の同僚であった。 「文覚殿、最後に頼みがござる」「頼みじゃと、さては貴様、俺にその約束を守らせるために、わざと…」 「義経殿の遺子、義行殿に会うことがあれば、助けてやってくれぬか」「義行をな、あいわかった」文覚は顔を朱に染めている。 「ありがたい。俺はよき友を持った」西行よ、安んじて璋子たまこ様の元へ行かれよ」 「おお、文覚殿、その事覚えていたくだされたか」「しらいでか」西行は、一瞬思い出している。 ●「西行殿、よく来てくだされた。この璋子たまこの最期の願を聞いてくだされ」「璋子様、最期とは何を気弱な事を」 待賢門院璋子けんれいもんいんたまこが病床に横たわっている。この時代の人々は、この世のものならず美しい姫君を、竹取物語にちなんで「かぐや姫」と呼んだ。白河法皇にとってのかぐや姫は璋子だった。そして西行の悲恋の対象である。「西行殿、自分の事はよくわかります。我が入寂せし後、気がかりな事ございます。その後の事を西行殿におまかせしたいのじゃ」「お教えくだされ」西行は、やつれぐあいに、感がきわまり声がかすれる。「璋子様。」 「我皇子たちのことじゃ」「、、、、」 「影でささえてくだされや。璋子の最期の願じゃ」璋子は、西行の手をしっかりとつかんでいる。が弱弱しいのが、西行にはわかる。思わず、頬をつたわるものがあった。「わかりました。璋子様、我命つくるまで、お守りいたしましょう」宮廷恋愛の果て、待賢門院璋子のため、西行は、2人の皇子を守ろうとした。 2人の皇子とは、19歳の折りの皇子、後の崇徳法皇と、27歳の折の皇子、後の後白河法皇である。待賢門院璋子は、鳥羽天皇の中宮であった。この親子兄弟対立相克劇が、保元平治の乱の遠因となる。 ● 最期に、西行は、目を開け、文覚を見た。そして、懐から、書状を出す。「文覚殿、頼朝殿への書状だ。またワシの最期、奈良の重源殿に伝え下され」西行は目を閉じた。「く、」 文覚は膝を屈した。しばらくは動かない。やがて、面をあげすくと立ち上がった。 「皆、この寺を去るのだ」「文覚殿、せめて仲間の死体を片付けさせてはくれぬか」「ならぬ、鬼一らが手の者、こちらへ向かっていよう。すぐさま、ここ弘川寺を立つのだ」「それは、無体だ」「無体だと。俺は今、友達を自らの手で殺し、嘆き悲しんでおる。味方だとて、容赦はせぬ」「文覚殿、我々を相手にされるというか」「おお、お主らが、望むならばな」 「文覚殿、お主は頼朝殿のために働いていたのではないのか。それならば、最後に西行から黄金のありかを聞くべきだったのではないか。先刻の西行の最後の一言、その書状、何か意味があるのでは…」文覚は、きりりと眦を聖たちの方に向ける。 「ふふう、そうだな。お主ら、義経殿が遺児のことを聞いてしまったな。やはり、ここで始末をつけねばなるまいのう」文覚は、残りの聖たちの方に、ゆっくりと八角棒を向けた。 半刻後、鬼一法眼おにいちほうがんの率いる山伏の一団、結縁衆が、弘川寺の周りに集まってい た。「血の匂いがいたします」偵察の一人が言う。「遅うございましたか」山伏たちは、西行の草庵をあうちこち調べる。「襲い手たち、すべて死に耐えてこざる」 数人の体や首に、桜の枝が、ふかぶかと突き刺さっている。 桜の枝が朱に染まり生々しい。「ふふ。さすがは西行殿。殺し方も風流じゃ」結縁衆のひとりがつぶやいた。 「せめて西行様がこと、我らの間で語り継ぎましょうぞ」「おう、そうだ。それが我ら山伏の努めかもしれん」 「それが、供養でございましょう。西行様がこと、義経様がこと」山伏たちは、草庵の後を片付け始めた。鬼一はひとりごちた。「さては、聖たちがしわざ、文覚殿か、重源殿か…」 建久元年(一一九〇)二月一六日、河内国弘川寺にて西行入滅。 ■西行の入寂後、すぐさま、東大寺の重源は、ある命令を発した。 再建中の大仏殿の裏山が、切り崩しである。その裏山に隠されていたものについては歴史は語っていない。西行と東大寺がどのような約束があったかは不明である。 西行が、その最期に、文覚に託した手紙も不明である。が、頼朝はその書状を見て青ざめた。 かくして、西行も歴史の中に、人々の記憶に伝説として生きる事となった。 (続く) 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube #源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.19
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/57/源義経黄金伝説■第58回 1190年(建久元年)春、桜の花の舞い落ちる時、 河内国葛城弘川寺 西行庵桜の枝を折、「準備は調いましたぞ。そこにおられる方々、出てこられよ」と西行は言う。 ●前書き桜の枝をボきボキと折り、はなむけのように、枝を土に指し始めた。ひとわたり枝を折り、草かげの方に向かって、話しかけた。「準備は調いましたぞ。そこにおられる方々、出てこられよ。私が、西行だ。何の用かな」音もなく、十人の聖たちが、草庵の前に立ち並んでいた。 源義経黄金伝説■第58回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1190年(建久元年) 河内国葛城弘川寺葛城の弘川寺に西行はいる。 背後には葛城山脈が河内から紀州に南北に広がり河内と奈良古京の道をふさいでいる。 庵の文机に向かい、外の風景を見ていた西行は、いにしえの友を思い起こしていた。平泉を陰都にする企ては、昨年の源頼朝の「奥州成敗」により、ついえていた。おもむろにつぶやく。 「我が目的も、源頼朝殿の手によって潰えたわ。まあ、よい。源義経殿、またその和子、源善行殿も生きておられれば、あの沙金がきっと役に立つだろう」西行は、崇徳上皇のため、平泉を陰都にしょうとした。また、奥州を仏教の平和郷であり、歌道「しきしま道」の表現の場所にしょうとした。それが、鎌倉殿、源頼朝の手で費えたのである。 西行はぼんやりと裏山の方、葛城山を見つめている。季は春。ゆえに桜が満開である。 「平泉の束稲山の桜も散ったか。俺の生涯という桜ものう……」桜の花びらが散り、山全体が桃色にかすみのように包まれている。「よい季節になったものだ」 西行はひとりごちながら、表へ出た。何かの気配にきずいた西行は、あたりをすかしみる。 「ふふつ、おいでか?」と一人ごちる。 そして、枝ぶりのよい桜の枝をボきボキと折り、はなむけのように、枝を土に指し始めた。ひとわたり枝を折り、草かげの方に向かって、話しかけた。 「準備は調いましたぞ。そこにおられる方々、出てこられよ。私が、西行だ。何の用かな」 音もなく、十人の聖たちが、草庵の前に立ち並んでいた。「西行殿、どうぞ、我らに、秀衡殿が黄金のありか、お教えいただきたい」「が、聖殿、残念だが俺らの道中、悪党どもに襲われ、黄金は、すべて奪い去られてしもうた」「ふつ、それは聞けませぬなあ。それに西行殿は、もう一つお宝をお持ちのはず」 「もう一つの宝とな。それは」西行の顔色が青ざめた。「そうじゃな、秀衡殿が死の間際に書き残された書状。その中には奥州が隠し金山の在りかすべて記していよう」 「よく、おわかりだな。が、その在りかの書状のありかを、お前様がたにお教えする訳にはいかぬよ」「だが、我らはそういう訳にもいかん」「私も、今は亡き友、奥州藤原秀衡殿との約束がござる。お身たちに、その行方を知らす訳にはいかぬでな」 「西行、抜かせ」聖の一人が急に切りかかって来た。 西行は、風のように避けた。唐突にその聖がどうと地面をはう。その聖の背には大きな桜の枝が1本、体を、突き抜けている。西行、修練の早業であった。「まて、西行殿を手にかけることあいならぬ」片腕の男が、前に出て来ている。「さすがは、西行殿。いや、昔の北面の武士、佐藤義清殿。お見事でござる」西行は何かにきづく。「その声は、はて、聞き覚えがある」 西行は、その聖の顔をのぞきこむ。「さよう、私のこの左腕も御坊のことを覚えてござる」「ふ、お前は太郎左か。あのおり、命を落としたと思うたが…」 いささか、西行は驚いた。足利の庄御矢山の事件のおりの、伊賀黒田庄悪党の男である「危ういところを、頼朝様の手の者に助けられたのじゃ。さあ、西行殿、ここまで言えば、我々が何用できたか、わからぬはずはありますまい」「ふ、いずれにしても、頼朝殿は、東大寺へ黄金を差し出さねばのう。征夷大将軍の箔が付かぬという訳か。いずれ、大江広元殿が入れ知恵か」西行はあざ笑うように言い放った。 「西行殿、そのようなことは、我らが知るところではない。はよう、黄金の場所を」「次郎左よ、黄金の書状などないわ」「何を申される。確か、我々が荷駄の後を」「ふふう、まんまと我らが手に乗ったか。黄金は義経殿とともに、いまはかの国にな」 「義経殿とともに。では、あの風聞は誠であったか。さらばしかたがない。西行殿、お命ちょうだいする。これは弟、次郎左への手向けでもある」「おお、よろしかろう。この西行にとって舞台がよかろう。頃は春。桜の花びら、よう舞いおるわ。のう、太郎左殿、人の命もはかないものよ。この桜の花びらのようにな」 急に春風が、葛城の山から吹きおち、荒れる。つられて桜の花片が、青い背景をうけて桃色に舞踊る。 「ぬかせ」 太郎左は、満身の力を込めて、右手で薙刀を振り下ろしていた。が、目の前には、西行の姿がない。「ふふ、いかに俺が七十の齢といえど、あなどるではないぞ。昔より鍛えておる」恐るべき跳躍力である。飛び上がって剣先を避けたのだ。「皆のものかかれ、西行の息の根を止めよ」 弘川寺を、恐ろしい殺戮の桜吹雪が襲った。桜の花びらには血痕が。舞い降りる。 西行庵の地の上に、揺れ落ちる桜花びらは、徐々に血に染まり、朱色と桃色がいりまじり妖艶な美しさを見せている。「まてまて、やはり、お主たちには歯が立たぬのう」大男が聖たちの後ろから前へ出てくる。西行は、その荒法師の顔を見る。お互いににやりと笑う。 「やはりのう、黒幕はお主、文覚殿か」「のう、西行殿。古い馴染みだ、最後の頼みだ。儂に黄金の行方、お教えくださらぬか」西行はそれに答えず、 「文覚殿、お主は頼朝殿のために働いていよう。なぜだ」「まずはわしが、質問に答えてくれや。さすれば」「お前は確か後白河法皇の命を受け、頼朝様の決起を促したはず。本来ならば、後白河法皇様の闇法師のはず、それが何ゆえに」西行は不思議に思っていた。文覚は、後白河法皇の命で頼朝の決起を促したのだ。 「俺はなあ、西行。頼朝様に惚れたのだ。それに東国武士の心行きにな。あの方々は新しき国を作ろうとなっておる。少なくとも京都の貴族共が、民より搾取する国ではないはずだ。逆にお主に聞く。なぜ西行よ、秀衡殿のことをそんなにまで、お主こそ、後白河法皇様のために、崇徳上皇のためにも、奥州平泉を第二の京都にするために、働いていたのではなかったのか。それに、ふん、しきしま道のためにも、、」 「ワシはなあ、文覚殿。奥州、東北の人々がお主と同じように好きになったのだ。お主も知ってのとおり、平泉王国の方々は元々の日本人だ。京都王朝の支配の及ばぬところで、生きてきた方々。もし、京都と平泉という言わば二つの京都で、この国を支配すれば、もう少し国の人々が豊かに暮らせると思うたのだよ」文覚は納得した。 「ふふ、貴様とおれ。いや坊主二人が、同じように惚れた男と国のために戦うのか」文覚はにやりと笑う。 「それも面白いではないか、文覚殿。武士はのう、おのが信じるもののために死ぬるのだ」西行もすがすがしく笑う。「それでは、最後の試合、参るか」文覚は八角棒を構えた。西行は両手を構えている。八角棒は、かし棒のさきを鉄板で包み、表面に鉄びょうが打たれている。「西行、宋の国の秘術か」 「そうよ、面白い戦いになるかのう」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所作 ●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube #源義経黄金伝説
2021.10.17
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/23/夢王たちの宴第23回■異世界フォルゴダシティの移動宮殿フォトンの前で生物楽器ビブラフォンの競技会が開催。異世界の旅人、ジェイは、演奏を始めるが、声がその楽器から。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第23回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube ■第23回■ 超能力者のプレイヤー、ハーンが死んでほっと胸をなでおろした人間がいる。 道化師マリクだ。 ジェイに『ハルフォードの稲妻」の曲をビブラフォーンを演奏してもらわないと秘合が悪いのだで マリクはジェイの出番を心待ちにしていた。 いよいよジェイの番だった。 司会者はジェイをビブラフォーンのプロプレィヤーと紹介すろ。拍手がおこる。 ジェイはビブラフォーンの前に立っていた。 何かなつかしい人と再会できた。ジェイはそんな気がした。 四肢をビブラフォーンの四肢にそれぞれ同じようにつなげる。 そして頭をビブラフォーンの真中の穴につっこむ。 ジェイのすべての感覚は、この瞬間にビ、生物楽器ビブラフォーンがにぎったのだ。 「ジェイ」 どこからか声が、どこなのだ。 ビブラフォーンが呼んでいるのだ。女の声だった。 「払よ、ジェイ。やっと会えたわ」またビブラフォーンが言う。 「だれだジェイは心の声で叫んでいた。 「記憶がもどっていないのね、いいわ、演奏すれば思い出すわ」 ジェイの指は演奏し始めた。 伝説の曲『ハルフォードの稲妻』を、ジェイの左手は段々、熱をおびはじめた。 指は常人を越えた恐るべき動きをした。ビブラフォーンもそれにあわせて動いている。 先刻のハーンの演奏の時の味に、霧が出てきた。あたりが暗くなってくる。 天候が急変する。雨が降り始め、それが暴風雨となり、松妻が光 る。すでに第3楽章にはいっていた。もう演奏は30分も続いているのだ。 ジェイは体力を消耗するどころか、演奏するのにのっていた。叫奮状態となっていた。 (続く)20200424改訂1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-training●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.17
