Welcome  BASALA'S  BLOG

Welcome BASALA'S BLOG

PR

Calendar

Comments

ske芭沙羅 @ Re[1]:成城石井という食品店(11/23) elsa.さんへ ポテトサラダには気づかなか…
elsa. @ Re:成城石井という食品店(11/23) あまり食欲がなくても行けば行ったで何か…
ske芭沙羅 @ Re[1]:ブログ消滅! ぬかっとったー!(11/17) harmonica.さんへ 何年経っても、何度経験…
harmonica. @ Re:ブログ消滅! ぬかっとったー!(11/17) 最近度々メンテナンスが入るようになった…

Keyword Search

▼キーワード検索

2024.08.15
XML
カテゴリ: I experienced
生き地獄の1時間が終了し、手術室から病室に戻った。

早速手術着から自前のパジャマに着替え、
PCを開いた。

一連のことをブログに書き留めておこう。

「地獄の前の生き地獄」を書き始める。

このとき17:30くらい。

食事は18:00前なので、それまでにブログを1編だけ書き終えることができるだろう。

なぜ、時間を気にしているかというと、
病室まで怖い主治医が来てくれるのではないか


手術に関して聞きたいことがあるのが一つ。
手術中に来てくれなかったのはなぜかというのが一つ。
それから、前回の外来のとき
検査待ち中に手にしたがん治療に関する紙媒体のことを話題にした。
怖い主治医に勘違いされるような言動をしたことの後悔があり、
説明するための原稿を書いてきていたので、
それを渡したいという、この3つの目的を果たすために
どうしても怖い主治医と話がしたいのだ。

怖い主治医が来てくれるとしたら、
タイミングは食事が終わってからだろう。

虫けらは、そんな時間に主治医と病室で面談したことはないが、

怖い主治医が病室から出きたことがある。
それが夕食後のタイミングだったのだ。

しかし、虫けらの病室に怖い主治医がやってきてくれる確率は低いようにも思う。
なぜなら、執刀医の方が今後の注意事項のような説明をしにくる必要性があるからだ。
来てくれなければ致し方ない。

なぜか虫けらには確信のようなものがあったのだ。

ところが、19時を超えても怖い主治医が来ることはなかった。
やっぱり来ないか。

19時半を過ぎた頃、
ベッドに座って、ブログの2編目を書いていると、
ドアがトントン、と鳴った。
このタイミングだと、看護師のバイタルチェックか。

ドアを開けて入ってきたのは、
大きなシルエットの男性。
虫けらは老眼鏡をかけていたので、よく見えなかったが、
多分怖い主治医だとわかった。
メガネを外しながら、

虫「あら、こんな遅くに。先生、お疲れでしょう?」
と言った。

怖い主治医はとても怖い顔をしている。
びっくりするくらい鋭い目。
こんな目は、これまでに見たことがない。
しかし虫けらはなぜか怖くなかった。

怖い主治医を責める材料がたくさんあるので、
こちらのペースで話を持っていけると踏んでいたからだ。
強く出るとやさしくなるのが怖い主治医。

ベッドを降りて靴を履く。

ベッド近くに立ったまま

怖「どうでした? 手術は」

と聞かれる。
依然として鋭い表情をしている。

虫「痛かったです。生き地獄みたいな痛さでした」

怖「そんなに痛かった?」
少し心配気だが、表情は硬いまま。

虫「先生が執刀してくださるんじゃなかったんですか?」

怖「怒られると思ってたんや」

怖い主治医が表情を緩めて笑った。
え? まさか、虫けらが怒るのが怖かったの?
怒られるのを覚悟してた顔があの怖い顔?

虫「先生、おかけになりませんか?」
と、奥のソファセットを指し示した。

怖「いや、いいよ」

と顔を歪める。
???
なんで? この病室には椅子がない。
4人部屋にはパイプ椅子があり、
以前はそれに座って、ベッドの上の虫けらと面談してくれた。
この条件下でなぜ座るのを嫌がるのかわからない。
怖い主治医は、本当に真意がわからない人だ。

答え合わせができるときが来るだろうかと、いつも思う。

虫「そうですか」
怖「いい?」

『いい』の意味が不明。
立ったままでいいか、ということなのだろうと勝手に考え

虫「はい」

怖「僕がやるつもりやったんよ」

虫「先生からはお聞きしてませんでしたが、
  看護師さんが、執刀は先生っておっしゃってました」

怖「そやねんけどな。
  夕方やったら僕できるでって言うたんやけど、
  やりますよって」

なんでそんな主張をするのだ、あの執刀医は。
身の程知らず! と罵ってやりたい。
患者はあんたの実験台でもおもちゃでもない、と。

虫「手術の途中で、先生が来られると聞いてましたけど」

怖「行ったよ」

虫「え? いつですか?」

怖「顔見たら、痛そうな顔して目つむってたから
  声かけへんかってん」

虫けらは、手術中ずっと目を開いていた。
目をつむっていたとしたら、
ほんの一瞬だろう。
そんな時に来るか?
これが間の悪さ、タイミングの悪さにかけてはピカイチの
虫けらさまの真骨頂なのだ。

虫「声をかけてくださったら、少し元気になれたのに」

怖「元気になれた?」

何の質問だか。単なるおうむ返しか?

