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賢司とナオミは、元駐日イスラエル大使・ヘラー氏の誘いで、 祇園祭の山鉾巡行を見た後、秦氏の木嶋神社へと向かう。 その途上、ナオミは清美とのシルクロード旅行について語る。 そして、剣山の行場らしき洞窟で、兼平宮司の命を受けた八咫烏の小橋に遭遇。 しかし、小橋の同期・宗村は、賢司に銃口を押しつけ、神の絵を出せと脅迫。 宗村の正体は、中国のスパイ、ヴォルターだったが、小橋の活躍により危機は回避される。 そして、ヘラー氏、賢司、ナオミは、イスラエル大使館によって無事救出されたのだった。 その後、賢司とナオミは出雲大社に向かい、ボランティアガイドの三浦憲行に案内してもらう。さらに、賢司とナオミは籠神社へと向かい、賢司の叔父である宮司から次の『神の同時存在の法則』について聞かされることに。 一.神は別名の分身を創るが能ふ 一.神は時空をこえて存在するが能ふ 一.同名をもつ神はもとは同神なりそして、本殿に向かう途中、突如、ウィリアム・王が現れる。王は、自身の正体が中国のスパイ・赤猫であることを明かし、海部直彦が賢司に贈った本の最後の頁の絵を渡して欲しいと頼むが、賢司は断る。王は、そこに現れたヴォルターが放った2発目の銃弾から賢司を庇い、自らが被弾してしまう。その後、叔父から手渡された、父からの籠神社御札の中に、メッセージを見つけた賢司は、ナオミと共にメッセージを次々に解読しながら大神神社、大和神社、石上神宮と順に巡る。そして、最後に伊勢神宮に辿り着くと、二人は内宮板垣を超えて内部に侵入。そこで、賢司が見た、朽ちかけた素木の無垢板には四文字の神の名が。さらに、本殿奥の祭壇には…… ***上巻の帯には「『ダ・ヴィンチ・コード』を凌ぐ衝撃の名著!!」とありましたが、それは、世界的ベストセラー作家であるダン・ブラウンさんに対して少々失礼かも。文章力も、構成力も、本物のプロの作家さんとは、明確な差が感じられました。作品自体は、少し前に『「戦前」の正体』を読んでいたので、十分に楽しむことが出来ました。
2024.05.31
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籠神社第82代宮司・海部直彦が、ニューヨークで、 イスラエルの調査機関アミシャブ代表のアブラハム・ヘルマンと共に殺害された。 海部直彦の息子である賢司・リチャーディーは、 日本総領事館員・度会忠行から、直彦が残した暗号メッセージを受取る。 賢司は、かつて勤めたゴールドマン・サックスで同僚だったイラージ・カーニ、 デービッド・バロン、ウィリアム・王に協力を求め、暗号の解読作業を開始する。 そして、賢司の母・イエナンから、暗号文の文字がアラム語であることや、 日本と古代イスラエルには、数多くの共通点が見られるということを聞かされる。賢司は、父のメッセージやヘルマンが残したメモの意味を解明すべく、仲間と共に日本へ。伊勢神宮で元巫女の田中清美と合流して各所を巡ると、諏訪大社へも足を延ばし、そこで、第78代諏訪大社宮司・兼平正人から、非公開の秘祭を見せてもらう。それは、数千年前にモリヤ山で起こったと聖書に伝わる秘話を再現するものだった。さらに、日本ユダヤ教団では、故ラビ・コーヘンの娘ナオミ・コーヘンの手助けで、彼が隠し持っていた木版画を発見するが、そこに現れた二人組の女に銃口を向けられる。うち一人に7枚の絵を奪い去られるが、もう一人は倒し1枚の絵を手元に残すことに成功。そこには、ラビ・コーヘンが殺害された理由と思われる内容が記されていた。 ***賢司たちが暗号の解読作業を進める中、中国駐日本大使・郭雲雕と駐大阪総領事・周江は、諜報員を使ってラビ・コーヘンが海部直彦から預かっているはずの版画の入手を目指していました。また、下賀茂神社神職・小橋直樹は、なにやら不穏な動きを見せています。 もし、米国メディアと外交政策に強力な影響力をもつユダヤ勢力が日本に急接近すれば、 いま中国が進めている沖縄独立計画にもどんな歯止めがかかるかわからない。(中略) 確かに、イスラエルが突然動き出したこと以外は何の確証もない。 しかし、先を越されて致命的なダメージを受けるのはやはり中国、 何より郭大使自身だ。(p.251)これが、中国が必死になって木版画を入手しようとしている理由。一方、日本総領事館員・度会忠行が、2003年12月10日に、国会議員秘書・池田登から聞いたイスラエルの調査機関アミシャブが、旧宮家に接近しているらしいという話は次のようなもの。 「いいか、笑わないでくれよ。 なんと、天皇家がユダヤの血を引いているかどうかを確かめるために、 髪の毛を採取してDNAサンプルを取ろうとしているらしい」(p.192)そして翌日、度会はラビ・コーヘンから、次の言葉を聞いたのです。 「王家、ユダ族が日本にやって来たということですよ……」(p.217)聖書と日本神話の否定しがたい類似、そして、ユダヤ人が古代日本へ渡来した可能性。これらの謎を解き明かすべく、下巻の読書に突入します。
2024.05.26
