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さて今日も前回の日記の続きです。現在の加齢黄班変性(AMD)に対する抗VEGF薬の硝子体注射療法は、効果抜群で治療成績を跳ね上げたまさに「夢のクスリ」なのですが、反面その効き目が長続きせず定期的に注射を受けないといけない場合があるという弱点もあります。 また、この抗VEGF薬は実は目の玉が飛び出るほど値段が高い薬なので、最初は張り切って頑張って下さっていた患者様でも、次第に「高いし、もうやめたい。」と思われてしまうこともたまにあります。 しばらく前に新聞を読んでいると、 あらゆる細胞に分化できるヒトiPS細胞から作成した網膜の細胞を使ってこの加齢黄班変性を治療しようという臨床研究が始まるというニュースが載っていました。 この治療法が軌道に乗ればAMDの治療は更に大きく進歩することになるでしょう。今後の進展が楽しみですね。 さて4回に分けてお送りしてきた「加齢黄班変性(AMD)について考える」シリーズですが、今回で最終回です。皆様、お付き合い戴き有難う御座いました。 加齢黄班変性(AMD)について考えるスペシャル 完
2012.04.29
さて今日も前回の日記の続きです。加齢黄班変性(AMD)の進行予防にサプリメントが大きな力を発揮することは前回述べた通りなのですが、残念ながら症状が進行してしまった場合には、現在では抗VEGF薬(ルセンティス、アバスチンなど)というお薬を目の玉に直接注射する治療法(硝子体注射)が一般的です。 この治療法は悪い新生血管を直接やっつけることが出来るので、症状を改善もしくは悪化を防ぐ効果は抜群であり、AMDの治療を劇的に進化させました。ただ1つだけ大きな欠点があり、薬の効果が1~数ヶ月しか持続しないので定期的に注射を受けないといけないんですね。(続く)
2012.04.23
さて今日は前回の日記の続きです。加齢黄班変性(AMD)の治療法の話になります。 病気は何でもそうですが、「未病」の状態で進行しないのが一番です。その意味でAMDは初期であれば進行予防の専用のサプリメントが一番お勧めです。もちろんある程度進行してしまっていてもサプリメントは非常にお勧めできます。というのは、 AMDに関しては「サプリメントが効く」ことが実証されている からです。今日はその実際を見て行きましょう。 2001年にアメリカで画期的な大規模なスタディ、AREDS1 が行われました。そして、 抗酸化ビタミン(ビタミンA+C+E)+亜鉛 を投与するとAMDの発生が約25%少なくなる ことが分かったのです。これによりAMDの患者様は専用のサプリメントを飲んだほうが良いと我々眼科専門医は自信を持ってお勧めできるようになりました。 そして現在ではそのサプリメントの内容を更に改善するべく、 AREDS2が進行中です。この結果は数年以内に発表されると思いますが、要は ルテインとEPAの効果を見よう というものです。 ルテインは、ほうれん草やブロッコリーなどの色の濃い緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドの一種で、目の「水晶体」と「黄斑部」に多く存在しています。ルテインの働きとして、まずは光そのものを遮る働きがあります。また、紫外線などの有害な光の一部が網膜に達してしまいそれにより酸化ダメージを受ける危険性が生じた場合でも、抗酸化作用によってそれを防止します。ところが体内のルテインは、加齢や、紫外線を浴びたり、煙草を吸ったりすることで少しずつ消費され、減少していきます。そしてルテインは体内で自力では生成できないため、日々の食事を通じて継続的に摂取することが大切なのです。 逆に言うと、最近の我々日本人は食生活の欧米化で慢性野菜不足に陥り、目にとって大切な成分であるルテインが足りなくなっているせいでAMDが激増している可能性があるわけです。ルテインは具体的には網膜にAMDを引き起こす新生血管(CNV)の発生を抑制してくれます。 ちなみにこのルテイン、まずいことで有名な青汁に大量に含まれています。私は眼科専門医として末永く八幡浜地域の皆様のお役に立てるよう、毎日2本ずつ宅配してもらってクリニックで飲んでいます。(笑) 次にEPAですが、ブリやマグロ、カツオ、サバなどの青魚や、ウナギ、アナゴに多く含まれる栄養素です。このEPAは血液をサラサラにして血行を良くして、血栓症や動脈硬化を防ぐ効果があります。