フリーページ
就任直後の所信表明演説では、冒頭のこの言葉に続き「力強い経済」と「力強い外交・安全保障」の実現を訴えました。高市自民党のキャッチフレーズは「日本列島を、強く豊かに。」。首相の国家目標は「令和の富国強兵」と言い換えることもできます。
「強さ」へのこだわりに共感する人も多いようです。高市内閣の支持率は昨年12月の共同通信世論調査で67・5%でした。年代別では30代以下73・7%、40代72・4%、60代以上59・6%。若い世代ほど支持率が高く、この傾向は報道各社の調査に共通です。
◆ 下落が続く国際的地位
50代以下の大半はバブル経済崩壊後に社会人になり、強い日本経済を経験したことがありません。かつて米国に次ぐ国内総生産(GDP)2位たった日本は中国、ドイツに抜かれ、国際通貨基金(IMF)によると、今年はインドに次ぐ5位になる見通しです。
防衛力は経済力にほぼ比例します。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によれば、日本の防衛費は1993年には米国に次ぐ世界2位でしたが、2000年代初頭から順位を落とし、24年は10位。GDP比1%程度に抑えていた90年代の方が、国際比較では防衛費が多かったのです。
現役世代は長期の経済低迷「失われた30年」で自信も失ったように映ります。伸びない実質賃金、少子高齢化で増す税と社会保険料の負担に疲弊し、中国には経済、軍事の両面で圧倒されています。「強い国」を唱える首相が頼もしく見えるのかもしれません。
その高市首相が、新年に取り組むべき最優先課題は、26年度予算案の早期成立です。 通常国会は今月23日に召集され、審議が始まります。野党の国民民主党も予算案に賛成する方向なので、 年度内成立への視界は良好 でしょう。
物価高対策と成長投資で実質賃金が持続的な上昇に転じ、景気回復により増税しなくても税収が増える。そんな「強い経済」に向けた好循環が視野に入れば、高市人気の基盤はさらに固まります。
賃上げや減税の効果を超えて物価がさらに高騰し、景気が冷え込むシナリオもあり得ます。
26年度予算案の一般会計は過去最大の122兆円に膨らみ、国債頼みの財政運営が続きます。首相の積極財政路線を受け、長期金利は上昇し、円安基調も止まりません。財政政策が市場の信認を得られず「日本売り」が進めば、輸入物価はさらに上がります。
春以降は「強い安全保障」の議論も本格化します。政府・与党は国家安全保障戦略など安保関連3文書を年内に改定する方針で、殺傷兵器の輸出拡大、非核三原則の見直し、防衛費のさらなる増額など論点が尽きません。
中でも国民の懐に直結するのが防衛費です。25年度の防衛関連予算は補正も含めてGDP比2%の約11兆円。単純計算では国民1人当たり年9万円余の負担です。関連予算を仮にGDP比3・5%に増やせば、国民の負担は年約16万円に膨れ上がります。
巨額の防衛予算を賄うための増税は難しいでしょう。手取りを増やす減税の効果が帳消しになるからです。国債に依存すれば財政悪化の懸念が高まり、日本売りの要因になります。無理を重ねる「強い安全保障」は、経済を弱める危険性をはらんでいるのです。
首相の「強い外交」が「勇ましい外交」になっていることも憂慮せざるを得ません。台湾有事を巡る国会答弁が代表例です。自らの不用意な発言で中国の日本に対する敵意を煽りながら、安保環境の悪化を口実に防衛費を増やす。そんな負担増に喜んで応じる国民がいるのでしょうか。
◆ 身の丈に合う未来像を
明治の富国強兵は欧米列強が東アジアに進出する中、日本の独立を守りましたが、領土拡張主義に陥り、破滅的な敗戦に至った歴史も忘れてはなりません。戦後の日本は「強兵」を捨て、「富国」に専心することにしました。
少子高齢化が進み、労働力人口の減少が避けられなくても、日本には世界に誇れる美点がたくさんあります。強がって経済成長や軍事力強化を目指さなくても、身の丈に合った未来像を考える。そんな新春にしたいと思います。
首相批判続々、今度は視察動画(9日の日… 2026年09月09日
「残念」で済ませるのか?(8日の日記) 2026年09月08日
米国民主党、OS更新が進むのか(7日の… 2026年09月07日
PR
キーワードサーチ
コメント新着