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2020.11.30
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第25話「湯あみの美女」

お見合いをぶち壊し、悠々と茶を飲んでいた白鳳九(ハクホウキュウ)。
後ろにいるのがてっきり青丘の迷谷(メイコク)だと思っていたが、振り返ると東華帝君(トウカテイクン)がいた。
「座るがいい…私を見てひどく驚いたな?」
「お目にかかり感激しただけです…ハイ…」
鳳九は帝君から茶を勧められたが、緊張してお茶をこぼしてしまう。
「手が滑り粗相を…鳳九、これで失礼します」
東華帝君は茶をこぼすくらい構わないと許したが、鳳九は居たたまれなくなって帰って行った。


連宋は東華帝君とあの仙女に縁でもあるのかと勘ぐるが、司命はただの偶然だろうとかわす。
しかし俗世で生きる人間と違って自分たちは三清(サンセイ)で生きるが、天地万物を空無と見なすのは貴き東華帝君だけだった。
確かに悠久の時の中では九天さえも変化し、天君さえ死んでは生まれ次々と入れ替わるも、帝君だけは変わらず三千境地の頂点にいる。
連宋は誰にも関心を示したことがない帝君が、なぜあの女子だけに絡むのか気になった。

白真(ハクシン)は見合いを台無しにした白鳳九を叱った。
気に入らぬ相手を強要するつもりはないが、拒む理由もないなら娘らしく見合いを楽しめという。
その頃、千花(センカ)盛典に天君がお出ましになった。
連宋は東華帝君が私事で欠席のため、自分たちだけで宴を始めると告げる。
一方、鳳九は阿離を連れて芝居を観に行くところだった。
「危ない、阿離!妙華鏡(ミョウゲキョウ)の霊力で身体が傷つくわ!」
「鳳九姐姐、どう見てもただの滝です!」

「父君なら見れますか?」
「うーん…神族で見られるのは東華帝君だけね、だから滝からは離れて」
実は鳳九の話を高台にいた東華帝君も聞いていた。
「父君ったらひどいんだ、僕は昨夜、娘亲の長昇(チョウショウ)殿で寝ていたはずなのに、
 目が覚めたら慶雲(ケイウン)殿にいたんです、父君は僕が寝ぼけたんだろうって言うけど、

「長昇殿の前で大泣きすればよかったのに~」
「″涙は女の武器″というけど、男も使えるの?」
「もちろん!この世で最強の武器だわ、習得すれば無敵になれるわよ?」
東華帝君は湯が湧いたのも忘れ、鳳九の話に聞き入っていた。

盛典では成玉が瑤地(ヨウチ)で育てた花の精が披露された。
天君は60年に1度しか見られないと喜んだが、やがて精霊が暴走してしまう。
成玉は神弓で精霊を消滅させることに成功、連宋と2人で天君の前にひざまずいた。
「育てるのに失敗した私は万死に値します」
「父上ご明察を、花期をわきまえず育てさせたのは私です」
連宋と成玉がかばい合うと、天君は失態を見逃し、次から万全を期すよう諭した。



承天台(ショウテンダイ)を目指して山を登って来た白鳳九と阿離、するとなぜか天空の山が真っ赤に燃えていた。
2人が急いで駆けつけてみると、承天台の門の前で神獣が火を吹いて暴れている。
そこには西荒から宴に駆けつけた知鶴(チカク)の姿もあった。
迷谷は障壁で行き場を失った侍女たちを守っていたが、水系の術を使える知鶴はなぜか助けようとしない。
そこで鳳九は阿離にすぐ白浅を呼びに向かわせた。
…陶鋳(トウチュウ)剣を使って刺し殺してもいいけど、時を要せば迷谷が守りきれない
…ひとまず引きつけなきゃ
鳳九は仙術で一撃を与え、神獣の気を引いた。
ようやく知鶴が水を放って火を消してくれたが、神獣の敵ではない。
知鶴が再び水を放つと、神獣はあっさり避けて鳳九がずぶ濡れになった。
もはやこれまでかと思ったが、その時、鳳九に薄紫の薄衣が舞い降りてくる。
それは東華帝君の衣だった。

東華帝君が神獣を彼方へ吹き飛ばし、白鳳九たちは九死に一生を得た。
まだ裳裾が濡れていた白鳳九だったが、衣を畳んで東華帝君に返す。
「私の衣に問題でも?」
「お借りするとお返しに上がることになり、再び面倒をかけてしまいます」
「あ、帝君、小殿下を誤解せぬよう、本当は貴き帝君に毎日お会いしたいところですが…
(ガツッ!)ウッ…」
「ならば上衣はやろう、返す必要はない」
「アノ…そう言う意味ではなく…」
その様子を知鶴が苛立ちながら見ていた。
「では洗って返してくれ」
( ๑≧ꇴ≦).oO(だから借りたくないんだってば!
鳳九は改めて上衣を返すと言い張った。
すると東華帝君は鳳九に衣を差し出し、受け取らないという。
「恩を受けたなら返すのが当然では?洗濯くらいはたやすい」
「帝君、なぜ私を困らせるので?」
「…私にとっては唯一の道楽だからな」
「帝君というお方は…」
「私が何だ?」