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著者は、和田裕美さん。 これまでに、数多くの自己啓発書・ビジネス書を出されている方です。 *** パンダスタッフは創業40年、従業員が300名ほどの中堅派遣会社。 登録スタッフは10万人、実際に派遣されているのは5000人ほどで、 一般事務、エンジニア、販売員、介護、コールセンター、警備員、工場での軽作業、 引っ越し作業など、幅広い職種に派遣されています。そのAI推進部が担当するのは、営業部で抱えきれなくなった案件のフォローや雑務全般で、派遣スタッフ欠勤時の穴埋め要員、クレーム対応、ビル清掃業者休業時の清掃、不要書類処分等。しかし、周囲からは「会社の使えない人の引き取り先」と認識されており、営業部長・石黒、営業部・郡司、総務部部長・野田の3人は、ことあるごとに辛く当たります。福田初芽(23)は、この4月に新卒で入社するも、7ケ月で営業部からAI推進部に異動。観賞用魚販売店「WISH FISH」をよく訪れ、店長の大森元気(38)に色々と相談しています。山川拓真(27)は、中堅広告代理店経営者でパンダスタッフの取引先だった父親のコネで入社。後輩が起こした失敗の責任を自分一人で被り、営業部からAI推進部に異動してきました。三浦駒子(45)は、派遣先で起こった窃盗事件で、担当者を庇って防犯カメラの映像を消去。その結果、自らが疑われることになり、AI推進部に異動してきました。土屋絵里(35)は、元社長・役員秘書でしたが、取引先外資系企業の男の誘いを断ります。その後、鬱と診断されて半年休職し、復帰時にAI推進部に異動してきました。水田速雄(54)はAI推進部部長で、4年前の事故で重傷を負い車の運転が出来なくなりました。14年前に担当した派遣スタッフ・荻野悠也の面接に際し、スーツを貸していたことが判明。寺山慎一(32)は入社5年目で、AI推進部発足時、水田が部長に任命された当初からのメンバー。極端に人と関わらず、口数が少ない謎の人物とされていましたが、最後にその正体が明らかに。 ***ジャングルドットコムの倉庫作業のエピソードは、『潜入ルポ アマゾン帝国の闇』を彷彿とさせるものでした。他のエピソードについても、全体としては、イイ感じでお話は進んでいき、大森元気と寺山慎一が、このお話のキーマンに繋がっていく展開は、とても面白かったです。ただ、たこ焼きチェーン店での一件については、「本当にこんな風に展開するかな?」と感じましたし、ダークウエブの一件や、石黒の荻野悠也との契約の一件については、「こんな形で終わらせてしまって良いの?」と、かなりモヤモヤ感が残りました。
2024.05.25
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どうやって本著に辿り着いたか、全く覚えていないのですが、 ネット上で偶然に目にとまり、今回手にすることになった一冊。 そして読み始めると、既にシリーズ20巻を刊行していることに大いに納得。 また一人、優れた作家さんにこうして出会うことが出来て、とても幸せです。 ***この作品の主人公が、作中で婚活サイト申込書・質問紙に記入したプロフィールは次の通り。名前:真田夏希(さなだなつき)住所:神奈川県横浜市戸塚区舞岡町……生年月日:昭和60年(1985年)8月15日年齢:31歳職業:地方公務員最終学歴:東京医科歯科大学医学部医学科卒業、同大学院修士課程医歯理工学専攻修了 筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程後期課程(感性認知脳科学専攻)修了 取得学位は医科学博士、神経科学博士夏希は、高校卒業までは函館市郊外で育ちましたが、小5の夏に祖母が亡くなった際、「悲嘆の遅延」により悲しみの感情が表面に出てこず、そのことが原因で、従姉妹・朋花との関係が悪化してしまいました。そして、その解消が出来ないままに、朋花は事故死してしまったのです。また、かつては精神科医として都内病院に勤務していましたが、その2年目の秋、担当患者が自死したことから病院を退職、精神科医も辞めてしまいました。そして、2017年4月に神奈川県警初の心理職特別捜査官(警部補)として採用されると、7月にみなとみらい地区53街区で爆発が発生、高島署設置の捜査本部で捜査に加わることに。 「マシュマロボーイ」を名乗る犯人は、SNSで神奈川県警をネット炎上させつつ、爆破予告をくり返し捜査を攪乱、第2、第3の爆発を次々に発生させていきます。夏希は犯人と交渉を続けながら、地雷探知犬上がりの警察犬候補生・アリシアと共に、爆発を未然に防ぐべく各所を駆け回り、遂に犯人を追い詰めることに成功したのでした。 *** ここからはわたしの推論ですが、 彼らは自分が社会内で受けているうっぷんを、 顧客という高みに立つことで晴らそうとしているのでしょう。 我々警察官はモンスターシチズンを相手にしているという自覚を 持つ必要があると思います。