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/56/源義経黄金伝説■第57回★1189年 文治5年平泉王国の焼け跡を馬で見回る二人の姿があった。 源頼朝と大江広元である。西行に渡した銀作りの猫の像を発見する。 ●前書き太陽の光を受けて、源頼朝の眼をいる輝きが焼け跡にあった。これは…。頼朝は、その土を触ってみた。何かが土中から姿を現す。それは、猛火にも拘わらず、溶け掛けた銀作りの猫の像だった。見覚えがあった。「大殿様、その像は…」大江広元が不審な顔をしている頼朝に尋ねた。頼朝は3年前の、鎌倉での西行法師の顔と話を思い起こしていた。「西行め、こんなところに…、やはり」源頼朝は悔しげに呟いている。 源義経黄金伝説■第57回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1189年文治5年 平泉王国 平泉王国の焼け跡を馬で見回る二人の姿があった。源頼朝と大江広元である。 文治五年(一一九六)八月二二日、頼朝の「奥州成敗」で、実質上日本統一がなったといえる。大和朝廷の成立後も奥州は異国であり、異国であり続けた。 二人は、中尊寺のところに来ていた。この寺跡は焼け残っている。見上げる頼朝は、感動していた。「おお、広元、この平泉王国の富、さすがというべきか」「ははっ、聞きしに勝る都城でございます」 西行がいった通りだと頼朝は考えていた。平泉は仏教王国だった。 なにしろ、源頼朝は、伊豆に流されて以来、毎日毎日読経ばかりだったのである。心根に仏教教典が染み付いている。空で経文がいくらでもいえるのだ。 奥州藤原氏に対するやっかみの心が、頼朝に擡げてきた。 (こやつら奥州藤原氏にだけは、負けたくない。私が日本の統一者だからだ。私が日本一の武者の大将なのだ。それならば、私の町鎌倉にもこのような寺が必要だ。) 「このような寺を鎌倉に作るのじゃ。鎌倉が、都や平泉に劣ることあれば、われらが坂東武者、源氏の恥じぞ。この平泉におる職人共をすべて鎌倉に連れ帰り、寺を建てるのじゃ」「心得ました。この平泉にある寺の縁起、すべて書き出し、我が手に提出致しますよう命じてございます」 頼朝の願いどおり『鎌倉には、平泉の寺院を模倣した寺が建てられた』が、それは平泉には及ばない。所詮は、平泉の寺院のコピーでしかないのだ。コピーは本物をこえることはできない。 やがて、頼朝は、目下気になっていることを聞いた。「泰衡が弟、忠衡、発見できぬか」「いまだ発見できませぬ」広元は残念そうに答えた。「ええい、忠衡がおらねば、黄金の秘密一切わからぬとは」 古代東北の地、中でも気仙地方は、世界でも最大級の豊かな金鉱を有していた。今出山金山、氷上山の玉山金山、雪沢金山、馬越金山、世田米の蛭子館金山などである』 頼朝はいらついている。(この国を攻めたは、実は奥州黄金を手に入れることぞ。この国の王には黄金が必要なのだ、あの京都を凋落するのは黄金が一番なのだ)「国衡も見つからぬのか」「いまだに姿が見えませぬ」「ええい、国衡もいないとならば、奥州の金を手に入れたことにはならぬ。されば何のための奥州征伐ぞ」 怒りの目で、頼朝はあちこちを見回している。その時、何かがキラリと光り頼朝の目をいた。「あれは…」 頼朝が、小高い台地にある焼け跡に目を移した。あきらかに何ヵ月か前の焼け跡である。 二人は高館の跡まで馬を走らす。 「この場所が、義経殿が最期を遂げた場所でございます」 広元が冷静に告げていた。「義経が死に場所か……よし、少しばかり見て行くとするか」 その頼朝の目には、涙がにじんでいる。頼朝は馬を、その台地に乗り上げ、ゆっくりと馬から降りた。その場所から崖が北上川へと急に落ち込んでいて、東稲山も間近に見える。頼朝はその風景を見ながら思った。 「目の前のあの山が東稲山でございます。西行殿が愛でた桜山です」 (義経、なぜ私の言うことを聞かなんだ。俺は武士の世を作ろうとしたのだ。それを後白河法皇などという京都の天狗に操られよって…。我が兄の心根、わからなんだか。やはり母親の血は争えぬか)頼朝は母常盤の血を引いていた、やさしい、さびしげな義経の顔を思い浮かべていた。(あのばか者めが…) 太陽の光を受けて、頼朝の眼をいる輝きが焼け跡にあった。 これは…。 頼朝は、その土を触ってみた。何かが土中から姿を現す。 それは、猛火にも拘わらず、溶け掛けた銀作りの猫の像だった。見覚えがあった。 「大殿様、その像は…」 広元が不審な顔をしている頼朝に尋ねた。頼朝は3年前の、鎌倉での西行法師の顔と話を思い起こしていた。 「西行め、こんなところに…、やはり」 頼朝は悔しげに呟いている。「では、その猫の像は、あのおり西行にお渡しなされたものではございますか」「そうだ」「やはり、西行は後白河法皇様のために…」 「いや、違うだろう。西行は義経を愛していたのであろう。まるで自分の子供のようにな…」 頼朝は遠くを思いやるようにぽつり述べた。広元はその答えに首をかしげていた。 思い出したように源頼朝が告げた。「平泉中尊寺の寺領を安堵せよ」源頼朝は急に大江広元に命令を下していた。 源頼朝は信心深い性格だった。三二歳で伊豆で旗を揚げるまで、行っていたことと言えば、源氏の祖先を祭り、お経を唱えることだけだった。まさに、日々、お経しか許されていなかった。毎日十時間の勤行は、頼朝の心に清冷な一瞬を与えていた。神、仏が見えたと思う一瞬があるのだった。この一瞬、頼朝は思索家と思えるものになっていた。 頼朝は、自らの行っている幕府作りが日本の歴史上、大きな転換点になるとは考えてもいる。板東の新王、ついに平将門以上の存在になった。 源氏の長者が、何世紀にもわたって成敗できなかった奥州も我が手にした。彼の考えていたのは、武家が住みやすい世の中を作ることのみであった。 ■7 1189年文治5年京都 京都の後白河法皇御殿にも平泉落城の知らせが届く。 「頼朝、ついに平泉へ入りました」関白,藤原(九条)兼実が後白河法皇に悲しげに報告した。 「そうか、しかたがないのう。平泉を第二の京都にする計画潰えたか。残念だのう」「せっかく夢を西行に託しましたが、無駄に終わりました」「が、兼実、まだ方法はあろう」後白河は、また、にやりとする。 「と、おっしゃいますと…」 不思議そうに、兼実は問い返す。 (いやはや、この殿には…、裏には裏が、天下一の策謀家よのう。平泉を第二の京都にできなかったは残念だが、次なる方策は) 「鎌倉を第二の京都にすることだ。源氏の血が絶えさえすれば、京に願いをすることは必定。まずは頼朝を籠絡させよう。さらに頼朝が言うことを聞かぬ場合は…」後白河法皇の目は野望に潤んでいる。 「いかがなさいます」「義経が子、生きていると聞くが、誠か」「は、どうやら、西行が手筈整えましたような」 「その子を使い、頼朝を握り潰せ。また、北条の方が操りやすいやもしれぬ。兼実、よいか鬼一法眼に、朕が意を伝えるのだ」笑いながら、後白河は部屋に引き込んだ。兼実は後に残って呟く。 「恐ろしいお方だ」兼実は背筋がぞくっとした。 20131016改訂(続く)Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.17
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/55/ 源義経黄金伝説■第56回奥州の平泉王国第4代国王、藤原泰衡は 一瞬後、その命が吹き引き飛んで。 郎党の裏切りであっ た。 奥州黄金郷は、ここに滅んだ。 1189年(文治5年)9月3日である。 ●前書き●武家としての源氏、平家の関東制覇と奥州攻略の歴史は長い。奥州の金鉱石を狙い血みどろの争いが続いた。東国では、名高い平将門まさかどの乱の後、1028年(長元1年)平の忠常ただつねが反乱を起こした。千葉氏の祖である。 追討使は源頼信。多田の満仲の子供である。多田(現兵庫県川西市)の源満仲は、源氏、武家の始まりとされ、多田銀山の銀を持って貴族に取り入り、京都王朝での立場をきづく。 源義経黄金伝説■第56回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1189年文治5年7月 鎌倉「さあて、源氏の古式にならい、旗をあげる時じゃ、広元、準備おこたりないか」源頼朝が言った。大江広元は大江国房の孫である、大江国房が参謀として計画、奥州平泉に攻めいるは鉱山貴族である、源氏が100年程前から「前九年の役」からの野望であった。「源氏の血を奥州に広めねばならん」 「大殿(頼朝)様、日本のすべての国に動員をかけませ。頼朝様の見方かどうか判断できましょうぞ」「ということは、源平の争いのおり、我が源氏の軍に刃向かいものどもにも、動員をかけるわけか」 「さようでございます。今天下は大殿さまに傾きつつあります。誰が見方か、敵か、この動員に参加するかどうかで見事にわかりましょうぞ。これにより、大殿様の天下草創が周知徹底できましょうぞ。すなわち、源氏が武家の王であることが見事証明できましょう」「わかった。みなまでいうな。大江広元、その力をもって平泉を征服しょうぞ」 ■武家としての源氏、平家の関東制覇と奥州攻略の歴史は長い。奥州の金鉱石を狙い血みどろの争いが続いた。東国では、名高い平将門まさかどの乱の後、1028年(長元1年)平の忠常ただつねが反乱を起こした。千葉氏の祖である。 追討使は源頼信。多田の満仲の子供である。多田(現兵庫県川西市)の源満仲は、源氏、武家の始まりとされ、多田銀山の銀を持って貴族に取り入り、京都王朝での立場をきづく。 源頼義よりよしは奥州に攻め入り、前九年の役(1051年から1063年)、後三年の役 (1083年-1087年)を通じて関東平家を郎党とする事に成功した。 源頼義よりよしは、板東の精兵を、奥州の乱の鎮圧に動員した。その契機は平直方なおかたの娘婿となったからである。平忠常ただつねの乱のお り、平直方なおかたは追討使となり、源頼義よりよしの騎射の見事さ に感心し、娘を嫁がした。 平直方なおかたは鎌倉に別荘を持っており、源頼義は義理父からこの屋敷を譲り受ける。鎌倉は関東平氏のの勢力範囲であったが、源氏は関東地方に人の支配権を得た。源頼義の子供であり平直方なおかたの外孫である義家よしいえは、前9年の役、後3年の役でその武名を天下にとどろかせた。 源義家よりの4代目が、源頼朝、源義経の兄弟である。 後三年の役は1087年に 終わる。 その100年後、頼朝の私戦、奥州大乱は、1189年7月に鎌倉の出発を持って始まる。 源頼朝は、新しい日本歴史を作ろうとしていた。 日本の統一である。 ■6 1189年(文治5年)9月 平泉王国 奥州王である藤原泰衡は悲しくなった。なぜ私が攻められるのだ。 (約束を守ったではないか。ちゃんと頼朝が言うとおり、義経を殺し、その首を差し出したでしないか。義経を差し出せば、奥州は安堵するという約束をしたではないか。くそっ、西の人間など、やはり信頼できぬ。この戦どうしたものか。助かる手段はないものか。そうだ、ともかくも頼朝に平謝りに謝ろう。そうしなければ、親父殿、祖父殿に申し訳が立たぬ。この身、どうしても奥州仏教王国守らぬばのう。 そうだ、まだ西行がおる。あやつを捕まえ、頼朝に申し開きもうそう。そうだ、それがよい。奥州の平泉王国第4代国王、藤原泰衡は思った。 一瞬後、その命が吹き引き飛んでいた。郎党、河田次郎の裏切りであっ た。 奥州黄金郷は、ここに滅んだ。 1189年(文治5年)9月3日の事である。 (続く)●山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.15
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/22/夢王たちの宴■第22回■ゴルゴダシティ宮殿でコンテストが。 次々プレイヤーがビブラフォーンに命を 。次は超能力者3人組ハーンが。彼はジェイを神の左手 として異世界にして叫ぶ。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第22回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube ■第22回■ 最初のプレイヤーがビブラフォーンに体をあずける。 そいつは「やめてくれI」と大きな声をあげたが、観客からは笑い声しか返ってこなかった。 おかげで、すぐに楽曲の第1章もプレイしないうちに死んでしまい、観客からは非難の声があがっていた。 観客は騒ぐ。怒声だ。「そんな奴をビブラフォーンプレィヤーにいれるな」「水ましのビブラフォーンプレィヤーをいれるな」 感覚世界は、そのプレィヤーが弾きおわるまで持続する。 しかし、プレイヤーが、途中で死亡すると、中途ハンパな感覚を観客にあたえ、後味が悪いのだ。 コンテストは中盤をすぎ、すでに何人かのプレィヤーがビブラフォーンの中に同化されていた。 まだ、楽局額局の最期までひき続けた者はいない。 次のプレィヤーが舞台の上に連れてこられた。 例の超能力3人組の一人ハーンだった。 「いやだ、俺も死にたくない」 ハーンは舞台の上で暴れている。ふと、ジェイが横にすわっているのに気がついた。 「おい、あんた、ジェイ。こいつらをとめてくれ、ここの世界をあんたの力で新世界にしてくれ、お頑いだ」 ハーンは暴れまわるが、モーターたちにとりおさえられる。 超能力は効かない。ハーンにはそんな薬と処理がされていた。「なぜ、答えてくれないんだ」泣き声だった。 「もし、止めることができないなら、いいか。あんた俺ハーンの意識を今度の新世界界では、より高い地位の人物に刷り込んでくれ、頼んだぜ」 ハーンはジェイの方をにらんでいる。 「わかったのか、おい、ジェイよ。「神の左手」よ」 ジェイはわずかにうなずいた。意味かわからなかったのか。 ハーンは暴れるををやめた。モーター達に向かっていう。 「わかったよ、お前ら、俺ハーン様がすばらしい曲をひいてやるよ。見ていろ。曲名は「ハルフォードの稲妻」だ」 ハーンがプレイする曲名が、司会者から告げられると。観客がどよめいた。 ハーンは目を血ばしらせて、ビブラフォーンにむかう。 四肢をそれぞれのビブラフォーンの部位にかけて、顛を、ビブラフォーンの真中につっこんでいる。「ハーン様の、よーし、一世一代の演奏だぜ」 ビブラフォンの演奏が始まった。 あたりに。霧が立ち込み始め、天候が急変してきた。 しかし。数十分。 ハーンは死力を尽していたが、やはり、彼もこときれかハーンの死体の四肢がビブラフォーンにあわせて踊っていた。 いたいたしい感じを観客も感じた。 天気は、ハーンが死ぬと同時に快晴に向かい、 ビブラフォンの音だけがうつろに響いていた。 (続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-training●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.15
