本読みのひとりごと
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1
ちびくま、生まれて40日あまり経ちました。 退院してきたときぶかぶかだったベビー服が、いつの間にかもうぴったり。 どんどん大きくなるんだなあ! だんだん目も見えるようになって、近づいていくと、わたしの顔を見てにこにこ笑ったりする。 ちびの機嫌がいいとき、目の届くところに寝かせて家事をしていると、わたしのすがたを目で追いかけている。 じっとこっちを見つめながら「あー」とか「うー」とか話しかけられると、つい手を止めて抱き上げてしまう。 寝不足でも、落ち着いてごはんが食べられなくても、おちちを飲んでまどろんでいる無防備な寝顔を見ると、神さまありがとうと思う。 わたしが知っている中で、この感情にいちばん近いのは、恋だ。 俵万智の子育て歌集『たんぽぽの日々』を読む。 新米母のわたしには、共感できる歌がたくさん。 深くうなずいたり、はっとさせられたり、涙ぐんだりしながらページをめくる。 たとえば、タイトルにもなっているこんな一首。 「たんぽぽの綿毛を吹いて見せてやるいつかおまえも飛んでゆくから」 添えられたエッセイには「たんぽぽの綿毛は、たんぽぽの子どもたち」とある。 「地面に根をはっている母親は、子どもたちのこれからを、見とどけてやることはできない。ただ、風に祈るばかり」なんて、もう涙なしには読めない(親ばか)。 「ぴったりと抱いてやるなり寝入りばなジグソーパズルのピースのように」 「振り向かぬ子を見送れり振り向いた時に振る手を用意しながら」 「ひざの上に子を眠らせて短編を一つ読み切る今日のしあわせ」 この歌も印象的。 「機嫌のいい母でありたし無農薬リンゴひとかけ摺りおろす朝」 エッセイには「子どもの環境を考えるとき、大事なことはさまざまあるだろうけれど、『おかあさんの機嫌がいい』というのが、一番ではないだろうか」とある。 本当にそうだなあと思う。赤ちゃんは、母親の気持ちの変化にとても敏感だ。 できるだけおだやかな一定のトーンで接したいと思うけれど、そのシンプルなことがすごくむずかしい。 初めての育児は思い通りにならないことの連続で、そこに寝不足が重なると、ついイライラ、めそめそしてしまう。 じっとわたしを見上げるちびのまなざしにはっとして、我に返ることもたびたび。 子育てで迷ったり、完璧をめざすあまりイライラ母ちゃんになりそうなときには、いつでもこの歌を思い出そう。 それから、生前の河野裕子さんが著者に語ったという言葉も。 「子どもはね、いつも、そのときが一番かわいいの」 赤ちゃんでも、小学一年生でも、思春期の生意気ざかりでも、社会人でも。 いつでも「いまがいちばん」と思いながら、息子との時間を慈しんで過ごしたい。
2011.09.23
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