(p.124)この言葉の前に、警察官以外にも、教師、医師、市役所などの職員、鉄道乗務員など、高い職業倫理が求められる職種に対し、市民が監視する態度はどんどん厳しくなっていると、夏希は指摘しており、とても納得させられました。最近話題の「カスハラ」も、まさにこれに当てはまるものですね。 犯人の狙いは、SNSや報道でこの爆破事件を知った者たちの メシウマ感情をあおることにあるのだ。 犯人は、世間の人々のシャーデンフロイデを喚起しようと計算して、 カップルを狙ったものに違いない。 犯人はメシウマと思っている人々を見下している。 他人の不幸にしか喜びを感じられない人間を蔑んでいるのだ。(p.128)これは、SNSの現状について色々と考えさせられた箇所。「踊らせている」のは誰で、それは何を目的としているのか。そして、「踊らされている」人たちは、そのことに気付いているのか。まぁ、何も考えずに「踊らされている」だけなんでしょうね。
2024.05.19
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「便秘は、大腸が原因」と信じて疑わず、 日々腸活に励んでいる人たちに、新たな気付きを与えてくれる一冊。 著者は、大阪肛門科診療所・副委員長の佐々木みのりさん。 元皮膚科医で、肛門科に転身した1998年には、女性肛門科医は全国で8名でした。 ***便秘には、おなか(大腸)の便秘と出口(直腸・肛門)の便秘の2つのタイプがあり、次のことが当てはまる場合、出口の便秘が疑われるそう。・腸活してるのに便秘・排せつ後にお尻を拭くと紙に便がつく・温水洗浄便座がないとつらい・ニオイおならがよく出る・出始めの便が硬い・下着に便がつく・実は痔で悩んでいる毎日排便があっても、スッキリ出し切れずに出口(おしり)に残っていれば「便秘」で、便秘難民の8割は、この出口の便秘とのこと。腸活して一生懸命よい便をつくっても、出口で渋滞してコロコロ化した便があると、そこに新しく軟らかい便が下りてきても、2階建て構造の出口の便秘になってしまうのです。下剤に関する注意事項や、便通のための生活指導(食事、睡眠、運動、副交感神経)、さらには、トイレ作法についても、「なるほど!」というアドバイスが目白押し。著者のブログや大阪肛門科診療所のHPにも、多数の関連記事が掲載されていますが、本著はそれらを分かりやすくひとまとめにしており、大変読みやすいものになっています。
2024.05.18
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結婚とは「所得連動型の債権」という金融商品である。(p.21) 読み進めていくにつれ、この言葉の意味するところがジワジワと伝わってきます。 ・結婚と離婚で動く金は、基本的には、慰謝料、財産分与、婚姻費用の3つ。 ・養育費は、離婚成立までは婚姻費用に含まれる。 ・慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償金で、離婚の原因を作った側が支払う。慰謝料については、日本では相場がある程度予測可能で、浮気なら100万~200万円程度、アメリカのように莫大な金額になることはないそうです。さらに、芸能ニュースでいうところの「慰謝料」は、離婚に際し払った総額のことをいっており、法律用語でいうところの「慰謝料」とは違っているとのこと。 ・財産分与、婚姻費用の算定では、どちらが悪いかは全く関係なく、所得で決まる。 ・財産分与は、離婚する際に、結婚してから形成された共有財産を分割するもの。そのため、結婚前に持っていたお金については、財産分与に関しては全く関係なく、親が金持ちのボンボンと結婚しても、理論的にはそこから1円も取れないそうです。 ・婚姻費用は、夫婦間でより稼いでいる方が、そうでない方に毎月一定の金額を支払うもの。 ・これは、夫の所得、妻の所得、子供の数と年齢から、家庭裁判所ではほぼ機械的に決まる。 ・離婚後、婚姻費用の支払いが滞った場合には、預金や給料など何でも差し押さえ可能となる。これは、「夫婦は相手の生活を自分と同じレベルで維持し、夫婦の資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する義務がある」と民法に規定されているためです。これらのことから、年収1200万円のサラリーマンの夫が、専業主婦の妻に、14歳以下の子供一人を連れて実家で別居され、婚姻費用分担を請求されると、夫は月々約21万円を妻子に支払い続ける義務が発生し、コンピ地獄が始まります。これを終わらせるには、離婚を成立させるしかなく、夫は離婚裁判を起こすことに。双方が書面で相手を罵り合いますが、妻は離婚したくない、元の生活に戻りたいとも主張。それは離婚成立を困難にし、相手を有責配偶者にして、コンピ地獄を長期化させるため。その妻と10年後に離婚、結婚後築いた財産が夫の預金1000万円、妻の預金100万円である場合、夫が離婚に際し支払う総額は2970万円、以後養育費として月額17万円を支払うことに。 *** すでに述べたように、親が億万長者である無職のボンボンと、 年収300万円のOLが結婚した場合、 旦那が愛人を作って出て行った場合に、 毎月、婚姻費用を支払わなければいけないのは、OLである。 離婚するときに財産分与を支払わなければいけないのも、OLのほうなのだ。(p.112)このルールさえ頭に入っていれば、結婚・離婚に際しマネーがどう動くかについて、格段に見当がつけやすくなりそうですね。とても勉強になる一冊でした。