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/54/ 源義経黄金伝説■第55回★1189年(文治五年)津軽平野を横切る岩木川の河口に十三湖と呼ばれる唐船も出入りする港がある。藤原秀衡その弟秀栄の勢力圏でもある。義経と吉次が目指している。 源義経黄金伝説■第55回★作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1189年(文治五年) 十三湊とさみなと 津軽平野を横切る岩木川の河口に十三湖と呼ばれる海水湖がある。現在は狭い水戸口で日本海と結ばれているが、昔は広大な潟湖であった。 義経と吉次が目指していた十三湊とさみなとがここである。 藤原秀衡、その弟秀栄の勢力圏である。この十三湊を中心に蝦夷地、中国大陸との貿易を行い、繁栄していた。この湊から貿易された蝦夷や、黒龍江など、異民族の産品は、京都に送られ、公家たちを 喜ばせていた。 夷船、京船など各国の船が商売を求めてこの港をおとづれている。その船どまりに、吉次の船は停泊している。船を外海用の船にさし変えて出かける。食糧、水を積み込むためである。 「吉次よ…」と義経は吉次に呼びかけていた。牛若の頃を思い出している。「そうだ、あの源空はどうしていよう。今の私の姿を見たらどういうだろう」源空はすでに法然として宗教活動にとりくんでいる。後白河法皇も帰依しているのだ。(無駄な殺生はおやめなされと今でもいうかな。だがすでに私の手はもう汚れている、平家の若武者の屍をいくたり気づいてきたことか。日本全国に死体の山を気づいていた。兄じゃのために、その私が兄者のために、この日本を追われるのだ) 今はもう若き頃、思い出だ。 「京都の鞍馬山、よう冷えたな」「はっ、殿。京と鞍馬山よりも奥州平泉の方が寒いのではありませぬか」 吉次は、義経の質問の意味をうまく理解できずに答えていた。「いや、吉次。人の心じゃ。京の人の心は冷たすぎる。あの都市の地形によるものなのか」「殿、これからゆかれる蝦夷はもっと寒うございますぞ。雪も深うございます」「そこに住む人の心が暖かければよいが…」少しばかり義経は考えていた。 「ところで吉次。静は健やかだろううか」「心配なされますな。後ろ盾には西行様がついておられます」「が、西行様もお年じゃ」「ようございますか、義経様。義経様が今日あるは、西行様の深慮遠謀のお陰。すべて考えられる手は打っておられます」 義経は、目の前に広がる寒々とした日本海の海面を見つめ、寂しそうにして言った。 「そうであろうな、無論。が、吉次殿、お前はなんで私を逃がす手助けをした。なぜ心変わりした」「吉次は商人。利で動きますぞ」吉次は僅かに笑ったようだった。「利か。私と一緒にいて、お主に何の利益がでるか」 「ふふう、それはこれからの義経様の動き次第。よろしいか、義経様。十三湊の先は宋国そして、あの金でございます。また新しい国が誕生するとの噂も聞いております。その時に義経様に助けていただきましょう。藤原秀衡様の祖父、清衡様は、昔から黒龍河を逆上っておられます。その河の沿岸には、商品が数多くございましょう」 「それに吉次、俺は蝦夷の地図を持っておるからな」「そう、それでございます。それは言わば宝の地図。いろんな商材がありましょう」 吉次は遠くを思いやるような眼をした。 「もう一度、夢を追ってみるか」吉次は思った。 (奥州藤原秀衡様のお陰で一財をなした。が、その秀衡様も今はない。これからの日の本は、源頼朝殿の世の中になる。が、そのうち外国で一儲けも二儲けもしてみよう。商人吉次の心には、もう日本の事は映っていないかもしれない。出雲、備前、播州、大坂渡辺、京都平泉第、多賀城、平泉、、。 あちこちを移り住み、商売をした。平の清盛と共に奥州の金をつかい、福原で宋の商人と貿易もした。日本全国に吉次事の手配の者が散らばり商売を行っている、主人であるこの儂がいなくても、商人の砦としての吉次王国は揺るぎもしまい。儂の後輩が跡を継いでくれよう。日本全国に儂のような商人が増え、日本の商売が繁栄し、日本が繁栄するだ)吉次はそれを、望んだ。(日本が平和であればよい、すでに頼朝殿により、日本は統一されるだろう) もの思う吉次、義経二人の前に、唐船が、突然現れて、義経らの船腹に急激に力任せにあたっていた。 衝撃が走る。 「む、この唐船は、、何用」 「何奴?」 船から竿がのび義経の船へ。その船へ飛び乗ってきた僧衣の聖たちが、突然、義経を圧し囲んでいた。「義経様、お命ちょうだいいたす」聖たちが叫んだ。「待て、お主ら、誰の手の者だ」「我らか。我らは文覚様が手の者だ」 「何!文覚」「今はもう頼朝様が世の中。義経様のこの世での役割、もう終わられたぞ。消えていただきたい」「まてまて、お主ら、文覚殿にお伝えあれ。この義経は兄上と張り合う、そのような望などない。もう私、義経は日の本にはおらぬ。遠い国へ行くのだ。日の本のことなど預かりしらぬこと」「それが俺らは合点が行かぬ。いつ帰って来られるかわからぬ。それは頼朝様が世を危うくする」 聖たちは、八角棒を構え、殺意をあらわにしている。義経はしかたなく刀を引き抜いている。いにしえの征夷大将軍、坂上田村麿呂将軍ゆかりの刀である。飛びかかる男を二人切り放った。船上で、殺戮が始まろうとした。 「まて、皆、やめよ」戦船の長らしい男が、船からわたって来て、義経に対峙していた。「義経様と存じ上げます、我らも無駄な殺生はしたくはございません。文覚様からの伝言をお聞きいただきたい」「何、文覚殿の…、申してみよ」 「もし、坂上田村麿呂将軍ゆかりの太刀をお返しくださるならば、我々手を引くように言われております。我らが目的はその太刀でございます」 「なに、この大刀を…」「さようでございます。その太刀は征夷大将軍の太刀、大殿様にとっては征夷将軍という位、大切なものでございます。また皇家にあっては、その太刀が外国に渡ること、誠に困難をを生ぜしめます、なぜなら皇家にとって、その刀は蝦夷征服をして統一を果たした日本国を意味する大事な刀でございます」吉次が言った。「義経殿、よいではないか。お返しなされい。そんな太刀など、どうでも良いではございませぬか」 「何を言う、吉次。お前も知っておろう。この太刀、我が十六歳のおり、鞍馬から盗みだし、ずっと暮らしを共にしてきた刀じゃ。そう、やすやすと…」 船長ふなおさが、続けて言う。「では、こういたしましょうか。約束をもうひとつ。もし、その太刀をお返しくださるならば、決して義経様が和子、義行よしゆき様を襲いはしないとお約束いたしましょう」 「我が和子をか。くそ、文覚め」「が、殿、このあたりが取引の決め所かと」吉次が告げる。「この商売人めが。むっ」しばらく、義経は考える。「よい、わかった。この太刀、お返しいたそう。が、必ず、我が和子、義行がこと、安全をはかってくれ」 義経の太刀は、頭らしい男の手に渡った。 やがて船と船とを繋いでた桁が外されている。「では、義経殿。よき航海を、いや、失礼いたしました。これから先の事。我々の預かり知らぬ方。我々は義経殿には合ってはおりませぬ。ただ、海の中から、伝来の行方知らずの太刀を、拾いあげただけの事」 両船は、少しずつ、離れて行く。 「が、義行のこと、必ず約束を…」義経は船にむかい叫んだ。「わかり申した。文覚様にそう告げます」「大丈夫でしょうか」吉次が疑問を投げる。「まあ、西行殿、鬼一殿、生きておわす間はな、大丈夫であろうよ」義経は、遠くをみながら言った。 (続く)●山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.14
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K夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/21/夢王たちの宴■第21回ついに生物楽器ビブラフオーン・コンテストの日が。 [大教界]に、「移動宮殿フォトン」が来て。大導師デルガをたたえる声が、 渓谷の壁に反響し大きくなる。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第21回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube ■第21回■ビブラフオーン・コンテストの日がやってきた。空は天頂まで晴れ上っている。 大教界に、その日移動して来ていた移動宮殿フォトン、 そのまわりに仮設された舞台には、ひとだかりができていた。 「デルガ、デルガ」 と大導師デルガをたたえる声が、渓谷にある大教界の壁に反響し、段々と大きくなっていく。 「どうだな。私の人気の程は?」デルガが、となりにいる道化師マリクに聞く。デルガはこころなしか疲れているようだった。 「宣伝が効いたようです。これで、このビブラフオーンコンテストが成功すれば、デルガ様の導師としての地位は磐石たるものになるでしょう」 「ふふ、君もそう思うか、朕もそう思うぞ。かわゆいい事をいうのを、道化師マリク、君の地位も朕に相応して同じく磐石となろう」 「ありがとうございます、デルガ大導師。未来への階段が今そこにございます。どうぞ、のぼらせたまえ」 「それでは、愚民なるゴルゴダシテイの民ばらの前に我姿をあらわそうぞ」 フオトンの壁の一部が開き、仮説コンテスト会場に階段がつながっていく。観客のどよめきがおこる。 デルガは、舞台バルコニーに身を乗り出し、群衆にむかってはなした。 「ゴルゴダシテイの賢人諸君、よく集まってくれました。 ここ、聖なる「大赦界」渓谷の場所を借りて、私神のご加護を受けた「ゴルゴダシテイ」聖なる大導師、デルガはゴルゴダシテイの賢人を代表してビブラフォーンコンテヌトの開催を宣言するものである。 賢人諸君楽しまれよ。 ビブラフォーンの神なる調べを聴き、こよいのひととき、酔いしれられよ」 拍手が小さくおこり、それは拍手の嵐となり渓谷に響き渡る。 ビブラフォーンに対するゴルゴダシテイ住民の期待が、極度に大きいのだ。デルガは続けた。 「今年も、多くのビブラフォーンプレイヤーが、他の都市から我々ゴルゴダシテイのために参加してきてくれている。我々ゴルゴダシティの人間を楽しませてくれるために、はるばる参加してくれたのだ。 感謝とねぎらいの拍手を、彼らに与えられよ」 拍手が一段と大きくなる。フオトンから壁が舞台へせり出してくる。 昆虫の標本箱の大型に見える。しかしそれは、プレイヤー達が壁に虫ピンでとめられたようにとりついている。 そんな壁が、舞台の上に迫りよってきた。 もちろん、ジェイもいた。その他の多くのプレイヤーは、デルガが命令したプレイヤー狩りでつかまった人達なのだ。 バイブレーターの「ハーン」、ハートブレーカーの「ムスカ」、クラッシャーの「プラス」の3人組の姿もその中にあった。 観客たちも、もちろんビブラフォーンのプレイヤー達全員が喜んで、プレイするとは思ってはいない、 「ブレイヤー狩り」の事は知っていた。知っていなから、自分達がプレイヤーにならなかった安堵感もあり、よけいにビブラフォーンが作りあげる「感覚世界」への期待に胸おどらせている。 歓喜の声が、ビブラフォーン演奏の前からあちこちで上がり始める。 (続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-training●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.14
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おかげさまで、グーグル口コミと写真の再生回数は6111万回になりました。おかげさまで、グーグル口コミと写真の再生回数は6111万回になりました。皆様ありがとうございます。(だんだん業務報告ですが)まだ近所ー伊丹市の写真しかアップしてませんし、それぞれ再生は10-50く回らいです。過去の写真でしょうね。数を稼いでいるのは、下の文章時代から2万枚は写真を撮影して1万枚はアップしてます。ーーーーー2019年10月03日(木) に以下のように10万回です。「こんにちは hiroichi さん(私のことです)記念すべき 100,000 回目の閲覧です。投稿した口コミの閲覧回数が、ついに 100,000 回に達しました。あなたらしい視点が他のユーザーに大人気です。」ーーーーー
2021.10.13
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K夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/20/ 夢王たちの宴第20回■ビブラフォン競技会参加を 了承するジェイ。デルガは彼の力に気づき怯える。自分の夢世界崩壊を予感。 道化師アリソンは競技中「神の左手」現象が世界システムの変調する事を期待。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー第20回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube■第20回■ 「導師デルガ、こちらがプレイヤーのジェイです」2人は、フォトンにつき、ゴルゴダシティの実質的な支配者デルガを前にしている・ 「ジェイ、こちらがビブラフォーンコンテストのブロデューサーの導師デルガです」 「どうも、初めましてデルガ導師。お会いできて光栄です」 ジェイはデルガと握手をしながら、デルガの顔に見覚えがあると思った。どこだ。どこであったのか。 一方、デルガの方もジェイの顔に既視感があった。 お互いに少しの問見つめあっている。 「ジェイ、あなたとはかつてお会いしたことかありましたかな」デルガ導師はそう口を開いた。 「いえ、これが初めてだと思いますが」 「それはそれは、失礼しました。私の間違いでしょう」「ところで、プロのプレイヤーの方が、ちょうど我々のゴルゴダシティに、来ておられろという事はとてもうれしい事です」マリクが言った。 「それじゃ、ジェイ。ビブラフォーンの演奏曲を指定していいでしょうか」 「曲目は、「ハルフォードの稲妻」をお願いしたいのです」デルガが言う。 「ですが、導師。「ハルフォードの稲妻」は演奏が禁じられた曲になっていて、悪魔が生まれ出るという曲のはずです」道化師マリクが反対した。マリクはゴルゴダシティでは実質NO2だ。 「かまわない。悪鬼どもが出現するだと、面白いではないか」 「わかりました」 道化師マリクは、陰でほくそ笑んでいた。 「それじゃ、キーワードはハルフォードの稲妻の第2楽章としよう。それが弾かれ始めたらおもしろい事がおこるぞ。なあマリク」 考え込んでいるマリクにデルガが声をかけた。 「それでビブラフォーンブレイヤー狩りの方はどうだ」 「かなり集まってきています」 「そうか。それしゃ、もっとビブラフォーンコンテストの前人気をあおってくれ」「わかりました。導師」あいかわらず、マリクは笑っていた。ビブラフォーンコンテストの人気は、このゴルゴダシティの大いなる娯楽だ。この娯楽は、市民の人気を左右する。 「それから、マリク、ジェイをホテルの一番良い部屋にお泊めして、お世話をしてくれ」「わかりました」 マリクは従順だ。 「それでは。ジェイ、コンテストの日に又お会いしましょう。何かとご不便をおかけしますが、、このマリクに言いつけて下さい」 「わかりましたデルガ導師」ジェイは頭を下げ後ろに下がりながら答えた。 二人の会見は終った。 導師デルガは、この男ジェイはビブラフォーンの演奏日に死んでしまうに渥いないと思った。 しかし、あの顔はどこかで見た記憶が払拭できない。何の考えもなく、デルガは大数界の壁を見た。 そうか、くぞっ、わかった。デルガは独り言ちた。 頭がくらくらとした。倒れそうになる。 そばのモーターが、かかえてくれなければ、倒れていたところだ。 何という事だ。そうか。そうだったのか。 デルガは冷汗を流し始めていた。そして罪の意識がおいてくる。 「私の世界も終るかちしれん」デルガは、再び独りごちた。 「何か、おっしゃいましたか」他の道化師が尋ねた。「いや、何でもない。私を一人にしておいてくれ」 デルガは、その日から、コンテストの日まで個室にこもり続けた。一方、マリクは、ジェイをホテル個室に案内してから、アリソンを呼んだ。 アリソンはマリクの命令を受けて、モーターの動きを統禦している男に会いに行く。 「もうすぐ、ここは私の世界になる」マリクもまた独りごちた。ジュイの左手が、本当の神の手ならば。 (続く)20200417改訂1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube #夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.13