虫「地獄をさまよってましたから」

虫けらは手術痕を怖い主治医に見えるように向けた。

虫「いっぱい切られたし、腫れてるし、
  ここなんか、これで正解か? って疑問やし」

怖「あ、たくさん切ってるね」

怖い主治医は他の医師のやったことを評価しない。
多分、どの医師もそうだろうと思う。
患者と一緒になって他の医師の悪口を言う医師など見たことがない。
よって、虫けらが訴えるだけの愚痴になってしまった。

修正手術が必要など、よほどのことがない限りこのままだし、
もう怖い主治医に執刀してもらうことはないのだ。
諦念するしかない。

怖「血液検査の結果やねんけどな」

虫けら、ハッとした。
血液検査など気にもかけていなかった。
入院の検査項目になかったからだ。
前日までたくさん酒を飲んでいた。

虫「血液検査、いつされたんですか?
  いかん! ぬかってました」

怖「手術中、ちょっと横から抜いてもろた。
  そのためにわざわざ針刺すのかわいそうやから」

虫「お声、聞こえなかった」

怖「こそっと言うたもん」

なぜ、身を隠すような仕草をするのだ。
こちとら、怖い主治医の登場を待ちに待っていたのに。
本当によくわからない人だ。
手術中に虫けらが、
「なぜ、先生が執刀してくれなかった!」
と苦情を言うとでも思って、それを恐れていたのか。

怖「熱ある?」

デジャヴーである。
以前もこう聞かれたことがある。

虫「CRPが上がってました?」

怖「お酒、たくさん飲んだ?」

虫「はい。大変たくさん。
  そのために入院を先延ばししたようなものですから」

怖「そんな感じはしてたんやけどな。
  ほんの少し高いだけやねん。何もない正常なときと、
  ちょっと高いときがあったやろ、
  ちょっと高いときぐらいやねんけどね」

それは嘘だ。
血液検査があるとわかっているときは、
少なくとも1週間、長いときは20日間酒やサプリを抜いたりした。
今回は、ずっと飲んでいた。サプリも。
5月最終日の前回検査以来2ヵ月半、旅行、誕生日、
会食、飲み会、お客さんと店でと、機会あるごとに
飲み倒していた。
治療に入ったら、酒を飲めないかもしれないと
覚悟して、飲めるうちに飲んでおけとばかりに飲んだ。

数値もかなり上がっていたはずだ。
肝臓系、CRP、消化器系はもちろん、
腫瘍マーカーも上がっていたに違いない。
多分、怖い主治医のやさしさだろう。
「悪かった」と言ったところで、
今回の治療に何らいい影響を与えない。
心配させないこと、ストレスを与えないことも
治療には必要なのだ。

わかってますって、虫けらでも。

ありがとうございます。
怖い主治医先生。

そうだ!
あの、紙媒体のことを言わねば。

虫「先生、先日、失礼な物言いをしてしまって、
  あ、『下手くそ』っておっしゃったのは先生ですけど」

虫けら、ファイルから数枚の紙を引っ張り出して

虫「私の言った意味を理解していただくために
  書いてきました。これを読んでいただいたら、
  何が言いたかったのかわかっていただけると思います」

怖い主治医に紙を差し出す。
怖い主治医がそれを手にして

怖「へぇ、すごいな。
  ほな、もうこれをホームページに載せよか」

調子のいいことをおっしゃる。
読んでからにしてくださいな。

虫「タダで使っていただいて結構ですよ」

怖「タダ…」

怖い主治医、笑う。

虫けら、昔はそれを本業にしていたのだから
それなりの金子(きんす)はいただいていたのだ。
そのことを知らない人には、お金のことを言う虫けらが
がめついと思われるだろう。

訂正や言い訳はしなかった。
昔の本業の説明をすることもしなかった。

そのとき(前回の外来時)、一応そういう(印刷物を作る)仕事をしていたとは言った。
それで十分だろう。

ここで虫けら、さらに大胆な行動に出る。

虫「先生、もう一つ、わがままを聞いていただけますか?」

怖「何?」
そう言いながら、やけにニコニコしている怖い主治医。

これはどういう関係と比喩することができるだろう。

「友達」ではないな。そこまで打ち解けてはいない。
「上司と部下」怖い主治医が上司だとしたら、
こんなに下手(したて)に出てくれる上司はいないだろう。
「先生と生徒」私が従順でもないし、かわいくもないので、
生徒ではあり得ない。