2024.05.18
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第2巻読後、勢いに乗ってすぐに読み始めた第3巻。 TVドラマでは、まだ放映されていないエピソードばかり。 そして、今巻の中で、私は思いもよらぬことを知ることに。 それは、三瓶が語った言葉の中にありました。 ***第18話~第20話「相貌失認①~③」ミヤビの主治医である関東医大・大迫教授に、MRI画像の提供を依頼するも断られ、三瓶は自らMRIを撮りますが、海馬の損傷が僅かすぎ、記憶障害の原因が分かりません。事故から1年経過して、なお重度の記憶障害が残るような、そんな脳の損傷をミヤビは初めから負っていなかったのではないか、と三瓶は考えます。そして、海馬の損傷より、右側頭葉底部紡錘状回の損傷による後遺症の評価から始めることに。 その結果、ミヤビは軽度の相貌失認で、特に人を覚えるのが苦手だということが判明します。その後、星前はミヤビに、三瓶とミヤビの二人が一緒に写った写真について話し、三瓶はミヤビを直すためにここに来たのではないかと言うのでした。第21話~第24話「転移性脳腫瘍①~④」63歳の池野真は、左肺門部に直系7cmの巨大腫瘍があり気管を圧迫、右肺2か所と脳にも転移が見つかり、麻痺と意識障害が進行していました。脳手術で意識をクリアにした後に、肺癌が治らないと呼吸苦で苦しめるだけとなるため、三瓶はカンファレンスで、手術は出来るが原発巣である肺癌の根治は可能かと訊ねます。それに対し、胸部外科医・先崎彰は、免疫療法を併用すれば可能だと答えたため、三瓶は転移性脳腫瘍摘出術を行いますが、意識がクリアになった池野真は、息子夫婦に少しでもいい状態で和菓子店を継いでもらいたいと、高額な免疫治療を拒否。呼吸苦に陥った池野は「薬で眠らせてくれ。死なせて欲しい」と、三瓶に頼みます。そんな池野に、三瓶は、池野の息子が自分の店を紹介するTV番組を見せます。そこでは、三瓶が考えた「脳みそまんじゅう」も紹介されていました。その直後、息子から資金繰りの目処が立ったので、すぐに父親の肺の手術をして欲しいとの電話が入ったのでした。第25話~第26話「通過症候群①~②」交通事故で頭部顔面外傷を負った21歳女性が救急搬送されてきて、急性硬膜外血腫除去術と顔面裂創縫合術の同時手術が行われます。途中、アクシデントに見舞われたものの、麻酔科医・成増貴子の助力を得て何とか終了。しかし、術後に患者が母親や医師、看護師などに物を投げつけたり暴言を繰り返すように。これは、患者が脳損傷の急性期を過ぎた頃、感情や人格などの精神面で障害や変化が見られる「通過症候群」の症状が出たためでした。一方、関東医大の綾野が三瓶の前に現れ、ミヤビの治療に協力させて欲しいと申し出ます。そんな綾野に、三瓶はこう言います。 今さら無理しなくていいんじゃないんですか 彼女は僕のこともあなたのことも忘れていますから ***さて、最初に書いた三瓶が語った言葉というのは、相貌失認に関する次の言葉です。 重症になると相手の顔がのっぺらぼうに見える人もいますし、これって、『薬屋のひとりごと』の猫猫の父・羅漢と同じですよね!?さらに、三瓶はこうも言っています。 ちなみに相貌失認は先天性も含め人口の約2%にあって 気づかず過ごしている人も多くいますそうか、約2%もいるんですね。とても勉強になりました。
2024.05.12
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前巻を読み終えて、すぐに読み始めた第2巻。 TVドラマでは、まだ放映されていないエピソードもありました。 特に星前のエピソードは、とってもイイ。 ドラマでも、ぜひ取り上げて欲しいです。 ***第9話~第12話「失明①~④」専門バカが嫌いで、全科で専門医レベルを目指し、全ての科が結集する医療体制を作りたい星前。13年前、彼の母親は何カ月にも渡って診療科をたらいまわしにされ、検査をしても異常が見つからず、ずっと経過観察を続けていましたが、症状が出始めて1年たった頃、多発性骨髄腫ステージⅢの診断が下ったのでした。そんなエピソードを星前が三瓶たちに語っていた最中、急な視力低下を訴え、星前の指示で眼科を訪れるも、検査予約だけ済まされ、検査当日まで経過観察するよう言われていた患者が、救急搬送されてきます。三瓶は、眼科医に診察させた後にMRIを撮り、下垂体腫瘍が視神経を圧迫していると気付きます。三瓶は腫瘍の除去には成功しますが、その後患者の血圧が急激に低下してしまう事態に。その時、手術直前に星前の指示で行っていた血液検査結果が届き、患者の副腎不全が判明。