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/53/源義経黄金伝説■第54回文治五年(一一八九)六月一三日。 「九郎義経殿の首、届きましてございます」大江広元が、源頼朝に告げていた。源義経黄金伝説■第54回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube■文治五年(1189)鎌倉文治五年(一一八九)六月一三日。「九郎義経殿の首、届きましてございます」大江広元が、源頼朝に告げていた。「何、義経の…」「いかがいたしましょう。御館様直々に」「いや、止めておこう。顔を見知りおく軍監、梶原景時と、和田義盛に行かせるのだ」これが義経が首か。塩漬けにされた首が、漆箱から出された。梶原景時は思った。何とこやつは不思議な奴よ。数々の新しい戦い方を考えつきながら、言うこと、話すこと、考えることは、まるで童子のような奴であった。義経の首は、塩漬けにされていた。奇麗に彫金された漆の箱から取り出される。されど、泰衡も可哀想な奴よ。自らの首を絞めよったわ。頼朝様が自分の弟をこのような目に合わした奥州藤原氏を許す訳がない。なんと政治的見解のない男よのう。所詮は奥州の田舎者。祖父、父よりはずーっと人間が下がりおる。梶原は思った。頼朝様の怖さを知らぬ。あの方は自分の思いどおりに動かぬ者、あるいは頼朝様の思いを読み取れぬ者を非常に嫌われるのだ。が、それに義経に対する兄弟愛を泰衡は気づかなんだか。義経を捕縛して、頼朝殿に差し出せば何とかなったかもしれんな。いや、まてよ、やはりだめか。頼朝様が欲しいのは、奥州は金の打出の小槌よ。頼朝様が言えば言うだけの金が送り込まれて来るわ。これからの戦略を梶原は思った。源頼朝は忙しげにあちこち歩き回っていた。頼朝は自分で命令しておきながら、義経の首は見たくなかった。「どうであった」不安げに頼朝は、大江広元に尋ねた。「梶原曰く、確かに義経様の首であったということです」「むう、泰衡め。我が弟を殺しおったか。早速、奥州を打つ。我が弟が敵だゃ」 頼朝は、急に怒り出した。その怒りの激しさに、広元は驚いている。なぜだ。ご自分が命令なさったくせに。この殿は、京の女子のようなところがあるな。 「院宣はいかがいたします」「そのようなもの、必要あるまい。この頼朝の弟を殺したは許しがたい。奥州藤原 氏め、余が総指揮をとって攻め滅ぼそうぞ」 頼朝は甲高い声で、上ずって、まるで常軌を逸してに命令してい た。「御意。いよいよ日本は、頼朝様のもとに」「大江広元よ。日本よりも、俺は義経を殺した藤原泰衡めが憎いのじゃ。父、藤原秀衡があれほどかわいがっておった義経を、自分が王国支配したいがゆえに、 殺してしまいおった藤原泰衡めがのう」「はあ…」広元は急に気が抜ける気がする。一体、何を考えておられるのじゃ。が、まあよい。今は奥州藤原氏を滅ぼせばよいのだ。大江広元と、源頼朝は、しばし無言でみつめあう。頼朝は、急に昔にした義経との会話を思い起こした。「兄上、父上は兄上に似ておられますか」 頼朝は、急に義経にこう聞かれたのだ。「なんだ、こいつは…」 義経は真剣な眼差しで頼朝をじっと見つめている。「こやつは子供か」と頼朝は思った。義経は、父のことを覚えていないのだ。一二歳の時まで父親と一緒に戦い、無念にも負けた頼朝とは違う。父親の愛情を受けたこともなく、父の記憶もまったくないのだろう。義経の心のどこかに、父を思う気持ちが常にあるのだ。と、人間観察にかけては優れている頼朝は思った。このような純粋な心を持っている奴は、かえって危ない。思い込んだらそれこそ命懸けだと、頼朝は義経の心の純粋さを羨み、そして義経を憎んだ。一方、大江広元は、鎌倉へ来られよという書状を受け取った日のことを思い起こしていた。貧乏貴族である大江広元は、昇殿を許されていない。つまり、帝にお会いすることなど、かなわぬのだ。しかしながら、幼少のころから蓄積された学問が、広元の自意識を肥大させていた。私は大江の家のものだ。自分ほどの者が、なぜ重用されぬのか。藤原の阿呆どもが、どんどん出世し、なぜこの俺が、このような貧乏ぐらしをしなければならぬのか。鬱屈した意識が、一層勉学に打ち込ませていた。そんなある日、源頼朝の元にいる知人から、ぜひとも鎌倉へという手紙を受け取のだ。新たな天地、板東の鎌倉!。新世界。広元は迷った。鎌倉などは町ではない。この当時、日本で都市といえたのは京都、そしてかろうじて南都奈良。そして奥州藤原の平泉。それ以外は泥臭い田舎である。教養人など、一人もいないのだ。 広元は文化の香りが好きだった。知的な会話を欲していたのだ。その知識人のいない鎌倉へなど。しかし、源義経の存在が、広元の意を決しさせた。それは暑い日だった。その日、木曽将軍を滅ぼした義経の軍勢は、都大路を行軍していた。京の民は、「ほう、あれが義経か」と物見高く、都大路に並び、一目有名な義経を見ようとざわめいていた。義経は武巧一の武者であり、そしていわばアイドル スターだったのだ。大江広元は興味にかられ、庶民の間に入って、義経の軍勢を眺めていた。「うっつ」広元は、衝撃を受け、急に道ばたに倒れていた。何かが広元の額に当たり、一瞬気を失い、倒れたのだ。やがて、気がつくと、額が割れじっとりと血がにじんでいる。「くそっ、一体」「だいじょうぶかい、お公家さま」見知らぬ庶民が、不安げに広元に声をかけている。「一体、私はどうしたのだ」 思わず、ひとりごちていた。「お前さん、気付かなかったのかい。義経さまの馬が撥ねた石が、お前さんの頭に当たったのさ」額に手をあてる、じっとりと血がにじんでいる。「何…、今、源義経殿は…」怒りの勢いに、その庶民の男はのけぞり指さす。「ほら、あそこさ」大江広元は勢いこんで人込みをかき分け、源義経の顔を覚えておこうとした。「おのれ、源義経、覚えておけ」相手は凱旋将軍。何も覚えてはいまい。俺は単なる路傍の石。が、今に見ておれ。何かが広元の中ではじけていた。俺は、俺の知識で新しい国の形を作ってやる。源家が武威で国を治めるならば、わが家、大江の家は知識で新しい政治の形を。急にそんな思いが、広元の心を一杯にした。思いもかけぬ考えだった。そんなことを、今の今まで考えてもみなかった。この日、しかし、民衆の羨望の目を浴びながら、にこやかに、すこやかに、何の苦労も知らぬげに、都大路をゆったりと後白河法皇の元へ向かう源義経に、大江広元は、どす黒い怒りを覚えた。続く)●山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube
2021.10.12
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K夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/18/夢王たちの宴■第18回光が、ジェイの左手に収斂。伝説の「神の手」だと超能力者三人が驚く。 その3人の前にゴルゴダシティの導師デルガの部下、道化師マリク が出現した。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第18回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube ■第18回■ 地面にころかっている若者達は、まぷしさをこらえ、薄目をあけるブ光球の中でジェイはすっくと立っていた。 ジエイの服はバラバラに吹き飛んでいた。ジェイの表情も変っていて、手を上に高くさしあげていた。 「あ、あれは」 ハーンが声をあげる。光が、ジェイの左手に収斂していた。「神の手だ」ブラスが叫ぶ。三人共、驚きで、全員が体を回着させていて、ジェイの左手をみっめている。ジェイは夢遊病者の様に歩き出し.ハーン達もジェイのあとについて行く。 伝説の『神の手』、ジェイボラードの伝説。 それを彼らハーン達は、今まさに目の前にしているのだ。それは新世界の誕生を意味していた。道化師に知らせなけれはならない事など忘れていた。 彼らは、ジェイの後を追う道化師の存在に、気づいていなかった。その道化師は、虫に変貌していたのだ。 道化師は、この世界に存在する何に荷でも化ける事ができる。それがこのゴルゴダシテイのある世界のルールだった。 この虫「道化師」は、アリソンに連絡をとった。アリソンはプレイヤー狩りに精を出していたので、話を、マリクに連絡をつないだ。「わかった。アリソン、私が出むこう」 マリクは、「オブザーバー」を使い、ジェイの位置を、確かめさした。「オブザーバー」は、透視能力が極単に発注している男である. ジェイの位置に、マリクはジャンプした。マリクは、空間移動能力を持っていた。 ジェイと三人の若者の前に、突如、男が出現した。「誰だ」三人が叫ぶ「俺の事を知らんのか。道化師マリクだ」 「それじゃ、あんたが、俺たちのスボンサーってわけか」ブラスが言った。「そういう事だ。だが、お前達は仕事を果していない。神の手を持つ男が現われた場合、すぐさま、我々、道化師に連絡するはずだろうが」 三人は顔を見あわせた。とりあえずハーンがしゃべる。「そ、それはわかっていたよ。でも、こいつが本当に神の手かどうか調べていたんだ」 「言いのがれはやめろ。まあ、いい、どうせ、もうお前たちには用が ない。どこにでも消えろ。私が用があるのは、その男ジェイだけだ」 「何だと」三人は同時に叫んだ。「我々の力を見くびっているな、マリク」 三人の力が、マリクの体に集中する。 しかし、急にマリクの体が消える。「くそっ、どこへ消えた」代りに、胴体を「チューブ」でかこんだ人間が十人程、彼らの目の前に出現した。 「何だ、こいつらは」ブラスが叫ぶ。「気をつけろ、こいつらはモーターだ」ハーンが、どなっていた。三人の力が、各々の目の前のモーターに集中する。 ムスカの前のモーターは、心臓をにぎりつぶされていた。ブラスの前のモータ-は、体がばらぱらに吹き飛んでいた。残りのでモーター達の体はぐるぐる廻っていた。赤ら顔のハーンの力だった。 数分波、モーター達は、すぺて地面に倒れている。 (続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-training●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube #夢王たちの饗宴--ドラッグウォーの跡でーランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村コメント この記事についてブログを書く
2021.10.12
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/17/夢王たちの宴■第17回■出会った3人組の若者たちは超能力者で、ゴルゴダシティを目指すジェイは彼らの能力に翻弄される。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第17回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube■第17回■ ジェイは3人の若者にたづねる。 「お前たちは超能力者ーか」 「ふふん、わかったか、俺は地面やその他の物体を振動できる「バイブレーター」ハーンだ」 「次は俺の番か」 先刻からハーンをけしかけていた小男が言う。そしてジェイをにらむ。゛「うっ」 ジェイはよろける。 ジェイの心臓は何かにつかまれたかのように痛む。 「ふふ、わかったか。俺はハートブレイカーのムスカだ、俺が全力をふりしぽれば、お的の心臓を止めることなど簡単だぜ」 「わかったか、俺達の前で大きな顔はしないでもらいたい。ここは地獄の門だ、俺たちは三途の川の渡し守りだ。通行税をいただこうか」 最後の男、ブラスが言った。 「それが、お前らの目的か、汚ないゴキブリどもめ」 「何!」 3人組の若者たちは、色めきたつ。 突如、ジェイの体はきりきりと痛む。 全身がモリでさされているようなのだ。 クラッシューのブラスの超能力なのだ。 ジェイは、地面に手をっき、うなだれしゃかみこむ。体のふしぶしに痛みが襲う。 振り払うこともできない大きな力。万力で全身をつぶされている。そんな感じがした。 地の上の左手が急にピクッと幼く。左手が自分の手でないような気がした、 手がわずかに輝き始める。 光が手のまわりに集まってくるようだ。 まわりの空気が微妙にふるえた。 瞬間、ハーン、ブラス、ムスカは何かにはじきとばされる、地面に倒わる。 何かが、ジェイのまわりの空間を披っていた。 大きな地鳴りがした。 集まった光が、光球となり、ジェイを包んでいた。(続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-training●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.11
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/52/源義経黄金伝説■第53回平泉での源義経自刀の知らせは、京都の後白河法皇のもとに。法皇はこれからの策を藤原(九条)兼実と話し合う。 源義経黄金伝説■第53回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube ■ 1189年(文治五年) 平泉ちかく北上川の川縁にいる西行が、小船を用意している吉次の方に向って言った。 「さて、吉次殿。義経殿の逃げ先、よろしくお願いいたします」「わかりました。すべておまかせを。して静殿は、いかがいたします」 「吉次殿、この手配りは、静殿には話していない。供を付けて京都に帰っていただくか」「わたしもそのほうがよいと考えます……」吉次も首肯した。静は気を失って倒れている、遠くやけくすぶる高殿、義経屋敷跡の煙が巻きあがっている…。 二日後、北上川の船上に、ゆったりとすわっている義経がいた。 吉次が姿を見せる。気付いた義経が話しかける。「のう、吉次殿、十五年前もお主の船で、だったな」「さようでございますなあ。なつかしい限りでござます」 吉次は、遠くを見透かすような目をする。「あの折りは、ものもわからぬまま、お主に連れられ、摂津大浦(尼崎)から多賀城まで一航海じゃった。が、あの頃の俺は、意気に燃えておった」 「何をおっしゃいます、義経様。これから、まだまだでございます。これからの行き先、蝦夷には、新天地が待っていましょうぞ」義経にとって平泉は新世界であったが、まだ、その先の新世界へ行こうというのだ。 「吉次殿、お前もあの頃に比べると、偉くおなりだな」「あの仕事で、私に運が開けました。お陰様であの縁で、藤原秀衡様にかわいがっていただき、このような身代が築けました」 「ああ、そうか、すべては西行法師殿のお陰だなあ」「さようです。西行様のお陰でございます」「残念ながら、私は西行殿の役には立てなんだ」 義経はすこし寂しそうな顔をした。 「西行様の思いとは…」 「あの平泉を、第二の京都、陰都とするとする事だ。そして崇徳上皇をお祭りする事だ。平泉王国を、北のそなえとして仏教王国として、平和郷を作ることだった。その将軍が私だ。また、主上を、平泉お招きするという案だ。この企みは、後白河法皇も気に入っておられたのだ」 「仏教の平和郷ですか。もう、それもこの日本にはございますまい。すべては鎌倉殿の思いのままになりましょう」 「藤原泰衡殿が、兄上頼朝殿と何とかうまくやってくれればよいが」「それは、やはり、むつかしゅうございましょう」吉次は冷たく突き放した。 北上川の水面も寒々と、月光をあびて澄み渡っている。 ■ 「なに、義経、自刀したとな」京都の後白河法皇がうめいた。 