【不眠症カフェ】 Insomnia Cafe

【不眠症カフェ】 Insomnia Cafe

2004.04.11
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英国に「マークス・アンド・スペンサー」とスーパー・チェーンがある。



2001年3月30日
  マークス・アンド・スペンサー38店舗閉鎖

およそ100年前、ポーランドからの移民であったマイケル・マークスが、当時5ポンドを借りてリーズ市のオープン・マーケットに店を開いた。後にトム・スペンサーがパートナーとなり、それが社名の由来となっている。それが英国最大の小売業になった(現在107年目)。
ダイエーが商品提携で契約し、ワイシャツなどマークス・アンド・スペンサーのブランドで販売したのがおよそ20年前。
そのマークス・アンド・スペンサーがロンドン以外のヨーロッパに展開している38店舗を閉鎖、4000名をリストラする。
(以下省略)

M&Sは衣食住の全分野を扱っていて、日本のスーパーというよりデパートと言ってもいいかも知れない。

三代目当主マイケル・マークス氏(Lord Marks of Broughton)は男爵の爵位を持っている。
しかし英国貴族と言っても代々の英国貴族では無い。
このマークス家はポーランドからのユダヤ系移民。
ユダヤ系でも商業的に成功すると爵位を受けるという例は英国以外にもある。
例えば有名なロスチャイルド家(フランスではロチルド家)が男爵家だ。


このM&Sの3代目の当主 マイケル・マークス卿は、寿子さんという日本人と結婚していたが、その後離婚している。
たしか寿子さんがロンドン大学の研究室にいた一年間でマークス卿と知り合って結婚したはずだ。

このマークス寿子さんは現在日本に住んでいて大学教授兼作家である。
ある講演会の紹介ではこうだ。

<略歴>
正式名はThe Right Honourable Toshiko Lady Marks of Broughton。
1936年、東京に生まれる。早稲田大学政治経済学部を卒業後、東京都立大学法学部博士課程を修了。同大学非常勤講師をつとめたのち、71年にロンドン大学ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究員として渡英する。76年、英国一のスーパー・マーケット・チェーンの三代目当主マイケル・マークス氏(Lord Marks of Broughton)と結婚、英国籍と男爵夫人の称号を持つ。エセックス大学現代日本研究所講師を経て、現在は秀明大学(もと八千代国際大学)教授とし日英間を行き来している。又、『日英タイムス』を発行するなど、日英交流の場でも活躍中。


著書はいろいろあるが、私はブックオフで100円均一で下記の五冊の本を買った。


 『大人の国イギリスと子供の国日本』(草思社)
 『とんでもない母親と情けない男の国日本』(草思社)
 『ふにゃふにゃになった日本人』(草思社)
 『男たちよ 全面降伏か』(草思社)


なぜ彼女の本を五冊も買ったかというと、彼女の経歴だから面白いことが書いてあるかな?と思ったのと、100円という本の安さだ。
私はこの五冊の内、昨晩『ひ弱な男とフワフワした女の国日本』(草思社)という本を昨日、ざっと読んでみた。
私の印象ではこのマークス寿子さんの著作には二つのメイン・ストリームがあると思う。

1)1936年生まれという年令だけあって、保守的な面があって、この頃の日本に対する批判。
2)外国人、しかも一流企業のオーナーで貴族でもある人と結婚していただけあって、海外の文化から見た日本への批判。

『ひ弱な男とフワフワした女の国日本』に限って言えば、私からすれば、特に瞠目するような鋭いユニークな意見でも無いと思った。
それはなぜかというと、私は高年齢だから保守的なところがあって、マークス寿子さんが若い人の文化などに対して保守的な批判を書いてもほぼ同じ意見だったりする。
もうひとつは、私は以前の職業から一般的な日本人より海外体験・異文化体験が多いと思うから、英国に比較して日本を批判しても、それは私にとってそれほど新味のある事ではなかったりする。
そういうことが、多分かなり影響していると思う。

他の本では日本と英国の比較などで結構注目点があるようだが。


この人は数年前に一時ブームのようなものがあり、テレビ・ラジオにも出演していたが、日本や若い世代を批判する、いわが「頑固爺さん」ならぬ「頑固婆さん」風だった。
ただ、英国がすべての模範のような言い方のように思えて、その点にちょっと引っかかった。
私も英国に駐在したことがあって、いわゆる英国的なものはほとんど好きだ。
人々はどこの国の人間より穏やかでリーズナブルだし、自然は最高に美しくやさしいし、気候もおだやか。
しかし、英国のすべてがいいというわけは無くて、私自身、嫌な経験をしたことがある。


例えばその一つだが、某空港の税関吏からひどい扱いを受けたことがある。
この空港の税関吏の一部はハッキリ言って、外国人の一部を狙い撃ちにしてサディスティックな喜びを感じている連中で、私だけが被害者ではないと思う。
それも個人ベースではない。
連携した意図的なチームプレイだ。
歌手のダイアナ・ロスが全身裸にされて身体検査をされたことがある。
その他にも色々トラブルがある。

私はある年に、年に一度の休暇に私はイタリア旅行のツアーに参加した。
英国に帰ってきて税関で、ローマで買った腕時計を申告した。
その時、担当した税関吏の目がギラリと光った。
有無を言わせず私を別室に連れ込んで、私のスーツケースの他、持ち物すべて、服のポケットまで強制的に調べられた。
時計を自主的に申告したのに、強制検査になった。
挙げ句の果てはビデオカメラを一年前に赴任してきた時に申告していなかったとわめきだした。
考えてみれば確かにビデオカメラは申告すべきアイテムだった。
英国の法律に沿えば、日本国内での購入日から赴任時のロンドンでの入国日まで半年以内だったから申告すべきだったのだ。
半年以上経過したビデオカメラであれば申告不要となる。
しかし、普通はなかなかそこまで思いつかない。
ビデオカメラを申告させられた空港は経験がない。

