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2023.04.30
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第8話

東方青蒼(ドンファンチンツァン)が涼亭で茶を飲んでいると、首席を辞退すると言って出かけた小蘭花(シャオランファ)が大喜びで戻って来た。
「大強(ダーチァン)!聞いて聞いて!事情が変わったの、長珩(チャンハン)仙君に褒められた~!
 霊玉もまたくれたわ!でも偶然すぎると思わない?
 蛍虫(ケイチュウ)がわざわざ司命殿の花壇に来るなんて…やっぱり私たちって深い縁があるのかも?」
しかし大強は急に不機嫌になって部屋に上がってしまう。

東方青蒼は困惑した。
本来なら小蘭花が喜べば自分も同じ感情になるはず、なぜ長珩に褒められたと聞いて腹立たしくなったのか。

しかしあれほど急いでいたはずの東方青蒼がまだ7割程度の回復のため焦るなという。
( ゚д゚)はいェェェ…

雨霖(ウリン)が突然、涌泉(ヨウセン)宮に現れ、宮殿を仕切り始めた。
驚いた青川(セイセン)は登用者の公表前だと叱ったが、雨霖は決まったも同然だと譲らない。
そこへ偶然、丹音(タンイン)が現れた。
「雨霖、頭だいじょうぶ?涌泉宮の女主人にでもなったつもり?」
「涌泉宮と関わりない者が口を挟まないでよね」
その時、雨霖の腰の巾着から何かが光った。
丹音は巾着を招喚して中を確認すると、驚いたことに長珩仙君の霊玉を見つける。
実は雨霖は長珩仙君から霊玉をもらった小蘭花をうらやみ、後をつけて密かに法術で奪い取っていた。

丹音は雨霖が長珩仙君の霊玉を盗んだと激怒した。

その時、運悪く雲中君(ウンチュウクン)がやって来た。

雲中君は諍いの原因が長珩だと知り、見過ごすわけにいかなかった。
すると慌てて長珩が駆けつけ、霊玉を身につけていたが与えた覚えはないと否定する。
しかし小蘭花に与えたのは事実、雨霖は盗んでいないと訴え、長珩仙君の体面を考えて秘密にしたと言った。
焦った長珩は雨霖と面識もなく、罰として謹慎させるよう進言する。

 その霊玉はお前が盗んだ物なのか?長珩が授けた物なのか?」
「もらいました!」
何も知らない雨霖はそれがどんな結果になるのか予想もしなかっただろう。
雲中君は見せしめとして体罰の上、雨霖を神水庁(シンスイテイ)に落とすよう命じた。

雨霖は連行中に偶然、小蘭花の姿を見つけた。
すると急に盗んだのは小蘭花だと叫んで難を逃れようとする。
天兵はすぐ雨林を連れて行ったが、その様子を長珩と容昊(ヨウコウ)が見ていた。
「たかが石ころでお前の兄はむご過ぎる…」
「問題は石ではない、盗んだのなら軽罰で済んだのに…
 私からもらったと言えば私と恋仲ということになる
 私には許嫁がいて他の女子は愛せない、決して許されないことだ、これは私への警告だろう」



あれは500年前、深手を負った長珩は小蘭花に救われた。
『また会える?どこへ行けばいい?』
『私のことは探さないでくれ…すぐ忘れるはずだ』
『まさか、水雲天でできた初めての朋友を忘れるはずないわ』
すると長珩は自分の恋心を封じるため、小蘭花に術をかけて自分との記憶を消してしまう。
しかしそれからも小蘭花を遠くから見守り、約束の霊玉を渡した。
実は蛍虫が司命殿の花壇にいたのも偶然ではなく、長珩が放ったとは小蘭花も知らないだろう。
長珩は断腸の思いで決断、小蘭花を兄から守るためには自分から遠ざけなくてはならなかった。

翌日、小蘭花は合格発表を見に行った。
しかし涌泉宮の登用命簿に首席の自分の名がない。
小蘭花は三生(サンセイ)から長珩自ら自分を外したと聞き、長珩仙君が自分をそばに置きたくないのだと分かった。
落胆して司命殿に戻った小蘭花、するとようやく長珩仙君からもらった霊玉がいつの間にかただの石になっていたと知る。
「どうしてなの…私を褒めてくれたのに…霊玉までなくなった…大強、どうしてなの?」
すると東方青蒼は小蘭花を連れて雲中水閣に飛び、隠れ身の術で雲中君と長珩の話を聞かせた。

雲中君は長珩がわざわざ首席の小蘭花を外したことをかえって怪しんだ。
しかし長珩はまさか小蘭花が聞いているとは知らず、涌泉宮に相応しくないと言ってしまう。
「知勇を兼ね備えて首席にふさわしいと褒めたのであろう?」
「たとえそうでも雲夢澤から来た蘭の花、しかも根は傷つき全く素質がありません
 あのように無力で卑しい精霊は涌泉宮には要りません」
すると雲中君は崇気の出所を調べるため、長珩に水雲天に侵入した罪囚の捜索を命じた。