「今、多賀城国府より知らせが入りました」藤原(九条)兼実が答えた。「しかたがないのう。後は頼朝が動き注意せねばなあ。ところで、義経が家来、皆、討ち死にいたしたか」後白河が、兼実に不安げに尋ねた。 後白河の顔色を見て、藤原兼実が意地悪く尋ねる。「院がお気になさっているのは、弁慶の事でございましょう」兼実は、うれしげに返事を待っていた。「そうだ、あやつは朕が手先。が、途中で義経に寝返ってしまいよった。せっかく熊野の山で見つけた、朕がための闇法師だったのだが」 「さようでございましたな。院が熊野へ参拝なさったのも、もう三十回になりましょうかや」「そうなのだ。弁慶は十度目の熊野参拝の折り、朕が、眼につけたのだ」後白河はそのおりを思い返すように言った。 この時期、蟻の熊野詣といわれるくらいに、熊野詣は流行っていた。我も我もと、皇族や貴族が和歌山の熊野に詣でるのである。京都から淀川をくだり、渡辺津から泉州をぬけて… 熊野は旧き日本の時から、1つの王国勢力であり無視できぬ。それゆえ、特別の配慮が行われている。熊野三社は伊勢神宮と同格とされている。大和朝廷統一以前の勢力がいまでも残滓として残っている。山伏もこの地域を勢力範囲とした。 当時の海の交通には熊野の海商が、海の侍が大きな役割を果たしている。 熊野三社の供御人(くごにんー神社に属する人間)が、遠く奥州まで船を運んでにぎわっている。 熊野、伊勢の回船や船人をいかに把握するかが、この時期の日本の支配者には是非とも必要であった、山伏もまた、この時期の日本にひとつの勢力である、が、源頼朝と大江広元は、日本全国に守護地頭という制度をつくり、板東のご家人を送り込む事により統一しょうとした。 十度目かの後白河法皇の熊野巡幸。その折りに山法師が後白河法皇の宿所に願を願っていた。 「殿下、弁慶とか申す山法師、ぜひともお目にかかりたいと申しております」「どんな奴じゃ」「いや、それは化け物のような…」「化け物のようじゃと、おもしろい」「朕が会ってみようかのう」「お止めください。危のうございます」 その返事の前に、向こうで騒ぎが興り、何かが法皇の前に飛び出して来ていた。雑色を振り切り、弁慶が雑色たちの人垣を跳躍して来たのである。恐るべき膂力であった。 「私が、その化け物の弁慶でございます」 悪びれずに、その大男は言う。後白河は思わずたじろいでいたが、「くはは、お主が弁慶か。ふふふ、おもしろい奴よのう」 が、一瞬、後白河は、弁慶の顔に何かを見たようだった。「いかがなされました、法皇様」「いや、何でもないのじゃ。汗が目に入ってのう」後白河は顔をつるりとなでた。「それでは、私の考え、お聞きください」 護衛の武士が追いついて来た。「恐れ多いぞ、何者ぞ。主上の前なるぞ。いかがいたした」「よいよい、しゃべらせてやれ」「よろしゅうございますか。法皇様、この世の中は、断じて間違ごうてございます」「何をぬかす」「よいよい、しゃべらせてやれ」」「平家がごとき世の中を支配するとは、必ず法皇様、天を御所に取り戻してくださいませ。これらは我らが願いにございます」「我らじゃと、我らとは誰じゃ」「我々、山法師でございます」 「ほほう、気にいったぞ。ふふふ、お主の心根、面構え、名は何と申す」「はっ、武蔵坊弁慶と申します」「弁慶とやら、朕の闇法師を申し付けるぞ」 ちらりと後白河は笑ったように見えた。が、弁慶は「ありがたき幸せ」 と深々と頭を下げているので、その表情が見えない。「して、お主の母、ご鶴女殿は息災か」「法皇さま、わたしの母親の名前をなぜご存じですか…」「うむ、昔あったことがな、あるのだ」 (続く)●山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.10
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/16/夢王たちの宴■第16回ジェイは目ざめ、移動都市ゴルゴダシティを探して歩き始めた。その頭に『アイラを助けろ』の言葉が浮かぶ。そのジェイの前に若者三人が立ちふさがる。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第16回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube ■第16回■ ジェイが目ざめた時、彼の体は、荒野のただ中に横たわっている。 彼はゆっくり立ち上り、彼がタワーシップに乗っていたかどうかの証左はないかどうかあたりを見渡してみた。 しかし、タワーシップが存在したと、証明できるようなものは何も存在していない。 ジェイは、移動都市ゴルゴダシティの位置を探して歩き始めた。ゴルゴダシティのことは頭にインプットされていた。 『アイラを助けろ』 そのフレーズが、急に、ジェイの頭の中に浮んでくる。 アイラだと………闘いた事がない。 何なのだ。 それに今、ゴルゴダシティの意味ははっきりと認識されてはいない。ない。 しかし、ジェイ・ポラードの自分自身の心が、わからぬまま、そこへ行けと告げているのだった。 小一時間歩くと、ある種の都市の構造物が見えてくる。黄金に輝くピラミッドが印象的だった。 ゴルゴダシティ。のようだ。 ドラッグ大戦役の前、ここは大都市だったらしい。ドラッグ大戦役の後、数百年、 ゴルゴダシティに住む人知は色々な超能力を有する異人種の移動都市へと変貌していた。 ジェイは市域らしきところへ入っていた。 このエリアは、かっては多くの人々が行き来していたであろう繁華街のあとらしい。 大戦役の後、爛熟した花と樹木が町並みを被っていた。 植物もまた、大戦役の影勧下、変化している。 植物相が変ったのだ。 植物で被われた街を、ジェイはひとり行く。 「そこを行く、にいさんよ、待ちなよ」 ジェイを呼ぴとめる声がした。 木の影から、まっ赤な顔をした若者三人組が、飛び出して来た。 「おまえは、ドラッグを採しているのかい」 「それとも、、ビブラフォーンの流れプレイヤーかい」 歩いているジェイの前に、廻り込んで、くさい息をかける。 ジェイは無言だ。 「おい、返事をしろ。お高くとまるのじゃないぜ」別の若者がいう。 「やっちまえよ、ハーン、こんなところを歩いているやつら、どうせたいしたやつじゃないぜ」 「ハーンよ、こいつにお前の能力をみせてやれよ」 別の若者が、最初の赤ら顔の若者ハーンをけしかける。 ジェイは立ちどまり、若者たちの方を向く。 若者達も足を止める。 「やめてくれないかね。今、俺は混乱しているんだ」 「おいおい、こいつは、自分自身が誰だかわからないって顔をしてるぜ」 若者達はいやらしい笑い声をあげた。 「ハーン、やれよ、お前の手で、こやつの目をさまさせてやれ」 仲間が、赤ら顔のハーンをけしかける。 ハーンは、ジェイの方に近づいてくる。 「俺に近づくなというのがわからんのか」 ジェイは語気つよく言う。 「俺の力を見てから、えらそうに言え」 ハーンは、手を左右に動かす。 地面が揺いでいた。ジェイの目の前の風景が設えていた。 が、ハーンの仲間は何も感じていないようにニヤニヤ笑っている。 そいつらの靴は地面から3mくらい浮いていた。 こやつらは念動力を持っているのか。 そうジェイは思った。(続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)
2021.10.10
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/15/ 夢王たちの宴■第15回異世界で生物楽器ビブラフォーンプレイヤー狩りが実行。見張りが報告。 タワーシップが出現し、後に、左手が輝く男が発見。道化師マリクは 一人つぶやく。彼は「神の左手」伝説の男なのか?夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第15回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube 「マリクさま」マリクが、ビブラフォーンプレイヤー狩りを命令していた道化師の一人が来ていた。 「どうしたアリソン」 アリソンは、マリクの手下である。 「リソーナ地区を見ていた道化師から、連絡があったのです。巨大な船が実体化しようとして、失敗したようです」 「あたりには人はいなかったのか」 「どうやら、その道化師だけだったようです」 「それで」 「その実体化しようとした空間に、一人の男が倒れていたそうです」 「で。その男はいかがした」 「ご心配なさらないで下さい。ちゃんと、追跡者をつけました」 「そうか、そいつもビブラフォーン・プレイヤーにさせようか」 「しかしながら、一つ、気になることがあります」 「何だ」 「そやつの手が、輝いていていたそうです」 「それは、右手か、、あるいは、左手なのか」 「左手だったようです」 「左手、、神の左手だ!」 おもわず、マリクは叫んでいた。 「えっ、何ですって」 アリソンは問いかえす。 「いや、いや、おまえは気にする必要はない。よいか、その男は絶対、私の前に連れてこい。わかったおるな」 「はい、わかりました」 「伝説のジェイ・ポラードか、、、、神の左手か」 道化師、マリクは、独りごちた。(続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)
2021.10.09
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この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/14/サブタイトル編集YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/14/ 夢王たちの宴■第14回■この世界の、生物楽器のビブラフォーンの出現が 伝脱だ。ビブラフォーンは曲を演奏を聴く観客にドラッグ状態の空間を与え、興奮の中観客がそのまま息絶える。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第14回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/http://www.youtube.com/user/yamadakikaku2009● ■第14回■ この楽器の1つのビブラフォーン自身が、自ら複製をこしらえたのだ。ビブラフォーンは、いわば、生きている楽器なのだ。 ビブラフォーンの安置場所では、次の朝、そこを開けると、ビブラフォーンが二つになっているという具合だったのだ。そして、この異世界では、ビブラフォーンに満ちたのだ。 この生きている楽器、ビブラフォーン自体の出現が、伝脱となっていた。 ある日、といっても、かなり昔の事らしいが、ある作曲家が、自分の曲がうまく作曲できないので「大赦界」へ出向いて行き、『教えの壁」に向かい、悩みをうちあけたのだ。 『教えの壁』は、その作曲家に、次の朝早く、この「大赦界」へ来いというお告げを授けた。 次の朝早く、「大赦界」へ来た作曲家は、大暴風雨にあった。あたりには誰もいなかった。 稲光りが急にした。雷が鳴る。近かった。 作曲家は近くの森で雨やどりをしようと走り出したのだが、雷に打だわた。 気絶からさめると、そこにはこの楽器ビブラフォーンがあったのだ。空は、急に晴れあがっていた。 楽器ビブラフォーンは、赤いテーブルをひっくりかえした上に、まん中に巨大な突起物をつけだような形をしていた。 全体はビンク色をしていて、宝石が敢りぱめられていた。この生物体である楽器には鉱物までがついているのだ。 作曲家は、恐る恐るはしの突起にさわって見た。しれは、えもいわれぬメロディと、空間に、七色の紅を出現させていた。 さらに、そいつは、温かい。 無機物ではなく、有機体だった。つまり、ビブラフォーンは自分の曲への意思を具現化できる「生さている楽器である」と理解した。 作曲家はこのビブラフォーンを使って次々と名曲を生んでいった 最後には、彼の死体が、逆にビブラフォーンに操られていた。彼の死は突然訪れたらしい。 ビブラフォーンをあやつり始めたら、つまり一つの曲を演奏し始めたら、最後まで弾き続けなければならない。途中でやめることは不可能なのだ。 もしブレイヤーが、そこまでで体力がなくなれば、そのブレイヤーは死んでしまい、彼の体は逆にビブラフォーンに操られるのだ。 ビブラフォーンの上ですでにこと切おた死体の手や腕や足が勅きまわるさまは、昆る者に、恐怖を通り越えた興奮を与えずにはおかなかった。 それが、危険をかえりみないプレイヤーを続々と生んでいる原因だった。 人間は死と隣り合わせが好きなのだ。 ビブラフォーンは、いったん演奏され始めると、まわりの観客に単なる音だけではなく、幻覚、香り、奇妙な昧、手ざわりなどを与える。ドラッグな空間をつくりだす。 人間の五感を刺激し、ビブラフォーンの回りに、一つの巨大な感覚世界を出現させるのだ。 観客たちは、その感覚のうねり、曲とプレイヤーの宴に酔いしれるのだった。 一面、考えてみれば、命を削る非常に危険でもあるビブラフォーンの演奏会は、つねに1年に一回と決まっていた。 毎年、数人のプレイヤーがビブラフォーンに同化され死亡していた。彼らは体と心を、ビブラフォーンに捧げたのだ。 (続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube●how to draw manga ●manga-training#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)
2021.10.08
