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2013.09.15
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カテゴリ: 映画/時代劇
【小川の辺】
20120916

「私は若旦那様のご武運をお祈り申し上げるしかありません。しかしながら田鶴様は・・・この斬り合いに関わらせてはならぬと、ずっと考えておりました」
「それがうまくできれば言うことはないのだが・・・田鶴は討手が兄と知って大人しく夫を討たせるような女ではない。その場にいれば間違いなく厄介なことになる」


藤沢周平の原作ということもあり、時代劇としては充分に見ごたえがある。
藩命を受けた朔之助が、親友であり妹の夫でもある佐久間を討たなければならないという難しい立場を、主人公の静かに考え込むシーンや佇む姿などを通して、淡々と描いている。

ネックになるのは、主人公の妹・田鶴の存在だ。
田鶴は幼い頃より負けん気が強く、何かと兄には反抗的な態度を取っている。
映画では表現されていないが、実際は、田鶴をそうさせてしまうような高圧的な態度で妹を押さえつけてしまうものを、朔之助が持っていたのかもしれない。
田鶴は、女に生まれてしまったことを後悔するように、男にも負けないほどの剣術を身につけている。
だが、いくら足掻いたところで女は女。
家命によって決められた相手と結婚し、武士の妻としてどこまでも夫についていかねばならない。
だが、田鶴には幼い頃より思いを寄せていた新蔵という戌井家の奉公人の存在があった。


この辺りの背景を、もっと丁寧に表現するべきではなかったか?

この物語の主人公は、朔之助のようであって実はそうではない。
身分の違い、お家制度、女という弱い立場から生じる様々な障害を抱えながら生きる、田鶴の物語なのだ。
だから田鶴役に扮した菊地凛子は、もっと女としての底知れぬ強さと優しさとそして可憐な演技で望むべきだったのでは?
田鶴は単なる男勝りの生意気な女というキャラではないと思うからだ。

この藤沢作品の根底に脈々と流れる言いようのない批判精神を、我々は真摯に受けとめるべきだろう。
事なかれ主義がまかり通る時代、命をかけて国民のための改革を推し進める政治家がいるだろうか?
自分より弱い立場の者を、権力によって押さえつけていることはないだろうか?
小川の辺で男たち二人が剣を構え、命を懸けて一方が他方を討ち果たすのだが、その傍らを流れる小川は淀みなく流れている。
その時代を生きる者たちの、どうしようもない嘆きをも飲み込んで、サラサラと流れていくのだ。

2011年公開

【出演】東山紀之、菊地凛子、片岡愛之助


(過去記事)

山桜

必死剣鳥刺し

隠し剣 鬼の爪

蝉しぐれ

武士の一分

20130124aisatsu





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最終更新日  2013.09.15 05:47:34
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