小蘭花は長珩の真意など知る由もなく、長珩まで自分を見下していると知った。
「みんなが私を素性の知れない雑草だと思ってる…長珩仙君だけは違うと信じていたのに…」
小蘭花が号泣すると東方青蒼も涙があふれ出し、何とも言えない悲しい気持ちになった。
「長珩の目は節穴だ…ろくでなしめ!」
「長珩神君の悪口はやめてよぅ…」
「( ๑≧ꇴ≦)かばうのかーい?!…って、いいか、お前はあの者たちとは違う
 私にとってお前は己の命と同じように貴い」
「そんなことばかり言うと本気にしちゃうから」
「私を信じないのか?…もうよい、泣くな」
その時、長珩が天兵を連れて司命殿に乗り込んできた。

小蘭花はついに大強の存在を知られたと焦った。
そこで咄嗟に東方青蒼に抱きついて押し倒し、司命殿から飛び降りてしまう。
2人は川へ転落、東方青蒼は平然としていたが、小蘭花は息が続かず苦しみ出した。
すると大強が小蘭花に口移しで息を送ってくれる。
その頃、長珩たちは司命殿で何も見つけられず、帰って行った。



東方青蒼と小蘭花はびしょ濡れで司命殿に戻った。
東方青蒼はやむを得なかったと釈明し、小蘭花も死ぬのが怖くて抵抗しなかったと言い訳する。
「着替えてくる!」
小蘭花は居たたまれなくなって部屋に戻った。
すると東方青蒼は口づけの感触を思い出し、ふと唇に触れる。
その時、東方青蒼の凍った心がまた少し溶け出した。

中庭で書物を読んでいた東方青蒼は偶然、大木の洞(ウロ)の中に何か光る物を見つけた。
そこで中をのぞいてみると、長珩と小蘭花の婚礼の様子が映し出される。
「…なぜ胸が苦しくなるのだ?」
東方青蒼は雑念に戸惑い、觴闕(ショウケツ)を呼んで蔵心(ゾウシン)の簪(カンザシ)が見つかったか聞いた。
しかし月(ゲツ)界の内乱で在りかが分からなくなり、今も見つかっていないという。
東方青蒼は蒼鹽海(ソウエンカイ)に戻れば神器で雑念を遮れると考えたが、肝心の小蘭花はいくら手を尽くしても9割しか回復しなかった。
「なぜなのだ…」
「尊上、それは長珩に仕えるという望みが叶わないせいでは?」
「あんな青二才のどこに惹かれるのか?思い悩むことか?」

小蘭花は漱玉林(ソウギョクリン)で丹音(タンイン)と出くわした。
今は天兵が逃げ出した罪囚を捜索中のため、霊力の弱い小蘭花が出歩くのは危険だという。
「月族よ、玉京(ギョクケイ)に潜んでいるらしいわ、昊天(コウテン)塔で異変があった時に逃げたのかもね」
「でも塔にいる罪囚は仙族でしょう?」
「父が口を滑らせたの、実は昊天塔には月族もいたみたい」

小蘭花は試験に通った祝いと称して大強を呼んだ。
そこで東方青蒼は命格(メイカク)樹にある木の洞は何かと聞いてみる。
小蘭花は丹音にも教えたが、洞ではなく未来を示す天極鏡(テンキョクキョウ)だと教えた。
「未来を示す?確かか?」
「確かよ、間違いない」
東方青蒼はなぜ小蘭花の婚姻が気になるのか自分でも分からなかったが、術が解けぬまま長珩に嫁がせるわけにいかなかった。
…水雲天に私の弱点を握られてしまう…
すると小蘭花は何度も命を救ってくれたと感謝して大強に酒を勧めた。
東方青蒼は酒の香りで気づいたが、そのまま飲み干して意識を失ってしまう。

東方青蒼が目を覚ますと小蘭花と一緒に舟に乗っていた。
「小花妖?」
「目が覚めた?好物の鮮花(センカ)餅よ、道中で食べてね
 夜は冷えるから上掛けをかけておいたわ、それから師父の秘蔵のお酒も一緒に積んである」
小蘭花は大強を帰すことにした。
「私もバカじゃない、あなたが月族なんでしょう?
 でもあなたが司命殿にいてくれて楽しかったし、孤独じゃなかった
 仙界では月族を悪者だと忌み嫌うけど、あなたは全然、違う、月族は悪者ばかりじゃないのね?
 帰りたくないのでしょう?でも水雲天で月族探しが始まったの」
「だから私に薬を?」
しかし東方青蒼は自分を逃せば小蘭花が月族と通じた罰で死罪になると教えた。
「情けをかけるなと教えただろう?私を突き出せばいい」
「でもあなたがいなければとうに海市(カイシ)で死んでいたわ、あなたがくれた命だもの」
すると小蘭花は薬が切れたら急いで逃げるよう助言し、これが永遠の別れになるだろうと言った。
「きっとあなたが恋しくなる…」

小蘭花は舟から飛び上がり、岸へ上がった。
「大強、つぁいちぇん(再見)…」
小蘭花の姿が見えなくなると、薬が効いたふりをしていた東方青蒼がすくっと起き上がった。
情けは足かせなのか、生きる力になるのか。
東方青蒼は鮮花餅を食べながら、忘川(ボウセン)を漂っていた。



その夜、長珩は試験結果を知って落胆する小蘭花の背中を思い出し、心が痛んだ。
すると天兵が駆けつけ、崇気の件で報告があるという。

つづく


( ;∀;)色々と切ない





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最終更新日  2023.05.02 22:50:57
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