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さて日本では糖尿病の患者様への必要不可欠な眼底検査の実施率が先進国で一番低い!という衝撃のデータが示されたわけですが、このセミナーでは引き続き、どうすれば内科の先生方に糖尿病に対する眼科検診の大切さをアピールできるか、ということについて興味深い話がありました。 それは「内科の先生というのは、糖尿病のメジャーな合併症である脳血管障害(脳卒中など)や虚血性心疾患(心筋梗塞など)には非常に敏感なので、糖尿病網膜症と内科の先生が興味のある大血管障害を絡めて紹介状の返事を書くようにすると良い。」ということでした。 具体的には、 糖尿病患者様では、経過観察開始時に網膜症がある場合には、網膜症が無い場合に比較して8年間の観察で大血管疾患を発症するリスクが約2倍になる。 同じく経過観察開始時に網膜出血がある患者様では、無い場合に比較して8年間の観察で冠動脈疾患を発症するリスクが1.6倍となる。 同じく経過観察時に軟性白斑(一般的に言って糖尿病網膜症の中期に出現)がある患者様では、無い場合に比較して8年間の観察で脳卒中を発症するリスクは2.4倍になる。 などのように、眼底所見の臨床的な意義を添えて内科へ情報提供をすることが大切であるという話で、非常に勉強になりました。
2012.11.28
さて最初に参加したのは、「糖尿病診療と糖尿病網膜症」という教育セミナーでした。この中で非常に印象に残った話があったのですが、それは、ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め34 ヶ国の先進国が加盟する国際機関であるOECD(経済協力開発機構)の中で、 日本が糖尿病患者様への眼底検査の実施率が最も低い、という衝撃のデータでした。イギリスやスウェーデンでは80%、アメリカでは70%弱、OECD平均で50%強なのに対して、日本は40%弱しかないのです。 世界最高と広く知られている日本の医療システムですが、この上記のデータは日本では診療科をまたがる連携に未だやや難があることを浮き彫りにしているとも言えます。実際の臨床の現場でも、「今日はなんだか眼がかすむから初めて眼科に来てみた。糖尿になって20年になるけど、今まで一度も眼科に行けなんて内科の先生に言われなかったよ。」という患者様もたまにいらっしゃいます。 どうしてこういうことが起こるのか、実はそれには糖尿病による眼の合併症である、糖尿病網膜症の発症機序が関与しています。 一般的に言って、最初に糖尿病になってからそれが「眼に来る」までに15年間かかります。糖尿病の患者様は平均すると発症15年後に単純糖尿病網膜症(SDR)という初期の合併症の状態になりますが、この時には眼底(眼の底の網膜)にはパラパラと小さな出血が見られる程度で視力低下は無く、自覚症状も全くありません。 ところがここからが糖尿病網膜症の恐ろしいところで、20年目には増殖前糖尿病網膜症(PrePDR)という中期の状態に、そして22年目には眼の底に大きな出血を来たして一気に視力が低下してしまう増殖糖尿病網膜症(PDR)という末期の状態になってしまうのです。 つまり糖尿病による眼の合併症は、 「なかなか出ないけど、一旦出現すると一気に進行し、急な坂道を転がり落ちるように悪化する。」 という怖い特徴を持っているのです。 そのため、糖尿病と診断された患者様は絶対に定期的な眼科でのチェックが必要なのですが、上記のように日本ではそこが必ずしもうまくいっていないのが実情なのです。この理由は日本では内科の先生というのは本当に忙しいのでなかなか体の隅っこの目の合併症のことまでは気にして頂けないことと、何より我々眼科専門医の発信力不足があると思います。 私もこれからも糖尿病の患者様への目の検診の大切さを、常に分かりやすく説明していかなくてはならないと肝に銘じました。
2012.11.24
さて次の日は、 博多らしい朝御飯を食べて、元気に学会場に出発です。 会場のアクロス福岡は、壁面緑化されたお洒落でスタイリッシュな施設です。 いよいよ楽しいお勉強の始まりです。(続く)
2012.11.23