また、炎症が起こりにくい体質になる効果があり、これがAMDの進行予防に大きな効果があると考えられています。 以上をまとめると、 ルテイン摂取で新生血管(CNV)を抑制し、EPA摂取で目の中に炎症を起こさない体を作ることで、怖い病気AMDの進行をより強力に抑えるサプリメントが出来るだろうと期待されている わけです。 当院では、院長の私が自ら上記のような観点から様々な製品を見比べて、現時点で「中身が一番バランスが良い」と評価しているものを置いています。もちろん先ほどの大規模スタディAREDS2の結果が出ればまた迅速に対応します。 このようにAMDは「進行を予防できる」病気です。皆様も少しでも心配を感じることがあれば是非お近くの眼科専門医で相談して下さいね。
2012.04.19
加齢により網膜の中心部である黄斑(おうはん)に障害が生じ、見ようとするところが見えにくくなる加齢黄斑変性(AMD)という病気があります。 欧米では以前から成人の失明原因の第1位で珍しくない病気ですが、以前は日本では比較的少ないと考えられていました。ところが社会の高齢化と食生活の欧米化(緑黄色野菜や魚類の摂取不足)により近年その患者様数が著しく増加しています。 当院でもこのところAMDの患者様の数が激増しており、様々な質問を戴くことが多くなってきました。そこで今日はこの病気について簡単にまとめておこうと思います。 まずは実際の患者様の眼底写真を見ていただきましょう。 目の中心部が痛んで、出血や腫れ、変性があるのが分かりますね。実際の患者様の見え方は下記のようになります。 次回は、このAMDの治療法の実際を見て行きましょう。(続く)
2012.04.16
2012年5月21日の午前7時半前後に、日本の一部の地域で「金環日食(きんかんにっしょく)」が見られます。これは太陽のほうが月より大きく見えるために月のまわりから太陽がはみ出して見える現象で、 日本で見られるのは1987年に沖縄県で見られてから25年振り、また今回は首都東京でも見られるのですが、東京で見ることが出来るのはなんと1839年以来173年振り 更にその次は2030年6月まで無い、と言う事で大きな盛り上がりとなることが予想されます。 ただ、太陽の光を直接見ることは大変危険です。というのは、網膜の中心の黄班(おうはん)部という、視力に直接関係する大切な部分を火傷して視力低下を来たしてしまうことがあるからです。これを「太陽性網膜症」と言います。 ↑ これが実際の「太陽性網膜症」の患者様の眼底写真ですが、写真真ん中の黄班部が発赤・腫脹しているのが分かります。太陽の光と言うのはこれほどに強力なものなんですね。 なので、5月21日に金環日食を観察しようとされている方は、 必ず専用の「日食観察プレート」や「日食グラス」を使い、絶対に直接じかに太陽を見ないようにして下さい。そうそう、普通のサングラス越しに見るのもダメですからね。そして、万一太陽を直接見てしまったら、すぐにお近くの眼科専門医に相談するようにして下さいね。
2012.04.12
さて今日の日記は前回の続きなのですが、OCTはその有用性の高さから全国の眼科クリニックでもどんどん購入率が上がり、今では5割以上の開業医で導入されていると言われています。 ただ、もちろんこれから買おうという先生方も多いと思うのですが、その候補にはトプコン社、カールツァイス社、ニデック社、オプトビュー社などがあり、その販売競争は熾烈を極めています。 私は様々な機種を実際にデモさせて頂いた上でトプコン社の3D OCT-2000を選択しました。 この3D OCT-2000には様々な大きなメリットがあり、眼科開業医にとっては総合力でナンバーワンであると確信しています。 今日は何故私がそう考えるのか、御紹介したいと思います。 1. 最大のポイントはこれ。3D OCT-2000は、OCT画像と同時に通常の眼底写真も撮ってくれること です。トプコン以外にはこの機能はありません。眼底写真と言うのは撮ってあると後で紹介状の作成が必要になった時などに非常に役立ちますし、患者様の症状の経過を追うにも最適 です。OCT画像だけだと各社で表示画面が異なるので普遍性がないですからね。 3D OCT-2000は楽しく使っているだけで自然に患者様の眼底写真がどんどん貯まっていくので、長い間患者様とお付き合いしていく眼科開業医には最適なマシン です。 言い方を変えると、時間の経過をそのままクリニックの武器・長所に転化出来るマシン なんですね。 2. トプコン開発陣のこの3D OCT-2000に賭ける情熱が凄くてバージョンアップが頻繁。 本当にどんどんマシンの洗練度が上がっている。「カイゼン、カイゼン」の日本製造業の優秀さを肌で感じることが出来る。つまり、 「購入後のマシンの伸びしろ」が大きい。 自分も機械の進歩に負けないようにOCT読解力を鍛えないといけない、という気持ちになり気合が入る効果もある。 ということで、これからOCT導入を検討されている全国の眼科開業医の先生方は是非このトプコン社の名機、3D OCT-2000 も一度デモしてみて下さい。 以上、3D OCT-2000ユーザーのポジショントークでした。(笑)