星前が冷静に対処して事なきを得たのでした。以後、二人はお互いの姿勢を認め合うようになります。第13話~17話「左半側無視①~⑤」サッカー全国大会常連校で背番号10を背負う高校生が、救急搬送されてきます。静脈洞穴血栓症で点滴治療を行いますが、左側が認識できない状態に。以後、高校生は現実を受け入れることが出来ない苦悶の日々を過ごしますが、周囲の温かい働きかけにより、それを乗り越えていくのでした。その後、三瓶はミヤビに脳を再検査させてほしいと申し出ます。そして、ミヤビを事故現場に連れていき、自分たち二人は婚約していたと告げたのでした。 ***「左半側無視」のエピソードは、ドラマでも取り上げていましたね。原作の雰囲気を損なわない、良いお話に仕上がっていたように思います。
2024.05.12
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TVドラマを見ていて興味を持ち、 今回原作を読んでみました。 ドラマは関テレ制作らしい、とてもしっかりとした作品ですが、 原作の方も、専門知識をベースに、実に丁寧に描き出した優れモノでした。 ***第1話~第2話「脳内血腫①~②」フィラデルフィア大学病院で勤務していた30代独身エリート脳外科医・三瓶友治。丘陵セントラル病院にやってきて早々、脳内血腫の急患が搬送され、開頭血腫除去手術を開始。ドリル故障も何のその、手術用のノミとハンマー代わりの理事長ブロンズ像を使って穿頭。患部以外を一切傷つけない、正確で繊細な手術を完了させます。丘陵セントラル病院総合診療科の川内ミヤビは、記憶障害で昨日のことも覚えてられません。そのため、毎朝5時に起きて直近2カ月間の日記を繰り返し読んでいます。以前は外科系医師でしたが、今は津幡看護師長の指導下、ガーゼ交換と看護補助業務に励む日々。そして、着任した三瓶を監督するため、救急部長・星前宏太と共に脳外科を兼務することに。手術後、空間認知能力が低下した建設作業員・山本に対し、神経心理検査の結果を踏まえ、三瓶は、障害者雇用促進法を活かし、事務職員での職場復帰という今後の方針を示します。その際、口にした言葉がコレ。 後遺症に対してできる治療には限界がありますが、社会復帰まで診るのが脳外科です 世話焼きでなく… これが仕事です第3話~第4話「エピソード記憶①~②」星前が医師会の会議で外出中、第4脳室腫瘍で閉塞性水頭症を合併している患者に対し、緊急ドレナージを行うことになります。三瓶はミヤビを星前に変装させ、助手をさせようとしますが、津幡が見破って阻止。しかし後日、第4脳室腫瘍摘出手術で三瓶を手伝うミヤビの姿を見た際は、黙って見逃します。そして、三瓶は藤堂院長に技術学習能力を測る鏡映描写法の結果を見せ、今後、ミヤビが手術に入ることを承諾させたのでした。第5話~第8話「失語症①~④」女優・赤嶺レナのスタイリスト・小笠ミホコは、アテローム血栓性脳梗塞で倒れ緊急手術を受けますが、運動性失語症が残ってしまいます。婚約者の江本ディレクターは、思うように改善が見られない症状に、焦りを隠せません。そして1カ月後、ミホコに再発の恐れがあるため、三瓶は、STA-MCAバイパス術を提案、ミヤビの手も借りてそれを成功させます。その後、江本に負担をかけたくないミホコは別離を決意します。しかし、ミホコの本当の思いに気付いた江本は、改めて求婚したのでした。 ***最後は、三瓶とミヤビが一緒に写った写真を、星前が見つけたところで今巻は終了。ところで、「-ある脳外科医の日記ー」の「日記」って、ミヤビが書いている「日記」のことを指し示しているのでしょうか?それとも、全く違う意味合い?
2024.05.12
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副題は「その正しい理解と克服法」 著者は、精神科医の岡田尊司さん。 発達障害「グレーゾーン」について記した一冊。 子どもから大人まで通した問題として、考えていきます。 まず、『第1章 「グレーゾーン」は症状が軽いから問題ない?』では、 「グレーゾーン」と診断の受け止め方について、次のように述べています。 「グレーゾーン」は決して様子を見ればいい状態ではなく、 細やかな注意と適切なサポートが必要な状態で、 それが与えられるかどうかが命運を左右するということを肝に銘じたい。(p.25)そのうえで、本当のADHDよりも疑似ADHDの方が生きづらいこと、グレーゾーンは愛着や心の傷を抱えたケースが多いことを指摘しています。次の『第2章 同じ行動を繰り返す人たち - こだわり症・執着症』では、ビル・ゲイツのや村上春樹の例を挙げながら、こだわりの強さについて述べていきます。 ドラマや映画の主人公は大抵そんな性格の人で、 困難を顧みずに巨悪と戦うことになるのだが、 現実の世界でそうすることは、人生を過酷なものにしてしまう。(p.51)これは、正しさにこだわりすぎることについて述べたもので、大いに納得。現在TVドラマが放映中の『花咲舞が黙ってない』の主人公などは、まさにその典型でしょう。