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/13/夢王たちの宴■第13回ゴルゴダシティ勢力圏の大赦界の『教えの壁』に見とれていた導師デルガは、 道化師マリクに問う。「今年の楽器「ビブラフォーン」競技会は?」 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第13回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutube 大赦界は、ゴルゴタ=シティ勢力圏外周の大渓谷になる。他移動都市の勢力圏の境界ギリギリの場所だ。 いつから、その壁はあるのだろうか。 ゴルゴダシティが存在する前からその壁は存在する。 その峡谷の壁、すべてが『教えの壁』と呼ばれていた。 ゴルゴタ=シティの民は悩みかあるとそこへ行くのだった。 壁に もたれかけ、あるいは口づけをし、あるいは自分の手をあてて自分の悩みを聞いてもらうのだった。 「教えの壁」は各々の人々に、答えを与えていた、、壁は、極彩色で色着けされていた。それをもし上空からながめたならぱ、人の姿を描いたものだとわかるだろう。 それは、顔であり、「ジェイ」に似ていた。 外の大赦界の『教えの壁』に見とれていた導師デルガは、唐突に、道化師マリクに話しかけた。 「マリク、どうだね、今年の「ビブラフォーン」のコンテストの応募ぐあいは?」 「よくは、ありません、導師デルガ。何しろ「ビブラフォーン」をひきこすためには精神力の強さがあるだけでもだめで、実際の肉体の力強さを必要としますからな」 「そうだな。プレイヤーとして腕がよくない奴は、逆に「ビブラフォーン」自体にあやつられかねないからな」 「その通りです、導師デルガ。ですが、今の「ビフラフォーン」プレイヤーの集まりぐあいですと、「ビフラフォーン」コンテストが開けない事もあります」 「良き「ビフラフォーン」フレイヤーはいないのか」 「そうです。あまり多くは集まりませんでした」 デルガは少し考えていた。 「デルガ導師、しかし、「ビフラフォーン」コンテストをしなければ暴動かおこるやもしれませんぞ。過去二回のプレイイベントは成功とはいえませんでしたからね」 「そうだな。他のイベントで「自殺志願の超能力者同士の争い」というのは、あまりに早く勝負がつきすぎたしな」デルガが言う。 「それに「動物のサイボーグ」対サイコキッカーの試合というのも人気がでませんでした」 「そうだな」 導師デルガは考え込み、やかて手を打った。 「そうだ、マリク、「プレイヤー」狩りをしよう」 「えっつ」 「いいか。ビブラフォーンのブレイヤー狩りをするんだ」 デルガ導師は、自分のアイデアに酔いしれる。冷静なる間合いを読んでマリクは、調子を会わせた。 「そうですな。デルガ導師、それは、それで、なかなかエキサイテングですな。ビブラフォーンコンテストの人気かあがるというものてすよ」 「よし、至急、手のあいているモーター達に命令し、「「ビブラフォーン」プレイヤー」人狩りを姑めろ」 「わかりました」 道化帥マリクは、命令を伝えに移動宮殿「フオトン」下のフロアヘ降りてゆく、 「そう、プレイヤー狩りか、ふふん」 導帥デルガは部屋で一人、満足し興奮していた。 デルガの前に。宝石をちりはめた「ビブラフォーン」がおかれていた。それをいとおしげになでまわす。 これこそ、唯一、正真正銘の「ビブラフォーン」なのだ。 この世に存在する残りのビブラフォーンは、この「ビブラフォーン」のすべて複製なのだ. (続く)20200411改訂夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第13回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube #夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.07
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YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n1703dc/51/源義経黄金伝説■第52回 文治五年(1189)4月30日 奥州、藤原泰衡は、揃う武者共に義経殿を高館を襲えと命令を下した。 源義経黄金伝説■第52回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube■ 「もはや、これまでだ。義経殿を高館を襲え」 文治五年(1189)4月30日 奥州、藤原泰衡は、目の前に揃う武者に命令を下していた。激情で目の前が真っ赤になっているのだ。 奥州藤原の武者たち500騎は「おう」と鬨の声を上げる。藤原秀衡がなくなりまだ、2年とたたない。泰衡は平泉で兄弟や部下の粛正をつくかえしている。自分の命令を聞かない部下や弟を亡き者にしていた。その滅亡へ、自ら進んでいるのだ。 武者は、義経がいる高館を目指して駆け寄ってくる。高館の物見がきずく。高館に火矢が打ち込まれる。 泰衡の軍勢は、半刻後、高館を取り囲んでいた。逃れる道はない。高館へのすべての道は兵で塞がれている。 「高館が、燃え上がっております」 燃え上がる高館近く、北上川の対岸で、西行と静が二人していた。「くそ、まにあわかたか。静殿、残念だ」「静殿、義経殿にあのこと伝えてられよ。聞こえるかも知れぬ」西行は静を促した。 「殿、和子は生きておわす」遠くから、静は義経に呼びかける。聞こえているのかいないのか義経の姿は望見できない。「殿、わ、和子は…大江広元様のご慈悲で生きておわす。和子の命、お守りくださると約定いただきました。これは政子様も、ご承知になられております」 義経の姿が見えたような気がした。静の姿にゆっくりうなずき、炎の中に入って行った。 火の手が高館すべてにまわっている。 外から呆然と見上げる西行と静。「さあ、もうよかろうぞ」「義経さま……」静は、高殿の方へ声を限りに叫んでいる。 高館の中、「もはや、これまでか」義経はうめいている。「義経様、どうぞ、ご準備のほうを」 東大寺闇法師、十蔵が、義経そっくりの顔で言う。十蔵は西行の命令で、この地にいるのだ。「十蔵、私だけが助かる訳にはいかん。私を信じてついてきてくれた郎党たちも、助けてくれ」「義経様、それは無理というもの」 義経の回りには、弁慶始め郎党たちが、取り囲んでいる。皆、覚悟を決めているのだ。「どうぞ義経様、お逃げくだされ。我々はここで討ち死にし申す」弁慶が涙ながらに言う。「そうです。それが日の本のため」他の郎党も続けた。「どうか頼朝殿への無念をはらされよ」「弁慶、自分だけいい子になるなよ」「よろしいですか。義経様は我々の宝。いえ、この日本の黄金じゃ、どうか生き延びてくだされ」「武者は戦場で死ぬものでございます。我々、義経様のために死ぬこと、恐れませぬ。むしろ誇りに思います」「我々は、平氏との、幾たりかの、戦いを、楽しませていただきました」「武勇こそ武士の誇り]「義経様…」 「俺は良き友を持った」義経のほおを、滂沱の涙がしたたりおちている。義経は、その涙を拭おうともしない。「友ですと。我々郎党をそのように…」 義経の郎党、全員が義経をとりかこみ泣いている。皆、胸に込み上げて来るものがあるのだ。 弁慶は思った。これは愛かもしれんな。衆道ではない。仏門で、衆道は当たり前だが、俺の義経様への思いは、やはり愛だろう。そうでなければ、もともと俺は後白河上皇様の闇法師だ。鎌倉殿の情報を取り入れがために、義経様に近づいた。 弁慶は不思議に思った。そして時折、後白河法皇の憂鬱げな顔を思い出していた。弁慶を見る法皇のまなざしには何かがあった。家族愛、不思議な感覚であった。 弁慶は、また、一個の後白河法皇の闇法師、いわば法皇の捨てゴマだった、その男に対し法皇のまなざしは何かを告げようとしていた。 法皇は、今でもまだ、白拍子を呼んで、今様いまようを口ずさんでおられるのだろうか。弁慶は遠く、京都にいる法皇を思った。 「泣いている暇など、ございません。早くお逃げくだされい」東大寺闇法師、十蔵が促す。感傷に冷や水をかける。 「何じゃと、人間の感情がわからぬ奴だのう、お主は」 弁慶が涙で目を一杯にしながら、十蔵にけちをつける。 「弁慶殿、俺らが東大寺闇法師の命は、目的のために捨てるのが定法。今がその時。一刻も猶予はならんのだ」 「十蔵殿…」 義経が十蔵の肩に手を乗せた。 「済まぬ。私がごときのためにのう。おぬしの命を捨ててくれるのか」「何をおっしゃいます。奴輩は、炎の中で死ぬが本望。先に東大寺での戦で、多くの部下を殺しておりまする。また目的に死ぬこと、東大寺の闇法師として恐れはいたしませぬ」「すまぬ。許せ。皆、さらばだ」 義経は、高殿地下につくられた坑道から消える。十蔵が支度し、施工した坑道であった。 「東大寺勧進職である、重源殿の絵図、役に立ったな」弁慶がひとりごちた。 やがて平泉、北上川を見下ろす、北政庁北西の小高い丘にある高館に、藤原泰衡の軍勢がわれさきになだれこんできた。 「お主ら、ここから先は地獄ぞ。わしが閻魔大王ぞ」弁慶が叫ぶ。 その弁慶めがけ、数十本の矢が打ち込まれていた。 弁慶は一瞬、たじろぐが、再びからだを動かし「ぐっ、これは、これは、泰衡殿の武者もなかなかのもの、決して平家の武者どもにひけはとらねのう」矢羽を片手つかみで、みづからの体から、引き抜きながら、弁慶は泰衡の兵に打ちかかっていく。「こやつは化け物か」泰衡の兵共がその生命力に驚いている。 西行と静は、まだ対岸にいた。静は、うなだれている。 「静殿、さあ、今上の別れだ。一節、薄墨の笛を吹いてくださらぬか」「西行様、酷なことをおっしゃいます。それに果たして、義経様に聞こえるかどうか」 「何をいわれる。静殿の義経殿への愛の証し、ここで遂げられよ。義経殿の冥途への旅に、趣向をなされ。それが、静殿のお持ちの源氏ゆかりの薄墨の笛だ」 西行は文人、しきしま道の主導者であった。この殺戮の場においても、文学者的な演出を試みる。それが、静には奇妙に思われる。この方西行様は何をお思いなのかか。 「薄墨の笛」これは代々源氏の長者に受け継がれる、鋭い音色の出る笛、竜笛である。昔から、中国では竜の声として言われているのである。 静は、この笛を、吉野で義経と別れた時にもらっている。太郎左たちに襲われたときも肌身離さず持ち歩いていたのである。 「よいか、静殿、最後の別れ。一節吹かれよ」西行は、静に命令している。「西行様は、酷なことを、、」「静殿、義経殿への想いを、この場でされよ…、義経殿とは、もう二度とはこの世の中で会えぬ。別れを惜しまれよ」 静は、涙ながら笛を手にした。 高館の火の手は、一層燃え上がっている。 炎を背景に、笛を吹く静の姿は、妖艶であった。静の目の色は、今や狂人のそれである。悲しい音色が、いくさ場の中で、旋律を響かせている。『十蔵殿、頼んだぞ。このあいだに義経殿は、お逃げくだされい』 西行は心の中で叫んでいた。静には義経が逃げる事は教えていない。時間稼ぎの目くらましに、静を使おうとしていた。 「ああ、義経様」演奏の途中で、静は崩れ落ちる。秘笛は川原にころがりおつる。 西行は、静を抱き起こし姿を消そうとした。藤原泰衡の軍勢が、北上川対岸にいる、西行と静に気づき、こちらにむかってきたからである。 東大寺闇法師、十蔵は、高殿の炎の中、僧兵の雄叫びを聞いたような気がした。 ここが死に場所。平泉、高館。そして義経殿の身代わり。何とよい死に場所を、仏は与えてくれたものか。東大寺の大仏を焼いてしもうた心残り、部下の僧兵たちを助けられなかった責は、これで少しは心がやすんじられよう。 悪僧(僧兵)の頃に、心は戻っていた。紅蓮の炎を見ながら、十蔵は思った。 心は、その時に舞い戻っている。 奈良猿沢の池のまわりに、僧兵の首のない死体がごろごろ転がり、地面を流れた血糊が、地を、どす赤黒く染めあげている。 東大寺、興福寺の伽藍の燃え上がる紅蓮の炎は、火の粉を散らせる。死体をくすぶらせる煙が舞っている。えもいわれぬ臭みが、辺りを覆っていた。空は昼というのに、炎のため浅黒く染まって見える。 あちこちの地面に差し込まれた棒杭の先には、平家の郎党に仕置きされた僧兵の首がずらりと無念の形相を露にしていた。 ここが死に場所、熱さが十蔵の意識をおそう。 紅蓮の炎が重蔵の体をなめ尽くした。 東大寺闇法師、十蔵の体は、義経として滅びた。(続く)●山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所 http://www.yamada-kikaku.com●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube#源義経黄金伝説ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.07
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2021.10.06
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/12/夢王たちの宴■第12回■デルガ導師は、別の「夢世界」のひとつ。コルゴダシティの指導者だ。 ゴルゴダシティの宮殿「フォトン」は、ピラミッドであり移動都市である。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第12回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ ■第2章■ゴルゴダシティ 移動するピラミッドである、ゴルゴダシティの宮殿「フォトン」は、メラリーの街区から、「大赦界」をめざし移勤している。 ビッビッと、はてな音が、移動宮殿フォトンの底部から流れてきている。 耳のいい人が闘けば、生きている奴隷の「モーターたち」のあえぎ声や、うめき声がそれに続いている事に気づいただろう。 移動宮殿「フォトン」内の導師の部屋は、「フォトン」のコントロール・ルームと同義語だった。 デルガ導師は、この「夢世界」のひとつ。コルゴダシティの指導者である。 宗教的な色あいが添加されているのだが、それでもメカニカルな イメージはそこなわれてはいない。 「デルガ導師、もうすぐ大赦界に入ります」 デルガ導師の側に控える、道化師マリクが、低い声で言う。 「そうか」 デルガは、道化師に冷たく答える。 こやつら、道化師は、あやかしの民だ。 まったく、何を考えているのかわがらん。 こいつらは、私の地位すらねらっているやもしれん。 こやつかは、何にでも。変化できる。思っただけで気持ちが悪い。 しかし、私の目的にために利用できる限り利用しよう。 そう、導師デルガは恵っだ。 導師デルガは、ゴルゴダシティの住民に、娯楽を与え続けねばならなかった。 導師は、いわばイペントの大プロデューサーでなければならないのだ。 なぜ、導師デルガが、ゴルゴダシティの住民に娯楽を与え啖けなけれぱならないか?。 それは、住民の持つ恐ろしいパワーなのだ。 娯楽を持ってして、導師ゴルゴダシティ内に市民をおさめておかなければ。 彼らは、ゴルゴダシティを、自ら出ていき、外部・巨界で、その持てる能力 超能力を発揮するだろう。ゴルゴダシティ住民は、超能力者の集団なのだ。 住民たちの心エネルギーのポテンシャルは、恐るべきらのであった。 それが、もし外部へ発揮されたならば破壊のエネルギーとならさるを得ないのだ。 導師デルガは、移動宮殿フオトンに居住する権利を有していた。既得権だ。 その、フォトンは正五面体をしている。外壁はソーラーバッテリ受光器械となっていて、大腸光線をうけてキラキラと光っている。 輝きながら移動できろピラミッド、それがフォトンだ。 しかし、移動宮殿フォトンを動かしているのは人の力なのだ。 移動宮殿フォトンの底部には、何万人というドレイがつながれていた。 神経薬品を常時、注入さわていて、ほとんど人間とはいいがたい、彼らの体から はっする念動力エネルギーがコントロールされて、宮殿フォトンが動く。 彼らの首すじにば電極が埋めこまおていた。 その電極に埋まられていて、電流が流れる度にうめき声と共に念動力エネルギーが ほとばしり。その念動力エネルギーをフォトンの中枢部で集める。 ドレイは、一人づつチューブに入れられていて、背中には、レザーメスで、シリアルナンバーが、刻みつけられていた。 彼らは『モーター』と呼ぱれた。 ゴルゴダシティで犯罪を犯した者は、すべて奴隷「モーター」とされ、移動宮殿トンの動力となるのだ。 (続く)キング・オブ・ドリーム-あるいは創造者の夢■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.05
