吟遊映人 【創作室 Y】

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2023.08.05
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カテゴリ: 読書初心者



心地良過ぎるのは返って信憑性に欠けるし、共鳴できない。
世の中「フェイク」に溢れていて、物事がハッキリとせず、曖昧でぼんやりしている。

それはそれで良いのかもしれないけれど、できれば「リアリティ」に触れたい。せめて、小説の中だけでもーー
そう言う気持ちで読書と向き合っていると、不思議に小説の方から私に近づいてくれるのだ。
本当の意味で「リアリティ」を追求したい人、そう言う方々におすすめしたいのが次の3冊である。

それでは、さ行で始まる作家の作品を紹介しよう。

①島尾敏雄『死の棘』

これはほとんど著者本人の私小説に近いものである。

とにかく夫の行為が許せず、朝から晩までネチネチとその不貞を責め続ける妻。
夫は我慢に我慢を重ね、己の不貞の赦しを乞い、半狂乱に陥る妻を何とか「こちら側」に繋ぎ止めようとする。
これを究極の愛と言ってしまうのは簡単だが、実際に読んでみると、そんなに生やさしいものではないことが理解できる。
とにかく一つ一つの出来事が詳細で緻密に描かれているので、疑いようもなく生々しい。
恐怖さえ感じる世界観となっている。
読売文学賞受賞作品である。

②城山三郎『男子の本懐』

城山文学は、何を取ってもハズレがない。
男性読者から支持が高いのも特徴的だが、おそらく近代日本の政治や経済史に登場する人物を生き生きと清々しいまでに描いている作家だからであろう。
女性の読者の中には、完璧な男社会の構図に批判めいた感想を持つ人もいそうな気がするが、そこは黙って最後まで読んで欲しい。
この小説の意味とか意義は、現代のLGBTとは対極にあるものだし、何より、近代日本の政治経済を動かした男たちのドラマーー人物伝として楽しんでもらいたい。



あくまで私の個人的な意見だが、私は瀬戸内寂聴が出家・得度する前の作風の方が好きだ。
もっと言ってしまうと、文学としても優れているような気がするからだ。
こちらの『美は乱調にあり』も初期の作品だが、見事な伝記小説に仕上げられていて、圧巻である。
最近の高校では、近代の社会主義運動のことなんかを授業で教えたりするのだろうか?
ざっくりで構わないので、伊藤野枝と社会主義者・大杉栄との出会い、平塚らいちょうとの交流などを授業で扱ってくれたら嬉しい。

「過渡期を生きた女性の記録」として大変素晴らしい作品なので、リベラルな女性について知りたい人は、ぜひとも一読をおすすめする。

さて、今回は「リアリティ」を追求したいと思った時に読む3冊を紹介した。
さ行で始まる作家に限定してしまったことで、上記の3冊にしぼったわけだけど、本来ならもっともっと紹介したい作品がある。
また今後も折を見て「リアリティ」に溢れた作品を紹介していきたいと思う。

では、恒例の筆頭管理人による「リアリティ」を感じる、さ行で始まる作家の作品をご紹介いただこう!
(参考までに、筆頭管理人の人となりをシンプルに言うと、「嫌いな作家の小説でもきちんと読了する」真摯なオジさんですヨ)
~~~~~~~~

なんだか吟遊さんの手のひらで転がされている気がしますが・・・(-_-;)
それに、私は決して真摯でもありませんけどね。
ということで、吟遊さんのカテゴリーに沿うのは これしかない でしょう!

司馬遼太郎/二十一世紀に生きる君たちへ

帯にある通りです。『あなたの大切な人と一緒に読んでください。』それが初老の域に入った私のお願いです。
『私の人生は、すでに持ち時間が少ない』司馬さんの綴った一文を、私はかつてぼんやり眺めたものですが、この年になり司馬さんの思いがよく理解できた気がしています。

そして願わくは・・・
これを読んで、次に司馬さんの白眉である〈竜馬がゆく〉に手をのばしていただければ私は本望です。

あと一つ。
司馬さんは大の落語通であった。私も落語好きだから、作品で落語の話題を見つけると嬉々として読んだものです。その中で、桂米朝師の『米朝ばなし』のあとがきにある司馬さんの『米朝さんを得た幸福』を目にした時は、無常の喜びを感じ、それこそ狂喜乱舞したものです。

しかもその天分は、明治・大正の春団治のそれではない。春団治は、いわば私小説の世の名手のようなもので、自分という素材を芸術化したといえる。

司馬さんの作品に触れ、米朝師の噺を傾聴すれば、膝の一つもポンとたたき『そうだ、その通り!』とごちることは間違いでしょう。期待してます(^_−)−☆

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ご参考まで(^o^)/

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最終更新日  2023.08.05 06:00:14
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