東華帝君に見つめられた鳳九は、かつて霊狐として可愛がられたことを思い出し、口ごもってしまう。
「なぜ戦った?」
「…あ、姑姑の教えです、青丘帝姫である私の務めは己の栄誉を求めるより、身を挺することだと
 見殺しにすれば青丘の民に顔向けできません」

千花盛典が終わり、連宋は元極(ゲンキョク)宮に戻った。
すると門に入ろうとした時、成玉が謝罪にやって来る。
「借りは必ず返すから」
「どう返す?…必ず返してくれよ?ふっ」
成玉はきまりが悪くなり、原因が分かったか司命に聞いてくると言って帰っていった。

白鳳九は結局、東華帝君の上衣を持って帰った。
それを見た阿離は思わず誓いの品だと驚く。
鳳九は慌てて衣を片付けると、そこへ白浅の侍女が山のような書物を持ってやって来た。
明日までに書写できなければ、絶え間なく見合いを用意するという。
「ねえ、にゃんちんに何か言ったの?」
「阿離は何も~泣き落としの策を教えてくれたでしょう?
 それって恥知らずなのかってにゃんちんに聞いただけ~」

連宋は太晨(タイシン)宮を訪ね、東華帝君と一局、手合わせしながら探りを入れた。
「承天台の騒ぎのことで天宮はざわついています
 赤焰獣(セキエンジュウ)が火を吹いた時、義妹の知鶴公主が火に包まれ、帝君が駆けつけて救ったと
 だがもう一説ある…天君が承天台を通りかかった時、美しき仙女が赤焰獣と戦っていた
 その美貌に惹かれて帝君は直ちに救ったとか…」
連宋は東華帝君も正室を迎える気になったのなら、父に知鶴の罪を許してもらうという。
「″美しき仙女″か…皆も美しいと思うのか?ならば皆も目が高い」
連宋は東華帝君がやはりあの仙女に関心があると確信した。

東華帝君は白鳳九の言葉を思い出していた。
…青丘帝姫である私の務めは己の栄誉を求めるより、身を挺すること
…見殺しにすれば青丘の民に顔向けできません
そこへ知鶴が挨拶にやって来る。
過ちを犯して西荒に追われた知鶴だったが、父の遺志通り斗母(トボ)元君のもとで修練させて欲しいと嘆願した。

白鳳九は書写が終わらず、翌日、姑姑の命で再び見合いをすることになった。
しかし見合いを壊すことなど朝飯前、鳳九は余裕で宝月光苑(ホウゲツコウエン)へ向かう。
すると数人だと思っていた見合い相手が予想以上に大勢いた。
「あ!来たぞ!小殿下だ!」
鳳九は驚いて見合いから逃げ出し、咄嗟に寝殿の一室に入って身を隠した。

白鳳九が逃げ込んだ部屋は温泉だった。
そこで早速、湯浴みを始めたが、気配に気づき、慌てて温泉の岩陰に隠れる。
すると突然、自分の下衣が吹き飛んで来た。
「何をしている?」
「(はっ!)ディ…ディ…ディジュン?!そりゃ湯浴みです!」
どうやら東華帝君が先に湯浴みをしていたらしい。
しかし連宋がのぞき見していると気づいて下衣を投げたのだった。



連宋はそそくさと帰って行った。
白鳳九は衣を取りに行きたいが、女子に関心がない東華帝君は黙って鳳九を見つめている。
「あっちを向いてください…私を見ないで!」
東華帝君は仕方なく背を向けた。
その間に鳳九は衣を取って逃げようとしたが、東華帝君が引き止める。
「まだ残っている」
東華帝君は鳳九の胸当てを渡すと、次は履物を出した。
顔から火が出るほど恥ずかしい鳳九、するとまた連宋がのぞき見している。
「あ、いや~扇子を忘れたもので…お邪魔したならすみません」
連宋は扇子を持って出て行った。
ようやく鳳九は温泉の後ろ側へたどり着くと、急いで控えの間へ逃げ込む。
その様子を東華帝君は珍しそうに眺めていた。

白鳳九は洗梧宮(センゴキュウ)に阿離を訪ねた。
「ねえ阿離、好きだった子に数年後、再会したけど、相手はあなたのおしめ姿を覚えている
 そうしたらどうする?」
「そんなの耐えられないよ~
 鳳九姐姐が昔、好きだった人の前で下着を落とした話に負けず劣らず悲惨です
 僕なら豆腐の角に頭を打ち付けて死にます」
すると鳳九は豆腐の角を探しに行くと言った。
阿離はそう言えば昨夜、母が探していたと教える。
「″あのわがまま娘の婿をどこで探せばいいの?″って嘆いていました
 ″成玉でさえ良縁に恵まれたのに″って」
何でも千花盛典で成玉が天君に咎められ、連宋が守ったのだとか。

白鳳九は慌てて成玉元君を訪ねた。
「大丈夫だった?!3殿下に助けられんでしょう?心が動いたりして~」
「冗談はやめてよね~」
すると鳳九は茶を飲みながらふと腕輪がないことに気づく。
「どこかに落としたんじゃないの?」
「昨日は…あ!思い出した…もうおしまいだわ…」

つづく


(  ̄꒳ ̄)なぜか地道に山を登って行く小九…

↓赤いきつねと…







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最終更新日  2020.11.30 18:14:11
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