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/11/夢王たちの宴■第11回何トンもある戦車が、キャタピラが動き、ジェイの左手の皮膚上に乗りかかる。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第11回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 何トンもある戦車が、キャタピラが動き、ジェイの左手の皮膚上に乗りかかる。 その戦車のキャタピラが、ゆっくりとジェイの手の皮・哲、骨、筋肉やかきまわす。 手の細胞が、ジュクジュクと粘りつき、体液がゆっくりと流れだし、機械にまとわりつく。 いたさの感覚が、数倍にのべて、緩慢に神経組織を、かたつむりのように這上がっていく。普通の痛さは、もう感覚ガイで、むしろ、甘美な皮膚感覚が、体全体を覆っている スブローギン大佐が繰り返す。 そのスブローギン大佐の声も遠くの方から山彦のように聞こえてくる。 「ジェイ、P359の中和剤の隠し場所をいえ」 ドクター・シュッカ。 「いいかね、楽しい経験だよ」ジェイは、 しだいに記憶・意識が薄らいでゆく。 意識の中に顔が明滅する。突然だ。 美しい少女の顔。少女? それは誰なのだ。 ■急に、ジェイの意識は覚醒する。チューターだった。「お助けします、ジェイ」「君ははマスターに逆っていいのか] 『チューター853、何ヲスルノダ』 マスターの声が暫いている。 チューターの体が影のようにちじこまって見える。「申し訳ありません.マスターより上位の方の命令なのです」 「上位者、それは一体?] 「ジェイ・ポラードです」」「ジェイ=ポラードだって、波は今、実在しているのか」「いえ、それは」 急に、ジェイの足元が振動する。 ジェイのまわりの風景は、静かに崩壊してゆく。 クリアな色は、段々色あせてゆき、物体はその輪郭がぽやけてくる。 ジェイは一つの「夢世界」の終りを体感しているのだ。 あるいは、一つの夢からの、、まどろみからの、、ゆっくりとした目覚めの様な気がした。世界が、ゆっくりと、薄ぼんやりとした、わけのわからない環境へと変貌してゆくのだ。 目の前のタワーもゆるやかに、天頂の方から、どろりと、何かが溶けたかの揉に崩れてゆく。 船体の方も、今、ジェイが立っている基盤でさえも、熱くなってくる。足が徐除に床ヘ下へと沈んでいく。 もう、今は、チューターの姿も、作りかけた粘土細工の様に変化していた。 「ンェィ、さぼうなう……」 チューターはわずかにしゃべったようだが、それは、もう言葉になってはいなかった。 目の前のすべての物が、風化し、フエイドアウトしていく。ただーの体のみが、この世の中の厳然たるもののようにみえた。 ジェイは、自分の体がはっきり感じるとともに、左手に痛みを感じてきた。 今、彼の手は、ワルシゃワで戦車でひきつぷされた手に反比してきているのだ、 神経緩和則を、ドクター・シュッカに打たれた時の、痛みが、じんわりと、戻ってくるような気がした。気絶しそうになる。 ジェイが、気を失しなう一瞬、「タワーシッブ」は、はぽ形を失ない、新しくジェイのまわりに、実体化してくる「夢世界」があった。 それは、ゴルゴダ・シティである。 (続く)20200408改訂夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でーキング・オブ・ドリーム-あるいは創造者の夢■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)
2021.10.04
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/8/夢王たちの宴■第8回ジェイ=ポラード 「大戦役」は戦争犯罪人。過去の地球歴史における最悪の男と呼ばれていた。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第8回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 虚無空間のモニターに、個人データが、ディスプレイされている。 ■ジェイ=ポラード「大戦役」における戦争犯罪人。過去の地球歴史における最悪の男と現在評価されている。地球上に、試薬「ジェイP359」をばらまく。この「ジェイP359」によって、世界は「多元夢世界」へと変遷した。つまり、「夢世界」が、多数存在するようになった。 夢世界出現前、つまりジェイP359が効果をあらわす前、ワルシャワ条約軍によって逮捕され、拷問を受ける コード111ジェイニ、「ジェイ=ポラード」ノ、パーソナルデータヲ、インブットセヨ コード111 ジェイヲ、ジェイP359実行発生点、ゴルゴダシティヘ、出現サセヨ ジェイは、チューターから、この地球の歴史をゆっくり学び始めていた。そして、「大戦役」によって、数多くの夢世界が発生している事を聞いた。 また、「タワーシップが、「大戦役」直後にマスターによって作られていたこと。 タワーシップとは、「船上に地上500mにもおよぷ巨大な塔を作り、塔の頂上に胎室を設け、その暗室の中に、人類の種子を保存する目的の船である」と学んでいた。 ジェイの入った海は、本当の海ではなかったのだ。「浮遊海」だった。 「浮遊海」は」夢世界」同志のはざまの空間に、存在する多重海なのだ。それゆえ、浮遊海はどこの時代にも属していない。 ゆっくりと、種々の夢世界の間空間を、たゆとうているのだった。 ジェイの光り始めた左手、を見て、チューターが言った。 「あなたは選ばれた人だったのですね、ジェイ」「そうらしい。私もしらなかった」 ジェイの答えは気の抜けた返事だ。 「しかし、あなたは、自分自身の存在理由を、発見したわけですね」「そう、記憶は、先代ジェイの記憶が、私の中で蘇った事を告けていろ。地球に対する贖罪が、私に与えられたテーマの様だ」 チューターの方を向いて、ジェイははっきりと言った。(続く)夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第8回キング・オブ・ドリーム-あるいは創造者の夢■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.03
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/9/夢王たちの宴■第9回 ジェイは、今の夢世界のタワーシップを離れ、ゴルゴダシティに行かなければという心の中の声がある。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第9回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 「チューター、私はゴルゴダ=シティに行かなければ、ならないのだ」ジェイはチューターに言う。 なぜ、「ゴルゴダ=シティ」なのか、ジェイにもわからなかった。 「ゴルゴダ=シティですか」 チューターは。驚いたようだった。 「そうだ。そこで払を待っている運命があるらしい」 「というと」 「それが、私にもはっきりとわからないのだ。私の心の中にその答があるらしい」 ジェイは答える。 チューターはしばらく黙っている。 そして、ゆっくりとジェイに告げた。 「他の夢世界へ、このタワーシッブを侵入させる事はタワーシップの消滅を意味するのです」 〃コード586 解読不可能。基本コードニ反シマス。 タワーシップヲ他ノ夢世界へ侵入サセルコトハ、タワーシップノ自己防禦機能ヲ作動サセル″ クリ返ス コード586ヲ実行セヨ コード586 解読不可能“ ■この空間の光が、総て、そこに集中している場所、「クリスタルパレス」。その中の一室。 全旨の少年がいた。 彼が、念動力でキーボードをうっているのだ。 後ろでは、誰かが曲をひいている。 「マスター、私の命令に。従え」 「解答不能」 『マスター、私の。いいか、言う事を聞くんだ。いいか、私が創造者なのだ』 『解答ヲ拒否シマス』 『マスター、私が、、お前を作ったのだぞ』 『私ノ、「タワーシップ」ハ、ソレ自体、完結シタ世界デス。何人モ、ソレヲ破壊スル権利ヲ、有シマセン。マタ、アナタノ、命令ハ、論理的デハアリマセン。 ジェイ・ボラードノ、意識ヲ、「ゴルゴダシティ」ヘ持テコムコトハ、タワーシッブノ世界ノ、破壊ヲ意味シマス、サラニ、ヨリ激シイ混乱ヲ、引キオコシマス』 「かまわない。私が命令しているのだ。私には創造者としての権利がある。マスター、弘の言う通りにしろ、さもないと』 『ドウスルト、、イウノデス」マスターは尋ねる。 (続く)夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第9回キング・オブ・ドリーム-あるいは創造者の夢■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.03
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K夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/10/夢王たちの宴■第10回 ジェイに対して、タワーシップの胎室に戻すと、この夢世界のマスターがいう。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第10回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ ジェイは,チューターに運れられて、長い廊下を歩いていた。 「チューター、どうしたのだ。急に私を呼ぴだして」 「それがまったくわからないのです。あなたの言った事のおかげで、呼 びだされたのかしれません』 「私の言った事、いったい、それは何」 「ジェイ、「ゴルゴダシテイ」ヘあなたを連れていけ といったことですよ。 それは、他の世界であり、他人の夢世界なのですよ。我々は、それぞれの夢世界に属さ れています」 「属されている。個人の自由ではない。それは」 「私にもその理由はわかりません。ただ、多くの夢世界でこの世はなりたっている。そう教えられました。 「それで、今、私を、どこへゆくつもりかね」 「の夢世界のマスターの所です」 「だが、マスターは、すでに死んでいるのではないのか」 「いいえ、彼の残留思念は、まだ存在しているのです」 ジェイとチューターは、タワーシップ中央部にあるらしい、 光り輝く部屋の中に入った。 『ジェイ、ヨク来タネ』 威嚇的な声が聞こえる。がしかし、 その場所には、ジェイとチューター二人以外にいは誰もいない。 「マスター、あなたはどこにおられるのです」 ジェイが疑問を感じる。 しかし、マスターの姿は、まったく見えなし、それにたいする答えは。 『私ハ、マスター。そして「タワーシッブ」ソノモノガ、私ナノダ』 「どういう意味ですか」 「私ノ意識ハコノ「タワーシッブ」ダケデハナク、コノ「タワーシップ] ガ存在シテイル世界,ソノモノニモ、ニ属シテイル、ノダ。ワカルカネ』 「よけいにわかりません。でも、マスター、私は、「ゴルテダシディ」ヘ連れていってほしいのです」 『ジェイ、イイカネ、「ゴタゴダシテイ」ノ属スル世界ト、コノ 私ノ世界トハ、マッタク相イ レナイノダ』と怒りを含んだ声が答える。 「それでも、私はそこへ行きたいのです」 急に、ジェイの体は、何もない空間から現れた「マジックハンド」に、つかまえられていた。 「何を、こ、これはどういう事です」 『君ノ希望ニソウ。ソノタメニ君ヲ再度、分解シテ、タワーシップノ胎室へ戻ス』 「なせこんな事を」抗いながら、ジェイはいう。 『君ニ、ジェイ・ポラードノ意識ヲ刷り込ンダノハ、私ノ本意デハナカッタ。 ソレユエニ、ジェイ、キミノ記憶スベテヲ、フタタビ分解スル』 ジェイの意識が、また混濁した。私はジェイ・ポラード という人格を 投下されている? では、その私は 何者なのか? そして、この夢世界 とは 何なのだ? (続く)夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第10回■キング・オブ・ドリーム-あるいは創造者の夢■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.03
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/7/夢王たちの宴■第7回ジェイの見る夢。それは、戦車のキャタピラーが左手をひき潰している夢だ。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第7回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 「やれ」 再び、スブローギンは命令した。 戦車はゆるやかにやってくる。 ジェイの体の一郎がメキメキと嫌な音がする。 その音が自分のものでないように、聞こえる。 叫び声を思わずあげていた。 「ぐわっっ」 それは、ジェイの頭の中で響いて、反復されていた。 ジェイは、自分の悲鳴で目ざめる。 恐怖に包まれるジェイは、すぐさま、自分の左手をみつめた。 大丈夫だ。つぶされてはいない. ジェイの左手は大丈夫なのだ。 が、暗闇の中で、ジェイの左手はわずかに、光っていた。 (続く)キング・オブ・ドリーム-あるいは創造者の夢■ 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.02
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/6/夢王たちの饗宴■第6回ワルシャワ条約軍のスプローギン大佐が「白状したまえ、ジェイ」といい、シュッカ博士が神経緩和剤を打つ。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第6回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ ジェイは思い出した。 東欧、ワルシャワの都市だ。石畳。旧市街。 ワルシャワ条約軍。 彼はあおむけにくくりつけられている。採の体に石畳が冷たい。 東欧のまろやかな太陽か、それでもまぶしい。 「白状したまえ、ジェイ」 スプローギン大佐が言った。とても軍服の似合う男だ。沈黙が続く。 ジェイには、答えようがないのだ。わからないのだ。「返事がないな。どうやら刑を実行してほしいという事かな。我々はブラフを使っているわけではない。それをわからせてやろう」 スプローギン大佐は冷酷な笑みを上からあびせていた。 「やれ」命令が下った。 そろそろと、赤い星をつけたT82戦車、暗緑色の鉄のかたまりがこちらの方へ動いてきた。 「やめろ、やめてくれ」 ジェイはわめいていた。 汗が滝のように流れ出ていた。体を無理に動かそうとする。全く動かない。動くわけがない。鉄のかたまりがゆっくり、ゆっくりと ジェイの体の上に……。 戦車は急に止まった。 ジェイは気絶寸前だ。体がこわぱっている。目をぐっとしめ、口をとざしていた。 「どうだな。気分は。白状する気分かね」 スプローギン大佐が、ジェイの顔を上からのぞきこんでいた。スプローギン大佐の顔の毛穴がはっきりと宛てとれる。ひげのそりあとか肯い。 ジェイの目は何を見ているのかわからない様に見える。 「どうやら、我々は君を見くぴっていたようだな」 スプローギンはそう言って兵を呼ぶ。 「ドクター・シュッカを呼べ」ドクター・シュッカと呼ばれた男が白衣を着て、ジェイの頭の上に立つ。 「ジェイ、楽しい経験をさしてあげろよ」 シュッカは、猫なで声で、これからとても楽しい事が始まる様に言う。 「何をするつもりだ」「君に、対する、我々の、ささやかなプレゼントさ」 スプローギンが言う。シュッカが持ってきたカバンから銀色のパックを取り出す。 「いいか、この薬は神経緩和剤だ」 シュッカが手にした、薬の入った注射器が光を受けて、にぶく光る。 「痛みがゆっくりと襲ってくるのだ。一秒の痛みが、、一年に感じるかもしれん。 個体によって反応が異なるのだ。さらにありかたい事には、個々人の痛みのレベルにあわぜてくれる。気絶する一歩手前の痛さ、その最高レベルで持続するのだ」 スプローギンがシュッカの説明を補足する。「つまり、非常に効率的に痛みが続いてくれるのだ」「悪魔め」ジェイは二人に毒づいた。「悪魔だと、どちらが悪魔か、自分のやった事を考えてみろ」 スプローギンが、つばを、ジェイの顔に、はきかける。 私のやった事? いったい何なのだ。 (続く)夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第6回キング・オブ・ドリーム-あるいは創造者の夢■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.02
