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あなたが うまれる まえの ひに、 どうぶつたちは うわさした。 「あのこが くるよ」と。 (デブラ・フレイジャー/作 井上荒野/訳「あなたが うまれた ひ」より) ちびくま、ぶじに生まれました。 頭が大きめで、出てくるのに2泊3日かかりましたが、母子ともに元気です。 8月10日、予定日を5日過ぎた健診で、赤ちゃんがずいぶん大きくなっていると言われ、その日の午後に急きょ入院。 子宮口を開く処置をして、11日朝から陣痛促進剤の点滴。 陣痛は、子宮がエネルギーのかたまりになってぐわんぐわんとうねる感じ+わたしの骨盤と赤ちゃんの頭の骨が押し合ってみしみし軋む感じ。 「骨盤が粉々になりそう!」と半べそをかきながら一日痛みと付き合いましたが、子宮口が十分開かず、赤ちゃんもなかなか下りてこない。 陣痛の波がくるたびにくまの手を握らせてもらって深呼吸するのだけど、わたしは酸素を吸いすぎて過呼吸で手足がしびれ、くまは疲れ果てて「ふーっ」と息を吐きながら半分うとうと。 この調子では母体がもたないというので、11日夜に背中から麻酔薬を注射して、促進剤もいったん打ち切り。 2時間おきに麻酔を入れながらうたたねし、12日朝からふたたび促進剤。 陣痛の合間、30秒くらいの間にぐらっと眠気がくる。 体が勝手に意識を遮断して、体力を回復しようとしているみたい。 午後になって、内診した看護師さんに「子宮口全開だよ。赤ちゃんもそこまで下りてきてる」と言われたときは、安堵のあまり泣きました。 分娩室に移り、大きな頭を引っ張り出すために吸引もして、午後3時12分、3640gの男の子が生まれました。 つるんと出てきてほんぎゃーふんぎゃーと泣いている生まれたてほやほやを、へその緒もつながったまま、看護師さんがほいっと腕にのせてくれる。 赤ちゃんはあたたかくて重かった! 長い陣痛のあいだ付き添ってくれたくまと一緒に泣きました。 わたしも精魂尽き果てたけど、生まれてくるちびくまは、その何倍もたいへんだったはず。 この生まれにくい体にふた晩も付き合ってくれて、元気に生まれてきてくれてほんとにありがとうと思う。 ちびくまの顔を見ていると、今までの人生で見たきれいな景色や、大好きな音楽、嬉しかった言葉などを全部混ぜ合わせてのぞきこんでいるような、幸せな気持ちになる。 ずっと見ていたいし、いつまで見ていても飽きない。 赤ちゃんはつねに「今」を生きていて、過去を振り返って後悔することも、未来の心配をすることもない。 世界は毎朝あたらしくはじまり、発見とふしぎに満ちている。 そのまっさらな時間軸を、わたしも一緒に体験させてもらっている感じ。 慣れないことばかりで大さわぎの毎日ですが、自在に伸び縮みする赤ちゃんとの時間を、のんびり楽しんですごしたいと思います。
2011.08.29
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くまが帰ってきた。地震のあと、仕事のつごうで、離れて暮らしていたのです。けっこう平気なつもりでいたけど、そばにいてくれるとやっぱり安心。頭で考える前に、体がふーとゆるんでいく。家族が毎日一緒に暮らせるのは、それだけで奇跡。かけがえのないことなのでした。くまの留守中、心ぼそさを感じるたびに、ちびくまがもぞもぞ動いて、小さな灯りをともすみたいに勇気づけてくれた。里帰りはしない、ここで産むと決めたのは自分なのに、すぐ動揺するし心配性もあいかわらずで、ちびもおなかを蹴とばしながら「お母さんしっかり!」って思ってたんじゃないかな。今はただ、わたしたちのところへ来ることをえらんでくれてほんとうにありがとうという気持ち。出産予定日まで、あと3日です。石田千「店じまい」を読む。おでん屋さん、ケーキ屋さん、焼き鳥屋さん…わけあって店じまいする街角の小さなお店の記憶が、石田さん独特の、むだのない文体でぽつぽつと語られる。もう戻れない、記憶の中にだけ存在する場所について語らせたら、この人の右に出る書き手はそういない。感傷におぼれない、淡々とした語りくちだからこそ、読む者の胸に、知らないはずの風景がなつかしくうかぶ。いつか見た景色への郷愁がよみがえる。
2011.08.02
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