さて少し前のことですが、11月2日(金)~11月3日(土)にかけて福岡市で開催された、第18回日本糖尿病眼学会へ参加してきました。眼科の中ではややマニアックな学会ですね。 四国松山から福岡へは1日4便の飛行機が飛んでいます。私はマイルを貯める関係で極力ANAに乗るようにしているのですが、福岡便はJALのみなので今回はそれに乗ります。 JALは一旦潰れたことが良い方向に向いているのでしょう、以前よりも客室乗務員の方も若返りましたし接客も明らかに良くなりましたね。 福岡空港がいいのは、博多の中心地までが非常に近いんですね。非常に便利です。 泊まったのは「ソラリア西鉄ホテル」です。博多の中心地天神のど真ん中でとにかく立地が抜群なので最近のお気に入りなんですね。 チェックインすると、最上階の17階にあるバーの無料ドリンク券が貰えました。 お腹もペコペコなので、早速出かけます。 具沢山の美味しいピザをかじりながらキンキンに冷えたビールで喉を潤し、博多の夜が過ぎていきます。明日からの学会が楽しみですね。(笑)
2012.11.19
さて、瀬戸内眼科コロシアム2012 のプログラムも全て終了しました。座長の先生が最後に、 「これで 瀬戸内眼科殺し合い を終了します。」 という素敵で小粋なオヤジギャクを飛ばしていましたが、(笑) その名に相応しく、著名な先生から新進気鋭の若手の先生までバランスの取れた活気ある講師陣で、かつ内容も斬新で新しいものが多く非常に勉強になりました。来年も死んでも参加したいと思います。 さて学会は終わったわけですが、JR広島駅前には福屋という10階建てで割りと大きい地元のデパートがあり、今まで一度も行ったことがなかったので最後に探検してから帰ろうと思い立ち寄って見ました。 どんどんエスカレーターを上がっていくと、 なんと「四国の物産展」をしていました。普段四国に住んでいる私にとっては、物産展と言うと「北海道」だったり「横浜中華街」だったりで、地元の「四国の物産展」を見ることはほとんど無いのでかなり新鮮でした。ウロウロしていると、 なんと、私の地元の愛媛県八幡浜市の名店、「鳥津かまぼこ店」も出店していており、たくさんのお客さんが立ち寄って活気に溢れていました。 「みんな頑張っているんだな。私もこれからも八幡浜地域の皆様の目の健康を守るために、常に勉強と努力を忘れず頑張って行かなくてはならないな。」と思いながら、広島を後にしました。 瀬戸内眼科コロシアム2012参戦記 終わり
2012.11.15
さて今日は瀬戸内眼科コロシアム参戦記の続きです。 今回のプログラムでは、「網膜色素変性症治療の日本の第一人者」と言われる先生の講演もありました。 この「網膜色素変性症」は、遺伝性の疾患で全世界平均で3000~4000人に1人の発症率と言われている難病です。 これは進行性の病気で、最初は「薄暗い所で見えにくい」などの症状ですが、徐々にその夜盲・視野狭窄が進み、末期には高度の視力低下あるいは失明に至ることもあります。成人中途視覚障害原因3位であり、頻度が低いとはいえ大変重要な疾患です。 ↑ これが患者様の実際の眼底写真ですが、中心部を除いて網膜が高度に変性・萎縮しているのが分かります。 以前は有効な治療法は全く無いと言われていたのですが、数年前から「ウノプロストンという目薬が効果がある」という論文が出始め、 その後、0.15%ウノプロストン(オキュセバ)点眼液という名前で開発が続いています。現在は、第2相臨床試験で網膜感度悪化の抑制が確認され、引き続き第3相臨床試験に向けての準備が進められています。 この期待の0.15%ウノプロストン点眼液なのですが、実は0.12%とやや濃度が薄いものの全く同じ成分の目薬が「レスキュラ点眼液」という名前で20年近く前からすでに発売されています。 このレスキュラ、緑内障・高眼圧症の治療薬として発売され、発売後数年はベストセラー薬として一世を風靡したこともあったのですが、「点眼時に非常にしみる」、「角膜(黒目)の上皮障害を高率に起こす」、「眼圧下降効果が弱い」などの弱点があり、1999年に同系統で更に効果が強く副作用の少ないキサラタン点眼液が発売されると、緑内障点眼薬としての命運をほぼ絶たれ忘れ去られた存在となってしまっていました。 