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2006.02.24
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ヒロの視線はテツを見ていない。
素早く出口の扉へ走り抜けていく赤石とイクオへ向けられている。

「どこ見てる。」
テツの声で、ようやくヒロと目が合った。

「追いかけたいのなら・・・俺を倒してからにしろ。」

「・・・・・」
相変わらず喋らない奴だ。

突如ヒロの拳が腹にめり込む。
早い。

胃液が逆流する苦しさを感じたと同時に悟った。

勝ち目はない・・・と。

パワーもスタミナも全てヒロが上回っている。
テツはこいつを倒すという目的を、イクオ達の時間稼ぎへと変更した。
外に出させるわけにはいかない。

右拳に力を入れる。
容赦ないヒロの攻撃を一方的に受ける。
どこかで、1発・・1発だけを打ち込める機会を窺っている。

年齢の差もあるだろうが、重いパンチを何度も受けている内に、足腰が震えだした。
立ってられない、限界だ。
ヒロの渾身の一撃が、テツの顔面を捉えた。

脳震盪なのか、テツの意志とは別に地面へ倒れ込もうとする。

終わった・・・・・。

諦めかけた瞳の中に、恋人の顔が映る。
すまない・・お前を助けることができなかった。
誘拐なんて・・馬鹿なことしたもんだ。

ごめんな・・・アケミ・・・。

瞬間。

アケミの顔とサトシの顔が重なる。
やっぱり姉弟だ、良く似てやがる。
え?・・・サトシ・・・・?
我に返ると、サトシがヒロの後ろに飛び掛っていた。

隙が出来た。
まるでそれは、希望の光のように見えた。
待っていた光ではない。
サトシが自分の力で作った光なのだ。

「今だ!やってしまえ!テ・・・・・・・兄ちゃん!!」

「う・うおおお」
右の拳を思い切り振り上げた。
ボクシングでいうとこのアッパーのように、テツの快心の拳はヒロの顎を砕いた。

「ぐえええ」
ヒロはそのまま豪快に倒れた。

やっと聞いた声は「ぐえええ」か。

まさか、サトシの顔で復活するとはな。
いてて・・とサトシも起き上がり、目が合った。
テツは可笑しくなり、ふふっとお互い声を漏らした。

「がああああああ」
ヒロが怒声と共に起き上がった。
完全に油断していた2人に襲い掛かる。

バン。
扉が開く音。
「警察だ!そこを動くな!」

安堵の気落ちからか、薄れていく意識の中、テツはアケミの顔をもう一度思い浮かべた。

つづく。

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最終更新日  2006.02.24 12:49:28
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