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chiko619 @ Re:新参者(09/22) 「新参者」読みました。 東野圭吾さんは、…
kimiki0593 @ 相互リンク 初めまして、人気サイトランキングです。 …
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ こんにちは! 遅ればせながらあけましておめでとうござ…
Twist @ はじめまして^^ 先ほどこのロングインタビューを読み終え…
2024.07.13
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カテゴリ: 経済・ビジネス

 2024年3月にはその座を退き、会長CEOとなった橋本英二さん。
 2020年3月期の連結決算では、過去最大の4315億1300万円の最終赤字を記録し、
 2021年3月期までは、4期連続の営業赤字に沈んでいました。

 しかし、2022年3月期に黒字に転じると、2023年3月期は6940億円の黒字に。
 (2024年3月期は5493億円の黒字、2025年3月期は3000億円の黒字の見通しとのこと)
 70年の歴史を持ち、社員11万人、総資産10兆円という日本を代表する大企業が、
 見事なV字回復を達成した背景を、本著は一つ一つ明らかにしていきます。

   ***


「2年以内のV字回復」「上からの改革」「論理と数字がすべて」を掲げ始まった高炉休止を、
「第2章 『値上げなくして供給なし』 大口顧客と決死の価格交渉」では、
顧客至上主義から脱却する強気の価格交渉と、全国16拠点にあった製鉄所の6エリア集約を描く。

「第3章 異例のスピードで決断 インドで過去最大M&A」では、
2019年の欧州アルセロール・ミタルと組んだインド鉄鋼王手エッサール・スチールの買収劇を、
「第4章 動き出すグローバル3.0 『鉄は国家なり』の請負人に」では、
「メード・イン・ジャパン」の拘りを捨て、世界各地で一貫生産を推し進める様子を描く。

「第5章 国内に巨額投資の覚悟 高級鋼で勝ち抜く『方程式』」では、
ハイテン(高張力鋼)のライン新設(40年ぶり)と、素材メーカーにしかできない市場創造を、
「第6章 脱炭素の『悪玉』論を払拭せよ 鉄づくりを抜本改革」では、
カーボンニュートラルに向けた設備投資と、「水素還元製鉄」に向けての動きを描く。


余剰能力削減後も、生産の空白を生まない強靭な操業体制を構築するための取り組みが、
「第8章 原料戦線異状あり 資源会社に巨額出資」では、
持続可能な鉄づくりのため、初めて打って出たカナダの資源会社への出資の経過が描かれる。

「第9章 橋本英二という男 野性と理性の間に」には、
橋本さんの幼少期から現在に至る経歴と、著者によるインタビューが掲載されている。



  このままでは確実に潰れるという状況だったんです。(中略)
  まさにそんな中で、本当に自分が社長に就いて再建できるのかと思いました。
  ただ、受けた以上はやるしかない。
  決めたからには2年でやると覚悟しました。
  現実的に考えて、当時のキャッシュアウトの状況が2年続いたら
  倒れるところだったんです。(p.271)

この言葉が、関係者の誰もが、当時抱いていた実感なのでしょう。
崖っぷちに追い込まれ、もはや一刻の猶予も許されない絶体絶命の危機。
だからこそ、次のようなリスクがあることは十分承知の上で、
橋本さんの社長就任と相成った。

  橋本の就任を不安視する者たちが指摘したのは、
  強力なリーダーシップと表裏一体にある厳格さがリスクになることだ。
  橋本は仕事について自身に厳しいだけでなく、他者にも厳しい。
  その厳しい言動が各方面に及べば、
  求心力を保てなくなる可能性があるとの見方だった。(p.32)

まさに劇薬ですが、周囲の懸念を跳ね除けて、見事にV字回復を達成。
ただ、劇薬の効果は、当人が社長に就任している時期だけには収まりません。
それは、次期以降の社長が就任した後も、なお大きな影響を及ぼし続けることでしょう。
日本製鉄については、今後その推移をまだまだ見守り続ける必要があると思います。





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Last updated  2024.07.13 12:17:31
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