しっくりくる関係が思いつかないが、
医師と患者ではないことは明らかだ。
いずれにしても、これまでの怖い主治医と虫けらの関係では
考えられなかった言動を展開していた。

次に発した虫けらの言葉がその証左だ。

虫「先生、一緒に写真撮っていただけますか?」

虫けらは拒否されることも想定していた。
理由は何とでも言える。
怖い主治医なら、うまく断るだろう。
何なら、嫌な顔一つで断ることができる人だ。

怖「いいよ」

あっさりと承諾。
これには、虫けらの方がびっくり。

カメラを回転させてツーショットの自撮り方式。

怖「これ、左右反転するけど、いい?」

何にこだわっているのだ。
そうなるのは必至。
それが嫌だとして、どうやって撮るのだ。
これが医者脳、理数脳というやつだろうか。

虫「左右逆でもさほど違いませんから、こんな顔」

ツーショットに収まろうとすると、
怖い医師が大変長身なことに驚く。

虫「先生、背が高いですね」

怖「高いですよ」

何だその返しは。
いつもおうむ返しだ。
虫けらがカメラを持って撮ろうとすると
フレームにうまく収まらない。

怖「僕が撮ろか?」
虫「いいですか?」

怖い主治医が虫けらのスマホを手に取る。

高い位置から構えると、うまく収まった。

2枚ほど撮る。

怖「マスク取ってもいいけど」

何ということだ。
サービス精神旺盛だ。
というか、マスクを取った方が男前と自負しているのか。
すごい自信。

虫「素顔、いいんですか?」

怖「どこにも出せへんねんやったらいいよ」

どこに出すというのだ。
自分の顔すら出さない虫けらが、
他人様の顔を公に晒すことなどない。

虫「どこにも出しません。遺影にします」

怖「またそんなこと言うて…」

怖い主治医が少し表情を曇らす。
虫けらはいつもそんなことを言っている。
死ぬ、死ぬ言うのが癖なのだ。

無事、マスクなしのツーショットをいただく。
(実は、マスクなしの主治医を見るのは初めてである。
マスクを取っても違和感がなかったので、
よかった、よかった)

自撮りに慣れていない虫けらは、
視線がおかしかったが、
怖い主治医はバッチリ表情をつくり、カメラ目線で写っている。
この表情は、もしやプレイおっさんか?
(プレイボーイという年でもないので)
遊び慣れたおっさんかもしれない。


虫けらは、いろいろ間違っていたように思う。

怖い主治医の人物評価が最初からおかしかったのかもしれない。

胃を痛めた日々を激しく後悔している。

もっと話しておけばよかった。

最後に聞かれたのが、
怖「個室、希望してた?」

どういう意味だろう。
何が引っかかったのか?
貧乏人の虫けらに、個室料金が払えるか心配しているのか?

虫「はい、副作用でゲーゲーしたら、同室の皆さんに申し訳ないので」

怖「それはあんまりないと思う」

いや、その回答より、何で引っかかったのかを教えてくれい。

怖「吐き気より、冷たいもん飲んだらびっくりするかもしれない。
  普通の水を飲んでも、冷たい炭酸水飲んだ時みたいな刺激が
  あると言う人もいる。
  テキーラは知らんけど」

なんじゃ、その最後のぶっ込みは。

虫「そんなきついお酒、飲めません」

虫けらも何つまらん返ししとんのや。

「テキーラ一杯飲むんだったら、
ワイン10杯飲む方が得な気がします。酒飲みとしては」
(アルコール濃度から割り出した数字)

くらい言いなさい。

怖「きょうはよく休んでください」

とやさしい言葉を残して怖い主治医は去っていった。


ドアが閉まった後、その場に立ち尽くす虫けらだった。

どう咀嚼して、どう昇華したらいいかわからない時間だった。

交わした会話を反芻し、
怖い主治医の表情を脳内再生しては、
ニヤニヤしたり、?を浮かべたり、
失敗した! と後悔したり。

しかし、この経験は、個室でなければできなかっただろう。

もしかしたら、こういう事態も見越していたようにも思う。
入院が決まったときから個室と決めていた。

虫けら、すごい奴だったのかもしれない。

死ぬ前の人間は美しくなり、勘が冴えるという。

ふむ。

勘が冴えていたのだな。
……まだ美しくはなっていないが。

なら、しばらく死なないのか。

                 完





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2024.08.31 09:39:48
コメントを書く
[I experienced] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: