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第4話「長慶の恨み」

仲間たちが寝静まった頃、納蘭容若(ナランヨウジャク)からもらった書をひとり眺める翠雋(スイシュン)。
すると隣で寝ていた琳琅(リンロウ)が目を覚ましてしまう。
「これは何なの?」
「しーっ!誰にも内緒よ?…これは納蘭大人(ダーレン)からもらったの」
琳琅は納蘭家にいた頃、容若が書いてくれた″一生一世の縁なれど″の詩だと気づき、複雑な心境になった。

康熙(コウキ)帝は衛兵の食事に因陀羅散(インダラサン)が盛られていたと暴いた。
容若による犯人探しが始まり、呉子墨(ゴシボク)一派の計画は失敗に終わる。

「今のお前は太監、まだ貴族のつもりなの?」
「…はい」

琳琅は仲良しの翠雋が容若を慕っていると知り、ひとり川辺で悶々としていた。
すると葉三(ヨウサン)がウサギを返しにやって来る。
しかしウサギに愛着が湧いた康熙帝は急に返したくないと言い出した。
琳琅は怒って帰ってしまうが、康熙帝はその背中にまた会いに来ると声を掛ける。
そこへ容若が現れた。
「…あれが先日、仰せだった″面影の人″なのですね」

長慶は偶然、将軍たちが皇帝の競べ馬のため、障害物を排除している様子を見た。
そこで罠を仕掛け、足早に立ち去る。
こうして何も知らず、康熙帝と容若は競べ馬に興じた。

その頃、康熙帝は罠を踏んでしまった馬を懸命に御していた。
しかし興奮した馬が暴走、偶然、花摘みに来ていた琳琅を避けようとして落馬してしまう。
康熙帝は琳琅に覆い被さるように転げ落ち、そのはずみで2人は口づけを交わした。



琳琅は驚いて葉三を引っ叩いた。
「またあなたなの!」

そこで琳琅は葉三の袖から薄絹を切り裂き、手首に巻いた。
康熙帝はその結び方が良児(リョウジ)と同じだと気づいて目を見張る。
「なぜこの結び方を?!なぜこう結んだんだ?!」
「怪我人に同情しただけよ」
すると琳琅はさっさと帰ってしまう。

幕舎に戻った康熙帝は侍医の手当てを受けた。
容若は皇帝を守れなかったと謝罪したが、皇帝は責任はないとして許してくれる。
ただし馬場の点検の責任者だった侍衛統領の陳阿泰(チンアタイ)と海大貴(カイダイキ)には3ヶ月の俸禄没収と尻打ち20回を言い渡した。

統領たちは尻打ちの刑のあと、配下を連れて障害物を探すことになった。
実は本来の責任者は海大貴、しかし腹痛を起こしたため陳阿泰に代理を頼んだことから、2人は言い争いになってしまう。
「馬場の整備もできんのか!」
「飲み過ぎて怠けたくせに!」
「食あたりだったんだ!…信頼していたのに」
2人は取っ組み合いになり、部下たちが慌てて止めた。

長慶はわざと馬場に姿を現し、障害物を探している陳阿泰を人目につかない林の中へおびきよせた。
「待て!何者だ!」
「…貴様の仇敵だ」
すると長慶は突然、陳阿泰の胸に暗器を放った。

容若は暇を見つけては川辺を訪ね、琳琅の姿を探した。
まさか琳琅が自分を避けているとも知らず、今日もまた会うことはできない。
一方、康熙帝は琳琅に良児の面影が重なり、侍衛と偽ったまま探りを入れることにした。
「君は衛琳琅以外に名前がないか?幼名とか?呼び名やあだ名でもいい」
「めいよー、そろそろ仕事に戻ったら?!もう現れないでね!」
「ならウサギはいらないのか?…返して欲しければ明日の夜、梨の木の下に来い」