ところが薬の作用と言うのは不思議なもので、今また新たな病気に効く可能性が浮上しているわけです。「緑内障の薬としてはダメだったが、実は違う不思議な力を持っていた。」ということなんですね。 今回の講演では、このレスキュラ(ウノプロストン)が、何故網膜色素変性症の治療に有効なのかなどの最新の知見が語られました。 それによると、ウノプロストンは分かりやすく言うと、死にそうになっている網膜の視細胞を「おい、寝るな!」と言って起こしている可能性があり、そのために細胞感度の改善が見られるのだろう、ということでした。例えるならば、 冬山で意識を失い遭難しかけている人をフルビンタして叩き起こすような力がある。 とのことでした。専門的には、視細胞のアポトーシスの抑制及び脈絡膜の血流増加作用と言うことになります。 そして面白いことに、培養細胞でのアポトーシス抑制効果はウノプロストンのみに認められ、同じ系統で現在緑内障治療で第一選択薬として使われている、キサラタン、トラバタンズ、タプロス、ルミガンなどにはその効果が認められない、ということでした。 我々眼科専門医の間では、良く飲み会などの話題で「網膜色素変性症にレスキュラ(ウノプロストン)が効くのなら、それよりもっと眼圧が良く下がる同系統薬のキサラタンとかならもっと効くんじゃないの?」という意見があり、「うん、血流改善効果は一緒なんだし、効くような気がするよね。」という結論になることもあったのですが、どうやらレスキュラ(ウノプロストン)のみが効くようなんですね。これは、「学校ではどうしようもない不良だったけど、社会に出たら実は特殊な才能を持っていた。」生徒のようなものですが、薬の効果というのは、本当に不思議で意外性に満ちていることが多いんですね。 後もう一つ勉強になったのは濃度の話でした。私は「ウノプロストンがそんなに効くなら、0.15%とかじゃなくてもっとどーんと濃度を上げたほうがいいのになあ。」とずっと思っていたのですが、この薬は元々「非常にしみる」ので、「色々試したけど、0.15%が限界。これ以上だととても点眼できない。」ということでした。 難病の網膜色素変性症ですが、治療薬の登場する日は確実に近づいています。私も実際に発売になるのを今から心待ちにしています。(続く)
2012.11.12
さて 「にしわき眼科クリニック 院長日記」 は30万アクセスを達成しました。このブログは眼科専門医としての日常や勉強内容を語るだけの非常にマニアックな内容ということもあり、日記を書き始めた頃は訪問して下さる方もほとんど無く1日平均5アクセスくらい(しかもその内の半分は自分)だったのですが(笑)、いつの間にか最近では1日平均500アクセス程度にまで増えていました。そしてしばらく前の「ためしてガッテン」特需があって一気に30万アクセスを突破しました。非常に励みになりますし心から嬉しく思っています。 今日は30万アクセス突破記念ということで、過去の記事から皆様に大変御好評を戴いた ベスト日記 をいくつか紹介したいと思います。 1位 大阪伊丹空港にて 学会が終わり、地元の愛媛県に戻るために大阪伊丹空港に着き、のんびりとご飯を食べていた私に待ち構えていた、「あまりにも意外すぎる」 出来事とは、、、、、、 2位 忠犬グラちゃん? 飼い犬の爪が目に入り痛みで外来を緊急受診された患者様。普段は本当に良い子の忠犬グラちゃんが豹変したその真の理由とは?、、、、、、、 3位 緑内障は良くならないからもう治療をやめたい。 なんだか怖いイメージのある病気の緑内障。「点眼はめんどくさいし、治療しても良くならないなんて最低。そんなことなら、もう治療をやめてしまいたい。」と言われる、もしくは思われている患者様が多いですが、それでもどうしても治療を継続して戴かなくてはならない訳とは?、、、、、、、 ちなみにまだ御覧になっていない方は、ベスト日記第一弾 として自信作3本を紹介した、 20万アクセス有難う御座います。 も是非合わせてお楽しみ下さい。 それでは皆様、これからも にしわき眼科クリニック 院長日記 をよろしくお願いいたします。
2012.11.08
