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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2020.08.13
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カテゴリ: 文芸
​  『マツダ 心を燃やす逆転の経営』 に次の一文がありました。

  現場に無理難題が降ってくる時点でその計画は失敗であり、
  やらなくてもいい仕事をさせられただけなのに……。
  「英雄の誕生とは兵站の失敗にすぎない」という言葉を思い出す。(p.66)

 これは、著者の山中さんが、まとめのページに書いていた文章ですが、
 この言葉の出所が本著であり、本著ではこのように記されています。

  「貴官らに自由裁量を与えた以上、責任を負うのが小職の仕事だ。

   為すべき手順と準備が万全なら、英雄が生まれる余地はない。
   勝つべき戦に勝つだけだ。
   英雄の誕生とは、兵站の失敗に過ぎん」
  そして火伏は続ける。
  「小職の部下に、英雄はいらんからな」(p.240)

出雲星系防衛軍軍務局第1部兵站監兼軍需部長の火伏礼二が、
部下である同主計少佐兼兵站監補佐の音羽定信に述べた言葉です。 
どんな状況で、どのようにしてこの言葉が出てきたのかを知りたくて、
本著を手にすることになりました(既に完結巻まで手元にありますが)。

この作品は、戦闘のアクションシーンで魅了するタイプのお話ではなく、
その基盤となる政治的、経済的、軍事的駆け引きが最大の見所となるようです。

しっかりと把握しておく必要がありそうです。

  伝承を信じるなら、4000年前に地球人類は、
  異星人の脅威から地球を守る防波堤として、
  恒星間宇宙船に人類や家畜などの凍結受精卵を載せ、
  複数の恒星系に送り出したという。

  出雲星系に到達した播種船は、2000年前に惑星出雲に着陸し、
  人類を増やし、社会を築き、文明を発達させ、
  ついに植民した人類は宇宙に到達し、さらに星系内の惑星にも拠点を築いた。(p.14)

これが、出雲星系について説明した箇所。
続いては、出雲星系と共にある4つの星系、八島・周防・瑞穂・壱岐について説明した箇所。

  出雲星系は人類コンソーシアムの中で、文明発祥の地だ。
  他の4つの星系は、出雲星系からの植民の結果だ。
  そして我らが壱岐星系は、出雲星系から20光年も離れた辺境の地であり、
  同時に人類コンソーシアムの中で、2番目の経済力・工業技術力を有する星系だ。
  原則として、人類コンソーシアムの5星系は対等な政治的権限を持ちはするが、
  国力の差は如何ともし難く、特に軍事面で人類コンソーシアム艦隊は、
  実質的に出雲星系艦隊といっても過言ではない。
  壱岐星系以外の八島・周防・瑞穂の3星系は、
  出雲の庇護下に置かれているようなものだ。
  壱岐星系に独立志向が強いのは、出雲星系からもっとも遠いために、
  輸送コストが馬鹿にならず、否応なく地場産業を発展させねばならなかったためだ。
  (p.24)

5つの星系のパワーバランスが、簡潔に記されています。
出雲と壱岐は、ちょっとしたライバル関係にあることが伺われます。
そして、人類コンソーシアム(consortium)艦隊について説明したのが次の箇所。
やはり、ここにおいても出雲星系が幅を利かせていることが分かります。

  コンソーシアム艦隊は、
  出雲星系にしか人類が居住していない時代に編成された歴史から、
  ながらく出雲星系防衛軍そのものだった。
  その後、複数の星系に植民が行われ、各星系政府が誕生すると、
  軍令系統は各星系政府との連合形態となった。
  しかし、工業力・経済力から、
  軍政系統はそのまま出雲星系防衛軍軍務局が担当することとなっていた。(p.33)

このような状況下、壱岐星系で異星人が作ったと思われる無人衛星が発見されます。
「ガイナス」と呼ばれることになった異星人の拠点と思われる準惑星天涯に向けて、
危機管理委員会の命令でコンソーシアム艦隊が派遣されることになり、
その司令長官に水上魁吾が、兵站監に火伏礼二が着任します。

その艦上会議で、壱岐星系統合政府筆頭執政官のタオ迫水は、
コンソーシアム艦隊が、戦時体制を口実に壱岐星系を直接管理することの阻止に成功。
それに対し、水上と火伏は、壱岐を戦争に耐えられる兵站基地とするため、
壱岐星にある北方特殊機械製造所に降下猟兵第7中隊を派遣し、占領させます。

タオは、コンソーシアム艦隊所属壱岐星系根拠地隊指令・相賀祐輔に抗議しますが、
相賀の口から出た「兵站の保証の見返りとしての主権の保証」には同意を示します。
一方、壱岐派遣艦隊の強襲艦ゲンブで、降下猟兵を率いたシャロン紫壇中隊長は、
マイア先任兵曹長の活躍も相まって、天涯でのガイナス戦に勝利したのでした。

   ***

SFということで、様々な独自設定が現実世界のものとは大きく異なるため、
それらを理解しながら読み進める必要があり、その速度は鈍りがちでした。
それでも、その世界観や筆者の文体にも次第に慣れてきて、
天涯でのガイナス戦は、かなり楽しむことが出来ました。

  「ならば、軍隊を組織化する理由。
   それは暴力装置で凡人を戦力化するためだ。
   歴史を見ればわかる。
   少数精鋭のエリート部隊では、戦闘では勝てても、
   戦争という大きな枠組みでは勝てない。
   少数精鋭と言うと聞こえはいいが、
   要するに組織の不備を、
   少数の有能な人間への負荷で凌いでいるに過ぎない。
   勝てる軍隊とは、凡人を戦力化できる組織なんだよ。
   機構がしっかりしていれば、凡人が粛々と与えられた仕事をするだけで、
   組織は目的を達成でき、つまりは勝利することができる。
   兵站とは、凡人による軍隊組織を、正常に機能させるための機構だ。
   だから軍の組織が健全であり、兵站が機能しているなら、
   英雄など生まれない」(p.361)

これも火伏が水上に語った言葉です。
それでは、第2巻の読書に突入します。





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Last updated  2020.08.13 00:10:17
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