そして、『第3章 空気が読めない人たち - 社会的コミュニケーション障害』では、この障害を示す発達障害の代表が「自閉症スペクトラム症(ASD)」であるものの、限局された反復的行動が見られないと、ASDと診断されずグレーゾーンになると指摘します。続く『第4章 イメージできない人たち - ASDタイプと文系脳タイプ』では、知覚統合に問題がある代表的ケースには、言語・記憶が強いASDタイプ(アスペルガータイプ)と地図や図形が苦手な言語・聴覚タイプの二つがあると述べています。言語・記憶が強いASDタイプについては、フランツ・カフカや次のような例を挙げています。 Fさんは真面目な努力家で、学生時代はずっと成績優秀だった。 国立大学の経済学部に進学して、前途洋々かと思われていた。 ところが、就職では、思わぬ苦戦を強いられることになる。 志望する大手企業を次々と落とされてしまったのだ。(p.100)これは、先日読んだ『ルポ 高学歴発達障害』に登場してきた人たちを想起させるものでした・また、『第5章 共感するのが苦手な人たち - 理系脳タイプとSタイプ』では、人間の脳には、共感を得意とするEタイプと、システム思考を得意とするSタイプがあり、Sタイプの例として、ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクを挙げています。さらに、『第6章 ひといちばい過敏な人たち - HSPと不安型愛着スタイル』では、「HSP(不安型)」「ASD」「恐れ・回避型」を比較し、「恐れ・回避型」の例として、夏目漱石を挙げています。 続く『第7章 生活が混乱しやすい人たち - ADHDと疑似ADHD』、 『第8章 動きがぎこちない人たち - 発達性協調運動障害』、 『第9章 勉強が苦手な人たち - 学習障害と境界知能』では、ダニエル・ラドクリフやトム・クルーズを例に挙げながら、各発達特性について述べた後、『第10章 グレーゾーンで大切なのは「診断」よりも「特性」への理解』では、10年後には診断がガラリと変わる可能性について言及しています。様々な特性について、新書版200頁余りの紙幅に収めたため、全体を通じて、やや落ち着きがない感じになっているような気もしますが、「グレーゾーン」について、最新の知見を概観できるメリットは大きく、様々な方々にとって、読む価値のある一冊だと思います。
2024.05.11
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2年ぶりの新刊となる今巻は、 昭和・平成・令和のそれぞれの時代に、 17歳の少女だった智恵子・栞子・扉子が、 夏目漱石の作品を通して「鎌倉文庫」の謎を解き明かしていくというお話。 第1話 令和編『鶉籠』は、虚貝堂の孫・樋口恭一郎視点で描かれたもの。 扉子は、半年前から、仲の良かった戸山圭を避けるようになっていましたが、 それは、圭の祖父・戸山清和の兄で、大伯父に当たる戸山利平が原因。 彼が所有する『鶉籠』初版本には、「漱石山房」と「鎌倉文庫」の印が押されていました。この初版本が、行方不明となっている千冊の「鎌倉文庫」の謎を解く鍵になると考えた扉子は、圭と共に利平に会い、彼が「鎌倉文庫」を所有し、戸山家土蔵に保管していると聞かされます。が、土蔵に「鎌倉文庫」は見当たらず、扉子は利平に『鶉籠』の入手経緯を問い詰めたのでした。これに怒った圭との関係は修復されましたが、「鎌倉文庫」には智恵子が関わっていたのです。第2話 昭和編『道草』は、20歳の大学生でビブリア古書堂を手伝う篠川登視点で描かれたもの。兼井健蔵は、登の父の師匠で、常連客の女子高生・三浦智恵子の実父でもある久我山尚大でなく、ビブリア古書堂に「鎌倉文庫」の所有者と買取交渉をして欲しいと、店にやって来ました。登と智恵子は「鎌倉文庫」の所有者について情報を得るため、もぐら堂を訪ねます。そこで、久我山書房の番頭・吉原が利平に借金返済を迫る場面に遭遇、店主の清和と話をした後、利平の赤いオープンカーの中で『鶉籠』初版本を、土蔵で「鎌倉文庫」を発見します。その「鎌倉文庫」は、清和が元々の所有者の遺族から買い取り保有していたものでした。「鎌倉文庫」は智恵子によってある「顧客」に売却され、清和は利平の借金を返済します。第3話 平成編『我輩ハ猫デアル』は、扉子と文香の父となった登視点で描かれたもの。登は栞子から「鎌倉文庫」の貸出本が最近オークションサイトに出品されたと聞かされます。そんな時、あの兼井健蔵の妻・花子が、家に来て健蔵の「相談」にのって欲しいと店を訪れます。登と栞子が兼井家の屋敷に行くと、そこには『我輩ハ猫デアル』上編の初版本がありました。健蔵は、この初版本の出品者を捜し出し、珍しい古書を売ってもらえるよう交渉を依頼。本館書庫を見学した栞子は、娘・仁美の夫・弘志からパラフィン紙カバーについて聞かされます。その後、栞子は登と共にもぐら堂で清和から話を聞くと、オークションの出品者、『我輩ハ猫デアル』上編に纏わる事件、「鎌倉文庫」の行方の全ての謎を解き明かしたのでした。 ***今巻で最も興味深かったのは、篠川登と三浦智恵子の二人のエピソード。中でも、インスタントラーメンを一緒に食べるシーンがとても良かったですね。