「ためしてガッテン」余波で中断していましたが、今日は久々に「瀬戸内眼科コロシアム2012参戦記」をお送りします。 続いてのセッションは「アレルギー性結膜炎」でした。 これは非常にありふれた病気であり、新鮮な話題が少ない分野なのですが、今回はアレルギー性鼻炎(花粉症)の鼻症状に対して耳鼻科で頻用されている点鼻(噴霧)ステロイドが実は眼症状にも有効である、という話題が少し新しかったです。 この点鼻ステロイド、具体的にはアラミスト、ナゾネックスなどの製品がありますが、本当に目のかゆみを取るのにも効果的なんですね。実は私自身もその効果を以前から実感していて患者様にも良く処方しますし、実際に自分でも使っています。(笑) この点鼻ステロイドの効果は、抗ヒスタミン薬の内服とほぼ同等ということでかなり強力です。ただ、何故効くのか?については実は不明な点も多いのですが、今のところ鼻の中のヒスタミンなどの炎症性メディエーターの減少により、鼻-眼反射(naso-ocular reflex)が減ることによるものとの説が有力です。またこの点鼻ステロイドは経口ステロイドと較べて眼圧に影響しないので、直接的な作用は否定的ということでした。 「耳鼻科でフルメトロン点眼などのステロイドを含めてアレルギーの目薬を貰っている患者様は多いが、逆に眼科で点鼻ステロイドを貰っている患者様はほとんどいない。副作用も極めて少ない薬だし、我々眼科医はもっと積極的に処方しても良い。」という、講演した先生の話が非常に印象に残りました。
2012.11.05
実用視力を改善する力のある「ムチン分泌促進薬」を紹介して話題沸騰だった、NHKの「ためしてガッテン」 ですが、この番組の放送以来私のブログにも特需が発生し現在全国から大変多くのアクセスを頂いています。今日はその特需を受けての第2弾です。(笑) さてムチン分泌促進薬を語るシリーズ、参天製薬のジクアス点眼液に続いては、日本の製薬会社の雄、大塚製薬から登場したムコスタ点眼液についてです。 まずは発売前の様子から。 ドライアイ新薬、ムコスタ点眼液も製造販売承認申請へ。 このムコスタ点眼液、数年前から発売が噂されていながら実際にはなかなか発売されず一部では、 「出る出る詐欺」 とまで言われかけていたのですが、ようやく船出の時を迎えました。 ムコスタ点眼液、近日中に登場です。 果たして効果はどうだったのか。 ジクアスとムコスタは薬としての実力はどちらが上なのか、その実際は、、、、、? ムコスタ点眼液、実際に使って見ました。 このムコスタ点眼液の有効成分「レバミピド」は大塚製薬が自社開発したもので、内服薬としてはずいぶん以前から発売されています。そして、胃潰瘍や胃粘膜病変に抜群な効果を発揮するベストセラー薬として知られていました。 内服で良い薬は、目薬になっても良い。 これはほぼ外れたことのない、 目薬の法則 であり、その意味ではムコスタ点眼液も期待通りの優れた薬効を示すお薬に仕上がっています。 ただその一方で、大塚製薬はこのムコスタを溶かして目薬に仕立て上げるのに苦しみ抜き、実際に出来上がった製品は成分が安定しにくいために一回毎の使いきりタイプのみで、液は濃く白濁し点眼すると強い苦味を感じる、という典型的な「良薬口に苦し」のやや使いにくい目薬となっています。 そのため、純粋に薬が持つパワーだけを見ればムコスタはジクアスを確実に上回ると個人的には思いますが、ジクアスはムコスタよりも圧倒的に点眼がしやすくて使いやすいので、総合力では逆にジクアスがムコスタをやや上回っている、というのが現時点での眼科専門医としての私の評価です。ただ、未確認情報ではこのムコスタは使いやすいフルボトルタイプの発売を目指して鋭意開発続行中とのことでもあり、これからの更なる進化に期待しています。 以上で、「ためしてガッテン」余波を受けての「ムチン分泌促進薬」関連の緊急シリーズは終わりです。この日記は地方で開業している眼科専門医である私の日常を綴っているだけのものですが、出来る限り一般の方にも面白く楽しく読んで頂けるように工夫を凝らしていますので、今回たまたまご訪問戴いた方には是非これを機会にブックマーク登録して頂ければ幸いです。(笑)
2012.11.01
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