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防衛政策への支持を広げたり、有事で特定国への敵対心を醸成、国民の反戦・厭戦の機運を払拭したりするネット空間でのトレンドづくりを目標としている。
◆「情報戦対処」名目
防衛省が姿を隠したまま世論誘導を図る のは、一般の投稿を装い宣伝する「ステルスマーケティング(ステマ)」の手法と重なる。同省は「企業のコマーシャル技術と同じで違法性はない」と説明するが、研究であったとしても、 憲法が保障する個人の尊重(13条)や思想・良心の自由(19条)に抵触する懸念 があり、丁寧な説明が求められる。
中国やロシアなどは、人間心理の操作やかく乱を図る「情報戦」に活発に取り組む。防衛省は、戦闘形態を一変させるゲームチェンジャーになるとみて、日本も、この分野の能力獲得が必要だと判断した。改定される安全保障関連三文書にも、情報戦への対処力向上を盛り込む。
複数の政府関係者によると、防衛省が構想する世論操作は、まずAI技術を駆使してSNSにあふれる大量の「ビッグデータ」を収集・分析し、 どのような対象に工作をするのがふさわしいかなどの全体計画 を策定。ネットで発信力があり、防衛問題でも影響力がありそうなインフルエンサーを特定する。
さらに、 インフルエンサーが頻繁に閲覧するSNSやサイトに防衛省側の情報を流し、インフルエンサーが無意識に有利な情報を出すよう仕向けるという。 防衛省が望むトレントができれば、爆発的な広がりになるようSNSで情報操作を繰り返す。
2022年度予算の将来の装備品を検討する調査研究費を充てた。9月に委託企業公募の入札を実施。10月に世界展開するコンサルタント会社の日本法人に決定した。この会社は米軍の情報戦活動にも携わる。研究は23年度以降も3年間ほど続ける。
<解説>憲法に抵触・思想統制の恐れ
防衛省がAI技術を駆使して、国内世論を誘導する工作の研究に着手した。中国やロシアが急速に「情報戦」を活発化させている動きをにらんだものだが、政府関係者からも「ソフトな思想統制につながりかねない」との批判が出ている。戦前の反省から「個人の尊重」や「思想・良心の自由」を掲げる憲法の下で許容されるのか。厳しく問われるべきだ。
政府・防衛省は 数年前から「戦略的コミュニケーション」(Strategic Communication)として、防衛政策を進めるに当たり、国民世論が有利に動くよう手法や内容を選択して情報発信するようになった。 例えば、日本周辺の中国軍やロシア軍の動向を詳しく集中的に発表して、関心が安全保障に向くように働きかける手法だ。
ある政府関係者は、AIを使用する国内世論の誘導工作についても「表面化していないが各国の国防、情報当局が反戦や厭戦の世論を封じ込めるためにやっていることだ」として、日本も取り組むべきだという。
しかし 今回研究に着手した世論操作は、防衛省・自衛隊が姿を現した上で、起きた事象を発信し、関心を引きつけようとする戦略的コミュニケーションとは決定的に違う。 企業のステマと似た性質がある。
防衛省・自衛隊による世論誘導工作は、軍事組織が国民の内心の領域に知らぬ間に直接介入する危うさをはらむ。
戦前・戦中には「大本営発表」のように、軍部が都合がいい情報だけを流し国民を欺いた。 無謀な戦争に突き進み、国を滅ぼした反省を忘れてはならない。
(共同通信専任編集委員 石井暁)
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