2024.05.11
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先日、朝ドラ『虎に翼』を見ていて、帝人事件に興味を持ち、 本著を手にしましたが、本著はあくまでも「小説」。 贈収賄事件の物証として主役となるべき株券がスイスの地下大金庫で見つかり、 かつての上司から依頼を受けた「私」が、調査を進めていくという設定です。 ただし、事件に関わる人々は実名で登場、その主軸となるのが河合良成。 郷誠之助との出会いや、日本相場史上空前の大策士・天一坊こと松谷元三郎との激闘、 番町会設立と永野護、伊藤忠兵衛、岩倉具光、正力松太郎、渋沢正雄らとの交流、 「鈴木商店、東京の番頭」と呼ばれた福原憲一との帝人株を巡る攻防等が描かれていきます。どのエピソードもリアリティに溢れ、とてもスリリングなものですが、鍵を握るのは、福原憲一と東京地検主任検事・黒川悦男、河合良成、小林中、そして、この作品のためのキャラクターであるステファン・デルツバーガーです。が、この作品はあくまでもフィクション、実際の帝人事件の真相は未だ闇の中です。
2024.05.06
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先月読んだ『ルポ 高学歴発達障害』の中に本著の名があり、 今回、読んでみることにしました。 本書は、昭和時代の片田舎で生まれ育った一人の精神科医が、 過去の片田舎と現代の東京を行き来しながらこれらの変化を振り返り、 これからの社会の自由や不自由について論じたものだ。 と同時に、社会の進歩によって解消されていった生きづらさと、 新たに浮かび上がってきた生きづらさを点検し、 そうした点検をとおして令和時代ならではの社会病理をラフスケッチし、 物語っていくものでもある。(p.5)この「はじめに」の一文を受け、「第1章 快適な社会の新たな不自由」では、現代社会に対する著者の問題意識がダイジェスト的に紹介されています。例えば、全ての者にハイクオリティが期待される風潮について、次のように述べています。 IQ70~84の境界知能は、その統計的定義から言って全人口の1割以上が該当する。 実際問題として、これらの人々をまとめて医療や福祉が背負うのは、 今日の制度下では非現実的だろう。 とはいえ、社会がますます美しく、ますます便利で、親にも子にも就業者にも、 サービスの提供者にも消費者にもハイクオリティが期待される風潮のなかで、 最も割を食いやすく、最も搾取されやすく、 にもかかわらずサポートの対象とされにくいのは彼らである。(p.35)続いて、第2章「精神医療とマネジメントを望む社会」では、メンタルヘルスの診断基準に、資本主義的プラグマティズムが関わっていることに言及。 いわばこの、お金によって傷つき、お金によって癒され、 家庭でも学校でも医療機関でも資本主義と個人主義と社会契約がついてまわる社会のなかで、 精神科医もカウンセラーもソーシャルワーカーも、 この壮大なシステムと思想を当然のものとみなし、日常業務のなかでは意識すらしない。 彼らは、いや私たちは、そうしたシステムにそぐわない思想、 システムからはみ出した言動に出くわした時、 それらもまた多様性の範疇とみなすことができるものだろうか? それともやはり、秩序からのはみ出しとして、 つまり症状や疾患として取り扱わずにはいられなくなるのだろうか?(p.83)そして、第3章「健康という”普遍的価値”」では健康は、ブルジョワ的上昇志向の手段や、個人主義的自己顕示の意味合いをもち、現在では”普遍的価値”のひとつとみなされ、資本主義的プラグマティズムと結びつけて、自己目的化していると指摘します。さらに、第4章「リスクとしての子育て、少子化と言う帰結」では、子育ての難しさもこれらと無関係ではないと指摘します。 昭和時代には健康の範疇からはみ出していなかった人が、 今日ではADHDやASD、あるいはその他の精神疾患に該当するとみなされ、 社会や世間から不健康であるとみなされる可能性は少なくない。(中略) これとは正反対に、医療の対象とみなされていた、 つまり不健康とみなされていたものが不健康ではなくなる、 いわば脱-医療化することもある。(中略) もともとは同性愛を、「社会病質のパーソナリティ障害」としていた アメリカ精神医学会の診断基準(DSM)は、1973年の改定で、 「主観的苦痛を伴わない同性愛は治療の対象ではない」と診断基準を改めた。(p.111) この子育てのブルジョワ化の内実は、 「ブルジョワのような通念や習慣に基づいて子育てを考え、 ブルジョワのように働くけれども、 実生活や子育てをブルジョワのようにアウトソースできず、 自分自身でやり遂げなければならない人々」を増大させるものだった。 