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第18話「命を賭けて守る」

鬼白(キハク)は水娘子(スイニャンズー)こと水亦清(スイイーチン)の代わりに初めて酒を飲み、酔い潰れた。
水娘子は鬼白を居所で介抱したが、実は鬼白がずっと自分を見張っていたと知っている。
「主に何か調べろと命じられたのね、でも別の理由もあるでしょう?私を守ってくれたのね
 ふふ、どこへ行ってもあなたのその染みついた血の臭いで分かったわ…(はっ!)臭い?!」

寧鈺軒(ネイギョクケン)は季曼(キマン)を守るため監房に張り付いていた。
そろそろ遠く離れた都にも二品誥命(コクメイ)夫人・聶桑楡(ニェサンユー)が関わる大事件が伝わる頃だろう。
「黒幕はこの機に私たちを潰すつもりだ」

「ずっと私を守ってくれていたのね…ありがとう」
一方、賭場を調べさせていた袁朗(エンロウ)は季曼の玉佩を盗んだのが沈連成(シンレンセイ)の手下・阿強(アキョウ)だと突き止めた。

亡骸の第一発見者である水娘子は聶桑楡が犯人なら白粉の匂いが残っていたはずだと気づいた。
そこで寧鈺軒を呼び、蓮香の部屋に入った時、嗅いだことのない臭いがしたと明かす。
「最初は何の臭いか分からなかったの
 でも先日、港へ行った時、蛟龍幇(コウリュウホウ)の船乗りと同じ臭いがしたわ」

蛟龍幇の幇主・沈連成(シンレンセイ)は檀(タン)王の庇護の下、悪事を重ねて来た。
しかし失態続きで見放され、今や従う者も少ない。
黄漢(コウカン)たちはこれを機に茶幇(チャホウ)を復活させ、阿狼(アロウ)に付き従うと決めた。

寧鈺軒は水宴居に蛟龍幇を誘き出すため、水娘子が刺客の顔を見たらしいと噂を流した。
するとその夜、追い詰められた沈連成たちが現れ、水娘子に襲いかかる。

「守ると約束した、命を懸ける…」

負傷しながらもたった独りで立ち向かう鬼白、やがて応援が駆けつけてくれたが、沈連成たちに逃げられてしまう。
一方、袁朗は水宴居を襲った沈連成が手下と県衙へ向かったと聞いた。
「まずい!」
その頃、寧鈺軒も牢から季曼を出して母屋に帰していた。


沈連成は今夜こそ寧鈺軒の首を取ると決意、配下を引き連れ県衙に押し入った。
すでに本堂で待ち構えていた寧鈺軒は逃げ道を封じて包囲、官兵たちが一斉に襲いかかる。
季曼は母屋まで届く激しい剣戟の音に気づき、矢も盾もたまらず飛び出した。

寧鈺軒は沈連成と剣を交えていたが、配下が放った暗器が腕に刺さった。
すると毒のせいで立ちくらみを起こし、沈連成から何度も投げ飛ばされてしまう。
そこへ突然、季曼が飛び込んで来た。
「寧鈺軒!どうしたの?!私はどこにも行かない、死ぬ時は一緒よ!」
寧鈺軒は季曼を守るため咄嗟に盾となったが、駆けつけた袁朗が沈連成を一撃で仕留めた。



袁朗は寧鈺軒を抱きしめる季曼を見て寧鈺軒には手を下せなかった。
趙龍(チョウリュウ)と趙虎(チョウコ)は袁朗が寧鈺軒に情けをかけたと勘ぐったが、袁朗は季曼を巻き込む危険性があったと否定する。
「茶幇と寧家の恨みは解けない、寧鈺軒に情けなどかけない」

翌朝、寧鈺軒が目を覚ますと季曼の姿はなかった。
すると鬼白が駆けつけ、夫人がずっと介抱していたと教える。
「今はお休み中です」
「ならいいんだ、よかった…」
鬼白の報告では沈連成の手下が全て白状し、蓮香の事件だけでなく、荒れ廟での流民の虐殺も認めたという。
実は寧鈺軒は沈連成の敗れた袖からのぞく茶幇の入れ墨に気づいていた。
「蛟龍幇の中に茶幇の者がいないか確かめろ、それにしてもなぜ袁朗が急に現れたんだ?」
どうやら思った以上に海坊の闇は深いらしい。
そこへ季曼が汁物の差し入れにやって来た。
「医者が養生すれば元気になると言っていたわ…だからもう行くわね」
寧鈺軒が安心したのも束の間、季曼はもはや聶桑楡でも寧鈺軒の妻でもないと言って出て行ってしまう。

季曼は侍女の苜蓿(ムーシュ)だけ連れて県衙を出た。
「これからは夫人ではなく小姐と呼んでね、とにかく帰海(キカイ)号へ行きましょう」
そこで2人は海坊港に向かったが、停泊している帰海号は想像をはるかに超える巨大な船だった。
季曼は本当に自分が帰海一刀(キカイイットウ)の娘かどうか自信がなかったが、船員や侍女たちに歓迎され、一緒に育った側仕えの桑葚(ソウシン)に至っては抱きついて帰りを喜んでくれる。
「ぁぁぁ…で、あなたはどなた?」
「え?!どうかしたんですか?小姐?!」
苜蓿は季曼が都で事故に遭い記憶を失ったと説明、自分が季曼の首席侍女だと自慢した。

桑葚は小姐の記憶を戻そうと早速、部屋に案内した。
季曼の居所は船の中とは思えない豪華な船室で、質素倹約を心がけていた聶桑楡とは比べ物にならないほど贅沢品があふれている。
「小姐の一番のお気に入りはこの大粒の真珠でした」
「うわっ!こんな上等の真珠が普段使いなの?!」
「小姐は欲しいものなら何でも手に入れました、これが目録です」
「やだ、大金持ちじゃないの!」
「小姐は帰海一刀・季銘(キメイ)の一人娘なんですよ?
 こんな小物だけではなく帰海号もお持ちです!どうです?思い出しましたか?」
季曼はふと幼い頃の断片が蘇るものの、やはり記憶は戻らなかった。
そこで桑葚は季曼が4年間も研究した化粧品の処方を持って来る。
「あ!私の処方だわ!全工程が記されている!」
「私たちのために作ってくれたんです、船上では潮風と日にさらされ、シワが増えるからって」
季曼は確かに自分が季銘の娘だと確信を得たが、やはり何も思い出せない。
すると桑葚は結局、想い人とはどうなったのか聞いた。
実は季曼は港で一目惚れした人に会いたいと、家出してまで都へ向かったという。
「私ってそんなに軽薄だったの?…それより父親は?会いに行きましょう」
しかし季銘は娘を連れ戻すため都に出かけていた。



その夜、帰海号に突然、寧鈺軒たちがやって来た。
寧鈺軒はあくまで公務で来たと断り、帰海号は長年修理されておらず、即刻、直す必要があるので下船するよう命じる。
「不便なら県衙を仮住まいとして貸し出そう」
季曼は寧鈺軒の魂胆に気づき、自分たちも船の点検をしながら港で過ごすと断った。
しかし寧鈺軒は耳を貸さず、直ちに船上で作業を始めるよう命じて降りてしまう。
「へ?寧鈺軒!ちょっと!」
一方、桑葚は苜蓿から寧鈺軒が季曼の夫だと聞いて訳がわからず困惑していた。

つづく


ホッ!(⸝⸝ ˇωˇ )やっと笑顔が戻ったわ〜良かった♡





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最終更新日  2024.04.21 22:30:42
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