私を憎々しげに検査した係員は、今でも覚えているが金髪のディヴィスという男だが、その後、部屋を出て行ったままで私は一時間ほど、多分わざとそこで放置された。
ただ私を監視する意味か?若いインド系の女性係員が私の傍で椅子に座っている。
私は彼女に「あなた達はこんな風なサディスティックなやり方をいつもしているのか?」と聞いた。
彼女は黙ってうつむいただけだった。

まもなくデイヴィスが戻ってきた。
「ピンク・ペーパー野郎め!」とつぶやいている。
ピンク・ペーパーというのは英国の日経新聞とでも言うべき「フィナンシャル・タイムズ FINANCIAL TIMES」という経済専門の新聞で、日本の駐在員は大抵読んでいる。
黄色っぽいピンク色の新聞なのでピンク・ペーパーと呼ばれるらしい。
英国はよく知られているように厳しい階級社会の国だ。


英国ではアングロサクソンとケルトとの民族的対立に加えて、階級間の対立がある。
ウェールズにスォンジーという都市があるが、ある本には「ウェールズのスォンジーという小さな都市にも、タマネギをむいた時のように幾層にも重なった階級がある」と書いてあった。
そんなものだと思う。

「イギリスでは音楽にも階級がある!!」。
これは「クラース イギリス人の階級」(ジリー・クーパー著)【サンケイ出版】という本の帯に書いてあったものだ。
もっとこの帯を引用しよう。
○ 貴族階級は、ハイドン、モーツアルト、バーゼルを好み、上流・中流は、ブラームス、マーラー、シューベルト、ベートーベンを好み、下流・中流は、チャイコフスキー、グリーグ、メンデルスゾーンを好む。
○ 階級意識を見事に描いた英ベストセラーの完訳


音楽にさえも階級があるのだからましてや新聞や言葉、つまり英国英語にはもっともっと階級がある。

以前ここの日記に書いたように英国では階級で読む新聞がハッキリ分かれている。
このピンク・ペーパーはイングランドでは上流・中流階級の人間の典型である株式取引人や銀行家の巣窟であるシティーに勤める人間が読む新聞だ。

私たち日本人の駐在員はもちろん英国の上流階級なんてものじゃないのだが、日本で日経を読む感覚でこのピンク・ペーパーを読んでいる。
駐在員としてビジネスに必要な情報がある新聞だから読んでいるだけなのだが、日本人駐在員一般を、彼らは憎むべき「U」と同族と見なしているようなのだ。
「U」とは「Upper Classアッパークラス 上流階級」のこと。
これに対して非上流階級は「Non-U」と称される。


この税関吏はあきらかにNon-Uだから、有色人種のくせにピンク・ペーパーを読んでいる風な私を一種の拷問ゲームの相手に選んだのだ。
私とこの税関吏との間には激しいやりとりがあった。
税関吏の方から「文句があるのなら、あんたは弁護士を呼んでもいいんだぜ」と言い出したが、私が仕事でつきあっている弁護士事務所は英国有数のもので、以前にプライベートで社宅のトラブルに一枚の手紙を書いてもらっただけで10万円近く取られた。
そんな高価な弁護士をしかも夜間に呼び出してはどれだけの出費になるかわからなかったから、それはがまんした。
それにもう夜も遅いし、旅行からの帰りで疲れていたからとりあえず早く帰宅したかった。

その内に開け放した部屋の外を、彼の上司らしい人間が通った。
この上司は私たちのやりとりの中身を知っているらしく、デイヴィスに対してウィンクした。
彼らは示し合わせてこういう風に厳しい取り調べをして、みんなで楽しんでいるらしかった。

英国ならなんでも大好きという英国ファンが多い。
私も英国を懐かしむ気持ちは強いが、敢えて厳しい嫌な面もあることを書いてみた。


このマークス寿子さんの他の本も読んでみるつもりで、他の本では英国と日本の文化比較にやや面白い箇所がありそうだ。
ただ今回は『ひ弱な男とフワフワした女の国日本』の中から一部を引用してみたい。

以前、私のBBSで「文春問題」で議論が紛糾したことがある。

感情を抑制してマナーを持って議論をするのが民主主義の根底だと思う。
民主主義というものは話し合いでもあるのだから、その話し合いが感情的な罵倒になっては、相互理解の話し合いではない。

マークス寿子さんは、この本の中で次のようなことを書いているがこの箇所には、私もなるほどと思った。
特に昨日はかなり感情的な事も書いたので、私も深く反省もしなければいけない。

----------------引用------------------
第3章 しつけなんてもう必要ないのか
議論のやりかたになれること。

これまでの日本の社会では、議論というものがけんかと同じようにとらえられていれ、歓迎されることがあまりなかった。(中略)

しかし、互いに考えていることや感じていることを相手にはっきり伝えるときには、ヒステリックになってどなっていたずらに相手を傷つけたり罵倒したりせずに、毅然とした言葉で自分の意見を述べるというルールに慣れるようにべきである。

反対に、相手の意見を聞く時も、ヒステリックになったり高圧的な態度をとるのではなく、理性的に相手のいわんとするところを理解するように勤めるべきで、(以下略)。
--------------引用終わり----------------





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最終更新日  2004.04.12 12:29:11
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