昭和時代の日本を含めた20世紀の先進国では、 専業主婦が増えたことでこの問題はいったん棚上げされた(p.155)第5章「秩序としての清潔」と第6章「アーキテクチャとコミュニケーション」では、清潔にまつわる習慣や通念、プライベートな個人生活とそのための空間設計についても、そのルーツは中~上流階級に遡ることができると指摘します。 1980年代の新人類たちはモノやレジャーの消費をとおして 自分たちのヒエラルキーを競いあっていたが、 令和時代の私たちはそれよりもずっと淡々と、ずっと当たり前のこととして、 お互いを値踏みしあい、お互いを商品とみなしあい、コミュニケーションのような売買を、 あるいは売買のようなコミュニケーションを行っている。 就活や婚活のコミュニケーションはその典型だ。(p.219)そして、第7章では、次のようにその総括がなされています。”変化”とうものについて、とても考えさせられる一冊でした。 ますます便利で快適、安全・安心になっていく社会のなかで 私たちに課せられている諸条件について、さまざまな角度から検討してきた。 社会が進歩するにつて、私たちに期待される行動や振る舞いが変わり、 それに伴って、私たちがどう自由でどう不自由なのかも変わった。 誰がマジョリティたりえて、誰がマイノリティたりえるのかも変わっただろう。 東京の美しい街並みや令和時代の秩序は、そうした変化のうえで成り立っている。(p.240)
2024.05.06
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各家の妃が産んだ皇子7人と、宮外に儲けた婚外子3人の計10人が、 詠国皇帝の座を巡って殺し合った熾烈な権力闘争・十星奪嫡。 そこで唯一生き残ったのが、末皇子だった弦耀、皇太子・尭明の父である。 父は息子に、鎮魂祭当日までに『慈粥礼(じしゅくれい)』を行うよう告げる。 皇太子の妻である雛女たちを、陰の気の強い被災地に赴かせ、炊き出しをさせる。 それは、皇太子と雛女を引き離すだけでなく、朱 慧月を孤立させることを狙いとするもの。 朱 慧月の方は隠密・丹に任せ、皇帝は皇后不在の場で黄 玲琳を直接尋問しようとしていた。 弦耀は、術師を捕まえ「必ず取り返してみせます、兄上」と、笛に語りかけるのだった。慧月の姿をした玲琳は、後宮外れの霊廟で下調べをした後、最難関の地・烈丹峰へと向かう。悪路で荷車が落ちて食材の半量を失うも魚を釣って補填し、態度の悪い女官は猛省させ、襲来した山賊たちも鎮圧して、炊き出しの目処を立てると単身雲梯園へ。そこでは、玲琳の姿をした慧月が、突然来臨した弦耀から執拗に正体を見極めようとされていた。しかし、慧月は他家の雛女たちや、景彰、辰宇、冬雪に助けられ、次々に難関をすり抜けていく。玲琳の姿勢に思いを馳せ、黄家淑妃から生まれた先代第一皇子・護明を貶めることも見事に回避。そして、その場に駆けつけてきた尭明によって、弦耀の尋問からようやく解放されたのだった。一方、玲琳は雲梯園に辿り着いたものの、慧月との間でまたしても思いがすれ違ってしまう。慈粥礼翌日、 烈丹峰再訪後の帰途で突如馬が暴れだし、籠に乗った玲琳と莉莉は崖下に転落。玲琳が救助を求め夜空に花火を打ち上げると荷持ち筆頭の安基が現れるが、彼こそが隠密だった。一方、尭明や辰宇、景彰、冬雪らによって玲琳の言動を誤解していたことに気付かされた慧月は、玲琳の危機を知ると、尭明と共に剛蹄馬に乗って救出に向かう。丹により川の中に叩き込まれ、絶体絶命の危機に陥っている玲琳を救出すべく、慧月が丹に炎で襲い掛かると、景彰、辰宇、尭明、さらには景行も加勢する。戦闘が続く中、玲琳は丹に交渉をもちかけ、水害の原因となっていた氷河を爆破してみせる。玲琳は丹を翻意させることに成功し、さらに皇帝への直訴を思い立つ。しかし、そんな玲琳たちに、弦耀が術師を捜している理由は、弦耀の異母兄である廃嫡された第一皇子・護明のための復讐のためであり、入れ替わりの方こそが問題なのだと、丹は告げるのだった。 ***「特別編 砕氷」では、18歳の春から騰丹渓で暮らし始めたアキム(安基、丹)が、移住して3ヶ月後に、川の氾濫で妻・ファトマや家族、家屋、田畑をすべて失った様子と、徴税官2人を殺害後、皇帝の殺害をも図ろうと寝所に侵入した際、次期皇帝・弦耀と出会い、その直属の隠密となって前金家領主を殺害、復讐を果たしていった経緯が描かれています。さて、今巻の中で私が最も印象に残ったのが、玲琳と芳春の次のやりとり。 「何を語るかが知性、何を語らずにいるかが品性、と申します」 まくし立てる芳春を、玲琳は凜とした声で遮った。 「経典の内容を語れぬ慧月様に知性がないと仰るのなら、 それを悪し様に喧伝する芳春様の品性は、いかばかりなのでしょうね」 鏡をお持ちしましょうか? と微笑まれ、芳春はかっと頬を紅潮させてしまった。 そしてそんな自分に驚いた。ここで玲琳が述べた姿勢が、慧月の最大の危機を救うことになったわけですが、とても感銘を受ける一言でした。取り敢えず、第一皇子・護明と現皇帝・弦耀との関係が明らかになることで、今後、色々なことが分かってくるのでしょうね。
2024.05.05
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