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今回の会長人事がこれほど注目されたのは、異例ずくめだからだ。会長には4代続けて内部昇格かOBが起用されてきたが、古森重隆委員長(富士フイルムホールディングス社長)の下で経営委は13日、「橋本元一会長をはじめ現執行部に改革を託すのは難しいので、内部からは選出しない」という方針を決めた。
任期半ばの降板を除くと、会長が1期で退任するのは珍しい。局内では「一連の不祥事で落ち込んだ受信料収入は順調に回復しており、これといった失政もない。番組面でも、国内外の賞を受けた『ハゲタカ』やNHKスペシャル『ワーキングプア』のように評価の高い作品が出ている。これでは事実上の更迭ではないか」という反発もあった。
その一方、市民団体や有識者たちが経営委に対し、「選出過程の透明性を高めるため、公募制を採用すべきだ」と申し入れ、永井多恵子・副会長ら独自の候補2人を推薦する動きも起きた。こうした中、財界からの起用に執着する古森委員長の議事運営をめぐり、2人の委員が「委員長は強引で、独断的」と指摘する問題点もあらわになった。
20年ぶりに財界人を会長に迎えることになり、40代以上のNHK職員は、わずか9か月で退陣に追い込まれた池田芳蔵会長の時代を思い出さざるをえないだろう。「私の人生において最後で、最大の仕事」と抱負を述べた福地氏の資質は別にして、当時との共通点が多いからだ。
1988年、慢性的赤字体質に悩むNHKは、経営の合理化・効率化、民活導入などの経営改革を求められていた。三井物産相談役の池田氏の会長就任を実現させたのは、長年の友人の磯田一郎委員長(住友銀行会長)で、当時の竹下登首相とは親しかった。
しかし、池田会長は終始、ジャーナリズムと放送文化についての理解や認識が乏しかった。公式の席で「放送法のいう不偏不党は、自民党の先生がおっしゃるように現実的ではない」と発言し、NHKの労働組合が抗議の時限ストを打ったように、公共放送のトップとしての資質が問われた。途中降板は、国会答弁で失態が相次いだ結果だ。選んだ経営蚕の責任は重く、磯田委員長が引責辞任した。
安倍前首相を囲む財界人グループのメンバーの古森氏は、6月に経営委員に任命され、いきなり委員長に就任した。「改革を進めるには、しがらみのない外部の人がいい」と会長人事を主導し、旧知の福地氏に白羽の矢を立てた。その理由については「大企業のトップとして実績があるだけではなく、企業のメセナ活動にかかわり、文化的素養もあるから」と語った。
NHKは、利益を追求する一般企業とは異なり、政府やあらゆる政治勢力、営利活動などから独立し、 公共性の高い特殊法人 だ。経営委が「NHKの最高意思決定機関」と位置づけられているのは、視聴者の代表だからだ。正確な議事録の公開などを求めた「デジタル時代のNHK懇談会」(会長の諮問機関として昨夏、報告書を提出)有志への回答も含め、 古森委員長は肝心の視聴者に向けて、今回の選考基準とその過程、選出理由を明確に示す責務がある。
橋本会長は信頼回復をめざして「視聴者第一主義」を掲げ、視聴者の声に耳を傾ける第三者組織「NHK『約束』評価委員会」などを設けた。 ことあるごとに「抜本的改革」を強調する古森委員長も、それを担う新会長も、「すべては視聴者のために」という路線は継承すべきだろう。
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