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再処理工場(青森県六ヶ所村)は総事業費約14兆円を費やす原子力政策の要だが20年以上も動かないままだ。 現在も安全対策工事が遅れ、稼働できるか分からない。政府が目指す脱炭素やエネルギー政策の議論で避けて通れない。
原子力規制委員会の更田豊志委員長は15日の記者会見で、青森県の再処理工場について「竣工前には設備の詳細設計の認可や使用前確認などを受ける必要かある。 (現状の審査状況では)到底全体の時間的な見通しを持てる段階ではない」 と述べた。目標とする2022年度前半の完成のメドは立たないとの考えを示した。
核燃料サイクルは使用済み核燃料を再処理して再び原子力発電所で燃料として利用する政策だ。日本は原発導入期の1950年代から掲げてきた。再処理工場が完成できないため主に英仏に費用を支払い再処理を委託してきた。
青森県の再処理工場は2020年7月に原子力規制委員会の安全審査に合格した。東京電力福島第1原発事故後の新規制基準の導入などで遅れてきた完成の実現に向けて期待は高まった。既存設備の安全対策工事などを残すのみとなったが、 計画づくりに手間取り工事に入れていない。
当初は97年の完成をめざしたが年中行事のように延期を繰り返してきた。その間総事業費は14兆円にまで膨らんだ。日本原燃は使用済み核燃料の再処理を委託する大手電力会社が出資する。コスト増は電気代を押し上げる。
電力各社は使用済み核燃料を各原発の敷地内にため込む。関西電力は原発が立地する福井県に、23年までに搬出先の県外候補地の確定を約束した。青森県むつ市の中間貯蔵施設の活用を探るが、同市の宮下宗一郎市長は核燃サイクルの行方が不透明なことを指摘し「むつ市は核のゴミ捨て場ではない」と慎重だ。
再処理工場が完成しても別の問題が生じる。核兵器に転用可能なプルトニウムが再処理の過程で増える。再処理工場がフル稼働すれば、年最大7トンが新たに抽出される。プルトニウム燃料を使う国の高速増殖原型炉「もんじゅ」は廃炉となった。
プルトニウムを使うあてもないまま増やせば、核保有国以外で日本だけが実施する再処理事業に国際社会から疑念の目が向けられかねない。
自民党総裁選に立候補を表明した河野太郎規制改革相は核燃料サイクル政策に関し「再処理をやめる決断は一日でも早い方がいい」と明言した。岸田文雄前政調会長は13日の記者会見で「維持しなければならない。サイクルを止めると動いている原発すら動かすのが難しくなる」と述べた。
看板を下ろすのも簡単ではない。 政府や電力会社にとって最悪のシナリオは青森県が県内に運び込まれた使用済み核燃料の県外撤去を主張することだ。 電力会社と県はサイクルを放棄した場合に持ち出すと取り決めている。電力会社が引き取れば再稼働にも大きな影響が出る。
サイクル事業は袋小路にある。対応を先送りにしてきたツケは国民負担になって跳ね返る。矛盾に国は真剣に向き合う必要がある。
(気候変動エディター・塙和也)
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