2012.04.09
さて当院ではさまざまな病気の診断・治療に大きな威力を発揮する、OCT(Optical Coherence Tomography: 光干渉断層計)という検査機器として日本のトプコン社の「3D OCT-2000」という名機を導入しているのですが、 このOCT、あまりにも有用過ぎるが故に使用頻度が激増し、最近では患者様の検査待ちの時間が長くなってしまういわゆる「OCT渋滞」を引き起こしていました。ま、このOCT渋滞は全国の大学病院などでも悩みの種になっているようで、それだけOCTが素晴らしい検査機器であるということなのですが。 当院で導入したこの 3D OCT-2000 は、マシン本体がスタイリッシュで非常にコンパクトであるという長所があったのですが、その反面内蔵されているコンピューターに負担がかかり過ぎるためか、検査して計算し最終画面を表示するまでに時間がかかったり、ガンガン使っていると処理能力を超えるためか突然フリーズするといったこともありました。 そのため今回、本体で撮影した検査データを転送して解析する専用の外部パソコン+ソフトを新規に導入しました。これにより、検査時間はおよそ2分の1程度に短縮されました。 この追加パソコン+ソフトの導入により、検査画面が大きく分かりやすくなって検査精度・速度が向上しただけでなく、 本体のみの時には搭載されていなかった、例えば眼底を12×9ミリという広い範囲で撮影し解析してくれる新ソフトも搭載されました。 この外部パソコンシステムを導入して1ヶ月ほど経つのですが、明らかに検査スピードとデータの信頼性が向上しています。導入には150万円ほどの追加資金が必要なのですが、全国の3D OCT-2000ユーザーの先生方でまだこの外部パソコンをつけていらっしゃらない場合には強力にお勧めできると考えています。 当院では今年度も新たな検査機器の購入や既存の機器の点検・バージョンアップを積極的に進めていく予定です。ここ八幡浜地域の皆様に全国レベルの眼科医療を提供し続けていけるように、これからもスタッフ一同頑張っていこうと思っています。
2012.04.05
さていよいよ近日中に、千寿製薬という眼科専業の製薬会社から「アイファガン点眼液」という緑内障の大型新薬が発売になります。 ↑ 写真は先行して発売されているアメリカでのものです。アメリカでは「アルファガンP」という名前であり、1996年の発売以来売上高世界上位のベストセラー薬であり続けています。 今の日本には存在しない系統の目薬なので、現在第一選択薬として使われているプロスタグランジン関連薬(キサラタン、タプロス、トラバタンズ、ルミガン)や第二選択薬のβ遮断薬(ミケラン、チモプトール)、炭酸脱水酵素阻害薬(エイゾプト、トルソプト)などと組み合わせて使うと大きな効果を発揮する可能性がありその発売が待ち遠しいです。 今日は先行して、このアイファガン点眼液(一般名ブリモニジン)の特徴を見ておきましょう。この目薬は「アドレナリンα2作動薬」といって、目の中を流れる房水(ぼうすい)の産生を抑制しつつ流出を促進するという、2つの作用機序を持つ非常に優れた薬剤です。 その効果は、1981年の日本発売以来ベストセラーの地位を保ち続けている名薬のチモプトール(一般名チモロール)とほぼ同等かやや劣る程度です。 若干結膜へのアレルギーが出やすく、効果が減退しやすいという欠点はあるものの、今日本で使えるどの緑内障点眼薬とも併用できて更なる眼圧下降が狙えること、また全身への副作用が少ないことから、実際に発売されれば全国の緑内障患者様にとって大きな福音となるでしょう。 私も緑内障治療医として、その発売日を首を長くして待っています。
2012.04.02
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