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/5/夢王たちの饗宴■第5回■ 降下世界(多元夢世界のひとつ)の中で、ジエイは眠り、夢の中で「大戦役」の前のイメージを見る。 多くの個体の集合場 降下世界(多元夢世界のひとつ)の中で、ジエイは眠り、夢の中で「大戦役」の前のイメージを見る。 多くの個体の集合場所?本文編集夢王たちの饗宴ードラッグ戦争の痕でー■第5回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■降下世界(多元夢世界のひとつ)■ ジェイは眠りについていた。 個体の睡眠用に、「まゆだな」のようなベッドが準備されていた。船内のフロアがすべて、このベッドにあてられていた。 ジェイにとって、初めての安らかな眠りであった。 夢というものを見るのはジェイにとって初めてだった。 恐怖。 巨大なものが、ジェイの体の上に、徐々に被いかぶさってくる。痛みの感覚。 その巨大な代物はどうやら鉄のかたまり。イメージがはっきりとしてきた。 戦う。エンジン。車。戦う車。戦車 一体,こいつは何者なのだ。 急にジェイの頭の中で何かがはじけたような感じだ。言葉が、頭の中に洪水の様にあふれかえった。 ディテ-ルが急にくっきりしてくる。目隠しを急にはずされたような気分だ。 美しい一つの風景。どうやら一つの都市らしい。都市だって?意味不明・…… 限定された一平面における個体の群生場所。 「大戦役」の前のイメージ。一体どんな前なのだ。 「大戦役」とは何だ。 何か、とてもひどい事だったような気がする。 体が暖くなるような気分。いや熱すぎる。 死にそうな熱線?「うー」 ジェイは、思わず叫び声を、あげていた。 (続く)夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第5回キング・オブ・ドリーム-あるいは創造者の夢■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/ #夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!人気ブログランキングにほんブログ村
2021.10.02
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/5/夢王たちの饗宴■第5回■ 降下世界(多元夢世界のひとつ)の中で、ジエイは眠り、夢の中で「大戦役」の前のイメージを見る。 多くの個体の集合場所? 夢王たちの饗宴ードラッグ戦争の痕でー■第5回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■降下世界(多元夢世界のひとつ)■ ジェイは眠りについていた。 個体の睡眠用に、「まゆだな」のようなベッドが準備されていた。船内のフロアがすべて、このベッドにあてられていた。 ジェイにとって、初めての安らかな眠りであった。 夢というものを見るのはジェイにとって初めてだった。 恐怖。 巨大なものが、ジェイの体の上に、徐々に被いかぶさってくる。痛みの感覚。 その巨大な代物はどうやら鉄のかたまり。イメージがはっきりとしてきた。 戦う。エンジン。車。戦う車。戦車 一体,こいつは何者なのだ。 急にジェイの頭の中で何かがはじけたような感じだ。言葉が、頭の中に洪水の様にあふれかえった。 ディテ-ルが急にくっきりしてくる。目隠しを急にはずされたような気分だ。 美しい一つの風景。どうやら一つの都市らしい。都市だって?意味不明・…… 限定された一平面における個体の群生場所。 「大戦役」の前のイメージ。一体どんな前なのだ。 「大戦役」とは何だ。 何か、とてもひどい事だったような気がする。 体が暖くなるような気分。いや熱すぎる。 死にそうな熱線?「うー」 ジェイは、思わず叫び声を、あげていた。 (続く)夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第5回キング・オブ・ドリーム-あるいは創造者の夢■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/ #夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)
2021.10.02
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AF腐敗惑星のアリスー宇宙連邦の監視機構の元で封印されている惑星がある。その腐敗惑星内で新生命トリニティが蘇生し、世界の秩序を変える動きが始まるこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n6825dd/30/腐敗惑星のアリス第30回●地表は平和に満ち腐肉と風はもとの生物に戻る。星は生物、ロケットなどの機械類であふれる。 回収子ゲノンは、合体したレムリアにたづねた。 腐敗惑星のアリス第30回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所「マンガ家になる塾」 山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube 「母さん。お父さんや、この腐肉たちを助けてあげる方法はないの、あたしはもう、戦いはいや」本当に疲れるもの。 「あなたたち、何か方法は」レムリアは他の者に尋ねる。 「我々には無理です」 「皆を元にもどしてあげてよ」トリニティが涙を流しながら叫んでいた。 「王なら、その力がおありじゃ」 「そうするように王に呼びかけましょう」 「風民の意識をかりましょう。風民よ、お願い、聞いて、風民も腐敗の風でなくなりましょう」レムリアが叫ぶ。 風民の意識が腐肉の意識を動かす。 「寂寥王よ、あなたを許そう。この我を元の体に戻してくれるのなら」 「待て」ラフラタであるものがいった。 「お前たち、どういうつもりだ。この寂寥王を倒すのだ」「ラフラタよ。お前はこの寂寥王の心の寂しさを感じられないのか。孤独が解らないのか。創造者の苦悩が理解できないのか」 「ラフラタよ。お前の心をのぞいてみた」 「お前には心が存在しない」 「つまりは、ダークサイドの人間というわけだ」 「寂寥王よ、我々はあなたを信用します。許しましょう」 「ラフラタの意識を、我々より排除しよう」風民たちがこう考え始めた 「やめろ、お前たち、どちらの味方だ」 が、ラフラタの意識は数千、数方の意識から攻撃を受け、分断、消滅させられた。 ■ やがて、地表は平和に満ちた。腐肉と風はすべて、もとの生物体に戻った。 この星は生物やロケットなどの機械類であふれていた。 ■もとの姿に戻った回収子ゲノンは、肉体と霊体が合体したレムリアに言う。 「君はもう帰るつもりは、ないのだな」 「そう、ゲノン、許して。私にはこの子がいるの。それに、この世界をもとに戻す手伝いをしなければならない」 「では、君の守護神には、君が死んだと報告しておこう」回収子ゲノンは宇宙の未来へと去って行った。 ■ 「ラフラタはなぜ、急に我々を攻撃してこなかったのでしょう」レムリアが言った。 「寂寥王の分身が帰ってくるのを待っていたでしょう」ゴーストトレインが答える。 「罠を作って待っていたのだ。それゆえ、この星が腐敗したのはあやつのせいかもしれない。寂寥王の心を惑わせて、この星を寂寥王言う。 「ダークサイドじゃったか、あやつは」チャクラが尋ねる。 「だから、彼らは、世界をこのまま、破滅させたいのだ、それには寂寥王を殺してしまう、あるいは、行動できなくしてしまうのが一番なわけだ」16面体の考えだ。 「それが、奴らダークサイドの野望じゃろう」チャクラも考える。 「では、あたしに最初にあいにきた男はお父さんの分身、残留意志なのね」トリニティは昔をおもいだしていた。 「そうよ、別の星を再生していたのだと思うわ」レムリアが言う。 「では、まだ、寂寥王に働いてもらわねばならないわけですね」ゴーストトレインが言う。 「そういうことじゃ。レムリアとトリニティには悪いが」 「かわいそうな、お父さん」トリニティは思った。まだ、働かせるの、いいかげんにしたら。(続く) 1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所アリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー山田企画manga動画●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube#腐敗惑星のアリス
2021.10.02
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YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか? なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n7285dc/4/夢王たちの宴第4回●ジェイはあの降下世界から脱出できた事をようやく理解し始めて いた。 夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第4回●作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 第4回キング・オブ・ドリーム-あるいは創造者の夢■■降下世界(多元夢世界のひとつ)■ ジェイは急に。開けた場所に来ていたのだ。そこには上にもバーが存在せず、ただ広い空間だけがある。巨大な広場だ。 ジェイは目まいがした。 急にジェイの足もとの地面がなくなる。 ジェイは空虚の中を落下していた。 次に衝撃がジェイの体を娶う。液体が彼の体を包み込んだ。それは冷たく、ねばねばしていた。口からもその肢体が入ってくる。へんな味だった。 上の方から、例の物体が呼びかけている。 「大丈夫ですか。すぐお助けします。ところで、ジェイ、そこが「海」というものなのです」 ジェイはあの降下世界から脱出できた事をようやく理解し始めていた。 風の匂いはどうやらここから来ていたらしい。 とにかく、ジェイにとっては初めて、経験する「海」なのだ。 そして、空間にモニターが再び出現する。 ″コード111 ジェイノ意識ヲ打チコミ、ジェイヲ覚醒サセヨ (続く)夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第4回キング・オブ・ドリーム-あるいは創造者の夢■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●how to draw manga ●manga-traininghttp://www.yamada-kikaku.com/#夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの痕)
2021.10.01
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F腐敗惑星のアリスー宇宙連邦の監視機構の元で封印されている惑星がある。その腐敗惑星内で新生命トリニティが蘇生し、世界の秩序を変える動きが始まるこの小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n6825dd/29/腐敗惑星のアリス第29回復活した寂寥王を、ラフラタが腐肉のかたまりを作り、王の体をすっぽりと包みこむ。 腐敗惑星のアリス第29回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube 「聞いたか、皆、寂寥王は罪を認めた。寂寥王を殺せ」ラフラタであったものが言った。 「私を好きにしてくれ」寂寥王が答える。「寂寥王どうしても」 「皆、よいか、私はこのものたちに飲み込まれる。その行為がこのものたちに対する罪滅ぼしになる。どうか、私を助けようとしないでくれ。これは、最期の私の願いだ」寂寥王が言う。 「寂寥王よ」 「あなた」 「お父さん」 「ははあ、おとなしく、私の軍団に下るか。寂寥王よ、まだ、この腐肉の中には中性子爆弾が残っている。レムリアよ。残念だったな。寂寥王よ、完全に吹き飛ばしてくれる」 「まて、それはおかしい、ラフラタの意識よ」 風の意識の幾つかが言う。 「もう、遅いわ」ラフラタが叫ぶ。 腐敗惑星の表面が腐敗巨人として収斂した。 「寂寥王よ、我々はお前を恨む」 「我々、すべての生物がお前のために、こんな醜い姿に返られたのだ」 「寂寥王よ、我々の耐えることのない悲しみと死の瞬間を思え」 腐肉のかたまりが、寂寥王の体をすっぽりと包みこんでいた。 寂寥王はその中で、数多くの死の瞬間を味わった。そして、完全に死ぬことのできない悲しみの心を知った。 「寂寥王よ、お前の力をもってすれば、我々のこの苦しみを取り除くことができるだろう。この逃れることのできない死の淵から、我々を生の空間に戻せ」 『寂寥王よ、あなたがなぜ、どこかに逃避され、またトリニティを残したか考えてくだされ』 急にチャクラの声が寂寥王の元に届いた。 「なぜだ、私はわずかぽかりでも、再生を夢みていたのか」 腐肉の巨人体の圧力で圧しつづけられる。苦悩する寂寥王の意識が、数千の腐肉の意識に責めさいなまれていた。 が、寂寥王はこの練獄の中で自分が昇華され、罪が償われると考えていた。 寂寥王は逃れようのない苦悩の中で、1人、昔を思い出す。 大いなる昔、この古代世界に電磁波が降り注いだ。そのとき以来、世界は腐り始めたのだ。その電磁波をひきよせたのは、自分の生命の寂しさゆえだ。 一人がゆえにだ。そのために皆と共に滅びようとしたのだ。 やがて、この腐肉の意識の中にすこしずつ、寂寥王の深い寂容態が押し寄せて浸透していった。 王は考える、この腐肉たちの苦しみを解消する方法は。もし、彼らをもとに戻すことができるならば。 (続く)1975年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/ yamadakikaku2009ーyoutube#腐敗惑星のアリス
2021.10.01
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