陳阿泰の遺体が発見された。
報告を聞いた容若が急いで駆けつけると、竹槍を仕掛けた獣用の落とし穴で死んでいる。
海大貴は陳阿泰の突然の死に呆然、言い争ったまま別れたことを後悔した。
「一時の怒りで長年の友を失ってしまった…」
容若は憔悴する海大貴を天幕に返し、調査を終えてから皇帝に報告した。
遺体を調べたところ胸元に妙な傷があり、竹槍のせいとは思えぬ鋭い刃物傷だったという。
そこへある衛兵が謁見を願い出た。
衛兵は馬場の点検の時、海大貴が途中でしばらく姿を消したと報告する。
その時、海大貴はまた腹痛を起こして用を足しに行っただけだったが、康熙帝は海大貴をすぐ呼んでこいと命じた。

その頃、海大貴の天幕に長慶が現れた。
海大貴は太監が届けた酒を一気に飲むと、急に身体の自由が利かなくなってくる。
「私が誰か教えよう…私は阿思海(アシカイ)、チャハル親王・阿布鼐(アフダイ)の息子だ
 どうだ?思い出したか?なぜ急に腹を下したと?なぜ馬場に罠が?…陳阿泰はなぜ死んだ?」
海大貴はふと8年前を思い出した。
まさかあの時、皆殺しにしたと思っていたチャハル親王の息子が生きていたとは…。

海大貴は天幕にいなかった。
容若たちは付近を捜索、やがて崖に立つ海大貴の姿を発見したが、そのまま身を投げてしまう。
崖下に回った容若たちは海大貴の遺体を発見した。
部下たちが馬場でいがみ合う2人を目撃していたこともあり、海大貴が陳阿泰の殺害を悔いて自害したと噂になる。
しかし康熙帝も容若も義に厚い海大貴が友を殺害したとは到底、思えなかった。

長慶は一族の敵である2人に復讐を果たし、その夜、久しぶりにかんざしをながめた。
本当ならあの日、妹の良児に渡すはずだったが、親王府は思わぬ悲劇に見舞われる。
そこへ辛庫者の姑姑・玉箸(ギョクチョ)が現れた。

玉箸と長慶は同じ主(アルジ)のもと康熙帝の命を狙う同志だった。
しかし長慶が単独で勝手に行動し、玉箸は激怒する。
「仲間たちにも危険が及ぶのよ!我々の狙いは康熙帝、つまらぬ手下を殺して何が嬉しいの?!
 面倒が起きても私は助けないわよ?!」
すると運悪く山小屋に琳琅がやって来た。
「玉姑姑!姑姑も雨宿りですか?」
「ええ」
「今まで誰かと話していたような…」
「雨の音よ、気のせいでしょう?」
琳琅は小ぶりになると先に戻って行った。
物陰に隠れていた長慶はまさかその女官が妹だと思わず、殺すよう助言する。
「あの娘に告発される前に、どうぞ正しい決断を」



康熙帝は自ら海大貴の亡骸を調べた。
すると転落したのに外套にはすり切れがなく、中の薄物だけボロボロになっている。
恐らく外套は誰かが後から着せたのだ。

容若は宦官たちを集め、怪しい者がいないか調べた。
その中にはあの長慶の姿もある。
長慶はあの時、正門で報告を受ける納蘭明珠(ノウランメイジュ)の姿を見ていた。
『納蘭大人、皆殺しにしました、人数のご確認を…』
容若の立派な姿を前に恨みを募らせる長慶、一方、玉箸のもとにも衛兵がやって来た。
実は玉箸は先日、御薬房で薬をもらったが、その中に朱砂(シュシャ)が含まれていたという。
「最近、夢ばかり見るので朱砂丸で治ると聞いて頂きました」
衛兵はそれ以上、追求しなかったが、玉箸は不安を募らせた。

長慶は玉箸を呼び出した。
皇帝が海大貴の死に疑念を持ち、毒料理の件も調査しているという。
「話を聞きに人が来ただろう?」
すると長慶は一石二鳥の計画があると切り出した。
例の女官を犯人に仕立て上げれば、自分たちに危険は及ばないという。

琳琅は葉三からウサギを返してもらうため、姑姑に外出の許可を求めた。
「実は落とし物を探しに川に行きたいのです」
「一人で?」
「はい、ひとりです」
そこで玉箸は自分の外套を着せてやった。
「夜は冷えるわ」

つづく





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最終更新日  2021.09.05 21:32:06
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